Ⅶ.取組事例

債務免除を実現するということは、債権者と債務者の攻防戦を勝ち抜くことです。

ここで、当社が実際に経験してきた具体的な事例を紹介することにします。これらの事例は、これまでに出版してきた様々な書籍の中でも紹介しています。

本ホームページをご覧の皆様の状況と類似の事例が見つかるかもしれません。類似例が見つかったならば、それを参考にしながら、迷いを捨てて、自信を持って臨むことで事業再生を果たすことができるのです。

中小企業が債務免除を受けようとする場合、正攻法だけでは不十分な場合もあります。小回りかきくという中小企業の特徴を逆に生かし、知恵と工夫により債務免除を勝ち取ってみてはいかがでしょうか。

事例1:別会社で買い支えた例(資産譲渡&賃貸)
事例2:別会社で買い支えた例(資産譲渡&自己使用)
事例3:別会社で買い支えた例(事業譲渡)
事例4:別会社で事業継承した例(事業譲渡)
事例5:別会社で事業継承した例(会社分割)
事例6:別会社で事業継承した例(新会社設立)
事例7:一部閉鎖して経営続行した例
事例8:競売を誘導し別会社が最低競売価格で買い受けた例
事例9:資産を1円で譲渡し破産申立を回避した例
事例10:返済を停止して債権譲渡を誘導した例
事例11:外資系を優先して返済した例
事例12:地元銀行が支援した例
事例13:債権譲渡で節税した例
事例14:債権譲渡で会社を保護した例
事例15:別会社を利用して相続対策まで完了した例
事例16:3年後に一括返済するとの総額を約定した例
事例17:別会社に債権譲渡して最終処理をした例
事例18:弁護士に不動産を売らされた例
事例19:債権者破産を申し立てられた例
事例20:無担保不動産を資産譲渡して新債権者の要求に屈した例
事例21:計画が自己満足の域を超えず融資を得られず挫折した例
事例22:粉飾決算の事実を告白し再生を進めた例
事例23:空き室を埋めて防衛した例
事例24:金融機関の事情に合わせて再生した例
事例25:利息ではなく元本に充当した例
事例26:債務者の返済能力を明らかにした例
事例27:他社による最悪なアドバイス例
事例28:会計事務所との共同作業の例
事例29:金融機関からの紹介を受けた例
事例30:他のコンサルタントからの支援要請を謝絶した例


事例1:別会社で買い支えた例(資産譲渡&賃貸)

某都市銀行の不良債権処理の一環で貸し剥がしの対象になった例です。抵当権を背景に、債権者から不動産の 売却による一括返済を迫られたものの、その不動産は特別の事情で売却できないものでした。そこで全くの別会社を設立し、当該法人が不動産を購入し、賃貸に供することで事実上の所有権を確保することにしました。債務者は金融機関に対し、「不動産は不要なので売却する」旨の意思を示し、金融機関もこれに応じて、売却代金での一括返済を承諾しました。もちろん、債務者は条件として連帯保証人となっていた親族の保証債務をはずしてもらうことを忘れずに行いました。売却に便乗して保証債務の免責を取り付けたわけです。債務者が設立した別会社は、賃貸による返済計画を策定し、新規融資先を確保した上で、その別法人が資産を買い受けることにしました。典型的な第二会社方式の一例です。このような例は数多く見られます。


事例2:別会社で買い支えた例(資産譲渡&自己使用)

社長宅の売却を迫られた事例です。この例でも、全くの別会社を設立し、当該法人が不動産を購入し、個人としての社長に賃貸しすることで事実上の居住権を確保することにしました。新規融資先を確保した上で当該別法人が資産を買い受け、従来通り、社長が居住しています。このような場合、新規融資の道は狭まります。全くの第三者に賃貸する場合はニューマネーが入るのですが、社長個人への賃貸となると債務者グループ の中で資金を回すだけに過ぎないため、新規融資の審査に通らないからです。自己資金をどのように調達するかが課題です。担保不動産が優れている場合には融 資が通りやすいということができます。現実に融資を受けられるか否か、また、それを返済できるか否か、が成否の分かれ目になるといえるでしょう。


事例3:別会社で買い支えた例(事業譲渡)

別会社を活用した例です。資産譲渡ではなく事業譲渡を採用しました。事業譲渡にした理由は、金融機関が担保を上回る金額でないと合意しないとの強硬な姿勢を崩さなかったため、やむなく担保評価額を上回る負債を引き継ぐこととし、超過額は新会社の営業権としたからです。仮に金融機関が資産額と同額での売却に応じるのであれば、事業譲渡ではなく資産譲渡の形で別会社が買い受ければ良いような事例でした。しかし、金融機関は不動産の評価額を2割程度上回る金額でないと担保抹消に応じないとの強硬な姿勢を変えようとしませんでした。そこで、新規融資先と交渉の結果、債務者が不足額を自己資金として拠出し、評価額の2割増しで決着を図ることにしました。単に資産譲渡にしたのでは差額がまるまる無駄になりますので、営業権を含んだ事業譲渡を受ける形で、事業譲渡の道を選ぶことにしました。新会社は、営業権償却による節税効果により経営を継続したことは言うまでもありません。


事例4:別会社で事業継承した例(事業譲渡)

同一の事業をいくつもの拠点で行っている会社でした。そのうちの、いくつかの拠点に担保を設定している某都市銀行が不良債権処理の一環として一括返済を迫ってきた事例です。事業は同じであるものの拠点を切り離して第三者に事業譲渡した形を採用することにしました。新規融資先を確保し、営業権を計上して償却による節税の可能性を確保しました。商号を続用し、競業避止義務は特約で排除し、事実上、系列店として経営を継続することになりました。この例は流通業の例でした。たとえば不動産賃貸業の場合は駅からの距離、日当たりの良し悪しなど、その不動産自体に価値が 認められるのであり、不動産の名称はあまり問題になりません。しかし流通業の場合はネームブランドが必要な場合が多く見られます。本例の場合もどうしても 商号の継続使用が必要でした。本例は、競業避止義務も特約で排除し、従来の場所で従来の商号で事業を継続しています。仕入先などの一般債権者への返済は滞りなく行っていますので、従来と何の変化もありません。そもそも、仕入先などの一般債権者への返済は免除対象にするべきではありません。お互いが苦しい経営環境の中で事業を行っているのであり、一般債権者への返済を免除してもらうようでは、仮に新しく別会社で事業を継続したところで信用が失墜し、再度の経営破綻が起きるのは目に見えています。債務免除を受けるのはあくまで金融機関からの借入金債務に限定するべきです。本例の場合も、一般債権者への支払いは滞ることなく行っています。


事例5:別会社で事業継承した例(会社分割)

複数の拠点を有する会社において、そのうちのいくつかの拠点は独立採算が十分に可能でした。しかし、過去のしがらみから、収益を挙げている拠点の利益を、他の不採算拠点の債権者への返済にあてているような状況でした。収益性の高い拠点と不採算拠点の債権者が異なっていたため、直ちに事業分割を行うことにしました。抵当権も両拠点で分かれており、複雑に入り乱れているようなものではなく、収益性の高い拠点の債務は、不動産担保価値とほぼ一致しており、資産と負債がバランスするような状況でした。そこで会社分割を採用することとし、収益性の高い拠点は新設分割により新会社で運営することにしました。不採算拠点の債務は、将来、債務免除を受けることを視野に入れて細々と返済することにしました。大幅に返済額が減少しましたが、不採算拠点の債権者としては別会社への請求はできず、少ない返済に甘んじることになりました。債権者が不良債権として処理するタイミングにあ わせて、一挙に債務免除を取り付けることになりました。


事例6:別会社で事業継承した例(新会社設立)

建築事業と不動産賃貸事業を営んでいる会社が、バブル絶頂期に建築したマンションにかかわる借入金が経営の足を引っ張っていました。建築事業は順調に推移していたものの、マンション建設資金の返済はマンションからの利益では返済できず、建築事業の利益をマンション事業の返済に充てていました。銀行の不良債権処理の一環で、債権が外資系とRCCに譲渡されました。事業の核となる建築事業は順調であったため、建築事業の資金手当てには問題がなかったので、事業を分割することにしました。事業譲渡、会社分割の手法を採用するまでもなく、直ちに建築事業を別会社で開始しました。仕掛中の物件は未完成物件として新会社に譲渡し、新会社で残工事を行い、完成品としての利益は新会社で計上することにしました。しかし、仕掛中の物件が数件しかなく移すべき資産が限られていたこと、またブランドにこだわる必要がなかったことから、あえて事業譲渡や会社分割の手法を採用するまでもなく、全くの別会社を設立することにしたものです。不動産事業は収益率の高い物件のみ地元金融機関から融資を引き出し、別会社を設立して購入しました。 収益率の低い物件は抵当権実行も覚悟の上で、売主を探し第三者に売却し債権者に返済しました。


事例7:一部閉鎖して経営続行した例

バブル時に拠点を拡張するために金融機関から借り入れを行ったものの、その後の経済情勢の変化により拡張 部分からの収益計上が低迷し、返済が困難になっていました。調査したところ、拡張した部分を廃止しても経営は続行できると判明しました。そこで、拡張前の状況に戻すべく、債務者が自ら拡張部分を閉鎖し、当該部分を担保にとっている金融機関には「競売の申し立てをしてもやむを得ないが、できれば任意売却で進めたい」旨を申し入れました。金融機関としても、費用と労力のかかる競売よりも、債務者が任意売却してくれるほうが経済合理性に勝るというのが本音ですので、返済の意思を示しておくことは重要であるからです。果たして、若干の抵抗はあったものの競売の申し立ては行われず、しばらく膠着状態が続きましたが、 結局、金融機関が新しい買主を探し出してくれました。金融機関としてみれば無用な争いを引き延ばすよりも新しい融資先を見つけ出し、そこに融資を行って買取らせるほうが得策です。これにより不良債権を片付けることができるだけではなく、正常取引を増加させることができたわけです。金融機関にとっても嬉しい話であったのです。


事例8:競売を誘導し別会社が最低競売価格で買い受けた例

銀行へは月々相当額を返済していましたが、銀行は担保不動産の売却を迫ってきました。その不動産は収益物件であり、安価で売却することは経営の根幹を揺るがしかねないものでした。任意売却するとしたら、いくらなら納得するのかを金融機関に打診したところ、評価額を大幅に上回る金額を提示してきました。そこで月々の返済を停止し、銀行が競売に着手するのを待つことにしました。数ヵ月後、競売が申し立てられ、直ちに裁判所選任の不動産鑑定士が最低競売価格の調査を行いました。その結果は予想していた評価額とほぼ同額でした。銀行とは最低競売価格を若干上回る金額での任意売却で合意し、事実上、債務者が設立した別会社が買い受けることになりました。最悪の場合は競売手続きの中で全くの他人が競落する危険もありましたが、他に有効な手段がなかったために危険を冒し、結果的にそれが成功した例です。この方法は全くの他人に競落されてしまうという危険があるものの、金融機関の自己査定額が明らかに高い場合には、採用を検討すべき最後の手段ということができるのではないでしょうか。現に、いくつもの類似事例が成功していま す。


事例9:資産を1円で譲渡し破産申立を回避した例

外資系企業に譲渡された債権には抵当権が設定されていましたが、その土地は不整形であり接道部分が狭いものでした。入り口部分には他の債権者が抵当権を設定している土地があり、この土地が接道を狭くしていたのです。外資系は入り口部の土地と併せて処分することで資産価値を高める目論見でした。債権者が破産を申し立てることにより、入り口部分の債権者から安価で土地を入手し資産価値を高めるという攻撃が予想さ れました。そこで、入り口部分の土地に担保設定をしている債権者の内諾を取り、当該土地部分を全くの第三者たる会社に抵当権付のまま1円で譲渡しました。 これにより、仮に外資系が破産申し立てをしても、入り口部分の土地は破産財団を組成せず、外資系が担保を設定している土地は不整形のまま処分されることに なるからです。1円譲渡により、入り口部分の土地が外資系に奪われることを防止するとともに、債権者破産申し立てそのものの回避を狙ったわけです。これにとどまらず、外資系が債権者破産申し立てを行った場合には、これを機に、第三者たる別会社を設立し、新規融資先からの資金調達を行って安価に買い支えることにしました。


事例10:返済を停止して債権譲渡を誘導した例

担保不動産の任意売却を迫られる一方、月々の返済を行っている会社が、売却すべき不動産が底をついてきた 事例でした。すべての不動産を売却しても債務が残る状態でしたが、交渉の過程で金融機関としては「全資産を売却してくれれば債権譲渡を行う」との意向を示してきました。そこで、返済を停止することにしました。金融機関からは返済の継続の申し入れがありましたが、「売却して返済するのが精一杯であり毎月の返済はできない」との姿勢を崩しませんでした。月々の返済を停止した理由は、将来、債権譲渡がなされる時点で債権譲渡価格が高くなるのを防いだためでした。 結局、競売はなされず、資産の任意売却による返済がなされました。全資産の売却が終わり、さらに月々の返済が行われていないため、債権譲渡価格はゼロに近いと予想されました。その後、債権譲渡がなされた時点で、数十万円の支払いにより、新債権者から事実上の債務免除を受けることになりました。このように、月々の返済を停止するということは、その時の資金繰りが楽になるだけではなく、将来の返済額も楽になる(あるいはゼロになる)とさえ言えるわけです。事実、返済を停止しても問題が発生しなかった例は散見されます。金融機関への返済停止という最後の手段を積極的に検討する価値は大いにあるのです。


事例11:外資系を優先して返済した例

某金融機関の不良債権処理の一環として債権が外資系サービサーに債権譲渡されました。営業用資産に抵当権が設定されており外資系サービサーの債権は大半が保全されていました。外資系サービサーは競売による全額回収を迫ってきましたが、唯一の営業用資産なので競売された場合は経営継続が不可能になることが明白でした。地元金融機関と政府系機関に外資系債権の肩代わりを要請し、ほぼまとまりかけたのですが、最後の段階で政府系機関が辞退してきました。急遽、交渉先を外資系サービサーに変更し、「一括返済ではなく分割返済。残余は請求権放棄」の合意を得る一方、地元金融機関とは、「外資系サービサーに全額優先返済。完済までは地元金融機関への元利棚上げ」で合意を得ることになりました。その結果、外資系サービサーの債権のうち、抵当権で保全されていない部分について、事実上の免除を実現したのでした。一般に、新債権者は数年程度の時間的猶予しか与えません。その間に競売などで一挙に回収するのが通常です。本例も同様で、分割返済の期間は2年とされました。幸いなことに、地元金融機関への返済を全額停止し、全部を新債権者に回すことで競売価額を上回る額の返済が可能であったこと、また、地元金融機関がこれに応じたことから再建が可能になったわけです。その結果、新債権者の債権のうち、抵当権で保全されていない部分について、事実上の免除を実現することになりました。


事例12:地元銀行が支援した例

バブル絶頂期に高金利で借りた負債が経営を圧迫し、私財を投入する形で返済を続けていましたが、いよいよ 返済資金が枯渇する事態になりました。延滞税金も多額になり、税金支払いを前提とする民事再生法による再生計画も困難となってしまいました。地元金融機関は担保設定の比率が低く、経営破綻した場合には多額の貸倒れが発生する恐れがありました。地元金融機関との交渉を通し、高金利の借り入れ分の肩代わりと一部返済猶予を申し入れたところ、当初は慎重でしたが、再建計画を策定し交渉を重ねた結果、地元金融機関の協力を取り付けることになりました。再生手法としては事業譲渡を採用し、営業権の償却という節税効果を最大にすることで返済原資を大幅に確保しました。すなわち、採算がとれる資産と、それに見合う負債プ ラスアルファを、営業権とともに新しい別会社に譲渡しました。プラスアルファの部分は営業権として認識し、資産計上することで貸借がバランスし、債務超過ではない正常な債務者として位置づけました。つまり、移した負債額は不良債権から正常債権に昇格したわけですので、メインバンクとしても不良債権の処理が完了したことになります。新会社は債務超過ではなく金融機関にとっては「正常債権」となるため、金融機関にとっても「不良債権が整理」できただけでなく、 「新規融資先を確保」できたことになります。残った旧会社は、相変わらず債務超過ですが、残った資産を少しでも高く売却することで一括返済する道を選びました。資産が売却されるまでの間は、計上できる利益の範囲で返済を行うものとしました。しばらくの間は不良債権のままですが、少なくとも資産が売却されるまでの間は貸し倒れ損失が確定しないため、金融機関としても二次損失が公にならないというメリットが期待できるわけです。


事例13:債権譲渡で節税した例

不良債権処理の一環として外資系に債権が譲渡されました。外資系サービサーは担保不動産に設定してある抵当権実行を背景に全額の返済を迫ってきました。外資系サービサーが担保設定している資産は遊休不動産であったので実際に売却することにしました。鑑定評価を行って把握していた適正な価格を基に外資系と交渉を重ね、売却代金以外には若干の支払いを行うことで決着をつけました。ただし、債務免除を受けると債務免除益が生じるため、債務免除を受けることを拒否し、債務者が指定した会社に債権譲渡させることにしました。債権を買い取った会社は債権の請求を一切行わず、将来時点の経営成績に応じて債務免除を行うことにしました。再譲渡の後、譲受人たる新々債権者は債権の請求を行なわない旨の約定を債務者と取り交わし、事実上の債務免除を行いました。しかし、債務免除の通知を発したわけではなく、法律上は債権者のままになっています。従って、債務者の貸借対照表には負債が計上されたままになっています。請求を行わないことで5年後には消滅時効が完成しますが、必要に応じて債務承認などにより時効の中断も可能です。事実上、再建計画に応じた調整が可能になるわけです。


事例14:債権譲渡で会社を保護した例

複数の会社を経営している事案で、A社は資産保有会社で複数の収益不動産を運営しており、B社は業務運営会社で小売業を行っていました。バブル時にA社は不動産を拡大し借り入れも多額に上りました。この時点では設立間もなかったB社に対して貸付を行い、その金額は1億になっていました。B社は順調な経営を継続してきたため、経営成績は良好でした。バブル崩壊による不動産価値の下落によるA社は不良債権に分類されるに至り、そこで、別会社を設立してA社の目ぼしい不動産を買い受けることにしました。しかし、A社のB社に対する貸付金債権を放置したままでは、A社の債権者が債権者代位権を行使することで、A社に代位してB社に請求してくる恐れがありました。そこでA社が保有する債権を第三者のC社に譲渡することで、A社のB社に対する債権を隔離し、B社を保護することにしたのでした。この例は別会社を設立して再建する基本方針に違いはありませんが、さらに一歩進めて、系列のB社を保護した事例です。このような対策は系列の会社がある場合だけではなく、親族への貸付金がある場合にも検討しておかなければなりませ ん。一般的に代表者は連帯保証を行っている場合が多いでしょうから、社長貸付金を隔離したところであまり意味はありません。なぜならば、債権者の立場からは、社長に対して、連帯保証人として請求をすれば良いのであり、わざわざ主たる債務者である法人に代位して請求する必要はないからです。もし、社長が個人保証していないのであれば債権者代位を回避するために債権譲渡で保護しておくことは有効です。本例のような事例は少なくありません。設例では複数の会社としましたが社長個人である場合も散見されます。また、債権譲渡先も知人の会社であったり、新しく設立した会社であったり、さらには、親族であった例もみられます。


事例15:別会社を利用して相続対策まで完了した例

別会社で資産を購入する場合、その会社で借入れを行うことになります。すなわち、資産と負債がバランスしているのです。資産10に対し負債も10となるため、剰余はゼロです。このような状態でスターとした会社は時間をかけて返済を進め、最終的には資産10に対し負債がゼロ、剰余10となるのです。スタート時点で会社の事実上の所有者を相続人としておくことで、相続対策も完了することになるわけです。実際、旧会社の経営者は高齢であることが多く、また、個人保証をしているために再建した新会社の経営者にはなれないことが多くみられます。個人保証を行っている場合には新会社の所有者である株主にも名を連ねることはできません。別会社を利用した事業再生により、事実上、相続対策が完了するわけなのです。


事例16:3年後に一括返済するとの約定した例

債権がサービサーに譲渡された後、サービサーと返済交渉を行ったものの、担保不動産をめぐって金額の折り合いがつかなかった事例です。債務者としては、唯一の担保である収益用不動産を別会社で購入する計画とし金融機関からの融資も確保しましたが、サービサーの要求する金額には不足していました。交渉が暗礁に乗り上げる形となり、このままでは競売になる可能性が高まってきました。競売は債権者にも債務者にも、双方にとってメリットはありません。そこで、総額を約定し、3年間は家賃で分割返済することで残高を減らし、3年後に金融機関から改めて融資を受けて一挙に返済するという方法で合意したのでした。双方が歩み寄り3年で返済することで合意することになったわけです。この例では債権者と交渉し、その債権者と合意することができましたが、他のサービサーに購入してもらうという方法を行うことがあります。現在の債権者と総額で約定するのではなく、別のサービサーに購入してもらうのです。別のサービサーが現在の債権者であるサービサーと交渉し、債権を購入するのです。安く買えれば別のサービサーの利益になるというわけです。運用時の収入も期待でき、さらに転売時には借り換えによる若干の上乗せも期待できるため、別のサービサーの立場からは三段階で利益が期待できることになります。総額を協定しておくことで債務者の負担が増えるわけではなく、債務者にもメリットになるというわけです。


事例17:別会社に債権譲渡して最終処理をした例

別会社への資産移転も完了し、無担保債権だけが残った状態となった後、その債権の処理にはいくつかの方法があります。債務者の立場からは債務免除益を回避しなければならないからです。旧会社を整理する前提で放置するというのも一つの方法ですが将来に禍根を残すので得策ではありません。放置するのではなく旧会社を整理する方法もあります。すべての資産を移転し、もぬけのカラになってしまったのであれば旧会社を清算してしまうのも一方法です。問題は旧会社を存続する場合です。固定資産売却損などの特別損失があれば課税もゼロに近づくのですが、特に損失がない場合は問題になります。このような場合に備え、当社では債権の受け皿を用意していますが、この事例では債権者と交渉の結果、債務者が自ら設立した会社に譲渡することになりました。一昔前は債務者自らが設立した会社への債権譲渡は避けるのが一般的でしたが、最近はこのような形の債権譲渡も少なくありません。債権者によっては無条件というわけにはいかないという場合もあります。債務者が指定する先に残債権を譲渡するのは良いが、その譲渡先は法人でなければならないのか、個人もでも良いのか、法人とする場合、本人の関与しているところが良いのか、あるいは無関係のところが良いのか等々、細かい点は債権者によって異なります。親族などの個人でも応じることもありますし、債務者とは無関係の法人でなければならないとこだわるところもあります。個々のケースにより異なりますので臨機応変に対応することが必要です。


事例18:弁護士に不動産を売らされた例

何らかの形で事業再生を行った経験がある経営者が弁護士の対応の不備を口にすることは少なくありません。弁護士に相談したところ民事再生を勧められ、それに従ったものの、弁護士の言うままに不動産などを売らされたという例は散見されます。弁護士にしてみれば手間隙をかけて債権者と交渉するよりも、裁判所の力を借りて法的、すなわち、事務的に進めた方が便利なのです。民事再生により事業は継続できるのだからいいだろうというわけです。確かに事業は継続しているのですが、不動産を売らされることで弁護士報酬を作らされるようなものです。たとえばアパート等の収益用不動産は独立採算が取れるのであれば売る必要などはないのです。こういう場合には別会社を設立して資産を移転すれば良いのであり、報酬を捻出するために資産売却を余儀なくされるなどというのは愚の骨頂です。満足に交渉もせず、「相手はこう言ってますけど、どうします?」との伝言だけでお茶を濁す弁護士は少なくありません。何かというと裁判所が納得しないと言ってみたり、話し合いではなく安易に裁判の道を選んだりする弁護士がなんと多いことでしょうか。 そもそも、裁判所に訴え出るのではなく、債権者に相談すべきなのです。たとえ演技であっても、依頼人のために債権者に頭を下げることも必要なのです。ふんぞり返って裁判所を利用するだけで、債権者と満足に交渉できない弁護士は避けるべきかもしれません。そんな弁護士は、私が債務者なら絶対に利用しないでしょう。「事業再生の相談に行ったら破算を勧められた」とか、「債権者が競売(あるいは破産)を申し立てをしてきた例で、民事再生で対抗する努力もせずに破産の手続を受け入れた」などなど、信じられない例も目の当たりにしました。弁護士選びは慎重にすることをお勧めします。


事例19:債権者破産を申し立てられた例

ある時、「債務者が一方的に返済を中止したために債権者が本気で破産を申し立てた」という事例を目の当たりにしました。債務者の返済停止が長引き、これが債権者の逆鱗に触れ、債権者が本気で破産を申し立てたにもかかわらず、債務者は「債権者の破産申立は返済を求めるための方便に過ぎないのであるから、そのような破産申し立ては棄却するよう」に裁判所に求めたのでした。裁判所から破産の開始決定が出されると、債務者は特別抗告で「債権者の行為は商業道徳上の問題がある」とか「債権の一部は消滅時効で消滅している」といった的外れな主張を繰り返し、まさに債権者を相手に争う道を選んだのです。さらに債務者は民事再生を申し立てたものの、結局、裁判所の指定した期日までに債務者と債権者の話がまとまらず、他の債権者も差し押さえなどの法的手段に訴えてきました。こうなると再生の道は閉ざされてしまいます。見守っていた他の債権者が見切りをつけて一斉に動き出したからです。案の定、特別抗告は高等裁判所で棄却され、破産手続きが開始されたのでした。債権者には理解と協力を求めるべきなのです。この事例のように債権者を敵に回すことは致命的になりますので注意が必要です。債権者と敵対する債務者の末路は破産しかないのです。同じような過ちを繰り返すことが無いように十分に注意することが必要です。


事例20:無担保不動産を資産譲渡して新債権者の要求に屈した例

多くの事業用不動産を抱えて不動産賃貸業を行っていたのですが、賃料水準の下落により賃料が減り、返済が苦しくなりました。そこで、別会社を設立して資産譲渡することで再生を図りました。その時、無担保の不動産も別会社に移転してしまいました。債権者は無担保不動産を売却して返済すべしと要求していたのですが、これを無視して、抵当権が設定されていないのをいいことに別会社に移転したのです。これが債権者の怒りに触れることとなり、債権者は強硬な態度に出てきました。債権譲渡が行われ、出現した新債権者が強硬な要求をしてきたのです。「抵当権がついていないことをいいことに、不動産を別会社に移転したのは詐害行為だ」と主張してきたのです。本件では、かかる要求に対抗できるような対策は講じていましたが、新たに出現した債権者の執拗な要求に債務者が降参する形になりました。まさに、新債権者の粘り勝ちです。結局、別会社に移した抵当権のついていない不動産は多くを売却し、新債権者に返済することになりました。本例は、現債権者への根回し不足と、新債権者の要求に耐えられなかったという債務者の弱さが問題だったと言えるでしょう。根回し不足のまま、安易に別会社に移転してしまった後、あわてて私に相談を持ち込んできた例でしたが、既に後の祭りだったというわけです。


事例21:計画が自己満足の域を超えず融資を得られず挫折した例

外食チェーンを展開し、一時は拡大路線を走っていたのですが、経営に行き詰まり店舗の縮小を余儀なくされ ました。拡大路線をとっていた時代の悪しき慣行などが残り、また、必要以上の管理費が経営の足を引っ張っていました。新会社を設立して事業譲渡を 図ろうとしたのですが、経営戦略に新しい戦略が見出せず経営計画に説得力がありませんでした。経営戦略の見直しを説得したものの、最後まで戦略を変えることなく、新たな融資先からの融資も謝絶されることになってしまったのでした。どんな事業も拡大期には景気の良い話が飛び交います。多店舗戦略も波に乗ってどんどん進められます。この段階では、自らの経営手腕が最高のものであるかのような錯覚に陥るのでしょう。ところが一度縮小期に入ると難しい面がでてきま す。膨らんだ間接部門を切ることで組織の運営がギクシャクし始めるのです。切るべき間接部門が残されていたり、切ったとしても、従来行っていた管理が不在になってしまい落とし穴が生じたりする危険があります。拡大より縮小の方がはるかに難しいのです。このようなときに、カリスマ的な経営者であればカバーできますが、縮小期に入った企業の経営者には、拡大期に見られるような勢いが失われていることが多いのです。本例はまさにそんな例でした。多店舗を縮小し、間接部門を大幅にリストラし、採算部門の経営計画を見直すという一連の作業が求められていました。ところが衰退期に入った経営者の限界とでも言うべきでしょうか、やることなすことが全て中途半端でした。経営計画も誰の目にも不十分なものしか作れません。周りが進言しても聞く耳をもたず、一向に改善できなかったのです。別会社への事業譲渡を模索しようにも、経営計画が作成できないため融資を引き受ける金融機関が現れないという状態が続きました。問題は経営計画の甘さにあるのですが、経営者は「業界事情を知らない融資担当者とは話をしたくない」と息巻く始末でした。結局、腹心の部下たちは経営者のもとを去り、全ての自社店舗は競売により失うことになりました。テナントとして賃貸で営業していた数店舗だけは経営を継続することができ、今では無担保となった負債の残りを抱えながら、細々と経営を続けています。すっきりしない結末になった事例です。


事例22:粉飾決算の事実を告白し再生を進めた例

小売業を展開するもバブル期の財テクの失敗が後を引き、さらに多店舗展開が裏目に出たために経営に行き詰ってしまいました。金融機関からの融資を受けるべく粉飾決算を行っていたものの、粉飾の延長では債権者に合理的な説明ができず、ごまかしながら、のらりくらりと返済を続けていました。新規融資は期待できないものの、現金取引を続けることで小売業を続けていました。債権譲渡がなされ、出現した新債権者に対しても粉飾の事実を隠していたのですが、返済を迫られる中で粉飾の事実を隠しきれない状況にまで追い込まれました。粉飾決算を行っていたという事実を告白 し、謝罪することで抜本的な再生を進める方向に戦略を変えた結果、債権者の理解を得られるに至り、事業譲渡を進めることができたのです。打ち明けた結果、 新債権者の無用な疑惑を解消することができただけのことですが、その結果、返済計画にも理解を得られ、強硬な回収姿勢、すなわち、事業の清算を余儀なくされる方向から、事業を継続する方向へと舵が切られたのです。


事例23:空き室を埋めて防衛した例

事業用不動産を取得したものの、不動産バブルがはじけ、当初の見込みを大幅に下回る入居率となってしまいました。離れた場所に集客施設がオープンしたため、その街の人の流れが大きく変わってしまったのです。入居率が20%を切り、約定の返済が全くできない状況になったのですが、債務者は一階で事業を行っていたため、不動産を手放したくないという事情があったのです。入居率が20%となると、返済は全く不能です。しかし、自用を目指す需要者であれば購入を希望するかもしれません。そこで、大幅な家賃の引き下げを実施しました。家賃を大幅にディスカウントすることで入居率を満室に近づけたのです。これにより、当初の返済は大幅な見直しをせざるを得なくなったものの、自用目的の需要者が購入することを阻止することができるのです。満室であり家賃収入が確定している以上、たとえ売却するにしても購入者が提示できる金額も限られることになります。債務者は捨て身の戦法で不動産を守ったのです。事業用不動産の経営は家賃水準と空室率に左右されます。賃料水準が高く、満室であることが最高の状態です。なかなか、そううまくいくものではありません。家賃を下げれば満室になるでしょうが、それでは収益性が劣ることになってしまいます。せっかくの収益用不動産の収益性が低いようでは資産価値が下がってしまいます。空き室を埋めるにあたり、家賃を引き下げれば早く埋まります。この時、収益性は下がりますが、ひとたび埋めてしまえば 家賃は確定します。誰が所有しようが家賃を大きく変えることはできません。このことは現在の所有者が第三者に不動産を奪われるという危険を少なくすることになります。誰が所有しても同じなのですから、わざわざ第三者に売却するまでもないということになるからです。本例では、わざと資産価値を下げるという戦法により、不動産が人手に渡ることを阻止しました。人手に渡るよりは収益性を損なってでも手元に残したいというわけです。


事例24:金融機関の事情に合わせて再生した例

金融機関には金融機関の事情があります。事業再生に必要な債務免除を行うにしても、金融機関が、貸倒損失を計上するには段取というものが必要になります。それまで正常債権であった債権を、突然に債務免除することで、貸倒損失を計上することはできません。突然の貸倒損失は、金融機関の債権管理能力を問われかねないからです。少しずつ、引当金を計上することで、将来の債務免除に備える必要があるのです。そのため、まずは、要管理債権として貸付額の数パーセントを貸倒引当金として計上し、さらに債権の不良化が進み、破綻懸念先となれば、より多額の引当金を計上し ます。金融機関の引当金の計上を促すのが債務者としては得策なのです。債権者が引当金を全額計上してくれれば、債務免除により新たな貸倒損失は発生しませんので、金融機関としても債務免除を行いやすいのです。債務者はただちに債務免除を求めるのではなく、引当金の計上を促すことで将来の債務免除を狙うというわけです。


事例25:利息ではなく元本に充当した例

事業再生にあたっては、背伸びした再生計画は不要です。背伸びしたところで、計画が達成できなければ、その時点で破綻してしまうからです。いたずらに売上増加を狙うのではなく、費用の減少を目指した方が確実な場合も少なくありません。売上増加は他力に依存するものの、費用減少は自力で可能だからです。債権者との関係では、利息支払は不要となることも少なくありません。なぜならば、債権者としては、利息収益を上げても、将来において、貸倒損失を計上するのであれば、早い段階から元本を減らすことで、将来の貸倒損失を減らすことができるからです。また、金利減免、破綻懸念債権として、貸倒引当金の計上を進めることで、最終処理を促すことにもつながります。したがって、債務者としては、利息としてではなく、元本充当をしてもらうことが有利なのです。特に、債権譲渡で出現した債権者については、債権の取得原価が低いため、利息ではなく、元本返済とすることも可能です。ただし、債務者としては、利息であれば損金処理ができますので、税効果を勘案すると利息が有利という場合もありますので注意が必要です。


事例26:債務者の返済能力を明らかにした例

債権者と債務者の利害が対立するため、債務者の返済能力はどの程度かを把握することは極めて重要な課題です。債務者の返済能力は、実際は高いにもかかわらず、債務者が嘘を言えば、少ない返済能力として誘導することもできるわけです。いわば、債務者の信用の問題でもあります。債務者の返済能力×返済年数で返済総額が決まるのですが、その総額が債権者と第三者で合意できれば、第三者が買い取る方法もあります。しかし、第三者がいない場合に、債権者が満足する回収総額を実現するには、長期の返済になってしまいます。一般には、50年も待つ債権者はいません。せいぜい10年か、長くても20年といったところです。各期の返済可能額は債務者の事情ですが、これを会計専門家である税理士などが、正当性を保証することで、信用を補完することが可能になります。一方、返済年数は債権者が決めるので、返済可能額と返済年数の掛け算で、返済総額が決まるというわけです。当社が関与することで、債務者の各期の返済可能額の正当性を保証した例は少なくありません。


事例27:他社による最悪なアドバイス例

最近は、いい加減なコンサルタントが滅茶苦茶な指導(?)をしています。そのような悪質なコンサルタントの実名を掲載したいところですが差し控えます。ここでは、これまでに把握した最悪のアドバイス例を例示しておきます。「借金は返せないのだから、返さないで良い。そのうち銀行が諦めるから放っておけば良いと言われ、放置したら競売されてしまった」「サービサーに譲渡されれば、せいぜい1割程度の返済で済むから放っておけば良いといわれ、債権者破産を申し立てられてしまった例」「特定調停で一挙に解決すればいいと言われ、申し立てたが拒絶され競売された例」「再生支援協議会に丸投げすればやってくれると言われ、申し立てたが拒絶され、サービサーに債権譲渡されて経営権を奪われた例」「破産してやり直せばいいと言われ破産してしまった例」「民事再生法なら必ず再生できると言われ、申し立てたが、債権者の合意が得られずに破産に移行した例」「銀行コンサルタントが調査した結果、追加担保を取るだけ取って追い貸しは拒否された例」等々…。枚挙にいとまがありません。コンサルタントの進め方に疑問を感じ、当社に相談に来られる方は増えています。


事例28:会計事務所との共同作業の例

事業再生において最も大切なことは、債務者の資産価値を正しく把握することと、債務者の返済能力を正しく把握することです。資産価値とは多くの場合に不動産ですが、これは正しい鑑定評価が求められます。返済能力は、当然ながら、税金を支払った後の分配可能利益です。したがって、税金計算も不可欠となります。税金計算は債務者の顧問である会計事務所により適切に行うことが可能です。地元の顧問会計事務所は債務者の強力な味方なのです。最近は、会計事務所からの相談を受け、会計事務所と共同することで債権者との交渉に臨む例が多くなっています。複数の会計専門家と不動産鑑定士が、職業的専門家として責任ある立場から、債務者の業況を正しく評価することで債権者の信頼を得られるので、共同作業を進めることは極めて効果的です。


事例29:金融機関からの紹介を受けた例

当社は金融機関との争いをしないことを事業再生の基本方針としています。債務者は自らの返済能力を最大に発揮して返済するべきなのです。もちろん、いつまでも返済を続けていたのでは、債務者の利得は減ってしまいます。そこで、債権者との真摯な話し合いにより、返済年数あるいは返済総額を決定するのです。合意した返済年数を超える部分は債務者の利得ですので、将来の利得を期待して債務者は債権者に返済を行うのです。あるいは、合意した返済総額を超える部分は債務者の利得ですので、超過する利得を期待して債務者は債権者に返済を行うのです。このように、債務者と債権者の利害を正しく調整することが当社の基本方針です。このような地道な事業再生を10余年にわたって行っているため、時に、債権者である金融機関が、当社名や著書を、債務者に紹介してくれることがあります。金融機関の信頼があるからこそ、債権者が債務者の事業再生を紹介してくれるのです。事業再生の専門家として光栄なことであると思っています。


事例30:他のコンサルタントからの支援要請を謝絶した例

当社はクライアントである債務者と一体となって事業再生を進めます。つきっきりで再生計画を策定することも少なくありません。クライアントと事業再生計画を作成することで、債務者の正しい業況が分かるのです。時々、他のコンサルタントが当社に相談にきます。「融資を確保できないか」というような相談を受けることがあります。当社では、このような「融資紹介」はお断りしています。というのも、クライアントと一体となり事業再生計画を策定する過程で、クライアントとの信頼も生まれ、さらには、偽りのない再生計画を完成させることができるからです。それゆえに、「千代田キャピタルが関与した再生計画なら信用できる」という、債権者からの信頼も得られるのです。債務者と一体となった事業再生を行うのが当社の基本方針ですので、単なる融資紹介はお断りしています。単なる紹介を行ったのでは、債権者の信頼を得ることができないからです。

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