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2020年09月20日(日) 退任したのに代表取締役を名乗っている場合

代表取締役が退任した後、従業員になり登記もしたのに代表取締役を名乗っている場合は、退任しているので取締役ではなく会社に効果は帰属しないのではないかとも考えられます。ここで、354条を類推適用し表見代表取締役の規定を適用できないかが問題になります。

 

そもそも、354条は外観法理により取引安全を図る趣旨です。同条を適用するには「外観の存在」「帰責性」「外観への信頼」が必要になります。この354条は取締役であることが要件なので、退任して取締役でなくなった以上、直接適用はできません。

この点、取引相手を保護する必要性は取締役の地位にあったか否かで変わらず、使用人が代表権を有するような名称を使用していた場合にも趣旨が妥当します。よって354条を類推適用することができると解されており、会社は責任を負うこととされています。

 

2020年09月13日(日) 名目取締役の場合

取締役の権限は広範かつ強力なものなので、取締役の業務執行に対する監査・監督制度が厳格に規定されています。その責任は極めて重大です。

会社法が制定された平成17年以前は、取締役が3人以上必要でした。その当時、知人に頼まれて取締役を引き受けたという例も少なくありません。従来の会社に名前だけ取締役で残ってしまっているのです。

 

このように、経営に関与していない名目取締役であっても、取締役は取締役会の構成員である以上、他の役員を監視する義務を負うとされています。監視義務は非上程事項にも及び、不当な業務を発見したら自ら取締役会招集請求権・招集権を行使して取締役会の監視機能を働かすべきであるとされています。すなわち、経営に関与していない役員であっても、代取の独断専行を見逃したのであれば、それは監視義務違反であり、会社に対する悪意・重過失による任務懈怠が認められるので責任追及がなされるのです。

名前を貸しただけの名目取締役であっても責任は免責されません。このような危険を勘案し、必要に応じて取締役の辞任を視野に入れた見直しを行うべきでしょう。

 

2020年09月07日(月) 取締役が正式に選任されていない場合

取締役が正式に選任されていないのに登記簿上は取締役になっている場合、会社は責任を負うのでしょうか。また、取締役個人は429条の責任を負うのでしょうか。

 

ⅰ.会社の責任

会社法908条2項に「故意又は過失によって不実の事項を登記した者は、その事項が不実であることをもって善意の第三者に対抗することができない」という規定があります。この規定は登記申請者の責任を定めた規定であり、登記申請者ではなく不実登記に加担した取締役に直接適用できないともいえます。

しかし、908条2項の趣旨は取引の安全を図ることにあるのであって、登記申請者でなくとも不実登記の出現に帰責性あるものに類推適用すべきといえます。たとえば明示・黙示の承諾を与えた場合は908条2項を類推適用し、取締役でないことを善意の第三者に対抗することはできないと解されています。したがって会社は責任を負うことになります。

 

ⅱ.個人の責任

429条の責任は取締役であることが前提です。選任されていない以上、役員ではないのであり429条の責任は負わないのではないかという点が問題になります。しかし、明示・黙示の承諾を与えた場合は908条2項の類推適用により取締役でないことを善意の第三者に対抗することはできないことになります。この場合、取締役であることを前提とした429条の責任を問われることになり、選任されていないとはいえ、個人としての責任を負うことになります。「正式に頼まれていない」「正規の手続を踏んでいない」という言い訳は通用しないので注意が必要です。

 

2020年09月01日(火) 財産評価基本通達による評価額と不動産鑑定額の乖離(4/6)

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第67回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「財産評価基本通達による評価額と不動産鑑定額の乖離(4/6)」で、その要旨は次の通りです。

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要旨:

今回は、「更地」と「建物及びその敷地」を取り上げ、実際の不動産鑑定評価の手順に従って、不動産鑑定評価書の記載内容を明らかにします。手順の各段階において、鑑定額に影響を与えるような判断が行われる箇所について、本文中に下線を引くことで明示します。

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記事を読むにはミロク情報サービスの会員になる必要があります。
会員は(1)会計事務所向けと(2)企業経営者向けに分かれています。

 

(1)会計事務所の先生の場合は「tvs会員」になる必要があります。
下のアドレスから著者名を指定して検索できます。
http://tvs.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html

 

(2)企業の経営者の場合は「GOODWILL PLUS会員」になる必要があります。
下のアドレスから著者名を指定して検索できます。
http://goodwill.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html

 

多くの有益な情報を入手できますので、入会することをお勧めします。
私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。

 

入会にあたってはお近くの(株)ミロク情報サービスの営業拠点にご連絡ください。営業拠点は下のアドレスから検索できます。
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2020年08月27日(木) いつの時点で戻すか

形式上は第三者の会社にした場合、いつかの時点で本来の経営者に戻すことになります。形式上も、実質上も、本来の経営者に戻すわけです。その時期はいつにすべきでしょうか。

 

この点について、筆者は「事業再生が完成した数年後」が目安になると考えています。というのも、「第三者への経営権の委譲があったので債権放棄を行った」「従来の経営者の保証債務を免責した」という場合、債権者の立場を考えなければならないからです。

債権者には検査・監査が入ります。検査・監査では、債権放棄の実態を精査されることになります。その時点で債権放棄をした事案の詳細を聞かれたとき、「はい、その件は息子さんが設立した会社に事業を譲渡したことを承認し、同時に〇億円を債権放棄しました」では通らないのです。たちまち寄付金認定となり、損金処理を否認されてしまいます。

 

すなわち、検査・監査の時点では、債権者としては「債務者は第三者の会社に事業を移転した」という形にしておくことが、債権者に対する大人の対応というものです。換言すれば、債権者の為に、検査・監査の時までは、形式上の第三者でなければならないのであり、そのために数ヶ月では足りないといえるでしょう。

 

2020年08月19日(水) 取締役を第三者にする場合

第三者が取締役を引き受ける場合は、後任を確保しておくことも重要な課題となります。

後任者がいなければ、前任者の退陣に支障をきたすからです。こうした問題の発生を防ぐために、あらかじめ就任承諾書、改印届に捺印を受けておくことも必要になります。添付書類として必要になる印鑑証明書は、3ヶ月ごとに新しい印鑑証明書と差し替えておくことになります。

 

登記に必要な書類を第三者に預けると、勝手に登記してしまうのではないかと心配になるでしょうが、こればかりは避けて通れません。第三者が株主や役員になる場合は、信頼関係が大変重要になるのです。もちろん、きちんとした約定も必要になります。安易な姿勢では将来に禍根を残すことになるので要注意です。

 

2020年08月10日(月) 株主を第三者にする場合

株主を第三者名義にしておく場合、一定の条件で株式を本来の経営者に移転することになります。この場合、将来において株式を本来の経営者に移転する旨の約定が

必要になります。

 

第二会社の経営は順調に推移するという仮定に立つと、残債の減少に合わせて株式価値が増加することになります。たとえば、第二会社を立ち上げたときの資産10億円に対して同額の負債があれば、純資産はゼロに近い価値しかありません。しかし、時間の経過とともに負債は減り、資本の部の剰余金は増えていきます。10億円の返済が完了した時点では純資産は10億円となってしまいます。

額面上の資本金額で取引を行えば、受け取った側に贈与税が課されることになります。その意味で、長い間にわたり第三者名義にしておくのは得策とはいえません。

 

2020年08月06日(木) 第二会社の株主と取締役の選任例

第二会社方式で事業再生を行うにあたって、実子に経営権を譲る場合などは、事業再生に加え相続対策も兼ねることになります。この場合、実子名義を望むのは当然です。しかし、それでは債務者一族間の移転であることが明らかになってしまいます。

取締役の氏名は登記簿を見ればわかります。株主の氏名は登記事項ではありませんが定款に記載されています。しかし、債権者から定款の提出を求められることは一般的ではありません。したがって、定款から株主の氏名が明らかになることは少ないといえます。

 

そもそも債務者一族が役員に名を連ねることは得策なのでしょうか。

たとえば、銀行がまったくの第三者に物件を売却することと引き換えに競売の取り下げを検討しているとき、債務者一族が第二会社の役員に就くと話は帳消しになってしまいます。帳消しにならないまでも、「一族が役員なのだから、もっと金額を高くしてくれ」などと言われ、金額交渉で不利になりかねません。この場合は債務者一族より、まったくの第三者の方が適しているといえます。

金融機関の立場からは、債務者がその所有する財産を「第三者」に売却して返済したからこそ、残余の部分の債権放棄を検討できることになりますので、譲渡先は「第三者」の形をとることが「落としどころ」ということになります。かかる観点から、既存の金融機関に対しては第二会社は第三者であるという形式を満たしておくべきでしょう。

これに対し、たとえば、競売にかけられた物件を競売に応じる形で入札して落札するのであれば、債務者一族が役員でもなんら問題はありません。公の制度を利用して公明正大に取得したのであり、第三者を装う必要はないからです。

 

このように、第二会社の役員を債務者一族にするのか、あるいは、まったくの第三者にするのかは、個々の事案により異なるのです。諸般の事情から、まったくの第三者が株主や役員になる場合、将来に禍根を残さないためにも、当事者間でしっかりと約定しておくことが肝心です。