経営学博士論文

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平成25年に作新学院大学から経営学(博士)の学位を授与されました。学位授与の対象となった研究は、貸倒引当金と債権放棄の関係を明らかにした研究と、事業再生に伴う課税の公平を明らかにした研究をまとめたものです。


経営学博士論文

ここで経営学の博士論文の要旨(抜粋)を紹介します。国立国会図書館、東洋大学図書館で現物を閲覧できます。近く、ファーストプレス社から「貸倒引当金の多寡が債権放棄に及ぼす影響ならびに事業譲渡を伴う事業再生における課税の公平」として出版を予定しています。


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博士(経営学)学位論文

4版、260頁

非売品

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貸倒引当金の多寡が債権放棄に及ぼす影響

ならびに

事業譲渡を伴う事業再生

における課税の公平

A5版、312頁

ファーストプレス刊


博士(経営学)学位論文の要旨【抜粋】

 

貸倒引当金の多寡が債権放棄に及ぼす影響

ならびに

事業譲渡を伴う事業再生における課税の公平



1.研究目的と先行研究

本論文は、対立する経済主体間でどのような相互関連があるかを分析したり、経済活動の合理性を大所高所から論ずるのではなく、債権者あるいは債務者という一つの経済主体(多くの場合には企業である)を分析の対象とするものである。具体的には、その意思決定のメカニズムについて検証するとともに、不良債権の解消に向けて求められる諸策を探ることが目的である。第Ⅰ部では債権者に着目し債権放棄に関し、第Ⅱ部では債務者に着目し事業譲渡に関し、不良債権処理の推進のあり方を検証した。


2.各章の概要

各章の概要は次のようになっている。

第1章では、不良債権の現状を概観するとともに、研究動機、先行研究、研究目的を明らかにし、論文全体の構成を明示した。

第2章では、期待効用仮説に基づいて債権者の行動分析を行った。

第3章では、プロスペクト理論の視点から債権者の行動分析を行った。参照点依存性、損失回避性などの行動特性が債権放棄にどのような影響を与えるのかを明らかにした。

第4章では、債権放棄に関する現行制度について検証した。

第5章では、資産査定の実態を検証した。

第6章では、銀行取引と情報開示のあり方を検証した。

第7章では、事業再編の態様として、事業譲渡、会社分割さらには会社の譲渡の現状を概観した。

第8章では、営業権の評価を念頭におきつつ事業価値・資産価値の評価について検証した。

第9章では、不良債権の処理にあたり多額の債権放棄が行われる場合の事業再編において、税の転嫁の限界が生じることを指摘した。

終章で、論文のまとめとして結論を明示した。

最後にケーススタディーとして、実際の事業再生の例を取り上げ、議論の客観性と具体性を高めた。さらに、付録として、実際の不動産鑑定書と営業権評価書を掲示した。


3.結論

3.1.第Ⅰ部の結論

プロスペクト理論においては参照点依存性により、参照点が変化することで価値判断の結果も変化する。参照点は資産査定により決定づけられる資産価値であり、債権総額との差が貸倒引当金に他ならない。すなわち、資産査定により参照点が決定づけられることになる。この資産査定の結果は債務者に関する情報の質と量により左右される。

不良債権の処理を推進するために、必要な債権放棄であれば積極的に進められるべきである。参照点をできるだけ低くすることで債権者が債権放棄に合意しやすくなることは既述の通りである。参照点を低くするということは、貸倒引当金が多額に計上されることを意味している。債権者が恣意的に貸倒引当金を少なくするようなことがあってはならず、そのためには客観的な資産査定が求められるのであり、資産査定に必要な情報を確保するためには一定の範囲で情報の共有化が求められる。

本論文では、プロスペクト理論の視点から貸倒引当金の多寡が債務者の行動に与える影響を考察した結果、次の各点について提言を行った。

(1)十分な貸倒引当金の計上を実践すること

(2)資産査定を客観化すること

(3)一定の範囲で情報を開示すること


3.2.第Ⅱ部の結論

事業を譲渡した債務者(事業譲受人)は、債務免除益や事業譲渡益に対する課税手続きを回避あるいは先送りしているのに対し、事業譲受人は営業権の償却手続きを通して節税を進めている。ここにおいて課税の対称性は完全には保たれていないことになる。

債務者(事業譲渡人)と事業譲受人の間の課税の対称性を保つとともに、課税の公平を実現するための対策が求められる。

かかる観点から本論文は、事業譲渡を伴う事業再生について、事業譲渡人に法人税の未納がある場合、特殊関係人に限ることなく、広く事業譲受人に営業権の額を限度に第二次納税義務を負わせるべきであるとの提言を行った。


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