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2022年11月24日(木) 土地所有者と建物所有者の関係

土地が自用なのか賃貸なのかという区別に加え、土地の所有者と建物の所有者の関係を整理すると、建物を①土地所有者本人(被相続人)が所有する、②親族(相続人等)が所有する、③将来の相続人が株主である法人で所有する、の3通りが考えられます。それぞれの場合において、一定の要件に該当すると小規模宅地等の特例が適用されることになります。

 

①自用の場合

自用の場合には居住するのか、貸家に使用するのかに分かれます。さらに建物を誰が所有するかによっても分けられます。

 

ⅰ:建物を被相続人本人が所有していた場合で、居住用であれば小規模宅地等の特例のうち、特定居住用宅地等が適用される可能性があります。貸付事業用以外の事業用であれば特定事業用宅地等が適用される可能性があります。

ⅱ:親族が建物を所有する場合でも、前掲ⅰ:と同様になります。

ⅲ:法人が建物を所有する場合は特定同族会社事業用宅地等の特例が適用される可能性があります。

 

②賃貸の場合

賃貸の場合には建物を誰が所有しても貸付事業用宅地等の特例が適用される可能性があります。

 

2022年11月17日(木) 不動産を自用するか賃貸するかによる評価の違い

手付かずの更地は自用の土地です。まずはここから評価をスタートします。

 

①自用の場合

自用の土地の場合、相続税においては財産評価基本通達によって評価を行います。この評価方法の概要については前回までに明らかにした通り、おおよそ時価の80%程度に抑えられています。 このスタート時点で財産評価基本通達により評価した額を不動産鑑定によって10%程度の引き下げを狙うことも可能です。 自用の建物については固定資産税評価額で課税されますが、これについても建築価格の50%から70%に抑えられています。 土地にしても建物にしても、スタートの時点で時価より低く評価されていることになります。

 

②賃貸の場合

収益用の建物を建築することで、土地は自用の土地ではなく貸家建付地となります。この場合、借地権や借家権が発生しますので、土地の課税評価額を18%~21%程度、引き下げることが可能になります。 建物についても借家権が発生しますので30%の減少が認められることになります。

 

2022年11月08日(火) 更正の請求

高い評価額で相続税の申告をしてしまうと相続税を払い過ぎることになります。

相続日の翌日から10ヶ月以内に申告書を提出し納税した後、5年以内であれば更正の請求によって相続税の還付ができるとされています。とりあえず財産評価基本通達による評価に基づいて申告納付した後、鑑定評価を行って金額を算出して更正請求により還付を受けるという方法も考えられます。

現に相続事案を専門に扱って更正請求によって還付を受けるというビジネスモデルも存在します。大切なクライアントが更正請求を理由に狙われているのかもしれません。会計人としては最低限のレベルとして財産評価基本通達に従った正しい評価を行うことが求められるのであり、必要に応じて不動産鑑定評価によって相続税の過大納付を回避することが求められます。

 

2022年10月30日(日) 否認リスクを避ける

鑑定評価を行う段階で対策を行うことが不可避ですが、それでもまだ否認される可能性がゼロになるわけではありません。

確実なデータはありませんが、相続税の申告において鑑定評価書が利用される例は少なくありません。争いになるようなケースでは否認率が高まるようですが、そうでない場合には否認率は低いようです。その差はすなわち、申告額の多寡あるいは乖離の多寡にあるといえそうです。

そもそも相続税路線価は時価の80%程度、固定資産税路線価は70%の水準とされています。このような状況において、対象不動産をさらに減価するのであれば、合理的な理由が求められるのは当然です。確かに、過大な造成費用が必要になったり、撤去すべき建造物があったりする場合にはそのための費用が必要になりますので時価との乖離が大きくなります。乖離の程度が大きいだけに、争いになる可能性も高まります。それでは「争いにならない程度の乖離」とはどの程度なのでしょうか。この点についても確固たるデータはありませんが、筆者が調査した範囲では、財産評価基本通達で評価した額と鑑定評価額の鑑定額の差が10%程度であれば争いに持ち込まれる可能性は低いようです。

 

2022年10月20日(木) 鑑定評価が否認される可能性

財産評価基本通達を適用して評価することが著しく不適当と認められる特別な事情がある場合に、他の合理的な評価方法により時価を求めることが容認されています。

現に「評価通達に定める評価方法を確立的に適用するという形式的な平等を貫くことによって、かえって実質的な租税負担の公平を著しく害することが明らかであり、評価通達によらないことが相当と認められる特別の事情があると認められることから、他の合理的な時価の評価方法である不動産鑑定評価に基づいて評価することが相当である」との裁決例もあります(平成29年5月23日裁決)。

ただし、「公正妥当な鑑定理論に従った鑑定評価が存在する」というのみでは足りず、同一の土地について「他の不動産鑑定評価があればそれとの比較」において、また、周辺における「公示価格や都道府県地価調査による基準地の標準価格」の状況、「近隣における取引事例」等の諸事情に照らして、評価通達等により算定された土地の評価額が客観的交換価値を上回ることが明らかであると認められることを要すると指摘されています(平成18年3月15日裁決)。

 

2022年10月13日(木) 補正の可能性

利用価値が付近にある他の宅地の利用状況からみて、著しく低下していると認められる宅地の価額は、その宅地について利用価値が低下していないものとして評価した場合の価額から、利用価値が低下していると認められる部分の面積に対応する価額に10%を乗じて計算した金額を控除した価額によって評価することができます。

 

1、道路より高い位置にある宅地又は低い位置にある宅地で、その付近にある宅地に比べて著しく高低差のあるもの

2、地盤に甚だしい凹凸のある宅地

3、震動の甚だしい宅地

4、1から3までの宅地以外の宅地で、騒音、日照阻害(建築基準法第56条の2に定める日影時間を超える時間の日照阻害のあるものとします。)、臭気、忌み等により、その取引金額に影響を受けると認められるもの

 

このように、利用価値が著しく低下していると認められる場合には10%の減価が認められていることが分かります。この10%の減価は他の補正率と重複して適用することは認められますが、利用価値の著しい低下が路線価に反映され、路線価そのものが低額になっている場合にはさらに10%の減額を適用することは認められません。

利用価値の低下を理由に10%の減価が認められるのであれば、10%の減価で十分であるかを検討し、不十分であるならば不動産鑑定により時価を求めることも有効な手段となります。不動産鑑定によって10%あるいはそれ以上の減価を客観化するというわけです。

 

2022年10月06日(木) 評価額と鑑定額の乖離

財産評価基本通達に基づく評価は全国共通の基準であり、一定の補正率をあてはめれば画一的に評価ができるという構成になっています。

一方、不動産鑑定評価では各地方自治体の条例までも勘案して、地域別の土地・建物の個別性が反映される形で鑑定を行います。また、財産評価基本通達では補正率が数値で細かく規定されていることから、これに従って評価を行えば誤計算がない限り誰が評価しても同じ結果となるのに対し、不動産鑑定評価基準では数値が細かく規定されておらず、さらに評価人の判断が入ることで乖離が生じる可能性が高くなっています。両者には制度的な違いがあるのです。

 

①不動産のとらえ方

財産評価基本通達では土地と建物を別々に評価して、その合算値で不動産を把握します。一方、不動産鑑定評価では、土地と建物を一体としてとらえ、その効用がどのように発揮されているかを勘案します。換言すれば、土地と不動産の適応の状態が悪い場合には、土地と不動産を個別にとらえる場合に比べ、一体のものとしてとらえる場合の方が価額が低くなるということができます。

 

②補正率の位置づけ

財産評価基本通達では全国一律の補正表により、画一的に価格を評価します。一方、不動産鑑定評価では、価格の三面性(費用性、市場性、収益性)を考慮し、個々の不動産の特性に応じた鑑定を行います。財産評価基本通達に従った評価は判断の余地が狭く、鑑定評価は判断の余地が広いということができます。両者には差が生じるのであり、鑑定の減価率が評価の減価率を上回る場合には、鑑定額<評価額となるのです。

 

2022年09月25日(日) 不動産鑑定評価を採用すべき場面

確たる基準や調査データが存在するわけではありませんが、財産評価基本通達を正しく適用して求めた価格と不動産鑑定評価額との乖離が大きいと否認リスクが高くなるようです。10%程度の乖離であればともかく、大きな乖離が認められる場合には否認リスクが高まるようです。単に不動産鑑定評価書を用意すれば良いというものではなく、会計事務所と不動産鑑定士が正しい形で協働することが求められます。

 

全ての不動産鑑定士が財産評価基本通達を理解しているわけではありません。「存在は知っているが具体的な方法を熟知していない」というのが実際のところでしょう。そもそも財産評価基本通達による評価と不動産鑑定評価基準による鑑定では考え方が根本的に異なることについては、本稿の第1回で明らかにした通りです。不動産鑑定士にとって財産評価基本通達は、通常の不動産鑑定評価を行う限りにおいて不要なものなのです。

それでは不動産鑑定士にとって税務はどの程度の関連性があるのでしょうか。かかる観点から不動産鑑定士と税理士のダブルライセンスの実態を調べてみましたが、国交省も国税庁も、税理士連合会も鑑定士協会連合会もデータは公開していません。国交省のHPで不動産鑑定業者の別業務を公表しており、ここで別業務として税理士・会計士を掲げている数を確認できます。このように調べた結果、不動産鑑定士として登録している人数は約8200人、鑑定業者として登録している数は約3400となっており、その3400の業者の中で税理士・会計士を別業務に掲げている数は約100となっています。データの正確性は別にしても、税務に関わる業務に精通している不動産鑑定士が少ないことだけは確かだと言えるでしょう。

 

2022年09月18日(日) 不動産鑑定評価を利用する際の留意点

確実なデータとして確認されているわけではありませんが、相続税の申告にあたって不動産鑑定評価が容認される可能性は低くないと言われています。一方で、不服審判に移行した場合、裁決や判決においては否認される可能性が高くなるようです。

その差として考えられる原因の一つとして、金額の多寡と乖離の程度を挙げることができるでしょう。一般に正常価格を100とした場合、相続税評価額は90%~80%、固定資産税評価額は80%~70%と言われています。その当否は別として、実際には固定資産税評価額程度であれば否認される可能性は低く、これを大きく超えるような評価はたとえ正しい鑑定理論に従ったものであるとしても、否認される可能性が高まるようです。現に判例は「不動産鑑定評価が存在し、その鑑定評価が一応公正妥当な鑑定理論に従っているというのみでは足らない」としています(平成30年3月13日、東京地裁)。説得力のある不動産鑑定評価書を利用することで否認される可能性を少しでも軽減しておくべきではないでしょうか。

 

2022年09月11日(日) コンフリクトマネージメント

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第80回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「、コンフリクトマネジメント」で、その要旨は次の通りです。

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要旨:

交渉学における交渉の目的はWin/Winの解決です。しかし、すべての交渉でWin/Winの結果が得られるとは限らず、交渉の過程では対立が起きるものです。このような交渉に生じる対立のことを交渉学ではコンフリクトといいます。このコンフリクトの原因を把握し、正しく対応すること、すなわちコンフリクトマネージメントが重要なのです。事業再生におけるコンフリクトマネージメントについて整理することにします。

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会員は(1)会計事務所向けと(2)企業経営者向けに分かれています。

 

(1)会計事務所の先生の場合は「tvs会員」になる必要があります。
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多くの有益な情報を入手できますので、入会することをお勧めします。
私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。

 

入会にあたってはお近くの(株)ミロク情報サービスの営業拠点にご連絡ください。営業拠点は下のアドレスから検索できます。
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2022年09月03日(土) 建物及びその敷地の鑑定評価(2)収益還元法

現況は自用の建物及びその敷地の場合、対象不動産を賃貸借に供することを想定し、想定賃料に基づく総収益を求め、これから賃貸借を継続するのに要する総費用を控除して、建物及びその敷地の純収益を査定します。「純収益の算出」「総合還元利回りの査定」等の具体的方法は更地の場合と同様となります。

 

2022年08月28日(日) 建物及びその敷地の鑑定評価(1)原価法

自用の建物及びその敷地の評価にあたっては、原価法による積算価格と、収益還元法による収益価格を求め、二試算価格を調整のうえ鑑定評価額を決定します。土地と建物の適応の状態が対象不動産と類似している土地・建物一体としての取引事例の収集は困難なため、複合不動産としての取引事例比較法を適用しないことも少なくありません。

 

①土地

ⅰ)近隣地域の標準的使用における標準価格の査定

近隣地域の地域要因を備えた標準的画地の標準価格を、取引事例比較法を採用して求めた土地の価格を標準とし、標準地の公示価格を規準とした価格等との均衡を十分に考慮して査定します。この段階で、「取引事例比較法(土地)を採用して求めた価格」「標準地の公示価格を規準とした価格」「標準画地の比準価格」の求め方は前掲の更地の場合と同じです。

 

ⅱ)評価対象不動産の土地価格

続いて、対象不動産の「個別格差率の査定」を行い、標準価格に個別格差率を乗じて対象不動産の土地価格を査定します。

 

②建物

評価対象建物と類似の建物の建築費を参考として、新規に再調達する場合の再調達原価を査定し、次に、建物の現況及び地域的特性の推移・動向から判断して建物の積算価格を査定します。」

 

ⅰ)再調達価格

再調達価格は類似の建物の建築費を参考にして求めます。

 

ⅱ)減価額

躯体と設備のそれぞれについて経年による減価率を適用して減価します。この際、外見を観察することで必要に応じて観察減価の増減を行います。

 

ⅲ)積算価格(建物)

再調達価格から減価額を控除して建物の積算価格を算出します。

 

③積算価格

土地価格と建物価格を合計し、さらに一体としての市場性を勘案した増減を行って積算価格を査定します。

 

2022年08月17(水) 更地の鑑定評価(3)鑑定評価額の決定

各試算価格には開差が生じることが一般的です。そこで各鑑定評価方式及び採用した資料の有する特徴に応じた斟酌を加え、鑑定評価の手順の各段階について、客観的・批判的に再吟味することにより調整することになります。

比準価格は、現実の市場において発生した取引事例に基礎を置くもので、市場の実態を反映し、実証的といえます。収益価格は、収益的に優れた利用方法を検討して求めたものであり、論理的といえます。

対象不動産に係る典型的な需要者層を勘案して、重視すべき試算価格を判断します。たとえば比準価格を重視するのであれば、比準価格と比較して一般的に低位に導出される傾向がある収益価格をどの程度勘案するべきかを判断して最終的に鑑定価格を決定します。

 

2022年08月08日(月) 更地の鑑定評価(2)収益還元法

対象不動産について最有効使用の賃貸用建物の建設を想定し、土地残余法を適用して求めます。

土地残余法とは「対象不動産が更地である場合において、当該土地に最有効使用の賃貸用建物等の建築を想定し、収益還元法以外の手法によって想定建物等の価格を求めることができるときは、当該想定建物及びその敷地に基づく純収益から想定建物等に帰属する純収益を控除した残余の純収益を還元利回りで還元する手法」と定義されます。

具体的には総収益から総費用を差し引いて土地・建物に帰属する純収益を求め、このうち建物に帰属する純収益を控除して、最終的に求めた土地に帰属する純収益について土地の還元利回りで還元して収益価格を求めることになります。

 

そこで、まず最初に想定される総収益を求めます。次に諸費用を控除します。諸費用の例としては修繕費(総収益の5%程度)、維持管理費(賃料の3%程度)、固定資産税・都市計画税、損害保険料(建物の0.1%程度)、空室等損失額(総収益の10%程度)等をあげることができます(かっこ内の数値は参考値です)。経費率は年間賃料の20〜30%程度となることが一般的です。この範囲を超える場合には、検証することが必要です。当然ながら、築年数の古い物件ほど修繕費等の経費が高くなる傾向があります。総収益から総経費を控除して求めた額が純収益となります。

建物に帰属する純収益とは建物を建設した時点の初期投資額に見合う利回り(割引率)と、経済的耐用年数の間に初期投資額を回収する利率を加味して求めます。実務的には、建物の躯体、仕上げ、設備部分の耐用年数に対応する年賦償還率を採用します。

純利益を還元利回りで除した値が収益価格です。還元利回りは標準的な投資家が要求する利回り及び金利水準、対象不動産の立地条件及び規模、地域において一般的に見いだされる類似の不動産の取引利回り、不動産投資家へのヒアリング調査等を勘案して査定します。

 

2022年07月27日(水) 更地の鑑定評価(1)取引事例比較法

更地の鑑定評価にあたっては、取引事例比較法による比準価格及び収益還元法(土地残余法)による収益価格を求めて、調整のうえ、対象不動産の鑑定評価額を決定することになります。対象不動産が既成市街地内に存する場合は再調達原価の把握が困難であるため、原価法は適用しないことも少なくありません。

 

標準画地の比準価格に対象不動産の個別的要因格差率及び地積を乗じて、対象不動産の比準価格を試算します。具体的には次の手順により求めます。

 

①標準画地の比準価格

まず、標準画地(間口や奥行のバランスが良好な中間画地)を想定し、取引事例比較法を適用して当該標準画地の比準価格を査定します。この場合、近隣地域及び同一需給圏内の類似地域における適切な取引事例を選択し、事情補正及び時点修正を行い、さらに、各事例と対象土地との価格形成要因の比較を行い、対象不動産の標準画地としての比準価格を求めます。求めた比準価格を比較考量して標準画地の比準価格を査定します。

 

②個別的要因格差率の査定

次に対象不動産について、想定した標準画地と形状・地積等の個別的要因について比較する形で個別的要因を判断し格差率を判定します。

 

③比準価格の査定

最後に、前掲①で査定した標準画地の比準価格に、前掲②で判定した対象不動産の個別的要因格差率及び地積を乗じて、対象不動産の比準価格を試算します。このように、対象不動産と取引事例直接比較するのではなく、一度、標準画地の価格を査定し、その価格を基に対象不動産の格差を勘案して比準価格を求めることになります。

 

2022年07月17日(日) 鑑定評価書が認容される可能性

財産評価基本通達における不動産鑑定評価の扱いについては、「評価通達による評価は一般的に合理性を有すると解されるところ、評価通達等を適用して評価することが「著しく不適当と認められる特別の事情が存する場合、すなわち、評価通達により算定される土地の評価額が客観的交換価値を上回る場合には他の合理的な評価方法により時価を求めるべき」との考え方が基本になっています(平成18年3月15日裁決)。

判例も「相続税法22条の時価は、不特定多数の者の間において通常成立すべき客観的な交換価値を意味するから、通達評価額がこの意味における時価を上回らない場合には、適法であることはいうまでもないが、他の証拠によって上記時価を上回ると判断された場合には、これを採用した課税処分は違法となるというべきである。(平成16年8月30日、名古屋地裁)」と、この考え方を是認しています。

 

鑑定評価書による申告を認めないとの採決もみられます。「評価通達により算定される土地の評価額が客観的交換価値を上回っているといえるためには、これを下回る不動産鑑定評価が存在し、その鑑定評価が一応公正妥当な鑑定理論に従っているというのみでは足りず、同一の土地について他の不動産鑑定評価があればそれとの比較において、また、周辺における公示価格や都道府県地価調査による基準値の標準価値の状況、近隣における取引事例等の諸事情に照らして、評価通達等により算定された土地の評価額が客観的交換価値を上回ることが明らかであると認められることを要するものと解されている」としています。判例も、相続税の評価額に関する訴訟において、「不動産鑑定士による鑑定評価書による評価額ではなく、財産評価基本通達による評価額を採用する(平成30年3月13日、東京地裁)」とした例もあります。

否認される例としては「正常価格以外の価格を求めている場合」「時点修正の誤り」「個別補正の誤り」「還元利回りの誤り」「鑑定評価手法が適正に適用されていない」等が考えられます。

 

2022年07月10日(日) 鑑定評価の三手法

不動産の価格を求めるにあたっては価格の三面性を考慮することが求められます。すなわち、費用性、市場性、収益性です。費用性とはどれほどの費用がかかったか(原価法)、市場性とはどれほどの値段で市場で取引されるか(取引事例比較法)、収益性とはどれほどの収益が得られるか(収益還元法)という視点であり、不動産鑑定評価ではこれら3つの視点から鑑定評価の三手法が定められています。

 

ⅰ)原価法による積算価格

土地については、近隣地域の地域要因を備えた標準画地の標準価格を、取引事例比較法を採用して求めた価格を標準としつつ、標準地の公示価格を規準とした価格等との均衡を十分に考慮し査定した後、標準画地と形状・地積等の個別的要因について比較して価格を求めます。建物については、対象建物と類似の建物の建築費を参考として、新規に再調達する場合の再調達原価を査定し、つぎに、建物の現況及び地域的特性の推移・動向を判断した後、評価対象建物の築後の経過年数を勘案して建物の積算価格を求めます。

価格が減少する要因としては、土地の比準を行う際に個別分析要因を低く判定したり、建物の再調達価格を求める場合の建築費や経年変化の減価を低く判定することが考えられます。このような判断の差異が結果として積算価格を減少させることになります。

 

ⅱ)取引事例比較法による比準価格

取引事例について事情補正及び時点修正を行った上で各事例と対象不動産との価格形成要因の比較を行い、さらに対象不動産を標準画地と比較して比準価格を求めた後、想定した標準画地と対象不動産の形状・地積等の個別的要因について比較して対象不動産の比準価格を求めます。具体的には、標準画地の比準価格に、対象不動産の個別的要因格差率及び地積を乗じて、対象不動産の比準価格を試算します。

いずれの取引事例も対象不動産と代替・競争関係にあり、規範性が高いものを採用します。

時点修正率は、採用した地価公示地の変動率のみならず、一般住宅地の変動率も参考に地価動向を分析して査定します。比準価格は、現実の市場において発生した取引事例に基礎を置くもので、市場の実態を反映し実証的な価格となります。

価格が減少する要因としては、土地の比準を行う際に個別分析要因を低く判定することが考えられます。事例の選定時点で特別な事情(売り急ぎ)があるようなものを選択しても、適正な事情補正を行うことができるのであれば価格の減少に直結することはありません。

 

ⅲ)収益還元法による収益価格

対象建物の経済的残存耐用年数に対応する当該建物及びその敷地の純収益の現価の総和(「純収益の有期還元額」と呼びます)を求め、経済的残存耐用年数満了後に対象建物を取り壊した場合の更地価格の現価を加えて収益価格を試算しています。

価格が減少する要因としては、土地の収益と費用を把握する時点で、どの数値を採用するかという点があります。実績地が明らかな異常値(不動産を有効活用しようとしていない場合など)である場合は、そのまま採用することはできません。異常値をそのまま採用してしまった場合には不当鑑定になりかねませんので適切に補正することになります。還元利回りの判断は収益価格に直結します。明らかな異常値で還元することはできませんが、還元利回りの多寡は収益価格の増減に直結することになります。収益還元法は理論的な価格であるだけに、純収益の把握や還元利回りの設定の段階での判断の差異が結果として収益価格を減少させることになります。

 

2022年07月05日(火) 合意基準の客観性

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第79回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「合意基準の客観性」で、その要旨は次の通りです。

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要旨:

交配分型交渉で一つのパイを奪い合うのではなく、統合型交渉で大きくなったパイを分け合うことが合理的な交渉です。パイを大きくするためには事前の準備が必要となり、さらには配分のための客観的な基準が求められます。事業再生においては法的整理のような客観性を確保する形で私的整理のメリットを追求する方法が期待されています。

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私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。

 

入会にあたってはお近くの(株)ミロク情報サービスの営業拠点にご連絡ください。営業拠点は下のアドレスから検索できます。
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2022年06月21日(火) 不動産鑑定評価基準による鑑定評価

(1)不動産鑑定評価基準は不動産鑑定士の守備範囲

不動産鑑定評価において価格の概念は正常価格、限定価格、特殊価格、特定価格に大別されます。このうち正常価格は「市場性を有する不動産について現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で成立するであろう市場価値を表示する適正な価格」と定義されており、この概念がいわゆる市場価格であり、時価の概念であるということになります。不動産鑑定評価基準に基づいた鑑定評価は不動産鑑定士の守備範囲となります。

 

(2)鑑定の考え方

更地とは「建物等の定着物がなく、かつ、使用収益を制約する権利の付着していない宅地」のことです。実際には土地の上に建物が存在していても、当該建物が存在しないことを想定して鑑定評価を行うこともあります。一方、この更地評価に対して、地上に存在する建物も含めて、土地・建物を一体の不動産として捉える評価を複合不動産の評価といいます。

複合不動産に見られるように、土地と建物が一体となって機能する以上、これらを一体として評価すべきであって、両者を切り離して個別に評価したのでは不動産の価値を正しく判断できないのです。

一体評価と個別評価に乖離が生じる原因としては、建物との適合の状態を指摘することができます。たとえば建物が最有効の使用状態でない場合には、更地の価格から建物の取壊費用を控除する形で時価を評価することで一体価格を求めることになります。この点、個別評価では建物の取壊費用を減価するという考え方は成り立ちません。

 

2022年06月14日(火) 税法における財産評価の考え方

財産基本通達の考え方は、土地と建物を別々に求め、合算して評価します。

土地の評価には、「路線価方式」と「倍率方式」の2つの評価方式があります(通達11)。路線価が定められている地域にある土地については路線価方式により評価し、その他の地域にある土地については倍率方式により評価しなければなりません。

 

ⅰ)路線価方式

財産評価基本通達の13によると、「路線価方式とは、その宅地の面する路線に付された路線価を基とし、15(奥行価格補正)から20-7(容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地の評価)までの定めにより計算した金額によって評価する方式をいう」とされています。

路線価方式は市街地の土地の評価に使うもので、その土地が接する道路の標準的な価格から奥行や間口、地形などの要因を補正して評価額を算出する方式です。評価の過程において次のような補正が行われます。

・前面道路側を間口とした場合の奥行による価格の補正を行います。

・角地、二方路、三方路等の場合は効用の増加を評価に反映します。

・間口狭小、奥行長大の場合は減価を行います。

・宅地の形状が不整形である場合(不整形地)の補正を行います。

・無道路地、がけ地等の補正を行います。

 

ⅱ)倍率方式

倍率方式は固定資産税評価額に評価倍率を乗じて宅地の価格を評価する方式です。主に郊外や農村などの宅地や山林、農地等を評価する場合に用いられます。

財産評価基本通達の21によると「倍率方式とは、固定資産税評価額(地方税法第381条《固定資産課税台帳の登録事項》の規定により土地課税台帳若しくは土地補充課税台帳(同条第8項の規定により土地補充課税台帳とみなされているものを含む。)に登録された基準年度の価格又は比準価格をいう。)に国税局長が一定の地域ごとにその地域の実情に即するように定める倍率を乗じて計算した金額によって評価する方式をいう。」とされています。

 

土地の超過額に建物の評価学を加算します。

自用の建物の場合、その建物は固定資産税評価額を加算します。貸家の場合、固定資産税評価額から借家権の額を控除して求めます。借家権の額は、借家権割合を乗じて求めることになります。

 

2022年06月07日(火) BATNAとZOPA

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第78回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「BATNAとZOPA」で、その要旨は次の通りです。

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要旨:

交渉の結果、常に合意に至るとは限りません。交渉決裂の場合にどうするのかという代替策(BATNA)を念頭に置きながら交渉を進めることが求められます。当然ながら交渉の相手も代替策を有しているのであり、その内容を推測することは交渉を有利に進める上では有効です。お互いの合意可能領域(ZOPA)を探りながら、双方が満足する形での合意を目指すことが望まれます。そのためには統合型交渉により分け合うパイを拡大することが有効です。今回は事業再生におけるZOPAを考察します。

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2022年06月04日(土) 財産評価基本通達による評価

時価が問題になるのは相続の場合だけではありません、たとえば事業再編を行う場合に、同族企業内で不動産を移転する場合の評価も問題になります。端的には、低廉譲渡ではないのかという疑いを払拭する必要が生じることが少なくありません。

 

財産評価基本通達の考え方の特徴として、土地と建物を別々に評価する点をあげることができます。

不動産は土地と建物から構成されているところ、これを別々に評価するために土地の評価額の如何が時価の評価に大きな影響を与えます。財産評価基本通達による評価が常に「正しい時価」を示すとは限りませんが、相続税においては「財産評価基本通達の定めによって計算する」と定めがある以上、この計算は税理士の本来業務として位置づけられることになります。

 

2022年05月29日(日) 時価の概念

相続税における財産の評価は、相続税法22条で「相続により取得した財産の価額は、その財産の所得の時(相続開始時)における時価により評価する」と規定されています。ではこの時価とは何でしょうか。

時価の評価を画一的にかつ迅速に行うために財産評価基本通達が制定されているのであり、財産評価基本通達の総論1(2)では「それぞれの財産の状況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額を言い、その価額は、この通達の定めによって評価した価額による」と明示されています。すなわち相続税法上は時価により評価すると規定しながらも、財産評価基本通達の定めによって計算すると断言されているのです。いわば命令に近い規定になっているのです。

この時価の概念は鑑定評価における「正常価格」の概念とほぼ同様です。時価評価は「財産評価基本通達に従って計算した価額が、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額」と乖離する場合に問題になるのです。

 

毎年1月1日現在の標準的な土地の価格として、国土交通省が地価公示価格を公表します。これを100とすると、相続税の路線価は80~90、固定資産税評価額は70~80を目安に設定されています。「普通の土地」であるならば、時価は地価公示価格に近い水準になっています。

ごく普通の土地の場合であれば、財産評価基本通達に従って計算した評価額は、地価公示価格の80%程度になっているので、そのまま相続税の申告をしても納税者には有利であるということになります。これはあくまで「普通の土地」の場合であり、「普通でない土地」や「普通でない建物が存在する場合」等には、「不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額」が、財産評価基本通達で求めた「時価」を下回ることがあるのです。このような場合に、不動産鑑定評価により求めた鑑定額が財産評価基本通達により求めた評価額より低いのであれば、納税額を抑えられるという意味で不動産鑑定がクローズアップされることになります。

 

2022年05月22日(日) 財産評価基本通達

会計事務所が行った相続税申告事案に狙いを定め、更正の請求によって相続税の還付を受けるというビジネスモデルが存在します。例えば財産評価基本通達が認める減価要因を適正に適用せずに過大評価となってしまえば還付が認められるでしょうし、通達に従って正しく評価したとしても、不動産鑑定評価による更に低い鑑定額が認められれば、これも還付が認められるでしょう。

 

財産評価基本通達を正しく理解することは当然のことであり、さらには不動産鑑定評価による鑑定額との違いを理解しておくことも大切です。

 

相続税における不動産の評価は財産評価基本通達に準拠しています。財産評価基本通達に基づき不動産の評価額を求める業務は税理士の守備範囲です。一方、不動産鑑定評価基準による不動産の鑑定額を求める業務は不動産鑑定士の守備範囲です。評価額と鑑定額に差が生じる原因として、不動産の価値についての考え方の違いを指摘することができます。

 

2022年05月13日(金) 再生ファンド

再生ファンドの一つの側面として、投資家から集めた資金を基に再生可能性が高い企業の株式を割安で購入し、専門家を派遣して不採算事業の整理やコスト削減を通じて企業価値を高め、企業価値が高まった時点で、事業承継により経営権を譲渡するというものがあります。

 

再生ファンドは、金融機関や地方公共団体から資金支援を受けており、本業の収益力が高く、優れた技術やノウハウを持っている事業に限定して運用されています。その大まかな流れは次の通りです。

 

ⅰ)再生計画の策定

再生ファンドを利用するにあたっては中小企業再生支援協議会と連携して、具体的な再生計画を立てることになります。

 

ⅱ)資金提供

再生計画が決定した後、再生ファンドは必要になる資金提供を行います。再生ファンドは、対象会社が発行した株式を買い取ったり、新株予約権を引き受ける等により株主としての地位を取得することになります。この資金提供により金融機関からの借入金を整理することになりますが、債務返済ではなく事業の再生が優先されます。

 

ⅲ)債権買い取り

単なる資金提供に留まらず、金融機関から債権を買い取る場合も少なくありません。借入金過剰により経営難にあるものの、債務圧縮ができれば事業再生が容易になる場合に実施されるものです。この場合、金融機関との合意が必要になりますが、金融機関としては再生ファンドを利用したという事実があれば債権放棄をしやすくなるという事情があります。加えて、再生ファンドの場合には信用保証協会の協力を得られるという利点もメリットとして指摘できます。

 

ⅳ)経営譲渡

計画に基づいて債務者の経営実態を根こそぎ洗い出して経営改善を進めます。債権者としても従来の経営者と共に経営にあたることで過去から現在に渡る経営ノウハウを吸収できますので、数年の間、手を取り合って経営改善することは効果的だといえるかもしれません。

計画期間が進むと、再生ファンドは一括回収へと移ります。この段階で、金融機関からの支援が継続されていれば経営権を維持できますが、金融支援が得られなければ、M&Aにより新たなスポンサーに経営権を譲渡することになってしまいます。

 

このように、再生ファンドは自力で融資を確保することなく再生を進められますが、再生期間中は経営権を奪われることになり、再生計画の終了時点で経営権を取り戻すという形になります。換言すれば、必ずしも従来の経営者が経営権を維持することができるとはいえません。経営権を維持することができる可能性は、自力再生と比べれば低く、M&Aと比べれば高い方法であるといえるでしょう。

 

2022年05月06日(金) 自力再生

諸般の事情で借入金が膨らんだ結果、返済能力を超えてしまったものの、借入金さえ適正水準であれば事業を継続できる会社は少なくありません。このような会社を再生させるためには、借入金を削減することが必要になります。

この場合、従来の会社から資産を譲渡したり、事業を譲渡したり、あるいは会社を分割するなどの方法で組織再編を進めることがあります。さらには会社そのものを譲渡する方法もとられます。いずれも会社の借入金は削減され、適正な水準の借入金を有する会社として再生されることになります。

 

わざわざ組織再編を行わなくても良さそうなものですが、そこには金融機関の論理というものがあり、組織再編をせずに従来の会社に対して債務を免除するのは困難な場合があるのです。債務者には返済義務がありますので、債務者は債権放棄を求める立場にありません。債権放棄をするか否かは債権者が決めることなのですが、その債権者には債権者の論理があるというわけです。

たとえば金融機関は、預金者から集めた預金を運用するのですから、受託責任を負っています。債務者の返済が困難だからといって、簡単に債務を免除するわけにはいかないのです。回収の最大化に努力しなければならず、他の債権者との整合性を図る必要もあります。 債権者が債権放棄を余儀なくされ、貸倒損失という損失を被る以上、債務者には経営者責任を果たしてもらわないことには説明がつかないのです。このように、事業再生にあたり債務の免除を受けるには、相応の手続が求められることになります。実現可能な再生計画を作成し、返済可能な最大額を返済することを疎明する必要があるのです。その返済計画が認められて初めて債権放棄を受けることになります。

 

自力再生を進めるにあたり組織再編を行う場合、必要な資金を確保しなければなりません。その具体的方法はこれまで各回の研究レポートで明らかにしてきた通りです。第二会社方式等を活用することで、経営権を維持したまま事業再生が実現しやすいという点を大きなメリットとして指摘することができます。後掲の再生ファンドやM&Aに比べれば、経営権を維持できる可能性が最も高い方法であるといえるでしょう。

但し、自力で必要な資金を確保できない場合には、再生ファンドやM&Aで事業を存続することになります。この場合は経営権を維持できなくなる可能性が高まりますので、前掲の一部合意方式によって一定範囲の事業領域を確保しておくことも検討すべきでしょう。

 

2022年04月27日(水) 一括合意と個別合意

事業再生計画が合意に至る方法として、一括合意と個別合意があります。

括合意とは全債権者の合意を求めるものです。バンクミーティングを開催する、あるいは、再生支援協議会の場を利用する等により、全ての債権者の合意を一括して得るという意味で一括合意による私的再生といえます。

個別合意とは、全ての債権者の合意を得られない場合に、たとえば抵当権を有する債権者と個別に話し合って、先に合意を得て不動産を第二会社に移転する等が代表的な事例です。 一括合意ができないから個別に合意をするというわけです。

 

個別合意が成立するかどうかは個々のケースによって異なりますが、競売価格や競合第三者の提示価格よりも上回る金額であれば、抵当権者たる債権者との個別合意を得やすくなります。一括合意が成功しない場合に備えて、あらかじめ個別合意によって一定範囲の事業領域を確保しておくようなケースが考えられます。

 

2022年04月20日(水) 私的整理と法的整理

私的整理は債務者と債権者の間の話し合いで進められるため、取引先などの外部の第三者に知られないという大きなメリットがあります。さらには債権者の取扱いに差を設けるなどの柔軟な対応が可能であるというメリットもあります。たとえば債権放棄を行うにしてもメインバンクが多くを負担するというような再生計画であれば債権者の合意は得られやすくなるのであり、メインバンク寄せという対策が講じられることも少なくありません。

 

私的整理のデメリットとしては不正が起きやすいということが挙げられます。また、裁判所を通さずに行われるために、強行な姿勢を貫く債権者から合意を得られない場合には私的整理そのものが進められないこともあります。この場合は、一部債権者による内整理ということが選択されることになります。また、私的整理を規制する法律がないため、いつ何時、債権者の態度が変わり、競売などの法的手段を講じてくるかが不明であるという不安定要素も否定できません。さらには、債権者側としては債務者の履行が確実に行われるのかという懸念があるのもデメリットといえます。

 

一方、法的整理は抵当権の実行を停止させたり、多数決により小額債権者の抵抗を阻止したりする効果が期待されますが、半面、再生計画に債権者の合意が得られなければ破産手続に移行するという危険もあるのです。慎重な対応が必要なのであり、むやみに法的整理を進めると逆効果にもなりかねません。

 

2022年04月14日(木) 債権者と債権者の関係

債権者が複数の場合の相互関係はどうなるでしょうか。複数の債権者の交渉力が等しいのであればナッシュ交渉解では50:50となるところ、実際には乖離が生じてしまいます。

その理由として、債権額による按分が制度化されていることを指摘することができます。現行制度下において法的整理手続に従って再生計画を成立させるためには、債権者の議決が必要になりますが、この議決権は頭割りではなく、債権額に依存しています。

 

民事再生法の再生計画案が再生計画として認可されるためには、債権者集会に出席した議決権を有する債権者の過半数の賛成があり、かつ、すべての議決権の総額の二分の一以上の議決権を有する債権者の賛成があることが必要とされます。

 

不良債権をめぐる事業再生にあたり当事者が話し合いによる私的整理を目指すとしても、決裂した場合には法的整理によらざるを得ないのです。法的整理であれば債権額が交渉力を決定づけることになります。債権者は法的整理で認められる交渉力を否定してまで私的整理に協力する必要はないので、債権額の多い債権者は法的整理に移行することを交渉材料として主張することができるのです。したがって、法的整理のみならず私的整理においても債権額の多寡が交渉力を決定づけることになるといえます。

 

このように、事業再生を成功させるためには債権者間の調整が重要な課題なのであり、債権者と債務者の対立関係としてとらえるのは本質を見失っているといわざるを得ないのです。

 

2022年04月06日(水) 債権者と債務者の関係

事業から獲得できる金額の配分を巡って、債権者と債務者は対立する関係にあります。債権者への返済分が多くなれば債務者の留保分が少なくなるという利益相反の関係となるからです。

 

一般に、対立する当事者が一定額を配分する場合、ミクロ理論経済学の概念であるナッシュ交渉解では利益を50:50で配分することになります。しかし、債権者と債務者の間における配分交渉は事情が異なってきます。債権者と債務者の間の交渉力が異なっていたり、有する情報に差があるために配分の対象となる利益が確定しないという弊害が生じる可能性があります。

ナッシュ交渉解とは当事者の配分交渉において利得を最大化する点を明らかにしようとする理論で、ノーベル経済学賞を受賞したナッシュ博士が明らかにしたものです。

 

債務者の持つ情報を債権者は有していないため、債務者の返済能力に関わる正しい判断ができないという点で情報の非対称性が生じているのです。この場合、債権者の過度の要求は事業再生の成立を阻害し、交渉決裂に追い込むリスクとなってしまいます。債権者と債務者に任せておいたのでは、それぞれの要求がお互いの受忍限度を超えることで交渉が決裂するリスクを回避できないことになります。

 

そもそも、債務者は債権者への返済義務を負っていますが、返済義務の存在を理由として債務者の留保分をゼロにしてしまうと、債務者のヤル気が削がれることになり、債務者に何らかのインセンティブを与えないと配分対象になる利益を十分に確保することが困難になりかねないという社会的不便益が生じてしまうのです。

 

2022年03月28日(月) 立場の違いと利害の一致

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第77回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「立場の違いと利害の一致」で、その要旨は次の通りです。

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要旨:

交渉学では、交渉当事者が望んでいる結論を「立場」と呼び、その主張をする理由を「利害」と呼んで区別します。立場についてのみ交渉をしていたのでは対立したままとなり、交渉決裂にもなりかねません。しかし、なぜなのかという利害についてお互いに理解すれば満足できる解決策を模索することも可能になります。立場が完全に対立するような「配分型交渉」ではなく、利害に着目して他の条件を持ち出すことで「統合型交渉」に移行し、交渉を合意に導くことができるのです。

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会員は(1)会計事務所向けと(2)企業経営者向けに分かれています。

 

(1)会計事務所の先生の場合は「tvs会員」になる必要があります。
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(2)企業の経営者の場合は「GOODWILL PLUS会員」になる必要があります。
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多くの有益な情報を入手できますので、入会することをお勧めします。
私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。

 

入会にあたってはお近くの(株)ミロク情報サービスの営業拠点にご連絡ください。営業拠点は下のアドレスから検索できます。
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2022年03月21日(月) 攻める経営者と守る経営者

借入金を減らすことで事業再生を目指している経営者は、守る経営者であると言えます。

一方、自らの事業が順調であるため、他社から資産譲渡、事業譲渡を受け、さらにはM&Aで他社を買収することを目指している経営者は、攻める経営者といえるでしょう。

守る経営者として第一ステージで借入金を削減した後、第二ステージで事業再生を成功させ、今度は、攻める経営者として更なる飛躍を目指す例もあります。いわば守る経営者が、攻める経営者へと華麗なる転身を果たすのです。

 

平成13年に私が初めて上梓した初版本の「おわりに」の部分に次の記述があります。

もう20年も前の出版物ですが、今でも通用する考え方だと確信しています。『例えば100万円の返済をするため、すなわち100万円の利益を計上するためには、いくらの売上増加が必要なのかを考えるとき、無理な返済を続けている企業と、返済を中断してでも債務者主導で債権放棄を引き出す企業と、どちらが将来性に富んでいるのか答は明白です。日本の少子化が叫ばれて久しく、日本の将来は必ずしも明るいものではありません。そんな今こそ、経営者の皆さんが知恵を出し企業の復活を図るべきなのです。企業を復活させ、ひいては経済の活性化を図ることは、経営者の皆さんの社会的使命であると言えるのではないでしょうか』

 

会計事務所は経営のパートナーとして、守る経営者にも攻める経営者にも寄り添うことができます。経営者をサポートできる真の専門家は会計事務所だけなのです。

守る経営者は過度に保守的になったり、根拠のない起死回生策に惑わされたりと、追い詰められた経営者は正常な判断ができなくなる例が少なくありません。一方、第一ステージを成し遂げ、第二ステージも成功しつつある経営者は、過度に背伸びしたり、冒険したりと初心を見失う例も少なくありません。

 

守る経営者にとっても、攻める経営者にとっても、会計事務所は経営者の良き相談相手として、いざという時に頼れる戦略参謀であることが期待されているのです。

 

2022年03月14日(月) 独立した第三者としての関与

債権者と債務者の交渉において、経済合理性の判断材料を債務者が主張してもあまり意味はありません。たとえば「私にできる返済の総額は〇です」「私の資産は〇です」と主張したところで、「自己証明は証明に非ず」という言葉があるように、客観的な証拠にはならないのです。

ところで無資格者が行うと処罰対象になる行為があります。それは有資格者でないと行うことができない独占的業務、たとえば税理士の税務や、公認会計士の監査業務、不動産鑑定士の鑑定評価業務です。このような独占的業務は、有資格者が行うと客観的な判断基準となりますが、債務者側に立って行ったのでは客観性が乏しくなります。

 

換言すれば、独立性を確保しておけば客観性が増すことになるのです。この点、無資格者は独占的業務がないので客観的立場の外部の第三者にはなれず、内部者になるしか関与する道はありません。すなわち、債務者側に立つしか道はないのです。ある日突然、外部から招聘された顧問、社長室長、企画室長等々、このような自称専門家の多くは無資格者です。

 

一方、職業的専門家は独立した立場からも関与できるところに強みがあります。外観的独立性が確保されていれば、債権者からみても客観性が高まるのであって、外観的独立性は大切な判断基準となるのです。もちろん、内部の立場から関与することも可能で、この場合にも有資格者であることは、信頼性を大きく高めることになります。

 

2022年03月04日(金) 専門家の重要性

債権者と債務者の間には情報の差があります。誰かがその情報の差を埋める必要があるのです。債権者を納得させる材料が必要なのです。そのためには提出した資料に粉飾がないことを明らかにすることも考えられます。一つの解決策として、会計事務所が「粉飾はしていない」という意見表明を行う方法があります。これにより、金融機関も少しは安心するというものです。もちろん、鵜呑みにするわけではありませんし、それで十分というものでもありません。しかし、国家資格者によるお墨付きがある以上、一目置くのは当然です。金融機関は債務者の姿勢の前向きな変化を歓迎するはずです。

 

債務者対債権者の対立だけではなく、債権者間の対立を解消し、プラスサムによる事業再生を進めるために、返済能力の把握が極めて重要だといえるでしょう。債務者の業況を最も知る立場にある我々会計人の役割は大きいということができます。

 

たとえば経済合理性の判断を行う場合、何が正しい金額であるのかは不明です。そもそも金額が不明なのですから、金額を基準とした経済合理性の判断は困難になるというわけです。情報の非対称性があるために市場が失敗するということを事業再生にあてはめるならば、債権者が債務者の返済能力に関する正しい情報を有していないため、不可能な返済額に固執することで交渉が破綻するという場面が想定されます。このような場合に、情報を有していない債権者に情報を提供するのは債務者ではなく、独立した立場にある税理士や公認会計士であるといえます。独立した立場だからこそ客観性が確保され、情報の信頼性が高まるのです。

 

このように、職業的専門家には客観性を損なうことなく正しい情報を提供することが期待されているといえます。職業的専門家は市場の失敗を回避するため、情報の非対称性を補完する役割も担っているのです。

 

2022年02月20日(日) 正しい情報の共有

債権者と債務者は敵対構造として位置づけるのは間違っているものの、両者の間には情報の非対称性が生じていることは事実です。このような弊害を解消し、債権者に対して事実を正しく伝えることから、不良債権の解消に向けて、金融機関との交渉が始まるといっても過言ではないと思います。たとえば、無理な計画を提示するなどということは、事実を正しく伝えていないという点で、まったく無意味です。

 

このことは過去において粉飾決算を行った場合も同じです。在庫で調整したりして売上を伸ばしたり、あるいは、評価損を立てずに資産のままにしておいたりと、調整の仕方は様々ですが、過去の粉飾についても正直に開示すべきなのです。金融機関だって薄々気づいている場合が多いのであり、それを正直に告白することで、過去は事実ではなかったが現在と将来は正しく処理していることを裏づけることにもなるのです。

 

過去の正しい数値と、正しい現状把握を基礎として将来の計画を作成するのであり、さらには、再生計画を実施した後のモニタリング機能は月次決算業務を通して発揮することができることを考えると、会計事務所の役割が極めて高くなるのは自然な流れであると言えるでしょう。

 

2022年02月14日(月) 会計事務所に期待されること

会計事務所は堅実な職業会計人として着実な事業再生を目指すべきです。無資格・無責任な偽専門家が、どんなに背伸びしたところで金融機関を納得させることはできません。一方、職業会計人は一目置かれている存在です。なぜならば、金融機関にしても、有資格者たる職業会計人にモニタリング機能を発揮してもらいたいからです。堅実・確実・着実だからこそ、信頼が得られるのであり、背伸びする必要はないのです。

 

日頃から債務者と接している会計事務所にとって、事業計画を作成するのは難しくありません。会計事務所に求められていることは、過去の決算書の正確さと、現在の姿の正しい把握、そして将来のモニタリング機能です。

 

金融論の世界では、メインバンクからリレーションシップバンキングへと流れが変わっています。従来の日本型のメインバンク制は過去のものになっています。

会計事務所のモニタリング機能を通して、金融機関と債務者の間の橋渡しが期待されているのであり、将来にわたり債務者の決算業務の指導をする立場にある会計事務所こそ、メインバンク制を補う役割を担う者として適任なのです。

 

2022年02月07日(月) 会計の専門家と同行するケース

顧問の会計事務所の税理士や会計士が同行する例は最も望ましいケースです。

債権者としてみれば、税効果も含めて、専門家に質問することもできますので、経営成績や財政状態を正しく把握できるからです。この場合、専門家とは事業再生の専門家でなくて良いのです。債権者が知りたいのは債務者の業況であり、債務者を良く知る会計専門家が求められます。さらには、「顧問会計事務所が同行してきているのだから、粉飾決算はないだろう」と、債権者としては安心すらできます。事業再生は会計や税務、経営の知識こそが大切なのです。

 

債権者を訪問するにあたっては、顧問会計事務所の税理士、会計士と同行することをお勧めしています。現に筆者がクライアントと金融機関を訪問する際には、クライアントと顧問会計事務所の先生、そして筆者の3名で臨むことが少なくありません。複数の税理士がサポートする形で、真摯な姿勢で事業再生に取り組んでいます。

 

金融機関を訪問するにあたって会計事務所と同行することは債務者の利益になるだけでなく、債権者にとっても歓迎できるものなのです。会計事務所の立場からしても、大切なクライアントの再生というビジネスフィールドを確立することで、事務所経営の一層の発展が見込まれることになります。

 

2022年01月31日(月) 配分型交渉と統合型交渉

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
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第76回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「配分型交渉と統合型交渉」で、その要旨は次の通りです。

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要旨:

交渉力を一定とし、情報の非対称性を排除するというように、いくつかの条件をおけば配分交渉は50:50に落ち着くことはミクロ理論経済学でも明らかです。しかし、実際にはそのような条件が成立しないことが大半です。現実にはパイを争う配分型交渉が行われており、そのような交渉の失敗を排除するためには、配分型交渉から統合型交渉への移行が求められるのです。債権者と債務者、さらには債権者と債権者の交渉にあてはめて検証します。

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2022年01月28日(金) 弁護士と同行するケース

債務者が弁護士を伴うのは民事再生などの法的整理をチラつかせて、返済猶予を求めることが多いようです。弁護士に頼るような経営者は、法的な係争を前提とした言動をとったり、自らは弁護士の陰に隠れて逃げるような姿勢を示すことが少なくありません。

債務者には返済義務がありますので、謙虚かつ真摯な姿勢で臨まなければなりません。自らが積極的に再生したいという意思を示すべきところ、弁護士の陰に隠れているようでは、債権者の理解と協力は期待できません。

 

債務者が法的権利を主張するようでは、債権者にしてみれば「それならこっちも法的整理で整理してやろうじゃないか」となってしまいます。事業再生は法律論ではないということを絶対に忘れてはならないのです。

 

2022年01月26日(水) 無資格のコンサルタントと同行するケース

事業再生の専門家を自称するコンサルタントが債務者と同行することがあります。この時、自称専門家があれこれと話に介入してきても、一体、何を根拠に、何の権限で、何を訴えたいのか、債権者としては戸惑うばかりです。

 

 「そもそも、この人は誰なんだ?」と、債権者としては警戒心を持って接するしかありません。口先ではそれなりに応対しても、腹の中では、適当にあしらうのが関の山です。

 

場合によっては「この程度の自称専門家に頼るようでは経営能力が劣っている」と、債務者の定性評価を下げることさえあるのです。 。

 

2022年01月17日(月) 中小零細企業の情報管理

中小企業経営力強化支援法の認定支援機関の制度は、中小企業診断士ではなく税理士が主となっています。中小零細企業を対象とした会計要領として、中小会計要領が制定されましたが、簡易な方法による会計情報の適時性と経営情報としての活用という会計の側面が重視されるようになりました。このことは中小零細企業の経営実態を一番よく知っている顧問税理士を通して、情報の非対称性を解消するという考え方に他なりません。

 

特殊な業種のスペシャリストは存在しますが、多額の費用をかけて企業診断をするのではなく、身近な顧問税理士の着実な支援が求められているのです。

そもそも事業計画作成、返済計画作成は月単位の短期間で終了するものです。むしろ、その後のモニタリングこそ長期間にわたるということを理解すべきです。税理士が主になっている理由は、まさにモニタリング機能の発揮が期待されているからであるということができるでしょう。

 

2022年01月09日(日) 専門家との協働

事業再生を進めるために現在時点で行うべき作業としては、必要に応じて不動産鑑定評価を行うことで清算価値を把握したり、金融機関の論理に配慮しながら返済計画を作成するという、一過性の特殊な作業があります。

 

これらは事業再生に独特の作業であり、一般の会計事務所には荷が重い部分でもあります。この部分については無理に関与するのではなく、事業再生の専門家の力を借りることが得策であると考えられます。

なぜならば、事業再生にあたって一過性のものであり、全ての関与先に必要な普遍的な作業・業務ではないからです。

 

特殊かつ専門性の高い業務に必要以上に取り組むよりも、経営者への指導を通して正しい決算書の作成を目指すという会計事務所の本来業務に特化する道を選ぶ方が経済合理性に勝るということもできるかもしれません。一過性の特殊な作業は信頼できる専門家と協働することが得策であるといえるのではないでしょうか。

 

2022年01月02日(日) 会計事務所に寄せられる期待

事業再生を進めるにあたっては、「過去の正しい決算書の作成」、「現在の正しい清算価値」の把握が求められます。これらに誤りがあると、信憑性に疑いが生じてしまうからです。過去と現在の延長が将来であることから、将来の計画値の信憑性も疑わしくなるのです。もし粉飾決算をしているのであれば、直ちに訂正し、正直に事実を打ち明けるべきです。まさに会計事務所の活躍が期待されるところです。

 

さらに、実現可能性の高い「事業計画」を作成し、均衡性・公平性に配慮した「返済計画」を作成します。その後、完成した再生計画を進めるにあたり、将来にわたって「モニタリング」を実施することになります。

「過去の決算書の作成」「現在の清算価値の把握」「事業計画の作成」「将来のモニタリング」の各段階は、まさに会計事務所が関与するべき部分です。過去から現在の正しい決算書に基づいて、事業計画を作成し将来へとつながるのであり、モニタリングについては、事業再生が成功するまでの間、将来にわたって必要になります。会計事務所は全ての時点に関与するのです。

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