2015年

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2015/12/30 慰安婦問題の10億円支出を利用すべし
2015/12/29 法的整理と私的整理
2015/12/25 慰安婦問題で安易な妥協はすべきではない
2015/12/24 男性国会議員が育児休暇を取得することの是非
2015/12/22 新国立競技場の建設
2015/12/19 拠点を確保することの難しさ
2015/12/14 勝ち組の戦う債務者
2015/12/09 普天間基地とミッキーマウス
2015/12/07 長崎新幹線は必要なのか
2015/12/06 役員報酬
2015/12/03 流行していない流行語大賞
2015/11/29 青汁と化粧品
2015/11/27 従来の経営者が経営権を確保する事業再生
2015/11/22 親子関係不存在確認の訴えと男女差別
2015/11/20 パリの連続テロ
2015/11/17 会計参与
2015/11/12 尖閣諸島に中国が進出したらどのように対応するのですか?
2015/11/10 野球賭博を厳しく断罪するのはいかがなものか
2015/11/09 ゆでカエル現象に注意すべきです
2015/11/07 STAP細胞と博士の学位
2015/11/04 債権者の本気度
2015/10/28 無理な再生計画を作成すべきではない
2015/10/25 担保権を有する債権者
2015/10/18 貸借対照表とは何か
2015/10/12 損益計算書とは何か
2015/10/07 敬愛大学で生涯学習講座を開催します
2015/10/02 社外監査役制度の活用
2015/09/26 自己破産が不要な理由
2015/09/20 社外取締役制度の活用
2015/09/15 警察官の拳銃操作技術の向上に期待します
2015/09/11 乱高下する株価と専門家のコメント
2015/09/07 山口組の内部抗争と安保法案
2015/09/02 エンブレム問題と虚構の東京オリンピック
2015/08/29 安易に法的整理を行うことは得策ではありません
2015/08/23 みなし解散
2015/08/20 監査役設置会社と非設置会社の違い
2015/08/18 監査役の設置と監査役の機能
2015/08/13 退任登記が未済の取締役の責任関係
2015/08/09 退任した代表取締役の行為は会社に帰属するか
2015/08/05 取締役不正に対する株主の対抗手段
2015/08/01 主観的に基づいた無益な論争ではなく事実を示すべし
2015/07/28 なんでもかんでも東電や国の責任にするな!
2015/07/27 事業再生に成功する経営者と失敗する経営者
2015/07/24 債権譲渡の利用
2015/07/23 取締役会設置会社と非設置会社
2015/07/19 日本の将来に係ることに老人は関与すべきではない
2015/07/16 スカイマークの争奪戦と経営者責任
2015/07/15 お詫び(ホームページの不調)
2015/07/13 取締役の競業避止義務
2015/07/09 東芝の不適切会計処理と国立競技場の建て替え
2015/07/05 実現可能なものを実現することが真の交渉です
2015/07/01 正常債権のM&Aと不良債権のM&A
2015/06/26 外国人経営者に多額の報酬が必要なのか
2015/06/24 債権者の最終処分
2015/06/21 従来の経営者は信頼を得られる経営者なのか
2015/06/18 新規事業への取り組みは慎重にすべきです
2015/06/14 究極の第二会社方式
2015/06/11 ペットボトルの落下事件と憲法改正
2015/06/10 商号の続用と免責の登記
2015/06/06 伊勢志摩サミットに不安を感じます
2015/06/03 成田空港へのアクセスを改善すべし
2015/06/01 取締役の責任の免除
2015/05/30 何をもって事業再生が成功したといえるのか
2015/05/28 敵と味方の区別もつかないようでは事業再生は困難です
2015/05/25 天才数学者の交通事故死
2015/05/24 金融機関の論理と抵抗勢力
2015/05/22 従来の会社の本社保守業務
2015/05/21 私的整理による事業再生
2015/05/18 大阪都構想が否決されて思うこと
2015/05/17 日本の食品は安全なのか
2015/05/14 会計事務所は事業再生に積極的に関与すべきである
2015/05/13 債権者との協調と債務者の主体性
2015/05/11 箱根の噴火警戒と日本の将来
2015/05/09 サルのシャーロットを否定するのは人種差別と同じだ
2015/05/08 偽専門家と振り込め詐欺
2015/05/05 明治日本の産業革命遺産は世界遺産にふさわしいのか
2015/05/04 取締役の責任
2015/05/01 セミナーの対象を「守る経営」から「攻める経営」へと広げます
2015/04/27 取締役の第三者に対する責任
2015/04/24 戦後70年の謝罪は必要ない
2015/04/22 返済猶予と事業再生
2015/04/19 とんでもない判決
2015/04/17 会社を終わらせる方法
2015/04/14 取締役と会社の利益衝突
2015/04/11 株価が2万円を回復して思うこと
2015/04/09 事業再生でM&Aを行うときは一定の対策が必要になります
2015/04/07 事業譲渡か会社分割かの判断
2015/04/05 政治家は抽選で選ぶべし
2015/04/02 泣きたいのはこっちの方だ
2015/04/01 事業再生ではキャッシュフローがプラスであることが重要です
2015/03/31 株主が一人の会社でも議事録が必要です
2015/03/29 ホームページの移管作業
2015/03/28 大塚会長が打つべき「捨て身の戦法」
2015/03/27 少数株主の保護
2015/03/24 新しい書籍が発売になります
2015/03/23 事業計画と返済計画
2015/03/20 取締役会から株主総会への権限移譲
2015/03/18 本日(3/18)よりホームページをリニュアルしました
2015/03/14 大塚家具の内紛
2015/03/11 鳩山に旅券返納命令をすべし
2015/03/09 株主総会の招集の瑕疵
2015/03/08 株主総会の瑕疵に関する訴え
2015/03/04 新刊発表とホームページの変更
2015/03/02 千代田区に区民住宅が必要なのか
2015/02/28 キャッシュフローと価値の把握
2015/02/27 補助金と政治献金
2015/02/25 取締役会の招集手続の瑕疵
2015/02/24 株主総会の招集手続の瑕疵
2015/02/21 国賊は公民権を停止すべし
2015/02/20 作られた美談
2015/02/17 株主総会と取締役会の招集と議決権行使の違い
2015/02/12 従来の銀行が第二会社に融資する場合と融資しない場合
2015/02/07 指導鑑定士としての認定を受けました
2015/02/04 テロ行為の増加が心配です
2015/02/03 法人格否認の法理
2015/02/01 無理な要求は実現不能だということ
2015/01/28 情報の非対称性と事業再生における会計事務所の役割
2015/01/26 重要な財産の譲受・処分
2015/01/24 代表取締役の権限濫用
2015/01/19 博士までの道
2015/01/16 不動産の価格と競売制度の限界
2015/01/14 フランスの風刺画とペンの暴力
2015/01/13 事業再生は経営者自身の意思で進めることが重要です
2015/01/08 M&Aで乗っ取られないようにすべきです
2015/01/05 競売処分と任意売却


慰安婦問題の10億円支出を利用すべし
2015年12月30日(水)

慰安婦問題で10億円の支払いをすることに合意した由。

支払いをする必要はないということは本欄で指摘した通りですが、合意してしまった以上、速やかに支払うべきだと考えます。


ソウルの日本大使館前にある「少女像」の移転が先であるとの見解もありますが、この考え方には賛成できません。むしろ「日本国は誠意をもって合意内容を履行した」という形にしたほうが交渉が有利に進むのではないでしょうか。


韓国内では慰安婦問題は一つの大きな政治問題になっており、スンナリとは片付かない話なのです。移転問題が解決しないことを理由にして10億円の支払いを引き延ばすより、「日本国はすべきことはした」との姿勢を貫くことでボールを韓国に投げてしまうべきです。


移転できればそれで良し。それだけの話です。

移転できなければ韓国という国家の信頼性が国際的にも疑われることになります。

韓国政府が「移転を約束したものではない」と主張したり、韓国の次期政権が「それは前政権の合意であるから・・・」という姿勢を見せれば、国際的な信用を喪失することになります。自分の首を絞めるようなものです。


韓国の信用などはどうでも良い話です。

日本としては合意内容は履行したと、「我、関せず」を貫けばよいのです。さっさと履行することで、有言実行により日本の信頼は高まるだけでなく、交渉力も高まると期待されるのです。


合意することも重要ですが、合意内容をどのように利用するかという点は、さらに重要なのです。慰安婦問題を利用して日本の交渉力を高めることができるならば、10億円も安い支出だと思います。

韓国政府と慰安婦団体の争いがどうなるのか、高見の見物といきたいところです。


法的整理と私的整理
2015年12月29日(火)

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第20回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「法的整理と私的整理」で、その要旨は次の通りです。

ーーー

要旨:

再生には民事再生法に代表されるような法的再生と、個々の債権者との話し合いで進められる私的再生があることは周知の通りです。まずは私的再生を目指すべきであり、法的再生は最後の手段にすべきです。ここでは、私的整理を優先するべき理由を正しく整理するとともに、私的再生には一括合意型と個別合意型があることを明らかにします。

ーーー


記事を読むにはミロク情報サービスの会員になる必要があります。
会員は(1)会計事務所向けと(2)企業経営者向けに分かれています。


(1)会計事務所の先生の場合は「tvs会員」になる必要があります。
下のアドレスから著者名を指定して検索できます。
http://tvs.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html


(2)企業の経営者の場合は「GOODWILL PLUS会員」になる必要があります。
下のアドレスから著者名を指定して検索できます。
http://goodwill.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html


多くの有益な情報を入手できますので、入会することをお勧めします。
私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。


入会にあたってはお近くの(株)ミロク情報サービスの営業拠点にご連絡ください。営業拠点は下のアドレスから検索できます。
http://www.mjs.co.jp/office/tabid/479/index.php#no2


慰安婦問題で安易な妥協はすべきではない
2015年12月25日(金)

日本政府は28日にも開かれる日韓外相会談で、慰安婦問題に関する合意文書に最終的な決着であることを明記するよう韓国側に求める方針を固めたと報道されています。

結構な話です。


日本としては一切の譲歩をすべきではありません。

譲歩せずに要求だけをぶつけ、それでも合意できないなら物別れで良いと思います。

国家間の交渉において日本が確固たる姿勢を示すことは、慰安婦問題にとどまらず、竹島、尖閣、北方領土の交渉に有利になります。

換言すれば、将来において様々な国際交渉を有利に進めるためにも、慰安婦問題で一切の譲歩をしてはならないのです。


慰安婦は強制連行ではなく、自発的に慰安婦としての職業に従事した女性であったのです。

今、韓国で騒いでいる「元慰安婦」が職業慰安婦であったかどうかは明らかではないものの、強制労働ではなく自発的な職業慰安婦が存在したことに目を向けなければなりません。


現在でも日本国内の風俗業界で働く韓国女性は少なくありません。中には売春防止法に違反するような悪質な行為を行う韓国人風俗嬢も存在します。


この際、違法な韓国人風俗嬢を一斉検挙することで、今でも多くの韓国女性が日本の風俗業界で自発的に暗躍していることを明らかにすべきです。「今でも自発的に暗躍している」ことを明らかにすることは、「当時も自発的に暗躍していた」ことを疎明することになるのではないでしょうか。


男性国会議員が育児休暇を取得することの是非
2015年12月24日(木)

自民党の衆議院議員が通常国会で「育児休暇」を取得する意向を示しているとのこと。国会議員同志の結婚で子どもが生まれるにあたり、男性議員が育児休暇を取得することが議論の対象になっているようです。


なんとまあ情けない話です。

こんな自己中心的な人間が国会議員になってしまっている現状を憂う次第です。


私は育児の重要性を否定するものではなく、むしろ積極的に取り組むべきであることは本欄で何度も指摘している通りです。高齢者の介護や、福島復興に充てるムダ金を子育て、育児に回すべきであるとさえ思っています。


しかし、男性国会議員が育児休暇を取得することは別の話だと思います。

育児休暇取得問題というのは、「休暇を取得する」ことが問題なのではなく、「休暇を取得した後に復職できない危険を排除する」ことが問題なのです。休みたくても「復職の道が保証されていないから休めない」というところが問題なのです。


国会の規則には出産休暇の規定はあるが育児休暇の規定はなく、今回は1カ月ほど本会議に欠席届を出すことで対応する考えであるとのことですが、復職が保証されている結構な身分の議員先生が育児休暇を取得したところで「率先して育児休暇を取得した」ことにはなりません。

国会議員自らが育児休暇を取得することで率先垂範する気であるならば、復職できない現状の厳しさを実践するべきなのです。この際、育児休暇取得を理由に議員辞職し、次回選挙で「育児休暇取得で辞職したことの是非を問う」ことで再選を期してもらいたいところです。


私が有権者であれば、当該議員には絶対に投票しませんが・・・。


新国立競技場の建設
2015年12月22日(火)

新国立競技場についてA案に決まったと騒がれています。

私としては、AとBの違いすらわかりませんので、どうでもよい話です。


敗れたB案の考案者は、「どうしてこういう結果になったのか疑問」「工期短縮の採点で30点近い大差がつけられたのは極めて不可解」「A案ではザハさんに訴えられるかもしれない」と不満を漏らしているようです。

さらに、計画不採用にもかかわらず50億円以上を手にしたイギリスの建築家、ザハ・ハディド氏は「我々のデザインに驚くほど似ている」とコメントしているとのことです。


相変わらず「似てる、似ていない」の争いがつきまとうのでしょうか。

もはや中国のパクリ体質を笑えない低レベルの「文化後進国」を露呈していると思います。


繰り返しますが、東京オリンピックの開催は大きな過ちだと思います。

引退した石原知事。退任した猪瀬知事。タレント気取りの舛添知事。

全員に共通しているのはスタンドプレーの目立つ点だと思います。国民を誤った方向に啓蒙し、「無用な」東京オリンピックを「無理に」開催するのはいかがなものでしょうか。


万が一、ザハ・ハディド氏が正式に訴えてくるようなことがあり、訴えが正当なものであるならば、今度こそ組織委員会の委員は全員引責辞任すべきです。東京オリンピックという厄介なものを持ち込んだ全ての連中に猛省を求めたいところです。


拠点を確保することの難しさ
2015年12月19日(土)

なんでもかんでも債務者の思う通りに事業再生を進めることはできません。

経営に行き詰まり返済ができなくなったからといって、すぐに第二会社を設立して事業譲渡することで債権放棄を実現するというわけにはいきません。そのようなことを無条件に許していたのでは金融システムが崩壊してしまいます。


債権者の認める範囲で、債権者の立場に配慮しながら落としどころを探ることが必要なのです。


たとえば小売業の店舗、ホテル業のホテル、不動産業の収益用不動産など、拠点が複数ある場合に、すべての拠点を守ることができるかどうかは個々のケースによって異なります。

第三者に一部を譲渡することを条件に、残余を残すことが認められる場合もあるのです。

債権者にしてみれば第三者が高く引き取ってくれるならば回収の最大化が可能になりますので、従来の経営者に残す必然性はありません。

すなわち、全部を守れるのか、一部を守るのかは債権者次第なのです。


もっとも、第三者にしてみれば任意売却で事業を引き継ぐことを望むことが一般的です。競売等の強制売却になると、確実に取得できるかが保証されず資金調達に不確実性が増加するだけでなく、スムーズな引継ぎができないことになるからです。

任意売却が必要になるということは債務者が納得することが必要になるため、一部を残すかわりに一部を譲渡するという条件交渉になるというわけです。


すべての拠点を守るためには困難な交渉が必要になるのです。


勝ち組の戦う債務者
2015年12月14日(月)

事業再生を進めているにもかかわらず、債権者に遠慮しすぎて自分の希望通りの再生ができない例も少なくありません。

「○○を求めたら債権者の怒りを買ってしまうのではないか」「最後には債権者は自分のことを思って寛大に処理してくれるだろうから、ここは債権者に従っておこう」「今まで通りに返済していれば、いつかは分かってくれるだろう」等、「根拠の無い期待」にすぎません。


問題は、ズルズルと時間をかけてしまうことで返済総額が膨らむだけではありません。

債務者がノー天気な対応をしている間に、債権者は「回収額の最大化」のために様々な手を打っているのです。端的に言うならば、「従来の債権者に経営を任せること」と、「新たな経営者に経営権を譲渡すること」を比較して、最も回収効果が高い方を選択するのです。

債権者としては「当たり前の話」というか、「そうでなければならない話」なのです。


「債権者は分かってくれるだろう」と思っているのは債務者だけなのであり、いわば債務者の片思いに過ぎないのです。いわば「負け組」の典型例と言えるでしょう。

このことに気づかずにダラダラと不良債権のまま経営を継続する経営者と、債権者と対立するのではなく協調しながら、自己の権利や期待を債権者にぶつけて戦う債務者とでは競争になりません。

当然ながら、戦う債務者こそ事業再生を成就することで正常債権になり、次のステップを目指すことができるのです。いわば「勝ち組」ということができるでしょう。


当社に相談に来る経営者は「戦う債務者」であり、「勝ち組」が多いことは言うまでもありません。


普天間基地とミッキーマウス
2015年12月09日(水)

一部報道によると、沖縄のアメリカ軍普天間基地返還後の跡地にディズニーリゾートの誘致を目指す計画が浮上したとのこと。政府はすでに運営会社側に要望を伝え、誘致に向けた優遇策についても法的に可能であれば検討するとのことです。


大変、結構な話だと思います。

ディズニーリゾートを誘致するという「夢のある話」という位置づけだけではなく、雇用の促進や、観光客の誘致などが期待できます。ひいては普天間基地の辺野古返還に拍車をかけることになります。

普天間の跡地利用を目指して早期の移転を期待できるのであれば、「国外移転だ、県外移転だ」という反対勢力に対抗し、「さっさと辺野古に移転して早く普天間を開けろ」という勢力の活動が活発になります。いわば、辺野古移転に反対する勢力に対抗するための新勢力として活動が期待されるのではないでしょうか。


「沖縄の基地問題でなんだか騒いでるなあ」という無関心層が、「普天間のディズニーリゾートに早く行ってみたいなあ」へと変貌するだけでも、辺野古移転への後押しになることが期待されます。

長崎の新幹線は不要だが、沖縄のディズニーリゾートは必要だと思います。


それにしても暑い沖縄のこと。

ミッキーマウス等のキャラクターの着ぐるみを着る従業員の労働環境を心配してしまいます。


長崎新幹線は必要なのか
2015年12月07日(月)

佐賀県を通過する九州新幹線長崎ルートに導入する新型車両フリーゲージトレイン(軌間可変電車)の開発が大幅に遅れているため、長崎新幹線の全面開業は遅れることになるとのことです。

長崎新幹線…。必要なのでしょうか?


日本各地の道路、橋梁、トンネル等々の老朽化が叫ばれる中、日本中に新幹線を張りめぐらせることに何の意味があるのでしょうか。大いに疑問です。


山形新幹線にしても、秋田新幹線にしても、整備新幹線を通したために、高速で走るべき新幹線車両が勾配やカーブが急な山道をのろのろ走っているのです。

乗換を一回するだけのことです。山形に行くなら福島、秋田に行くなら盛岡で反対ホームの列車に乗り換えれば済む話なのに、わざわざ整備新幹線を通すことに何の意味があるのでしょうか。


これ以上の新線開通は控え、既存設備の老朽化対策に万全を期すべきだと思います。

目先の便利さを追い求めるあまり老朽化対策がおろそかになり、次代に老朽施設を残すことがあってはならないと思います。


今の便利さを過度に追求するのではなく、今の便利さを犠牲にしてでも次代に引き継ぐ物のあるべき姿を見直すべきだと思います。この際、「今」と「将来」という時間差を見据えながら、効用配分を考えるべきではないでしょうか。


役員報酬
2015年12月06日(日)

役員等の報酬等とは、役員等の報酬、賞与その他の職務執行の対価として会社から受ける財産上の利益をいいます。取締役に額の確定した金銭を報酬として支給する場合は、その額は、定款または株主総会普通決議によって定めなければならないとされています(361条)。


報酬等の決定は、本来は業務執行行為として取締役会等の権限に属します。しかし、取締役会の構成員として業務執行に関与したり(362条)、業務執行をする(363条)取締役に、自分たちの報酬を決定させるとお手盛りの危険が生じます。そこで、お手盛りを防止して会社の利益を保護するために定款または株主総会普通決議によって定めなければならないと規制されているのです。


この趣旨から考えると、取締役の報酬等を総会決議で取締役会に無条件で一任することは許されないことになりますが、総会決議で報酬等の総額や上限を定めたうえで具体的配分の決定を取締役会に委ねることは許されると解されています。なぜなら、総額や上限といった限度額が総会で定められれば、お手盛りの弊害が生じるおそれはないからです。


取締役会がさらに具体的配分の決定を代表取締役に一任することも許されます。なぜなら、すでに総会で報酬の総額や上限が定められている以上、お手盛りの弊害は生じないからです。


流行していない流行語大賞
2015年12月03日(木)

今年の流行語大賞に「爆買い」「トリプルスリー」が選ばれた由。

「そんな言葉は聞いたことがない」と騒がれています。

まったく同感です。トリプルスリーなどは「知っている」「知らない」という話ではなく、そもそも「流行」しているとは思えません。


選考委員の有名人?は、いったいどのような基準で選んだのでしょう?

基準が曖昧なだけではなく、選考委員の感性を疑いたくなります。


国立競技場やオリンピックエンブレムも曖昧な基準で選ばれました。今年は、曖昧な選考が大いに問題になった年でした。曖昧な選考は、賞自体の価値を下げることになります。

訳の分からない選考委員が、訳の分からない選考をするくらいなら、ネット投票で選考した方が公明正大で良いのは誰でもわかる話です。


選考委員の皆さんも自身の価値を下げたと思います。

いっそのこと、選考委員の選考の段階からネット投票で決めてみてはいかがでしょうか。


青汁と化粧品
2015年11月29日(日)

最近目につくCMに、青汁と化粧品があります。

いかにも新鮮で体に良いような印象を受ける青汁ですが、言ってみれば粉末ジュースにすぎません。子供のころ飲んだ粉末ジュースとどこが違うのでしょうか。溶かして飲む粉末ジュースがどこまで新鮮で体に良いのか疑問です。

私には単なる健康サプリとの違いが判りません。


化粧品は、肌に良いとの触れ込みの女性用化粧品が散見されます。日本中の女性が美肌になるような勢いです。中には肉親を引き合いに出して効果があるかのようなCMもあります。○○博士だなんだと、ありもしない学位を詐称する者もいるようです。

私には素人相手に押し売りをしている露店のテキ屋と同じに見えます。


青汁も化粧品も多大な宣伝費をかけて大衆を煽り、購買意欲を引き出すものですが、共通しているのはメディアを利用した茶番劇です。

この際、過度な宣伝は慎むべきではないでしょうか。氾濫する通販番組を見直すことから始めるべきです。

青汁と化粧品のCMを見るたびに、通販のあり方、さらにはメディアのあり方に疑問を感じてしまうのは私だけでしょうか。 

 

従来の経営者が経営権を確保する事業再生
2015年11月27日(金)

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第19回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「従来の経営者が経営権を確保する事業再生」で、その要旨は次の通りです。

ーーー

要旨:

事業再生の成功とは何をもって成功というのでしょうか。競売や事業売却で経営権を手放すことで従来の経営者が破滅の道を歩むことと引き換えに事業が存続すれば、それで事業再生が成功したといえるのでしょうか。換言すれば従来の経営者の経営権を守る必要はないのでしょうか。今回は経営権に着目し、競売や事業売却について整理することにします。

ーーー


記事を読むにはミロク情報サービスの会員になる必要があります。
会員は(1)会計事務所向けと(2)企業経営者向けに分かれています。


(1)会計事務所の先生の場合は「tvs会員」になる必要があります。
下のアドレスから著者名を指定して検索できます。
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(2)企業の経営者の場合は「GOODWILL PLUS会員」になる必要があります。
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多くの有益な情報を入手できますので、入会することをお勧めします。
私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。


入会にあたってはお近くの(株)ミロク情報サービスの営業拠点にご連絡ください。営業拠点は下のアドレスから検索できます。
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親子関係不存在確認の訴えと男女差別
2015年11月22日(日)

某芸能人が10年以上にわたり育ててきた息子が実子ではなかった、との親子関係不存在確認の訴えが認められたと騒がれています。


DNA鑑定が出ている以上、至極当然の話であり、事情を知らない第三者が軽々しくコメントすべきではありません。男を騙して「出来ちゃった婚」に持ち込んだ母親が悪いのは当然ですが、元父親にしてみれば被害者であり、その行動について是非を問うべきではないと思います。夫にしてみれば「親子関係が存在しない」という事実を確認したいのは当然のことだと思うからです。


DNA鑑定が存在する以上、これを無視して親子関係の「不存在を否定する」のでは、そもそも親子関係不存在確認の訴え自体を自己否定することになりかねません。当然の判決だと思います。


高橋ジョージと三船美佳の例では、母親が子供を連れて一方的に家を出てしまいました。母親は「夫から家庭内バイオレンスを受けた」と一方的な主張をしているようです。

このような勝手な振る舞いが許されるのでしょうか。気に入らなくなったら子供を連れて家を出て、離婚を求めるというようなことが許されるならば、法が予定している円満な婚姻関係の維持は困難になってしまいます。


いずれも「女性だから弱い」「女性は不利だ」「母子家庭を守ろう」等々の女性保護の思想は当てはまらないケースだと思います。「女性だから・・・」という発想は新たな男女差別を生むのではないでしょうか。


パリの連続テロ
2015年11月20日(金)

パリ市内での連続テロが世間を騒がせています。

ISISの理不尽なテロ行為は、西洋諸国ならず、日本にも向けられていることは日本人人質の首切り事件の時点で公言されています。

平和ボケの日本人は忘れてしまっているのではないでしょうか。


幸いなことに日本人と中東諸国の人々では外見上の違いがあり、彼らが日本国内で暗躍するのは難しい面もあるでしょう。よって、テロが起きにくいという側面もあると思います。

しかし、日本のリベラリストの皆さん方は、ノー天気に憲法9条を盾に、反戦を訴えています。日本国民がISISのテロ標的にされ、あるいは尖閣諸島が中国に侵略されたらどうするのでしょうか。


一方の保守派はアメリカの顔色を窺い、アメリカにぶら下がることで事なきを得ようとしています。まさに米国領日本です。


まともな対応策を講じていないという意味では、両者は共通していると思います。

テロによる損害が報道されるたびに、日本の将来が心配でなりません。


会計参与
2015年11月17日(火)

会計参与は取締役または執行役と共同して、計算書類およびその附属明細書、臨時計算書類、連結計算書類を作成する権限を有する株式会社の機関で(374条)、計算関係書類の共同作成者であり、原則として設置は任意です(326条)。


取締役と同様に、会計参与は株主総会の普通決議で選任し(329条、341条)、任期は原則として2年となっています(334条、332条)。取締役・執行役と共同して計算関係書類を作成する関係で、会計参与は会計の専門的知識を有する公認会計士・監査法人・税理士・税理士法人でなければならないとされています(333条1項)。


取締役・執行役と共同して計算関係書類を作成する権限を有しており(374条)。会計参与と取締役・執行役の意見が一致しない限り、計算関係書類を作成できず株主総会等へも提出できません。

権限の実効性を確保するため、帳簿等閲覧謄写権、取締役や使用人に対する報告要求権、会社の業務財産調査権があり、子会社に対する報告要求権と業務財産調査権もあります。取締役・執行役と意見を異にする場合は、株主総会における意見陳述権も認められています(377条)。

取締役・執行役の職務執行に関し不正の行為等を発見した場合は株主・監査役等への報告義務を負い(375条)、また、計算関係書類の承認に関する取締役会への出席・意見陳述義務(376条)、株主総会における説明義務(314条)、計算書類等の備置き義務(378条)、株主・債権者からの計算書類等の閲覧等の請求に応じる義務(378条2項3項)を負います。


取締役と同様に任務懈怠があれば会社に対して損害賠償責任を負い(423条)、代表訴訟の対象となります(847条)。第三者に対する損害賠償責任(429条)も負います。

さらに、株主総会の普通決議で解任できるほか(339条、341条)、役員解任の訴えの対象にもなります(854条)。選任、解任、辞任についての株主総会における意見陳述権があり、辞任した者には株主総会への出席権や辞任理由等の陳述権も認められています(345条)。


会計参与の責任は相当重いので、設置・就任に当たっては十分な注意が必要だと思います。 

 

尖閣諸島に中国が進出したらどのように対応するのですか?
2015年11月12日(木)

防衛省沖縄防衛局は名護市辺野古沖合で海底の地盤強度などを確かめるボーリング調査の掘削作業を再開したとのこと。翁長雄志知事による埋め立て承認取り消しの効力が先月27日に停止されたことを受けの措置です。

結構な話だと思います。


一方で、中国海軍が尖閣諸島の近海で不穏な動きをしている由。

困った話だと思います。


繰り返しますが、私は沖縄に基地は必要なのだと確信しています。

私としては、翁長知事、さらには基地反対派の人々に問いたいです。

「では、中国海軍が沖縄県の尖閣諸島に侵攻してきた場合に沖縄県はどのように対応しますか?」


是非、お答えを聞きたいところです。


野球賭博を厳しく断罪するのはいかがなものか
2015年11月10日(火)

巨人軍の野球選手が野球賭博に関与し、厳しい処分を受けることになりました。まだ若い選手が将来を絶たれてしまいました。果たしてこれで良いのでしょうか。甚だ疑問に感じます。


賭博。

許されるものではないことは当然です。

しからばパチンコは許されるのでしょうか?公然と「景品交換所」で現金化が行われています。賭博罪が成立しないのは不自然です。

若き野球選手の将来を絶つならば、パチンコも断罪すべきではないでしょうか。


何年か前には相撲でも似たような問題がありました。

相撲にしても、野球にしても、「その道しか知らない世間知らずの若者」に再起の道すら残さないのはいかがなものでしょうか。

胴元になって金を稼いだわけでもないし、インチキ試合を仕組んだわけでもありません。己の弱さゆえに犯した過ちだと言えるのではないでしょうか。


パチンコの現金交換は賭博罪にならないのか。

ソープランドの性的サービスは売春防止法違反にならないのか。

ネットに溢れる猥褻画像は猥褻物陳列罪にならないのか。

街中を走る多くの車は速度違反にならないのか。

グレーゾーンは散見されます。


だから野球賭博が許されるとは思いませんが、世間知らずの若き野球選手や関取の将来を絶つことには釈然としません。再起の道を残すことが本人のため、ひいては社会のためではないでしょうか。


ゆでカエル現象に注意すべきです
2015年11月09日(月)

人間は環境適応能力を持っています。そのため、環境が暫時的に変化する場合に、たとえそれが改善すべき状況であっても受け入れてしまう傾向が見られます。例えば業績悪化が危機的レベルになりつつある場合に、その変化に気づかずに受け入れてしまうというものです。

これを「ゆでカエル現象」と呼びます。カエルを水に入れ、それを緩やかに温めていくと「カエルは水温の上昇を知覚できずに死んでしまう」という現象になぞらえたネーミングです。


事業再生にあたっても全く同じ現象が生じることがあります。

すなわち、本来であれば債権者と交渉を行うことで第二会社方式による事業再生を進めるべきところ、交渉の道を避け、債権者の求めるままに債務者にとって不利な返済を進めたり、債務者にとって不利な条件を受け入れるケースです。


ぬるま湯の温度をジリジリと温度を上げられ、もはや致命的な温度になりつつあるにもかかわらず、脱出を怠るカエルのようなものです。


このような状態になった債務者は、債権者との交渉を避けるだけではなく、「債権者は良き理解者だ」と誤解してしまうことがあります。

たしかに「良き理解者」である債権者も存在しますが、ゆでカエル状態になってしまうと正しい判断を見失うこともあるのです。過分な返済を強いられたり、過度のデューデリを強要されても気づかないケースが生じるのです。


こうなると事業再生が遠のいてしまいます。

残念な話です。


STAP細胞と博士の学位
2015年11月07日(土)

『STAP細胞の論文作成をめぐり、理化学研究所がかけた研究費は約5300万円だったのに対し、不正の調査費は約9100万円かかっていたことが会計検査院の調べでわかった』との報道がなされています。

なんとまあ情けない話です。

この期に及んで小保方は代理人弁護士を通して、早稲田大学が博士号を取り消した処分に文句を言っている由、開いた口がふさがりません。


『STAP細胞はあります』と涙をこらえて記者会見をした姿に私も騙されました。

まったくもってお騒がせ人間だと思います。

日本の科学技術の脆弱性を全世界に暴露してしまったわけですので、その影響は計り知れません。

早稲田大学の審査体制も大きく問題があるとはいえ、博士号の取り消しに文句を言うとは何たる非礼でしょう。博士の学位を受けることの重みを自覚していないと言わざるを得ません。わが母校でもある早稲田大学の権威を失墜させた責任を厳しく問いたいと思います。


小保方の言動は博士の学位に値しないことは万民が認めるところです。このような者に科学者を標榜する資格はありません。学会から永久追放すべきだと思います。


債権者の本気度
2015年11月04日

債権者との交渉にあたっては、債権者の「本気度」を見なければなりません。

たとえば差し押さえを例にとります。債権者が本気で債務者の息の根を止める覚悟、すなわち破産させてもやむなしと考えているとします。この場合には債務者のメイン口座や事業用資産を差し押さえたりしてきます。

ところが、債務者の息の根を止めるのが目的ではなく、揺さぶりをかける目的であれば、たとえば自販機の売り上げ代金が振り込まれる入金口座に対し、売上債権を狙って仮差し押さえをしてくるなどの小細工をすることがあります。


この二つのケースでは債権者の回収姿勢が全く違うというわけです。

差し押さえや競売はまだマシだということもできます。


もし債権者が債権者破産の申立をするような話を始めたら要注意です。債務超過を理由に債権者破産を申し立てる危険が迫っているかもしれないからです。

債権者が破産を申し立てるのは、破産手続きで全てを白日の下に引きずり出すことが目的です。この場合でも担保権を有している債権者は強い立場にあります。担保の範囲で優先的に回収可能だからです。

担保権者はどのような場面でも強い立場にあるのです。


無担保債権者も厄介です。担保もなく、失うものがないから強いのです。債務者が破産する危険が高いとしても、その危険をあえて冒してでも回収を強化してくることもあるのです。まさに、無い袖は触れない債務者が強いのと同様、担保の無い債権者も厄介なのです。

 

無理な再生計画を作成すべきではない

 2015年10月28日(水) 

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第18回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「無理な再生計画を作成すべきではない」で、その要旨は次の通りです。

ーーー

要旨:

実際の数値ではなく偽りの数値を基に無理な計画を作成する例が少なくありません。無理な計画を作成することの弊害は何なのでしょうか。本稿では、無理な計画に焦点を当て、何故、無理な計画が作成されるのか、どのような計画を作成すべきなのかを整理することにします。

ーーー


記事を読むにはミロク情報サービスの会員になる必要があります。
会員は(1)会計事務所向けと(2)企業経営者向けに分かれています。


(1)会計事務所の先生の場合は「tvs会員」になる必要があります。
下のアドレスから著者名を指定して検索できます。
http://tvs.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html


(2)企業の経営者の場合は「GOODWILL PLUS会員」になる必要があります。
下のアドレスから著者名を指定して検索できます。
http://goodwill.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html


多くの有益な情報を入手できますので、入会することをお勧めします。
私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。


入会にあたってはお近くの(株)ミロク情報サービスの営業拠点にご連絡ください。営業拠点は下のアドレスから検索できます。
http://www.mjs.co.jp/office/tabid/479/index.php#no2


担保権を有する債権者

2015年10月25日(日) 

融資を行った銀行のような原債権者と、債権譲渡で出現したサービサーのような新債権者に分けられることは本欄や拙著の中で紹介している通りですが、担保の有無でも債権者を分類することができます。


担保権を行使することで、ただちに現金を手に入れられるので債権者にとっては強力な武器となります。換金額を運用することで運用益という果実を生むことになりますが、この果実より少ない返済しかなされていないような場合には話になりません。担保権を有する債権者に対し「担保権を行使してください」といっているようなものです。


抵当権消滅請求制度は債務者の対抗手段として、債務者の側から抵当権の消滅を請求することができる制度です。この請求が認められるためには、その不動産を債務者が必要とするという不可欠性が必要です。さらには消滅を求めるにあたって支払う金額が適正であることが求められます。


特に金額が問題です。

仮に十分な金額を債務者が提示すれば債権者は満足するのであり、債務者がその物件を必要としようが、しまいが関係ないということになります。満足できる金額が提示されれば喜んで消滅に応じるでしょう。

一般には金額が満足でないので問題になるのです。この場合、債権者が不同意であれば競売に移行することになります。経済合理性だけで判断するのではなく、たとえ金額的には不利益であっても金融機関の論理から、競売に移行する場合があることについても拙著の中で紹介していますので参照してください。

 

貸借対照表とは何か

2015年10月18日(日) 

設立したばかりの会社の財政状態はどのようなものでしょうか。自己資金を100、他人から借りた資金を100とするならば、合計で200が負債ということになります。一方、200の現金が手許にあるわけですので、この現金200が資産ということになります。その後、様々な企業活動を行うのであり、たとえば50で中古車を購入すれば、現金150、車両50と、資産内容が変化することになります。


そもそも資産の価値とは何でしょうか。過去に支払った額という考え方があります。この場合、先の例で車は50が基本となります。会社が過去に金を何に使ったのかが分かるため、会社資本の運用形態を示すものであるといえます。

過去の支払額(=購入市場)ではなく、現在において売却する場合の受取額(=売却市場)という考え方もあります。あるいは、将来の利益を獲得するための犠牲的支出なのであり、将来獲得する利益の現在価値だという考え方もあります。

このように価値判断一つをとってみても、様々な考え方がありますが、我が国では過去の取得額を基準とするという取得原価主義が採用されています。


負債とは、銀行からの借入金や仕入先に対する仕入債務などの法律上確定した債務や、法律上はまだ確定していないものの将来において負担が発生する可能性が高い引当金や、期間損益計算を適正にするために計上される未払費用などが含まれます。

負債の評価にあたっては、そもそも誰の資金なのかという大きな区別がなされます。会社の金であるならば自己資本であり、他人の金であるならば他人資本です。他人資本は返済しなければなりませんので、返済義務のない自己資本より不安定な金であるということができます。


資産から負債を控除したものが純資産であり、株主からの出資や、経営活動により獲得した利益など、返済の必要がない会社の資本をいいます。純資産は自己資本とも呼ばれます。純資産(=自己資本)と負債(=他人資本)は、会社のお金を誰から集めたのかが分かるため、会社資本の調達源泉を示すものであるといえます。


このように会社がどのように資金を調達し、どのように運用しているのかを明らかにする書類が貸借対照表であり、資産=負債+純資産という貸借対照表等式が成り立っています。


損益計算書とは何か

2015年10月12日(月) 

大学における後期の授業が始まりました。

会計学の初学者向けに新しい本を作成中ですので、一部を紹介します。将来は大学の授業でも使用する予定です。

 

最初に収益について考えてみます。たとえば商品を売り現金を受け取った場合は、商品が現金に代わっていますので収益を計上することができます。このような考え方を現金主義と呼びます。しかしそれは狭い考え方となってしまいます。なぜならば、商売でお互いの信用が生じると掛け売りが行われることになり、この場合は現金のやり取りがなされません。現金が動かないからといって収益として認めないのでは収益の範囲が狭くなってしまうというわけです。

だからといって口約束による売る・買うを基準にしたのでは曖昧に過ぎ、収益の判断が広すぎてしまいます。このような考え方を発生主義と呼びます。これでは収益が曖昧になり、正確な経営成績が把握できなくなってしまいます。そこで一定の基準が必要なのであり、収益の認識基準として実現主義という基準が採用されています。

 

一方、費用については保守的な考え方から、少しでも早く認識することで健全な経営状態を維持しようとしています。すなわち収益の実現主義に対する認識基準として、費用は発生主義で認識します。収益は実現主義で認識し、費用は発生主義で認識するとなると両者に期間的なズレが生じてしまいます。このズレを調整しようとする考え方が費用収益対応原則ということになります。

このようにして収益から費用を控除して利益を求めるわけですが、求めた利益について、それが本業の利益なのか、投資活動を含んだ利益なのか、さらには分配可能な最終利益なのか等々を把握することで企業の経営成績を明らかにする書類が損益計算書です。

 

敬愛大学で生涯学習講座を開催します

2015年10月07日(水) 

敬愛大学は、市民参加型の「人を育てる」を実践しています。同大学では、年齢、性別を問わず、それぞれの目的に向かって学ぼうとしている方々が集う空間として生涯学習講座を開講しており、「千葉市における大学の教育研究機能・地域連携等を活かした生涯学習講座」として位置付けられています。


私は平成17年から敬愛大学の客員教授を拝命していますが、今年、初めての試みとして「生涯学習講座」の一コマを受け持つことになりました。

テーマは「はじめて学ぶ会社の数字」で、概要は「日々、利用している会社の数字。数字を理解することで仕事の仕方がかわってきます。財務諸表から、具体的な企業の財務分析までを学習する」というものです。


日程は11月15日(日)、9:00~16:00(含、休憩)となっており、対象者は、「新入社員、一般の方」、開催場所は「稲毛駅前の生涯学習センター」です。

申込締切日は11月4日、定員は15名(参加者が少ない場合は開催しないとのこと)。


内容としては「損益計算書と貸借対照表」「会計と税務、資産評価」「財務分析の基礎、会社法の基礎」「金融機関との付き合い方、攻める経営と守る経営」を予定しています。


参加をご希望の方は、敬愛大学生涯学習講座係にご連絡ください。


社外監査役制度の活用

2015年10月02日(金) 

社外監査役とは株式会社の監査役であって過去に会社又はその子会社の取締役、会計参与若しくは執行役又は支配人その他の使用人となったことがないものをいいます(2条)。社内出身の監査役は会社の事情に精通しており、情報収集力に優れているという長所を有する反面、経営陣から一定の距離を置いて客観的・第三者的立場で意見を述べにくいという短所を伴うために社外監査役が求められています。


社外監査役は全ての会社に強制されず、監査役会設置会社において、半数以上の社外監査役を強制しています(335条3項)。監査役会設置会社においては、会社の事情に精通した常勤監査役の選定を求めるとともに(390条3項)、会社業務について第三者的立場にあるものを社外監査役として加え、独立した立場で意見を述べるためとされています。

公開会社である大会社においては、監査役会の設置が強制され(328条)、複雑・広範な監査対象を組織的・効率的に監査するとともに、半数以上の社外監査役を加えることで独立した立場での監査を求め、監査の実効性を高めることが期待されています。


役員のうち、責任限定契約を締結できるのは社外取締役及び社外監査役に限定されており(427条)、責任限定契約に関する定款の定めがある場合には、社外取締役及び社外監査役である旨が登記事項とされています(911条)。責任を限定する余地があるため、社外の者が就任しやすいということができます。


事業再生にあたり負債を削減した新会社において、対外的な信用を高めるために社外監査役を設置することも有効です。

自己破産が不要な理由

2015年09月26日(金) 

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第17回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「自己破産が不要な理由」で、その要旨は次の通りです。

ーーー

要旨:

最近、事業再生にあたって自称専門家が滅茶苦茶なアドバイスをしたり、自己の報酬を確保するために無理に資産売却をさせているのですから困ったものです。さらには必要のない自己破産を求める金融機関も存在します。このような現状を踏まえ、本稿では自己破産の必要性に焦点をあててみました。

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記事を読むにはミロク情報サービスの会員になる必要があります。
会員は(1)会計事務所向けと(2)企業経営者向けに分かれています。


(1)会計事務所の先生の場合は「tvs会員」になる必要があります。
下のアドレスから著者名を指定して検索できます。
http://tvs.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html


(2)企業の経営者の場合は「GOODWILL PLUS会員」になる必要があります。
下のアドレスから著者名を指定して検索できます。
http://goodwill.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html


多くの有益な情報を入手できますので、入会することをお勧めします。
私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。


入会にあたってはお近くの(株)ミロク情報サービスの営業拠点にご連絡ください。営業拠点は下のアドレスから検索できます。
http://www.mjs.co.jp/office/tabid/479/index.php#no2


社外取締役制度の活用

2015年09月20日(日) 

社外取締役とは株式会社の取締役であって、当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役若しくは執行役、支配人その他の使用人でなく(現在要件)、過去に当該株式会社又はその会社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人となったことがないもの(過去要件)をいいます(2条)。


取締役は、多くが社内出身者であり、代表取締役等の意向によって株主総会で選任され、事実上代表取締役等の支配下に置かれてしまっており、法が期待した機能、特に代表取締役等に対する監督機能が十分に発揮されていない会社も多くみられます。このような問題に対処することが期待されるのが、代表取締役等と独立した立場にある社外取締役です。


会社法は社外取締役をすべての会社に強制することはなく、特別取締役を定める場合と委員会を設置する場合に限り強制しています(373条、400条)。これ以外の場合、社外取締役を設置する義務はなく、社外取締役を設置するか否かについては、各会社の判断に委ねられています。


①本来は取締役の決議事項である重要財産の処分及び譲り受けと多額の借財について取締役の中から選定された3名以上の特別取締役で構成された取締役会で過半数の賛成で決議することができます。あらかじめ選定された取締役の事を特別取締役といいます。特別取締役を置く場合、取締役の人数が多く迅速な取締役会の開催が困難な会社において特に迅速な意思決定が必要と考えられる重要な事項(362条)について、特別取締役の決定に委ねる代わり、社外取締役の設置を条件とすることにより、取締役会の監督機能の実効性を確保する趣旨です。


②委員会を設置する場合、指名・監査・報酬の各委員会の構成員の過半数が社外取締役でなければならないとされており(400条)、代表執行役から独立した立場にある社外取締役が中心となる委員会が監督機能を発揮することで、実効性ある取締役会の監督機能が期待されています。


役員のうち、責任限定契約を締結できるのは社外取締役及び社外監査役に限定されており(427条)、責任限定契約に関する定款の定めがある場合には、社外取締役及び社外監査役である旨が登記事項とされています(911条)。責任を限定する余地があるため、社外の者が就任しやすいということができます。


事業再生において第二会社方式を採用する場合、対金融機関対策として社外取締役制度を活用する場合もあります。

この場合には、責任限定方式が有効といえます。


警察官の拳銃操作技術の向上に期待します

2015年09月15日(火) 

住宅街の路上で、通行人らを次々襲った大型犬に警察官3人が拳銃計13発を発砲し、射殺したという事件が報道されています。発砲によるけが人はなく、犬にかまれた3人がけがをしたとのこと。警察は「緊急避難の発砲で、現時点で適正かつ妥当だった」とコメントする一方で、マスコミは「跳弾がどこそこに当たった」、「たくさんの人がいたら大参事になるところだった」、「拳銃使用は適正だったのか」等々を論じています。


何を間抜けたことを言っているのでしょう。

拳銃を撃てば跳弾も発生します。

たくさんの人がいたらもっと噛まれていたかもしれません。

警察官とて生身の人間です。荒れ狂う猛犬に対し緊急避難として拳銃で射殺することに何の問題もありません。


あいかわらず報道の視点がずれていると思います。発砲の正当性が問題なのではなく、警察官の拳銃操作技術に問題があるのではないでしょうか。


日本では拳銃使用の機会が少ないと思います。滅多にない拳銃使用に備え、操作技術の訓練は十分にできているのでしょうか。

たしかに、動き回る犬が標的ですので難しいのは分かります。13発の発砲ということは、12発は効果がなかった、あるいは外れたのかもしれません。そうであるならば、今一度、拳銃操作訓練を見直してもらいたいと思います。


正確な操作技術に裏付けられた拳銃使用であれば、より広く認めて良いと思います。

刃物を振り回す凶暴犯に対してはもちろん、停止命令を無視して逃げ回る車にも、臆することなく警察権の行使として発砲を認めるべきだと思います。

そのためにも警察官の拳銃操作技術の向上に期待したいと思います。


乱高下する株価と専門家のコメント

2015年09月11日(金) 

昨日は1300円を超える上昇がみられた日経平均株価が、今日は一転800円を超える下落により一時は18000円を割り込んだと報道されています。終値は470円安となり、荒い動きを見せているようです。

まさにマネーゲームであり、不確実性下の意思決定だ、投資理論だ、金融工学だのと立派な話が通用しない事態になっています。私は株式投資は一切しませんので、直接的被害はありませんが、経済全体に与える影響を思うと心配です。


テレビ報道では、中国の個人投資家が株価ボードを見ている姿が映し出されています。金融工学には全く無縁のような一般市民が普段着で投資活動をしているようです。共産主義社会において、競輪、競馬、パチンコ、宝くじといった射幸性の高い娯楽がない中で、多くの人民が博打代わりに株式投資に走るという側面も否定できないと思います。いわば烏合の衆が右往左往しているのです。

これに不透明な国家統制経済が加わり、中国経済は完全にブラックボックス状態になっています。


ブラックボックスの影響を受けて乱高下する株価に、専門家?は後付けの理由をつけてもっともらしい顔で解説を加えています。まあ、いい加減なものです。私は一切信用していません。

株価の動きは心配ですが、専門家の皆さんが、どのような言い訳を並べるのか、コメントが楽しみです。



山口組の内部抗争と安保法案

2015年09月07日(月) 

山口組の内部抗争が勃発したと騒がれています。

一般市民を巻き込むような抗争に発展するとしたら困ったものです。

ところで、反社会的組織が勢力を広げる背景には、満足に納税義務を果たしていないために可処分所得が増えるという側面があります。平たく言えば、払うべき税金を支払わず内部留保しているから勢力が拡大するというわけです。


話変わって、安保法案が間もなく可決される由。

進め方に問題があり、違憲であるのは明白ですが、しからば反対論者は日本の防衛はどうすべきだと考えているのでしょうか?

戦争したくて軍隊を持つ国などはどこにもありません。

戦争というのは相手がいるから成り立つ国家間の争いなのです。日本が「平和国家だから戦争はしない」などとノー天気なことを言っていて、他国が侵略してきたらどうするのでしょうか?


以前、中国艦船が尖閣諸島に出現し始めた頃、普段は在日米軍に批判的なマスコミでさえ、「日米両政府の見解として尖閣諸島も日米安保の対象に含まれる」と騒いでいました。まるで、「米国も助太刀してくれるから一安心だ」と言いたげな報道でした。

「沖縄に基地が集中している・・・」と騒ぐ見方もあります。

私は「だからどうした?沖縄も日本だろ?」と言いたくなります。沖縄に集中するのは地政学的に仕方がないのです。多くの台風が沖縄を通るのと同じです。そういう位置に沖縄があるのです。なんといっても守るべき尖閣諸島は沖縄県なのです。


もし、米軍が「じゃ、撤退するので、あとは日本人だけで頑張ってね」と言われたらどうするのでしょう? それこそ徴兵制を採用し、日本軍を強化することが求められることは自明の理です。


いわば、日本は米軍の庇護のもと、負担すべき軍事力の一部を肩変わってもらっているのです。戦後、日本の経済が発展してきた遠因の一つとして、軍事力の増強をせずに経済発展に注力した結果だということもできるでしょう。その意味で、税金を払わないで勢力を拡大してきた反社会的勢力と同じではないでしょうか。


山口組の抗争を見ていて、安保法案の行く末が心配になってしまいました。


エンブレム問題と虚構の東京オリンピック

2015年09月02日(水) 

オリンピックのエンブレム問題。

似ている、似ていないというレベルの話は本質を見失っています。

佐野研二郎氏なるデザイナーは天下のインチキ野郎ではないでしょうか?

であるならば、インチキの手口や経緯を論じることは、面白おかしいかもしれませんが、再発防止という観点からは何にもなりません。


遠藤オリンピック・パラリンピック担当大臣は、エンブレムの使用中止を巡る責任問題について、「組織委員会と審査委員会、デザイナーの佐野研二郎氏、三者三様に責任があった」と答えています。

まさにその通りです。


過去の過ちに罰を与えるという信賞必罰の観点からではなく、今後の再発を防止するために責任者は責任を取るべきです。

オリンピック組織委の森喜朗会長や武藤事務総長、審査委員会の全メンバー、そして佐野氏です。彼らは責任を問われるのが当然であり、民事上の責任についても個人として連帯責任を負わせても良いとさえ思います。

責任をしっかり取らせることで、問題の再発を防ぐことができるのであって、もし、このまま誰も責任を問わないのであれば、まさに「赤信号、みんなで渡れば怖くない」となってしまいます。再発防止という観点から、抑止力が期待できなくなってしまいます。


何千万円、何億円という無駄な巨費が競技場の建て替え問題、エンブレム問題で無駄に使われています。この金を、選手の強化支援策に充てていれば、それこそ夢のあるオリンピックが実現できたと思います。

偽ベートーベンの佐村河内守。

スタップ細胞の小保方晴子。

今回の佐野研二郎。

嘘ばかりです。

このうえ、東京オリンピック自体が虚構にならないことを願うばかりです。


繰り返しますが、私は現在の日本が、東京オリンピックを開催することには大反対です。


安易に法的整理を行うことは得策ではありません

2015年08月29日(土)

山手線や地下鉄などの広告で「民事再生手続は○○円」という広告を見かけることがあります。随分と安い金額を掲げています。弁護士業界も大変な競争が始まっているようです。


しかし、私は大いに疑問を感じています。「そんなに安い金額で事件を引き受けて債権者への根回しを十分に行うことができるのだろうか・・・」と心配してしまいます。格安な料金で引き受けた場合には、おそらく事務的な手続しか行わないのでしょう。


債権者が申し立ててきた競売を停止するためとか、債権者が申し立ててきた破産手続きの開始申し立てに対抗するためとか、緊急事態を回避するため緊急避難的に申立を行うならまだしも、緊急でないなら個別の根回しを十分に行うべきなのです。

バンクミーティングを開催して債権者を呼びつけるのではなく、事前に債権者を訪問して根回しを行わなければなりません。いわば手間暇がかかるのであり、民事再生を申し立てたから全てがうまくいくというわけでないのです。


再生案に合意してもらえない場合には破産手続きに移行してしまいます。見方を変えれば、債権者の合意を得られないような、いい加減な再生案をもとに民事再生を行うのは破産を誘発してしまうことになりかねません。


事前の根回しは法的手続でなくても可能です。裁判所の力を借りることなく、すなわち、民事再生法に頼ることなく、私的手続として債権者との交渉を行うことは十分に可能なのです。十分に可能というよりも、むしろ、民事再生法に頼るのではなく債権者と交渉するほうが有効であるとさえ言えるでしょう。

なぜならば、債権者の合意を得ることで柔軟な解決策が期待できるからです。たとえば、第二会社への資産譲渡あるいは事業譲渡を実現することが可能になるのです。


安易な法的整理を行うことは得策ではないということに注意してください。


みなし解散

2015年08月23日(日)

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第16回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「みなし解散」で、その要旨は次の通りです。

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要旨:

会社を清算するには費用と時間がかかるため、解散手続きを開始するとともに休眠の届出を行い、活動を停止したまま放置する方法により清算を先送りする方法がとられることがあります。本稿では、この「みなし解散の制度」を紹介します。

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記事を読むにはミロク情報サービスの会員になる必要があります。
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多くの有益な情報を入手できますので、入会することをお勧めします。
私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。


入会にあたってはお近くの(株)ミロク情報サービスの営業拠点にご連絡ください。営業拠点は下のアドレスから検索できます。
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監査役設置会社と非設置会社の違い

2015年08月20日(木)

監査役が置かれていない会社では、監査役による監査がないので、株主の監督権限を強化する必要があります。

業務監査権限を有する監査役が置かれている会社と、監査役が置かれていない会社では異なる規制をしています。


①取締役が一定の事実を発見した場合の報告義務の宛先について、監査役設置会社の取締役は監査役ですが、非設置会社では株主とされています(357条)。

②株主による取締役の違法行為差止請求権の行使要件について、監査役設置会社の株主は、会社に「同復することができない損害」が生じるおそれが必要ですが、非設置会社の株主は、会社に「著しい損害」が生じるおそれがある場合で良いとされています(360条)。

③監査役設置会社の株主には、取締役会招集請求権・招集権は認められませんが、非設置会社の株主には、一定の場合にはこれが認められ(367条)、当該取締役会への出席・意見陳述権も認められています。

④株主による取締役会議事録閲覧権の行使要件について、監査役設置会社の株主は裁判所の許可が必要ですが、非設置会社の株主は裁判所の許可は不要です(371条)。

⑤監査役設置会社では426条1項の取締役等の任務解怠責任の一部免除制度の適用はあるものの、非設置会社には適用されません。


中小零細企業の場合、監査役を置いていない例が多いと想像できますが、端的に言えば、監査役が設置されていない場合には、監査役に代わって株主の監督権が強化されているということができます。


監査役の設置と監査役の機能

2015年08月18日(火) 

監査役とは、取締役の職務執行の監査にあたる株式会社の機関で(381条)、全ての会社に設置が強制されるわけではなく、取締役会設置会社と会計監査人設置会社において設置が強制されています(327条2項)。

取締役会設置会社であっても、大会社でない非公開会社で会計参与を設置した場合には、監査役の設置は不要とされています(327条、328条)。


取締役会設置会社においては、取締役会が強大な権限を有する代表取締役等の監督を行うのですが、自己監査としての限界があります。また、会社経営の知識も能力も乏しい株主には、取締役に対するコントロールを期待し難い面もあります。

そこで、監査役に株主に代わって業務執行機関以外の第三者的立場から、取締役の職務執行を常時専門的に監査することを期待するとともに、また会計監査人設置会社では、会計監査人の職務執行と連携し、その独立性を確保することが期待されているのです。


退任登記が未済の取締役の責任関係

2015年08月13日(木) 

取締役が退任したのに退任登記がなされておらず、登記簿上は従来のまま取締役になっている場合、会社は責任を負うのでしょうか。また取締役個人は429条の責任を負うのでしょうか。


まず会社の責任ですが、退任登記がない以上、908条1項により『登記の後でなければ、これをもって善意の第三者に対抗することができない』とされており、善意の第三者には対抗できません。よって、相手が善意なら会社は責任を負うことになります。この点は条文を当てはめて解釈するだけですので問題にはなりません。


次に退任した取締役の個人責任ですが、429条の責任は取締役であることが前提です。退任した以上、もはや役員ではないのだから429条の責任は負わないのではないかという点が問題になります。

さらに、会社法908条2項の『故意又は過失によって不実の事項を登記した者は、その事項が不実であることをもって善意の第三者に対抗することができない』という規定は、登記申請者の責任を定めた規定であり、登記申請者ではなく、不実登記に加担した取締役に直接適用できないともいえます。


908条2項の趣旨は取引の安全を図ることにあるのであって、登記申請者でなくとも不実登記の出現に帰責性あるものに類推適用すべきといえます。たとえば明示の承諾を与えた場合は908条2項を類推適用すべきであり、取締役でないことを善意の第三者に対抗することはできないと解されています。

もっとも、退任登記は会社が行うものであり、退任した取締役にはできませんので、黙示の許諾では足らず明示の許諾が求められています。


取締役でないことを善意の第三者に対抗することはできない結果、取締役であることを前提とした429条の責任を問われることになり、退任したとはいえ、個人としての責任を負うことになります。会社も個人も責任を問われる可能性がありますので、退任に伴う登記はしっかりと済ませておくことが必要です。



退任した代表取締役の行為は会社に帰属するか

2015年08月09日(日) 

代表取締役が、代表取締役を退任し平取締役になり、新しい代表者の登記をした後も代表権を有するかのような名称を使用する場合、その者の行為を代表者の行為として会社の責任を追及できるのでしょうか。あるいは、勝手に代表を名乗ったのだから会社は責任を負わないと言えるのでしょうか。

「株式会社は、代表取締役以外の取締役に社長、副社長その他株式会社を代表する権限を有するものと認められる名称を付した場合には、当該取締役がした行為について、善意の第三者に対してその責任を負う」との354条を適用し、表見代表取締役の規定を適用できないかが問題になります。


そもそも354条は外観法理により取引安全を図る趣旨の規定であり、354条を適用するには①外観の存在、②帰責性、③外観への信頼が必要となります。

退任登記がある以上、908条1項(積極的公示力)で悪意が犠牲され③外観への信頼を欠くのではないかとも考えられます。分かりやすく表せば、登記簿上は他人名義になっているのだから、いくら代表権があるような名称を用いているからといって相手側は違いを知るべきではないかというわけです。


この点、354条は908条の例外規定であると考えられており、優先適用されると解されています。ただし、取引上保護に値する信頼でなければならず、善意のみならず無重過失も必要です。

名称使用に会社の許諾があるならば会社への帰責性が認められることになり、相手が善意かつ無重過失なら会社に効果が帰属することになります。


それでは、退任した後、従業員になった場合は取締役ではないので会社に効果は帰属しないといえるでしょうか。というのは、354条は取締役であることが要件なので、取締役でない以上、直接適用はできないとも考えられるからです。

取引相手を保護する必要性は取締役の地位にあったか否かで変わらず、使用人が代表権を有するような名称を使用していた場合にも趣旨が妥当するといえます。したがって、354条を類推適用することができると解されており、黙示の許諾があったと理解できる場合には会社の責任を追求できることになります。


取締役不正に対する株主の対抗手段

2015年08月05日(水) 

取締役の権限は強大ですので、権限が不正に行使される場合は会社が損害を被るおそれがあります。監査役等の制度により牽制することになりますが、取締役との馴れ合いにより適正な監督・監査を怠るおそれもあり十分ではありません。

そこで会社法は会社の実質的所有者である株主に、取締役の不正行為に対する対抗手段を与えています。


事前の対抗手段として、株主は取締役が法令・定款に違反する行為をし、またはそのおそれがある場合で、かつ、会社に著しい損害(監査役設置会社・委社会設置会社では「回復することができない損害」)が生じるおそれがあるときは、取締役の行為の差止めを請求できます(360条)。

また、取締役が違法等な募集株式の発行等または新株予約権の発行を行おうとしている場合は、それによって不利益を受けるおそれのある株主は発行差止を請求できます(210条、247条)。これは、会社に損害がなくても株主の利益が害される場合があることから、株主の利益を保護するため、360条とは別に認められた対抗手段とされています。


事後の対抗手段として、株主総会等の決議取消しの訴え・決議無効確認の訴え・決議不存在確認の訴え(831条、830条)、新株発行・自己株式処分無効の訴え(828条1項2号3号)、資本金の額の減少の無効の訴え(同条項5号)、合併無効の訴え(同条項7号8号)等の無効の訴えによって、取締役の違法な行為の効力を否定する対抗手段が株主に与えられています。


さらに株主代表訴訟が認められる(847条)他、取締役に任務懈怠について悪意または重過失があれば、取締役に対して直接損害賠償請求もできます(429条)。他にも、取締役の解任(339条)、そのための株主総会招集請求権・招集権(297条)や株主提案権のほか、少数株主権として取締役解任の訴えも認められています(854条)

これらの対抗手段行使の前提となる情報を集めるために、各種書類閲覧謄写請求権、会作帳簿閲覧謄写請求権、検査役選任請求権、子会社に関する書類の閲覧謄写請求権等が認められています。


このように、株主の権利は保障されていますので、株主の中に抵抗勢力がいないかどうかを見極めることが大切です。抵抗勢力が存在する場合には、法的権利行使を封じるための対策も必要になりますので注意しなければなりません。

主観的に基づいた無益な論争ではなく事実を示すべし

2015年08月01日(土) 

東京オリンピック・パラリンピックのロゴマークがベルギーのリエージュ劇場のロゴマークに似ているとして、このロゴマークをデザインした建築家が法的対応を検討していることが報じられています。

国立競技場の計画見直しに続き、ケチがついてしまいました。


東北復興の名のもとに行われている、過剰な復興工事で国内の建設業界は手一杯なのに、さらに東京オリンピックにかかわる様々な建設工事が行われるのです。

今の日本にオリンピックが必要なのか、大いに疑問を感じてしまいます。

この際、勇気をもってオリンピック招致を辞退すべきではないでしょうか?

「お・も・て・な・し」などと浮かれている場合かよ、と疑問を感じてしまいます。


ロゴマーク。

これが似ているのか、似ていないのか、凡人の私にはわかりません。

似ていると言われれば似ているような気もします。

ベルギーのロゴマークをデザインしたデザイナーが、法的対応を検討しているとのことですが、「俺が作ったロゴマークに似ているから使用するな」とでもいうのでしょうか?


これに対し、「似ていない」という主張をしたところで「主観の差」であって無意味な論争に過ぎないと思います。

本気で対抗するならば、「ベルギーのロゴマーク」に似ていると思われるマークをできるだけ多く探し出し、公表してみるべきではないでしょうか。

他にも多くの「似ている」マークがあることを示し、「ベルギーのロゴマーク」だけが唯一絶対ではないことを疎明するという戦法です。すなわち、「俺が作った・・・」という相手に対し、「それなら、お前が作ったロゴマークは誰が作ったのだ?」と仕掛けるわけです。


「似ている」、「似ていない」といった主観に基づいた無益な論争よりも、他にも事例が存在するという客観に基づいた事実の列挙の方が、遥かにマシな対応策だと思います。


なんでもかんでも東電や国の責任にするな!

2015年07年28日(火) 

福島県飯舘村が計画的避難区域に指定されることを知った翌日の2011年4月12日未明、首をつって自殺した102歳の老人の遺族3人が、『自殺したのは原発事故が原因だ』として東電に慰謝料など約6000万円の損害賠償を求めて29日に、福島地裁に訴えを起こすとのこと。妻(62歳)と孫2人の計3人が原告だそうです。(福島民友新聞から引用)


「ふざけんな!」と声を大に叫びたいと思います。


なんでもかんでも「東電の責任だ」、「国の責任だ」と、もはや言いがかりにすぎません。

東電も、国も、毅然とした態度で拒絶してもらいたいと思います。

散々、原発利得を享受した挙句、事故が起きたから補償を寄こせというならば、今まで得た原発利得を返せと言いたくもなります。

回りまわって、我々、国民の負担になるからです。


猛暑が続いています。

『熱中症を避けるために、適切な冷房を使用しましょう』と、啓蒙されています。

言い換えれば、『暑いからクーラーを使いましょう』と言っているのと同じです。

そのためには電力が必要なのであり、自然エネルギーの確保が完全ではない今は原子力発電に依存せざるを得ないのです。

四の五のと、文句を言うならば電力を使うなと言いたいところです。

この際、全ての電化製品に電力消費税を課すことで、電気の重要性を、ひいては原子力の重要性を明らかにすべきだと思います。


放射能は万年単位で人類に危険をもたらすとの指摘がありますが、心配には及びません。

なぜならば、化石燃料が枯渇する百年単位で人類の自滅的争いが勃発し、最悪の場合、核戦争による人類の自滅すらあり得るからです。

超長期の心配をする前に、目の前の心配をすべきです。


102歳の老人の自殺に対し、支払うべき金は一円も無いと私は断言します。


事業再生に成功する経営者と失敗する経営者

2015年07月27日(月) 

事業再生に特化したコンサルティング業務を15年も行ってきたため、様々な例に遭遇しました。

債権者に無理な対応を強要して対立を深め失敗したり、中途半端な対応をしたために途中で挫折したり、あるいは、助言を曖昧に受け止めて素人療法で対応したために破綻したといった不幸な例も目のあたりにしました。債権者に遠慮して自らの主張を伝えることができないままに不利な形で押し切られたり、債権者に強引な返済を余儀なくされた事例なども少なくありません。


私自身が関与したものではありませんが、債務者にとって不本意な例についても、できるだけ忠実に再現することで無謀な債権者の実態を明らかにし、同じような弱い立場にある債務者に警鐘をならすということも意味のあることではないかと考えています。機会を見て出版したいと思っています。


本欄でも指摘しましたが、再生に成功する経営者には共通した点があると実感しています。まず第一には熱意です。「必ず再建させる」という熱意は、成功した全ての経営者が持っていました。さらには決断の速さあるいは大胆さ、真面目さと割り切りの良さ、必要な経費と不要な経費を見極められる力、短期ではなく長期を展望する姿勢などを共通点として指摘できると感じています。さらには有能なスタッフに恵まれていることも重要なポイントです。

反対に、優柔不断であったり、決断が遅かったり、さらには債権者の顔色を必要以上に窺がうような経営者には、事業再生を成功させるのは荷が重いようです。途中でやめるくらいならば、最初からやらない方が傷口を広げずに済むかもしれません。


経営者は孤独です。

だからこそ、頑張っている孤独な経営者に少しでも力になりたいと思っています。

再建を果たした経営者が一同に集う場、更なる飛躍が期待できるような場を提供できるよう企画したいと思っています。


債権譲渡の利用

2015年07月24日(金) 

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第15回の経営研究レポートが公開されました。

 

今回のテーマは「債権譲渡の利用」で、その要旨は次の通りです。

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債権放棄も債権譲渡も、「これ以上は回収(返済)をしない」というわけですから、金額に関する限り同じことです。何故、債権譲渡が選ばれるのかについては前号で明らかにした通りですが、実務上は様々な形の債権譲渡が行われています。本稿では債権譲渡に焦点をあてて実態を明らかにします。

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記事を読むにはミロク情報サービスの会員になる必要があります。
会員は(1)会計事務所向けと(2)企業経営者向けに分かれています。

 

(1)会計事務所の先生の場合は「tvs会員」になる必要があります。
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(2)企業の経営者の場合は「GOODWILL PLUS会員」になる必要があります。
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多くの有益な情報を入手できますので、入会することをお勧めします。
私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。

 

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取締役会設置会社と非設置会社

2015年07月23日(木) 

取締役会が設置されている会社と設置されていない会社があります。


取締役会設置会社では、取締役は取締役会の構成員として業務執行の決定に参加し、委員会設置会社を除く取締役会設置会社では業務執行取締役として会社の業務を執行することになります(362条、363条)。

①業務執行の決定は原則として取締役会が行います(362条2項)。

②取締役会が一定の事項の決定を代表取締役等に委任することは可能ですが制限されており、重要な財産の処分・譲受け等の重要な業務執行の決定は取締役会の専決事項とされています(同条4項)。合議体で慎重に判断させるのが妥当だからです。


一方、取締役会非設置会社では、取締役が業務を執行し、原則として会社を代表することになります(348条、349条)。

①業務執行の決定は原則として各取締役が行います(348条1項)。ただし、取締役が2人以上いる場合は、原則として取締役の過半数で決定します。

②取締役は、支配人の選任・解任等の重要な事項の決定を一部の取締役に委任できません。これらの決定は慎重に判断させるのが妥当だからです。


このように、取締役「会」は設置しない場合もありますが、「取締役」は必須の機関です。

取締役の権限は広範かつ強力なものなので、取締役の業務執行に対する監査・監督制度が構築されています。

会社法が制定された平成17年以前は、取締役が3人以上必要でした。

当時、知人に頼まれて取締役を引き受けたという例も散見されます。名前を貸しただけの名目取締役であっても責任は免責されません。

取締役の辞任を視野に入れ、見直すべきかもしれません。


日本の将来に係ることに老人は関与すべきではない

2015年07月19日(日) 

国立競技場の建築計画が白紙に戻った由、あたり前の話であってコメントにも値しません。

責任の所在もあいまいな中、とんだ茶番劇を演じてしまいました。世界に向けて、後進国としての日本の恥部をさらけ出してしまったと思います。


そもそも「東京」オリンピックのメイン会場のデザインを何故、「世界各地」の建築家から募るのでしょう。諸外国の力を借りなくとも国内勢で十分です。むしろ外国勢は締め出すべきです。


審査委員長の安藤忠雄氏は73歳ですが、これから長きに渡り受け継がれる建築物を、70歳を過ぎた老人が選ぶ必要があるのでしょうか。将来の日本を考えるならば、老人の出番ではなく若者の出番なのです。

弁明会見でもヘラヘラ笑いながら、いまだに「デザインを残したい」などと言う審査委員長のどこが「有識者」なのでしょうか。私にはアクセルとブレーキを間違える老人と同じに見えてしまいます。


そもそも有識者会議とは何なのでしょうか。

どれほどの有識を持っているのか知りませんが、オリンピック開催時に存命なのかすら分からない後期高齢者が会議のメンバーであること自体が、有識者会議の限界を露呈していると思います。


「日本の将来に係る有識者会議に還暦を過ぎたメンバーを入れるべきではない」、「年寄りは引っ込んでいろ」と、声を大にしたいところです。若者の考えを大きく取り入れることにより、夢のある日本を築いていってもらいたいと思います。


老人が外国から選ぶのではなく、若者が国内から選ぶべきだと思います。


スカイマークの争奪戦と経営者責任

2015年07月16日(木) 

安全保障関連法案が国会を通過すると騒がれている中、経営破綻したスカイマークの支援に米デルタ航空が名乗りを上げ、ANAホールディングス(HD)とのスカイマーク争奪戦が繰り広げられているようです。8月の債権者集会は、日米の航空大手2社による争いの場になりそうです。


デルタとANAのスカイマーク争奪戦の陰に隠れ、旧経営者である西久保慎一氏の責任追及がおろそかになっているように感じられます。JALの経営破綻を期に、航空業界の再編やLCCの台頭など、経営環境が大きく変化する中での経営破綻ですが、「CAにミニスカートを着用させる」「エアバスの大型機を購入する」などの施策を見る限り、「西久保氏のワンマン体制による経営判断の誤りがそもそもの要因である」と断じられても致し方ないと思います。


西久保氏は巨額の私財をスカイマークに投じて育てようとした経緯はあるものの、それは免責の理由にはなりません。日本中の多くの中小企業経営者も私財を投入して経営継続、経営発展を目指しているのであり、会社の規模や私財の多寡を考慮すべきではないからです。


デルタかANAかという争奪戦に目を奪われるのではなく、経営者責任をどのように果たすのかを注視すべきだと思います。


お詫び(ホームページの不調)

2015年07月15日(木) 

2015年7月15日の朝から夕方にかけて、当社のホームページにアクセスできない状態が生じました。この間、ホームページへのアクセスの他、メールの送受信ができませんでした。


原因については現在調査中ですが、ご迷惑、ご心配をおかけいたしましたことをお詫びします。


取締役の競業避止義務

2015年07月13日(月) 

取締役は会社の業務執行の意思決定をなす取締役会の一員として事業の機密に通じているので、得意先や取引機会を奪うなど、会社の利益を犠牲にして自己または第三者の利益を図る危険があります。このような危険を回避するため会社法は取締役に競業避止義務を課しています。

会社法356条1項は、『取締役は、次に掲げる場合には株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない』と規定しており、取締役が会社と競業するような取引を行なう場合を挙げています。


ここで、株式会社の事業に属する取引とは、『会社が実際に行う事業と市場において競合し、会社と取締役との間に利益衝突を生じるおそれのある取引』といわれています。たとえば会社が開業の準備に着手しているにすぎず、現実に事業を行っていないような場合でも、かかる準備行為が「事業の部類に属する取引」であると理解されています。

もっとも、取締役が土地の購入をした場合は、事業をしているわけではなく補助的業務に過ぎず、得意先喪失などの危険はないので競業取引にはあたらないとされています。


競業取引であるなら取締役会の承認が必要になるところ、これが為されず会社に損害が生じているならば、会社は取締役に対し法令違反に基づく損害賠償を請求できることになります。この損害額は取締役が得た利益の額と推定されています(423条)。さらに、株主は取締役を解任でき、取締役および監査役に対して監視義務違反により損害賠償を請求することもできます。


取締役退任後は会社と取締役との間に委任契約関係はなくなりますので、原則として退任後の取締役は競業避止義務を負わないとされています。しかし、在任中から顧客を移転し、従業員の引き抜きをしているなどの先行する行為がある場合や、退任後に大量の従業員を引き抜く場合などの、特段の事情がある場合には、在任中の委任契約に伴う付随義務として負う競業避止義務に違反することがあるとされています。


事業再生のどさくさに紛れて、一部の取締役が沈みかけている泥船から抜け出して新会社を設立するような場合などは、これに該当するといえるでしょう。



東芝の不適切会計処理と国立競技場の建て替え

2015年07月09日(木) 

東芝の不適切な会計処理の総額が2000億円規模に膨らむ可能性がある旨の報道がなされています。資金調達力が低下する恐れにより主要取引銀行に対し、5000億~6000億円の融資枠設定を打診したとのこと。大変な不祥事だと思います。

一企業の不祥事にとどまらず、会計監査制度の抜本的見直しという大きな社会問題にも発展すべき重大問題です。


一方、国立競技場の改築費が当初よりも900億円多い2520億円になることが、日本スポーツ振興センターが開いた有識者による会議で決まったとのこと。ハコ物の弊害が問われる中、究極の無駄遣いであり、後世への負担の押しつけだと思います。

白紙撤回と責任者の処分を問うべき重大問題です。誰もが不要と思うような奇怪な建造物の建設を強行する必然性が理解できません。隠れた利権を暴き出すことで糾弾すべき新問題が明らかになるかもしれません。


どちらも事の重大性に比して中途半端な報道に終始していると思います。

単に三面記事として騒ぐのではなく、事の問題点を正確に洗い出し、背景を明らかにするとともに責任を追及し、再発を防ぐことが必要だと思います。


大衆迎合の政治も情けないものですが、三面記事に徹するマスコミも似たようなものではないでしょうか。


実現可能なものを実現することが真の交渉です

2015年07月05日(日) 

ISISに拘束された日本人人質解放の条件として、ヨルダンのパイロットの救出を求めるのは無理な話だという点を本欄で指摘しました(2015年2月1日)。

パイロットが既に死んでいるなら、交渉条件にすること自体に無理があるのです。善し悪しは別として、無理なものは無理なのです。無理な要求は実現不能なのであって交渉になっていません。 実現可能なものを実現することが、真の「交渉」だと思います。

相手の要求が無茶苦茶だとしても、当方の要求が実現不可能なものであったのでは同じようなものだと言わなければなりません。


北朝鮮が拉致被害者らの再調査を始めて4日で1年になり、北朝鮮から「報告延期」が伝えられたようです。被害者の帰国に望みをつないできた被害者家族らは憤りをあらわにしているようです。無理もありません。


横田めぐみさんの解放。

他人ごとではなく、子の親として、心から期待します。

しかし、精神の病で人前に出せないとか、本当に死んでしまっているので出せないのであれば、めぐみさんの解放を不可避の交渉条件にすることは間違っていると言わざるを得ません。ヨルダンのパイロットと同じ論法です。


解決できない要求をしても解決できないのと同様に、何人あるいは何十人かを帰国させたところで本当の解決になはなりません。2014年6月4日の本欄で指摘したように、北朝鮮に大使館を設置し、拉致された被害者がいつでも逃げ込めるようにすべきではないでしょうか。

被害者の会の一部には、わけのわからない輩もいるようです。圧力団体を気取って胡散臭い活動をしている輩もいるようです。そんな連中に解決できるとは到底思えません。

この際、当方の要求内容を根底から見直すべきです。


正常債権のM&Aと不良債権のM&A

2015年07月01日(水) 

最近はM&Aが盛んになってきました。その理由の一つとして「後継者がいない場合に事業を売却する」というニーズを挙げることができます。この場合は、単に後継者がいないだけで事業そのものは順調に経営されており、いわば正常債権のM&Aといえます。

一方、事業再生を行う過程で第二会社を作り、これを第三者に売却するというケースもあります。第三者にしてみれば、正常債権として新設された第二会社を取得することで倒産隔離を確実なものにするのであり、いわば不良債権のM&Aといえます。


正常債権のM&Aの場合、「いくらで会社を売買できるか」「どんな経営計画が期待できるか」といった点が最低限の検討課題になります。不良債権のM&Aの場合は、これに加えて、「残債務の切り離しができるのか」「保証債務は免責になるのか」といった点も検討しなければなりません。


諸課題が山積されるM&Aですが、さらに次のような問題点があること指摘しておきます。


①弁護士法に違反しないか

弁護士以外の者が、一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁もしくは和解その他法律事務を取り扱うことは禁止されている。(弁護士法72条)

②双方代理の禁止に違反しないか

同一の法律行為について当事者双方の代理人となることは禁止されている。(民法108条)

③M&Aの仲介業者やアドバイザリーに、特別の資格は無いし、監督官庁もない。

不動産取引には宅地建物取引業者に資格が必要であり、営業保証金を預託することで損害を与えた時の賠償の担保にもなっている。M&A業者には法的規制が全くない。

――


事業再生が必要な企業が再生を実現すると、新しいビジネスを展開する段階に移行します。そもそも利益が出る事業として再生したわけですから、時間の経過とともに事業拡大を目指すのは自然な話です。

「自分の会社を再生することで経営を守る(守る立場)」から「他人の会社の事業再生を支援することで経営を伸ばす(攻める立場)」へ移行するわけです。

このようなケースでもM&Aが利用されており、今後、M&Aは更に注目を集めるのではないでしょうか。


外国人経営者に多額の報酬が必要なのか

2015年06月26日(金) 

『武田薬品工業はフランソワ・ロジェ最高財務責任者(CFO)が退任すると発表した。食品大手のネスレ(スイス)の次期CFOに引き抜かれた。武田はここ数年、国内外から優秀な人材を積極的に引き抜き、登用する「人事のグローバル化」を進めてきたが、武田自身も集めた人材を他社に引き抜かれる課題に直面している。』(朝日新聞デジタルより引用)


多額の報酬で外国人を引き抜いたものの、他社に引き抜かれてしまうとは、なんとも情けない話です。


先日はソフトバンクでインド人のニケシュ・アローラ氏に対し165億5600万円の報酬を支払ったとのことでした。インド市場を狙うとの魂胆があるのでしょうが、それにしても異例の巨額報酬だと思います。

こんな金を払えるなら、通信費を下げろと言いたくもなります。


日産自動車もカルロス・ゴーン社長の報酬が10億3500万円となり、初めて10億を超えたことを明らかにしました。日産の業績は好調とはいえ26年3月期(9億9500万円)から4千万円増えただけです。増加額がまるまる報酬アップになったというわけです。

日産自動車が公表した株主総会の招集通知によると、2015年3月期の取締役報酬は11人の合計で14億6000万円ですので、カルロス・ゴーン社長の取締役報酬額が大半を占めていることになります。


外国人を重用するにも限度があってしかるべきです。日本人経営者で十分ですし、日本人経営者に多額の報酬を支払うならば、同じ日本人の励みになり、結果として日本経済のさらなる発展につながるのだと思います。


2000年当時、外資系サービサーが不良債権を買いあさり、回収して巨額の利益を得ていました。当時の某外資系サービサーのアメリカ人責任者が「数年は荒稼ぎさせてもらう。目標を達成したら本国に帰る」と言っていたのを想い出しました。


外国人に弱い日本人・・・。情けない話です。


債権者の最終処分

2015年06月24日(水)

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第14回の経営研究レポートが公開されました。

 

今回のテーマは「債権者の最終処分」で、その要旨は次の通りです。

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債権者の行動がどのようになるか、拙著の中で折に触れて説明してきました。本稿では最終処理に焦点をあてて、債権者の行動を整理します。職業会計人である読者の皆様にとって至極当然のことでしょうが、大切な関与先の経営者には必ずしも十分に理解されていないかもしれません。本稿が関与先への情報提供に役立てば幸いです。

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記事を読むにはミロク情報サービスの会員になる必要があります。
会員は(1)会計事務所向けと(2)企業経営者向けに分かれています。

 

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多くの有益な情報を入手できますので、入会することをお勧めします。
私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。

 

入会にあたってはお近くの(株)ミロク情報サービスの営業拠点にご連絡ください。営業拠点は下のアドレスから検索できます。
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従来の経営者は信頼を得られる経営者なのか

2015年06年21日(日) 

「経営権は第三者にすること」が第二会社方式における銀行の条件になる場合があることについて、先日の本欄で指摘した通りです。経営者責任を問うために金融機関としては、従来の経営者が第二会社の取締役に就任することはもちろん、株主になることも認めないという例もあります。

 

この場合、信頼できる第三者に経営者や株主の役割を演じる「味方」になってもらう必要があります。一時的に味方になってくれたとしても、将来において裏切られたのでは経営を奪われてしまうということになりかねませんので、信頼できる第三者でなければなりません。

 

信頼できるということは従来の経営者の立場から見ただけの話ではありません。

第三者を演じる立場からしても同様です。従来の経営者を信頼できるからこそ「第三者の役」を引き受けるのです。取締役を引き受けるということは、会社法429条の損害賠償責任の他のリスクを伴います。リスクを認識したうえで引き受けるということは、従来の経営者との間に信頼関係があるからに他ならないのです。


第三者が必要であるにもかかわらず信頼関係が築けないならば、第二会社方式による事業再生は困難になってしまいます。経営者一族を守るために協力してくれる第三者をいかにして確保するのかということは、第三者が信頼できるかどうかという話ではなく、まさに従来の経営者自身が信頼に値する経営者であるのかという話でもあるのです。


新規事業への取り組みは慎重にすべきです

2015年06月18日(木)

事業再生が失敗した場合、その行く末は「破産」か「第三者への事業譲渡」ということになります。このような結末に至る前には必ず前兆があります。


たとえば、「全く別の事業に手を出す」というのが典型例です。

存在しない様々な偽製品に手を出すのは、経営者として正常な判断ができなくなっている証拠ともいえるでしょう。


「夢の超小型バッテリー事業に手を出した事業用資産経営者」

「海水魚と淡水魚の両方を養殖できる画期的な水槽に手を出したサービス業経営者」

「水道水を万能の水に変換する装置の販売に手を出した建築業経営者」

等々は、存在しない偽製品に活路を見出し、全く別の業種に乗り出してしまった失敗例です。偽製品に騙されたという意味では詐欺の被害者ともいえるでしょう。


製品として存在するものの、本来業務とはかけ離れた事業に手を出して傷口を広げるケースもあります。

「発芽米に経営資源を過度に投入して失敗したラブホテル業者」

「ホステス向けのエステに手を出して失敗した飲食業者」

「魚の養殖業に手を出して新たな損失を計上することになった不動産業者」

等々は、本業に行き詰った末にさらに傷口を広げたケースです。


起死回生を図ろうとして思わぬ失敗をすることになりかねません。

経営が順調であれば、新規事業に取り組むというリスクを選択することも許されます。失敗リスクのリターンとして成功による利益を得ることができるのです。仮に失敗しても、経営が順調であれば、失敗した新事業から撤退することによりリカバリーできる可能性も高いということができます。

しかし、経営が行き詰まった状態で失敗リスクを選択し、それが失敗に終わった場合には、失敗した新事業から撤退すればよいという問題ではなく、本来の事業の破綻が待っているということに留意しなければならないのです。


究極の第二会社方式

2015年06月14日(日) 

事業再生において「第二会社方式」が採用される理由の一つとして、第三者に経営権が移転しているという外観上の問題をクリアーすることができるという点があります。

従来の経営者A氏が経営責任を取った結果として経営権をB氏に移転する形をとれるというわけです。

この場合、金融機関としては「経営者A氏は経営責任を果たした結果、経営権も第三者であるB氏に移転し、さらには資産も処分した。よってこれ以上の回収はできない」ということで、無税直接償却という形で不良債権を最終処理するのです。


経営者に経営責任を果たしてもらうという論理は、金融機関の独特な論理であるということもできます。経済合理性だけを考えるならば、経営権が第三者に移ろうが、従来の経営者一族に残ろうが、どちらでも良いのですが、それでは「債権者は債権を放棄するという形で貸付責任を果たしたのに、経営者は責任を果たしていないのは不公平だ」ということになってしまうのです。


このような考え方の是非は別として、現に「経営権は第三者にすること」が第二会社方式における銀行の条件になることは少なくありません。

A氏には経営者責任を果たしてもらうので、第二会社の取締役に就任することは認められないというわけです。中には第二会社の株主も認めないという例もあります。


そこで私が提唱している方法は、当面の間、第三者の役割を演じる「味方」を確保するというものです。この「味方」は、将来において経営権を戻してもらうという役割を演じるのであり、信頼できる者でなければなりません。


先日の本欄で、敵と味方を論じましたが、まさに信頼できる味方でなければならないのです。一時的に味方になってくれたとしても、将来において裏切られたのでは経営を奪われてしまうということになりかねませんので注意が必要です

誰にどういう条件で「第三者」を演じてもらうのか。「取締役を演じてもらう」場合と「株主を演じてもらう」場合のそれぞれについて明確にしておく必要があります。

お互いに信頼関係がなければ成り立たない、究極の「第二会社方式」といえるでしょう。


ペットボトルの落下事件と憲法改正

2015年06月11日(木) 

東京都中央区のマンション前でペットボトルが落下し、妊娠中の女性の肩に当たったという事件が報道されています。警視庁は投げ落とした10代の少年を逮捕したとのことです。


32階建の高層マンションの何階から放出したのか定かではありませんが、未必の故意による殺人罪未遂ともいえる重大事件だと思います。高層階からの物体の投げ捨てを放置していたのでは、安心して街中を歩けなくなってしまいます。

原因を究明し、再発防止対策をすべきだと思います。


マスコミの報道は完全に視点がずれています。

2リットルのペットボトルを高い位置から落とし、どの程度の衝撃が出るか、クレーン車を用意して中継しているTV局もあります。中にはレポーターが大袈裟にヘルメットを着用したり、ペナペナな合板を突き破らせたり、柔らかい一斗缶を凹ませたりとオーバーアクションの映像を流して騒いでいます。


そんな報道に何の意味があるのでしょうか。

ペットボトルの破壊力ではなく、なぜ少年はそのような行動をしたのか、どこにどんな問題があったのか、再発防止のためにどのような対策が必要なのか等々を明らかにすべきなのです。場合によっては、○階建以上の建物については、建物から○メーター以内には通路を作ってはならない、あるいは何らかの落下防止策を講じなければならないというような建築基準法の改正も議論されるべきかもしれません。


本欄で何度も指摘しているように、マスコミの報道は日本国を誤った方向に導いているとしか思えません。

無知な大衆を誤った報道で誘導するほど怖いことはありません。安保法制が憲法第9条に反するかどうかの議論も結構ですが、表現の自由を規定した憲法21条の保障のもとにあるとされる報道の自由に名を借りた大衆迎合の報道こそ危険だと思います。


この際、憲法第9条だけではなく、第21条も見直すべきではないでしょうか。

ペットボトルの落下事件の報道を見て、憲法改正の必要性を考えてしまいました。


商号の続用と免責の登記

2015年06月10日(水) 

事業譲渡に際し、譲渡会社の債権について債務引受けがないのであれば譲受会社は弁済責任を負わないのが原則です。しかし、譲受会社が譲渡会社の商号を続用する場合には、債権者は事業主体の交替を知りえず、譲受会社たる現事業主を自己の債務者と考えたり、または事業譲渡の事実を知っていたとしても、債務の履行を譲受会社に請求できると誤認する場合も少なくありません。そこで、商号続用に対する信頼を保護するため、譲受会社にも弁済責任を負わされています(22条)。


ただし、商号続用の場合であっても、譲受会社が譲渡会社の債務の弁済責任を負わない旨を登記した場合や、譲渡会社・譲受会社から第三者に対してその旨の通知をした場合は債権者の誤信を導かないため、債権者は譲受会社には請求することはできず、譲渡会社にしか請求できません。


会社分割の場合は事業譲渡ではありませんので、事業譲渡に関する22条を直接適用することはできません。

しかし、事業譲渡に際しての債権者の誤認と同様に、会社分割に伴い事業が承継会社または新設会社に承継される場合も、商号が続用されているときは分割会社の残存債権者は、承継会社または新設会社に請求できると誤認することもあり得ます。事業譲渡の場合と同様に会社分割の場合であっても、債権者の誤認を救済する必要があり、同条項を類推適用して債権者異議手続の対象とならない分割会社の残存債権者を保護すべきと解されています。


このような弁済責任の免責を受けるための登記が「免責の登記」と呼ばれる登記で、これは商業登記法の31条に(営業又は事業の譲渡の際の免責の登記)として規定されています。事業譲渡や会社分割といった場合には必要な手続きですので忘れないようにしなければなりません。登記手続は商業登記の一種ですので、一般的には司法書士に依頼することになります。ただし、不動産移転や会社設立というような、ありふれた登記ではありませんので苦手とする司法書士も存在するようですのでご注意ください。


22条2項では「事業を譲り受けた後・・・通知を受けた第三者についても同様とする」(=免責を主張できる)となっています。債権者が限定されている場合に登記ではなく通知を選ぶのも一策です。ただし、後日判明した債権者には免責主張ができなくなりますので慎重な対応が必要となります。


伊勢志摩サミットに不安を感じます

2015年06月06日(土) 

来年日本で開かれる主要国首脳会議(サミット)が三重県の伊勢・志摩で開催することになりました。「日本の美しい自然、豊かな文化、伝統を世界のリーダーたちに肌で感じて味わっていただける場所にした」とのこと。テロ対策を重視し、警備面で地理的に他の候補地より有利なことが決め手となったとも報じられています。


はて、いかがなものでしょうか。

皇室ゆかりの伊勢神宮との関係を強調することは、広義の意味で政教分離の理念に反しかねません。国内問題ではなく国外に目をやれば一層心配になります。

昨年、日本人人質殺害問題でISISを敵に回し、尖閣諸島で中国、従軍慰安婦で韓国ともめています。このような中で伊勢神宮がターゲットにならないのか心配です。


たしかに、会場となる賢島は警備がしやすいのかもしれません。

しかし、伊勢神宮はどんなものでしょうか。観光客にまぎれた自爆テロが発生すれば、それこそISISの思う壺ではないでしょうか。

中国、韓国にしてみても、皇室ゆかりの伊勢神宮を各国の指導者がぞろぞろ参拝するという構図は、靖国参拝とイメージが重なるために良しとはしないでしょう。あえてそれを狙うという外交技術を否定するものではありませんが・・・。


伊勢志摩サミット。

国内では、地元観光業者を中心にノー天気で喜んでいる向きもあるようですが、本当に喜んでいて良いのでしょうか。

国外に目を向けたとき、私は一抹の不安を感じてしまいます。


成田空港へのアクセスを改善すべし

2015年06月03日(水) 

成田空港での航空機の発着回数が6月2日に累計500万回に達したとの報道がなされています。1978年5月20日の開港から37年での達成となったとのことです。結構な話だと思います。首都直下型地震や津波のリスクを考えたとき、羽田空港に一極集中することが最善だとは思えないからです。


それにしてもLCC専用の第3ターミナルはいかがなものでしょうか。電車やバスのターミナルである第2ターミナルから離れており、ひどく遠いのです。実際に計測したところ、飛行機のドアを出てから、電車の改札口まで、せっせと早足で歩いて20分かかりました。普通に歩けば30分はかかります。

800メーターを10分とすれば、数キロのお散歩を強いられることになります。


成田空港へのアクセスも考えるべきです。

たしかに上野まで特急に乗れば40分です。飛行機から改札口まで30分であることを考えれば、大変な速さだといえるでしょう。しかし、本数が少ないのが問題です。

他にも特急以外の電車もありますが、30分に一本しかありません。待ち時間が長すぎるのは、空港周辺が単線区間なのですれ違いに時間を要するのでしょう。


成田空港を本気で活用するならば、空港内の利用向上ではなく、空港へのアクセスを改善すべきです。「空港に着陸し、ターミナルに機体が停止するまで10分以上、飛行機を出て30分歩いて駅に到着し、さらにホームで30分待たされ、電車が動いたのは着陸してから1時間以上後となる・・・」

こんな状況で「国際空港」と言えるのでしょうか。地方空港の方がはるかに便利かもしれません。


国際空港のハブ化。この議論はどこへ行ってしまったのでしょう・・・。


取締役の責任の免除

2015年06月01日(月) 

取締役の責任を、取締役会等で免除できるとすると安易に取締役の責任が免除されるおそれがあります。そこで、取締役の責任の免除には取締役会ではなく、総株主の同意が要求されます(424条)。


取締役の責任は厳格であるため、任務懈怠責任においで取締役に高額の賠償責任を負わせたのでは経営を萎縮させてしまいかねません。そこで、第一の任務懈怠責任についてだけは、3つの責任の一部免除制度が設けられています。


①取締役が職務を行うにつき善意・無重過失であった場合は、賠償責任を負う額から最低責任限度額を控除した額を限度として、株主総会の特別決議によって、一部免除できる(425条、309条)。

②一定の会社では、取締役が職務を行うにつき善意・無重過失であった場合で、かつ、特に必要と認められる場合は、事前に定款規定を置いておけば、事後に取締役の過半数の同意・取締役会決議によって一部免除できる(426条1項)。

③社外取締役等の任務懈怠責任について、職務を行うにつき善意・無重過失であった場合は、一定の額を限度とする旨の責任限定契約を社外取締役等と締結できる旨を定款で定めることができる(427条1項)


このような手続を経ることで取締役の会社に対する責任(423条)を免除することはできますが、429条の責任は第三者に対する損害賠償責任ですので、423条の任務懈怠責任のような免除の制度はありません。


423条の責任と429条の責任を混同しないように注意が必要です。

取締役の責任は重いのです。

第二会社方式による事業再生において取締役に就任する場合には、責任の重さを自覚してから就任を引き受けることが必要です。信頼関係があるからこそ成せる業であって、信頼関係がない場合には、将来に禍根を残すことになるので取締役就任は控えるべきです

何をもって事業再生が成功したといえるのか

2015年05月30日(土)

当社の基本コンセプトとして二つのポイントを掲げています。

―――

特徴(1) 民事再生法の適用による再生のように・・・

公表されることによる信用低下・風評被害は発生しません!!


特徴(2) 再生ファンドを利用したM&Aのように・・・

第三者に資産や経営権を奪われることはありません!!

―――

この二つはホームページの「戦略的事業再生の特徴」のページに明記してあります。「私的再生によって従来の経営者による事業再生を実現する」ということが当社の創業以来、一貫したビジネスポリシーです。


そもそも事業再生とは何なのでしょうか。

会社を存続させ雇用や取引先を守るという点が事業再生の目的であるならば、従来の経営者による経営継続は必要が無いのです。むしろ、事業拡大を狙う優良な同業者に会社を吸収してもらい、新経営者のもとで事業再生を進めることが有効な選択肢であり、この場合には従来の経営者は退陣することになります。債権者にしても、より多くの回収ができるのであれば、新しい経営者に事業を承継してもらう方が経済合理性に勝るということになります。


従来の経営者ではなく新経営者に事業継承することで事業再生の決着を図る弁護士や事業再生コンサルタントも少なくありません。なぜならば、その方が経済合理性に勝るのであり、決着が容易だからです。

すなわち、経済合理性を判断基準にするならば、「私的再生によって従来の経営者による事業再生を実現する」のは否定されてしまうことになります。換言すれば、新経営者によって事業再生を進めることが経済合理性に勝るのであれば、従来の経営者は邪魔な存在になってしまうのです。


債権者に「従来の経営者に経営を任せる」と言われて安心していたものの、実際には資産の所有権は第三者に移り、経営だけ任せられた、すなわち所有を奪われて雇われマダムに成り下がってしまったという例もありました。「経営権」という曖昧な表現を詰めないままにしたため、最終的には株式の51%を第三者に奪われた例もありました。要するに、従来の経営者は追い出されてしまったというわけです。


新経営者による事業再生という「経済合理性」を乗り越え、当社のビジネスポリシーである「従来の経営者による経営継続」を実現するのは一筋縄ではいきません。誰にでもできることではないからこそ、15年以上もビジネスポリシーを貫くことができたのだと自負しています。

時間と労力がかかるものの、「従来の経営者による経営継続」を実現することが事業再生の成功であると確信しています。


敵と味方の区別もつかないようでは事業再生は困難です

2015年05月28日(木) 

事業再生に携わっていると、様々な人々に出会います。

独立して15年、いろいろな経営者、債権者に出会いました。


事業再生を専門に行っていると、多くの場合に最初の段階でストーリーが見えてしまいます。早い段階でストーリーが見えてしまうと、再生を進めるにあたって大きくブレルことがありません。初期の段階の考えや発言が変わることはあまりないのです。そういう意味で、コロコロ話が変わる偽コンサルタントは「わかっていない」ということができるでしょう。


しかし、債務者の姿勢や考え方が変わることは少なくありません。

場合によっては、敵と味方が誰なのかを見失ってしまう債務者さえいるのです。


たとえば、債権者は敵です。戦争や喧嘩をするわけではないので、争う相手という意味ではなく、利益が相反するという意味で敵なのです。口先では債務者をおもんばかるようなことを言いながら、土壇場で「本部の指示」「ファンドの指示」を理由に手のひらを反すような事例は何件も見てきました。金融機関にも論理があるのでやむを得ないことでもあります。


債権者ではなく、たとえば支援機構や債権者が「中立的な立場からデューデリを行う」ことを求めたことにより選任された「中立的」な第三者はどうでしょうか。

債権者の顔色を見るような第三者であれば中立ではなく敵というべきですが、そうではなく、あくまで中立であるならば敵ではないといえるでしょう。しかし中立であるということは、敵ではないものの味方でもないということです。中立ではあるが、味方ではない第三者に過度の期待をしてはならないのです。


「藁にも縋(すが)る」といいますが、味方ではない中立の第三者が「藁」だということに気付くべきだと思います。


思うように進まない焦りや、不満、不安から、敵と味方を見失ってしまうようでは債務者主導の再生は期待できません。くれぐれもご注意ください。


天才数学者の交通事故死

2015年05月25日(月) 

米国の天才数学者がタクシーの交通事故で亡くなったとの報道がなされています。

ジョン・ナッシュという86歳の男性で、1994年のノーベル経済学賞を受賞するとともに、「ビューティフル・マインド」という映画のモデルとなった人です。


知らない人の方が多いかもしれません。

数学者でありながらノーベル賞の経済学賞を受けたのは、「ナッシュ均衡」の概念によるものです。「ゲーム理論」の基本的な考え方であるナッシュ均衡は、『すべてのゲーム参加者の戦略が、他の参加者の戦略に対して最適な状態』であるというものです。この考え方は分配のあり方にも直結するものであり、多くの経済学の研究に影響を与えています。


現に私の経済学の博士論文である「事業再生を巡る債権者と債務者の対立と協調」でも、論文の基本的前提としてナッシュ均衡からスタートしています。ナッシュ均衡を基礎としたうえで不確実性下における対立と協調の問題を取り上げ、改善策を探るという構成になっています。


このように世界中の多くの経済学者、経営学者等々の論理的よりどころにもなっている天才学者なのです。

経済学の分野における大きな損失だと思います。


金融機関の論理と抵抗勢力

2015年05年24日(日) 

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第13回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「金融機関の論理と抵抗勢力」で、その要旨は次の通りです。

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要旨:

金融機関が常に合理的な判断を行い、合理的に行動しているわけではありません。さらに、金融機関独特の論理があるので、どうしても譲れないポイントもあるのです。このあたりを見落としたままでは金融機関と上手く付き合うことはできないと言えるでしょう。さらに債務者側にも常に協力者しかいないというわけではなく、抵抗勢力が存在する場合も少なくありません。このような場合には、何らかの形で第三者の介入が求められます。
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(2)企業の経営者の場合は「GOODWILL PLUS会員」になる必要があります。
下のアドレスから著者名を指定して検索できます。
http://goodwill.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html

多くの有益な情報を入手できますので、入会することをお勧めします。
私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。

入会にあたってはお近くの(株)ミロク情報サービスの営業拠点にご連絡ください。営業拠点は下のアドレスから検索できます。
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従来の会社の本社保守業務

2015年05月22日(金) 

地方で事業再生を成功させた場合、新しく設立した「第二会社」ではなく、残った「従来の会社」の処理が問題になります。正しい処理としては清算を行うことになりますが、「架空資産がある」「債務免除が完了しない」等々の理由で、存続を余儀なくされる場合もあります。(拙著、「事業再生に伴い残った借入金と会社の処理の仕方」参照)さらには「地元で会社の清算をすると風評被害が問題になる」場合もあります。いずれの場合にも「本社をどこか別の場所に移転したい」ということになります。


このような「従来の会社」の本社所在地を確保したいというニーズを満たすため、従来は貸事務所(バーチャルオフィスも含む)の利用をお勧めしていました。しかし、「知らない業者は不安だ」「どこかを紹介して欲しい」との相談が相次いだため、当社で「第二会社」の本社を移転する先を用意することにいたしました。所在地は千葉県内とし、本社所在地として登記するために「賃貸借契約を締結」するとともに、登記した本社の保守業務として「配達された書類の受け取り・転送サービス」を行います。あくまでクライアント向けの付加サービスとして行うものであって、一般向けにサービスを提供するものではありません。


たとえば電話やFAXの設置、来客応対、役員就任、開業届、税務申告等の諸届出等は行いません。あくまで、本社登記のための場所を提供するために賃貸借契約を締結するとともに、付随するサービスとして「配達された書類の受け取り・転送サービス」のみを行うものです。

本ホームページの中、「各種経営支援業務」のページに「(5)従来の会社の本社保守業務」として掲載した通りです。


私的整理による事業再生

2015年05月21日(木) 

事業再生を成功させる債務者には次の三つの共通点があるように思います。すなわち、「再生させたいという強い意思」「まじめな態度」「積極的な姿勢」の三つです。


「再生させたい」とは、「できれば再生したい」とか、「どうにかならないか」といったあいまいな意思ではなく、「どうにかして再生させたい」という堅固な意思です。迷いのない強い意思と言うこともできるでしょう。

「まじめな態度」とは、ごまかさず、正面から取り組む意気込みということもできるでしょう。

「積極的な姿勢」とは、さまざまな知識を集め、再生に向けて邁進する気概です。多くの場合、勉強家であることが多いようです。


これまでに多くの事業再生のノウハウ本を公表してきましたが、偶然、私の本を手にした読者が再生できて、不幸にも、そのような機会に恵まれなかった債務者は再生できないということもあります。このような不公平は、いささか疑問ですが、それも一つの「運」かもしれません。ビジネスの世界では時として運が大きく左右することがあるのです。


「運」に恵まれ、ノウハウを手にしたのですから、「強い意志」「まじめな態度」「積極的な姿勢」とともに、躊躇せずに事業再生を目指すべきだと思います。ただし、迷いがあるならば強行すべきではありません。強行したところで挫折する危険があるからです。

「再生させたいという強い意思」「まじめな態度」「積極的な姿勢」が揃ってこそ、成功が待っているのだと思います。


事業再生が完了するまでに必要な時間は個々のケースによって異なります。順調かつ簡単なケースでは数か月で終わる場合もありますし、紆余曲折を経て数年かかるケースもあります。

債権者という相手があることですから債務者側では決められません。民事再生のようにスケジュール化できるわけではなく、再生の事実を公表することなく債権者との交渉で進めるため、時間がかかる場合があることも覚悟した上で事業再生に取り組まねばなりません。

急いで進めたいなら、風評被害を覚悟したうえで法的整理を選択すべきなのです。

途中で挫折するくらいならば、最初から取り組むべきではありません。取り組んだならば、最後まで頑張ることで私的整理による事業再生が実現するのです。私的整理というのは、それだけ繊細なものでもあるのです。


大阪都構想が否決されて思うこと

2015年05月18日(月) 

大阪都構想の是非を問う住民投票結果が反対多数となり都構想は廃案となりました。当の本人は政界引退、江田代表は引責辞任する由。


勉強不足ゆえに大阪都構想の中身について私は詳しくありませんので、大阪都構想の中身に関してコメントする立場にありません。しかし、進め方には大いに異和感を感じています。

住民投票に至った経緯も無理を感じますし、反対になったらサッサと引退する橋下氏や、突然に辞任表明する江田氏には理解できませんし賛成できません。

橋下氏の知名度ゆえに、大阪都構想の中身よりも、既存政党との全面戦争という面に興味の焦点があてられたようにも思います。住民投票という形で民意を問うことの是非は別として、結果が賛成でも反対でも国の政策に与える影響は少なくないと思います。

現に、サッサと逃げ出す江田代表のように、維新の会の議員の去就も政治に影響を与えることになるでしょう。


住民投票の有権者数は210万4076人で、投票率は66・83%。反対50・38%(705,585票)―賛成49・62%(694,844票)、1万741票差で反対となった由。見方を変えれば、たったこれだけの大阪市民の投票行動が、日本国の政策の影響を与えることになるのかと思うと異和感はさらに大きくなってしまいます。


二重行政の無駄は大阪に留まらず日本全国の問題です。

今回の結果にとらわれず、日本中で改善を望むところです。橋下氏のようなスタンドプレーの上手いタレント政治家ではなく、多くの民意をもって真の改善を望む次第です。

メディア向けするタレント政治家では、震災復興、老人介護等々の大衆受けする施策が重視されかねません。大衆迎合政治に直結するような政治制度そのものも改革する必要がると思います。


大阪の住民投票。

反対で決着したことに、私は賛成します。

日本の食品は安全なのか

2015年05月17日(日) 

もう30年前のことですが、当時の私は損害保険会社の外国部に所属していました。1年の間、社命によりドイツに留学したため、ヨーロッパ各地でたくさんの日本人観光客を目のあたりにしました。バブルの中、たくさんの日本人観光客が団体でやってきていました。たとえばスイス登山鉄道は日本人貸切状態のこともありました。

ドイツもスイスもフランスもイギリスも、あちこちで浮かれた日本人が騒いでいました。

大声で騒ぐ日本人の姿を見て、ヨーロッパに住む日本人として恥ずかしい気持ちになったものです。


今、銀座を歩けば、中国人観光客が大声で買い物をしています。マナーの悪さが目立つ集団も少なくありません。

彼らを見て、眉をしかめると同時に、30年前の日本人を思い出してしまいます。30年前の日本人を思えば、今の中国人を笑える立場にはないのです。


今の日本人はどうでしょう。

日本人のマナーの良さを指摘するむきもありますが、はたしてそうでしょうか。

日本の治安の良さを指摘するむきもありますが、はたしてそうでしょうか。

日本の製品や食の安全を指摘するむきもありますが、はたしてそうでしょうか。


たとえば、中国の餃子問題で中国製品への不信、不安が表面化しました。

期限切れ鶏肉についても同様です。たしかに中国食品には若干の不安を覚えます。


日本製品はどうでしょう。

現に、「台湾は日本からの食品輸入に厳しい条件を加えた」と問題になっています。

福島原発は未だに、空気中にも、海中にも放射能をまき散らしています。

期限切れの鶏肉で腹を壊すかもしれませんが、放射能で発ガンするよりはマシでしょう。台湾の厳しい対応も無理の無いことなのではないでしょうか。


日本の食品に対して諸外国が課している厳しい条件を見るとき、日本政府に対して不信感を感じてしまいます。本当に日本の食品は安全なのでしょうか。


会計事務所は事業再生に積極的に関与すべきである

2015年05月14日(木) 

事業再生を行うにあたって、従来からの顧問会計事務所と協同して取り組むことは有効です。債権者の立場からも決算書への信頼性が高まりますし、会計上の疑問を解消するために会計の専門家が支援することは望ましいことです。


債権者や支援協議会が選任した外部業者がデューデリを理由に、債務者の調査に入ることも少なくありませんが、このような場合にも、私は顧問会計事務所に積極的に関与することを勧めています。


「外部業者が知りたい情報を提供することでデューデリが進めやすくなる」という前向きな理由が挙げられます。デューデリを効率的、効果的に進めることで事業再生がスムーズに進められるというプラス思考の理由ということもできるでしょう。


一方で、「苦楽を共にしてきた顧問先を奪われないようにする」という後ろ向きの理由もあります。中には債権者寄りの行動をする外部業者もおり、些細な不備等をあげつらい、自らを新しい顧問会計事務所として自薦するところさえあるのです。いわばマイナス思考の理由というべきでしょう。


過去から現在に至る債務者の経営成績、現在の財政状態を良く知る立場にある会計事務所こそ積極的に関与するべきです。「外部業者の好き勝手にはさせない」という視点からも顧問会計事務所は関与すべきなのであり、大切な顧問先を守るということは、会計事務所自身を守ることでもあるのです。

このことはセミナーの中でも繰り返し指摘しています。

拙著、「銀行の合意が得にくい場合の事業再生の進め方」(ファーストプレス刊)でも、会計事務所が事業再生に関与することの重要性を説いています。経営者と会計事務所が、ともに一読することをお勧めする次第です。

債権者との協調と債務者の主体性

2015年05月13日(水) 

事業再生にあたって債務者が一方的に行動してはならないのであり、債権者との協調が必要なのだということについては本欄で繰り返し説いてきました。たとえば、直近の例では次のようなコメントがあります。


『事業譲渡か会社分割かを議論するにあたって、一方的に債務者の立場から、制度上のメリットだけを考えていたのでは不十分なのであり、債権者への配慮が必要だ』(2015年04月07日「事業譲渡か会社分割かの判断」)


『会社の終わらせ方として特別清算があるが、債権者との交渉次第で破産に移行しかねない。債権者の同意が得られないような場合に、会社の解散を行わず放置することで「みなし解散」に持ち込む場合もある』(2015年04月17日「会社を終わらせる方法」)


いずれも債権者との協調の必要性を指摘したものです。

しかし、債務者が主導的に動くべき場面も否定できません。たとえば再生のスケジュールです。再生方針を策定した後は、債務者が独断的ではないまでも、積極的に行動しなければなりません。債権者の重い腰を上げさせるには債務者の積極的なアプローチが必要なのです。

事業譲渡にしても、会社分割にしても、さらには、特別清算にしても、債務者が主体的に進めないと、いつまでたっても話が進まないということもあるのです。


支援協議会の関与により外部業者を利用するにしても同様です。

債権者が選任した外部業者に任せきりにしたのでは、債務者主導の再生は期待できません。なぜならば、外部業者は債務者ではなく、債権者の顔色を見るからです。あわよくば次回も別案件で債権者に選任されたいと思うのも無理はありません。

いわば債権者寄りの外部業者に、いいように丸めこまれかねないので注意が必要です。


債権者との協調を進めるだけではなく、債務者は主体的に行動しなければならないのです。

主体的といっても身勝手な詐害行為が許されるわけがありません。債権者との協調と、債務者の主体的行動を両立させなければならないのであり、その微妙なバランスこそ専門家としての戦略的事業再生なのです。



箱根の噴火警戒と日本の将来

2015年05月11日(月) 

箱根で噴火警戒が続いています。

日本は地震大国です。地震、噴火、津波等々は宿命と言えるでしょう。それを覚悟で日本に住んでいるということを忘れてはいけません。


地震も、噴火も、津波も、その地域の歴史を調べれば何年の周期で見舞われるのか判明します。たとえば1000年に一度の周期であるならば、0.1%の確率で一年以内に発生すると言えます。

それを覚悟で、その地域に住み続けるのであれば、住民は0.1%の料率で算出した保険料を積み立てるべきです。自動車賠償責任保険のように災害保険を強制保険にするのです。現に、諸外国では建物の強制保険制度も存在します。

住民の自己責任で災害保険に加入し、その保険金で復興にあたるべきであり、自己負担を怠り、予測されていた災害が発生したからといって公費での復旧を期待するのは自分勝手というべきではないでしょうか。


箱根は観光地であり、噴火警戒は打撃であることは分かります。

しかし、実際に噴火が起きたらどうするのでしょうか。東北に続き、今度は箱根の復興でしょうか?

富士山の大噴火が生じたら、関東全域の復興となるのでしょう。関東大震災では首都圏、南海トラフでは関西。日本中が復興だらけになってしまいます。

人口が減少し老人だらけになった国が、あちこちで復興を繰り返していたのでは、国際競争力を大きく損なうことになり、国の発展は望めません。


東北の復興に名を借りた過度の支援は止めるべきです。東北よりも首都の防衛と首都機能の分散です。

老人福祉に名を借りた過度の高齢者支援は止めるべきです。老人介護よりも子育てです。

奇麗事ではなく、国の将来を見つめるべきです。


箱根。

住民も、観光客も、自己責任で行動すべきです。

仮に災害が発生したとしても、他力ではなく、自力救済を図ってもらいたいと思います。

大涌谷の噴煙を見ながら、日本の将来を考えてしまいました。


サルのシャーロットを否定するのは人種差別と同じだ

2015年05月09日(土) 

大分市の高崎山自然動物園の赤ちゃんザルの名前について公募で最多だったシャーロットと名付けたところ、電話などで「英国王室に失礼だ」などの批判が寄せられたと騒ぎになっていたようです。一方で入園者からは「問題ない」などと肯定的な意見もあったとのことです。


はて、何がダメなのでしょうか。

サルだからでしょうか?

ブタだったら、なおさらダメなのでしょうか?

サルやブタではなく、可愛いネコ、ウサギ、リスならば良いのでしょうか?

同じ生き物なのに、イメージで差別することは人種差別にもつながりかねません。

イギリス、ドイツ、フランス等々のヨーロッパは良いけれど、アジアやアフリカはダメという発想と同じではないでしょうか。


私としては、サルのシャーロットが元気に育つことを願うばかりです。

粋な英国王室のことですから、いつの日か、大きくなったシャーロット王女が高崎山を訪れる日も来るのではないでしょうか。

最近、日本人のマナーの悪さ、レベルの低さ、了見の狭さが気になって仕方がありません。


偽専門家と振り込め詐欺

2015年05月08日(金) 

『競売制度を利用して裁判所の評価を受け、これを基に債権者と交渉を行い、競売を取り下げてもらうという方法もありますが、これはそれなりの根回しが必要なのです。根回しを怠ったままで、むやみに競売を誘発するのは、リスクの高さを考えると危険というしかありません。

実際に、某コンサルタント会社の無責任なアドバイスに従い、返済を停止し競売に持ち込んだ後、買取をしたいので競売を取り下げてくれと銀行に申し込んだものの、断られてしまったという事案も少なくありません。競売を利用するのは十分な根回しが必要なのだということを忘れてはならないのです。』(拙著、「リスケに頼らない事業再生のすすめ」(ファーストプレス刊、93頁より引用)

ーーー


私は機会あるごとに、無資格者の偽専門家に注意するように警鐘を鳴らしてきました。

拙著の中でも、セミナーでも、注意すべき点を強調してきたつもりです。


今でも、「債権者などは無視して、第二会社を作って資産を買い受ければいい」「債権者が任意売却に応じないなら競売させればいい」「資金が足りないならカードローンや消費者金融を利用して金を引き出して自己破産すればいい。第二会社はそのままだから大丈夫」等々、滅茶苦茶なアドバイスをしている者がいます。


最近の相談事例として、「債権者との対話を怠り、競売を誘発し、第二会社を作ったのはいいが資金が足りない」という例でした。まさに無資格者の無責任なアドバイスを受けて、その通りに実行してしまったという例がありました。話がこじれてから当社に相談にきたという、よくあるパターンの一例です。


何度も警鐘を鳴らしているのに、どうして偽専門家に相談するのでしょうか。理解に苦しみます。追い詰められた経営者は正常な判断ができなくなるのでしょう。

言葉巧みに詐欺に引っ掛かるという観点から見れば、振り込め詐欺に引っ掛かるのと同じようにさえ思います。

「無資格の偽専門家と、振り込め詐欺には気をつけろ」と声を大にしたいところです。


明治日本の産業革命遺産は世界遺産にふさわしいのか

2015年05月05日(火) 

ユネスコの諮問機関であるイコモス(国際記念物遺跡会議)は5月4日、「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産への登録につき「登録がふさわしい旨」を勧告したとのことです。具体的には下記の23か所です。

・萩(5) 萩反射炉、恵美須ケ鼻造船所跡、大板山たたら製鉄遺跡、萩城下町、松下村塾

・鹿児島(3) 旧集成館、寺山炭窯跡、関吉の疎水溝

・韮山(1) 韮山反射炉

・釜石(1) 橋野鉄鉱山・高炉跡

・佐賀(1) 三重津海軍所跡

・長崎(8) 小菅修船場跡、三菱長崎造船所第三船渠、三菱長崎造船所旧木型場、三菱長崎造船所ジャイアント・カンチレバークレーン、三菱長崎造船所占勝閣、高島炭鉱、端島炭鉱、旧グラバー住宅

・三池(2) 三池炭鉱・三池港、三角西(旧)港

・八幡(2) 官営八幡製鐵所、遠賀川水源地ポンプ室


さてさて、過日の富岡製糸場の際も疑問を感じましたが、今回の23か所も大いに疑問です。中には聞いたこともない場所もあります。

日本人の私でさえ知らないものが、「世界遺産」としてふさわしいのでしょうか?

「世界」に目を広げれば、他にも登録にふさわしい施設、遺跡、遺産があるのではないでしょうか?

なにも、日本人でさえ聞いたことの無い施設を登録しなくとも良いような気もします。世界遺産の遺産たる価値にいささか疑問を感じてしまいます。


「世界遺産」の名のもとに、保存を理由とした過剰な税金投入だけは止めて欲しいところです。

聞いたこともない施設よりも、「巨大津波の押し寄せた沿岸地域」の方が「世界遺産」にふさわしいような気もします。

取締役の責任

2015年05月04日(月) 

取締役は会社に対しで善管注意義務(330条)および忠実義務(355条)を負っており、この義務に違反して会社に損害を与えた場合は、民法上の債務不履行責任を負うことになります(民法415条)。


取締役の責任を強化し会社の利益を保護するために、会社法は取締役の会社に対する責任の制度を次のように設けています。


①取締役は、任務懈怠があった場合は会社に対して、これによって生じた損害を賠償する責任を負う(423条1項)。

②会社が株主の権利行使に関して株主等に財産上の利益を供与した場合は、当該利益供与に関与した取締役は、会社に対して、供与した利益額の相当額を支払う義務を負う(120条4項)。

③会社が分配可能額を超えで剰余金の配当等を行った場合は、当該行為に関する職務を行った取締役は、会社に対して、当該行為により交付された金銭等の帳簿価額に相当する金銭を支払う義務を負う(462条1項)。

④会社が116条1項の規定により反対株主の株式買取請求権に応じて株式を取得した場合に、株主に支払った金銭の額が支払日における分配可能額を超えるときは、当該株式の取得に関する職務を行った取締役は、その超過額を払う義務を負う(464条1項)。

⑤会社が剰余金の配当等を行った場合に、当該行為日の属する事業年度末に係る計算書類においで欠損が生じた場合は、当該行為に関する職務を行った取締役は、会社に対して、当該欠損額と配当額のいずれか少ない額を支払う義務を負う(465条1項)。


この他、監査役や株主の権限により取締役の行為を制限する規定も置かれています。

取締役の権限は広いので一定の制限を加えているわけです。


セミナーの対象を「守る経営」から「攻める経営」へと広げます

2015年05月01日(金) 

事業再生セミナーが好評につき、今年度からはセミナーの対象を「自己の事業を再生する経営者(守る経営)」だけではなく、「事業再生を支援する経営者(攻める経営)」に拡大しています。


企業経営者は、不良債権に区分された「自己の事業を再生する経営者」と、正常債権に区分された「事業再生を支援する経営者」に大別できます。新しいセミナーは「自社の事業再生を目指す経営者」だけではなく、「他社の事業再生を自社の業績拡大に活用するという攻める経営者」をも念頭においた内容にしています。


会計事務所としては、「不良債権に区分された企業が作成する再生計画」と、「正常債権に区分された企業が作成する経営計画」の違いを理解した上で、顧問先のニーズに応じたサービスを提供することが求められます。事業再生を必要とする企業に対しては再生支援を行う(守る経営支援)一方で、経営が順調に進んでいる企業に対しては、再生企業の事業譲渡を受けたり、会社分割した会社を取得することで新たな事業展開を進める(攻める経営支援)ことも可能になります。


会計事務所はどちらの経営支援も行える立場にあります。

顧問先の経営状態に合わせた対応策を明らかにすることで、経営者と会計事務所の双方が、事業再生を新たなビジネスチャンスとすることができるのだと思います。


全国各地の税理士会からの依頼に応じる形で会計事務所向けのセミナーを行っています。さらにミロク情報サービスの客員研究員として、全国各地のミロク情報サービスの支社でのセミナーも行っています。


会計事務所の皆様におかれましては、全国各地の税理士会、ミロク情報サービス支社にお問い合わせください。

経営者の皆様におかれましては、顧問会計事務所を通してお問い合わせください。

取締役の第三者に対する責任

2015年04月27日(月) 

会社と取締役は委任関係が成立していますが、会社と会社外部の第三者の間に何らかの法律関係が生じたとしても、取締役と外部の第三者は直接の法律関係は生じないはずです。
しかし、株式会社の社会的重要性と会社における役員等の重要性に鑑み、第三者を保護する観点から、取締役に外部の第三者に対する責任を負わせるために特別に法定されたのが429条の損害賠償責任です。


取締役の第三者賠償責任が成立するには、「役員等であること」「悪意・重過失であること」「第三者に対すること」「損害が生じること」といった要件が求められます。
たとえば、「取締役会の決議が必要なのに独断で行った役員の行為は法令違反であり、悪意・重過失による任務懈怠行為となり、債権者に損害が生じているなら要件を満たす」ということになります。


さらに、他の取締役が行った行為に関与していない役員であっても、取締役は取締役会の構成員である以上、他の役員を監視する義務を負うとされ、その監視義務は非上程事項にも及ぶものとされています。なぜなら、不当な業務を発見したら自ら取締役会招集請求権・招集権を行使して取締役会の監視機能を働かすべきだからです。行為に関与していない役員であっても、代取の独断専行を見逃したのであれば、それは監視義務違反であり、会社に対する悪意・重過失による任務懈怠が認められるので第三者に対する損害賠償責任を負うことになります。


頼まれて取締役になった場合などであっても、「名前を貸しただけで、会社の実情を知らなかった」では済みませんので注意が必要です。
会社法が制定される前は取締役が3名以上必要でしたが、当時、頼まれて名前を貸したまま放置しているようなケースでは注意が必要です。


戦後70年の謝罪は必要ない

2015年04月24日(金) 

ジャカルタで開かれたアジア・アフリカ会議(バンドン会議)60周年首脳会議で安倍晋三首相が行った演説について、韓国は戦後70年で過去の「おわび」に言及がなかった点を批判したとの報道がなされています。

中国も同様の反応を示しているようです。


まったくバカバカしい話です。過去の首相が既に謝罪したものを、新たな首相が繰り返し謝罪する必要があるのでしょうか。

謝罪の意を念頭に置いたあらたな演説をすれば十分だと思います。


中国にしても韓国にしても、他国に対して謝罪しろと繰り返し要求する姿勢は無礼千万だと思います。日本は未来永劫、演説のたびに謝罪しろとでも言うのでしょうか。


尖閣諸島にしても竹島にしても、武力行使をもって脅かしているのは「今」の話です。「今」を棚に上げ、「大昔」の話を取り上げて謝罪を求めるのは、狡猾な交渉姿勢であるとしか思えません。

他国が狡猾な交渉術によって我が国の権益を侵しているにもかかわらず、国内で「謝罪すべきではないか」「自衛隊の武力行使は許されるのか」等々、政府の足を引っ張ることで他国の交渉を優位に導いている無能な勢力が存在するのは残念でなりません。


政府の足を引っ張ることで国益を害するくらいなら、国会をサボって除名されたおバカ議員の方がマシではないでしょうか。


返済猶予と事業再生

2015年04月22日(水) 

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第12回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「返済猶予と事業再生」で、その要旨は次の通りです。

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要旨:

不良債権に対するリスケ(返済猶予)は何種類かの方法があります。もちろん、返済猶予の究極のかたちは債務の免除ですが、そこまでいかなくとも、いろいろな返済猶予の形があるのです。暫定的に返済猶予に頼らざるを得ない場合もありますが、所詮、返済猶予は問題の先送りにすぎず、最終的には適正な債務残高に圧縮する等の抜本解決が必要になる場合も少なくありません。
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記事を読むにはミロク情報サービスの会員になる必要があります。
会員は(1)会計事務所向けと(2)企業経営者向けに分かれています。


(1)会計事務所の先生の場合は「tvs会員」になる必要があります。
下のアドレスから著者名を指定して検索できます。
http://tvs.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html


(2)企業の経営者の場合は「GOODWILL PLUS会員」になる必要があります。
下のアドレスから著者名を指定して検索できます。
http://goodwill.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html


多くの有益な情報を入手できますので、入会することをお勧めします。
私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。


入会にあたってはお近くの(株)ミロク情報サービスの営業拠点にご連絡ください。営業拠点は下のアドレスから検索できます。
http://www.mjs.co.jp/office/tabid/479/index.php#no2


とんでもない判決

2015年04月19日(日) 

とんでもない判決が下されました。

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車同士が衝突し、センターラインをはみ出した側の助手席の男性が死亡した事故について、直進してきた対向車側にも責任があるとして、遺族が対向車側を相手に損害賠償を求めた訴訟の判決言い渡しが13日、福井地裁であった。原島麻由裁判官は「対向車側に過失がないともあるとも認められない」とした上で、無過失が証明されなければ賠償責任があると定める自動車損害賠償保障法(自賠法)に基づき「賠償する義務を負う」と認定。対向車側に4千万円余りの損害賠償を命じた。

死亡した男性は自身が所有する車の助手席に乗り、他人に運転させていた。車の任意保険は、家族以外の運転者を補償しない契約だったため、遺族への損害賠償がされない状態だった。対向車側は一方的に衝突された事故で、責任はないと主張していた。(福井新聞ニュースから抜粋引用)

―――

そもそも、保険料をケチって「家族以外の運転者を補償しない契約」としたのは原告です。

にもかかわらず、保険を使えない「他人に運転させて自分は寝ていた」のは原告です。

「センターラインをはみ出し他人様の車に損害を与えた」のは原告の車です。全ての原因は原告にあるのです。


言うなれば、自分の保険が使えないから他人様の保険を利用しようという魂胆に違いありません。それなのに4千万円余りの損害賠償を他人様に課すとは、原告も原告なら、裁判官も裁判官です。

過失割合はどのように算定したのでしょうか?

被告の弁護士は何をしていたのでしょう。

私には納得がいきません。


このような判決を容認していたのでは、自動車保険制度の根幹を揺るがしかねません。保険者としては、想定できないあらゆるリスクを担保しなければならず、よって、保険料の高騰を招くからです。


原告の保険が「家族限定ゆえに使えない」というのは原告が選んだ道です。これを無視し、「原告の保険が使えないなら被告の保険を使うべし」というのでは、家族限定特約を否定することになります。結果として保険料負担の高騰を招くことになるでしょう。


ケチな原告、保険制度を知らない裁判官、過失割合を軽視した被告弁護士。

最大の被害者は被告の保険会社であり、ひいては、高額の保険料負担を強いられる一般国民です。

裁判員裁判も結構ですが、裁判官も弁護士も、「もっと世間を知りなさい」「社会経験を積みなさい」と忠告したいと思います。


会社を終わらせる方法

2015年04月17日(金) 

最近、第二会社方式での事業再生で会社を終わらせる方法について話題になることが相次ぎました。ここで、あらためて整理しておきます。

会社の解散は「会社の法人格を消滅させる原因となる事実」です。清算は「会社が解散する際に、会社の財産についての権利・義務関係を整理する手続」です。換言すれば、解散とは会社が営業活動を中止して財産の整理を行うことであり、この財産の整理手続が清算手続であるといえます。会社が解散するにあたり会社の契約を終了させたり、会社が有している債権・債務を整理し、残った財産を株主に分配するのが清算の手続ということになります。(詳しくは拙著「事業再生に伴い、残った借入金と会社の処理の仕方」を参照してください)


ところで、株式会社であって債務超過である場合には特別清算を行う必要があります(510条)。

特別清算は、破産手続ほど厳格な手続を要さないため、比較的迅速に処理が進行します。

というのも、破産手続では裁判所によって破産管財人が選任されますが、誰が就任するか分からず、経営者が主導的に進めることができません。しかし、特別清算であれば経営者が清算人に就任できますので、主導的に清算手続を進めることが可能なのです。破産管財人の否認権を行使される危険がないため、債務者としては破産より特別清算の方が有利に進める側面もあるといえるのです。


但し、特別清算手続は総債権額の3分の2以上の同意が得られないと成立しません(567条1項)。したがって、債権者が非協力的な場合には成立しにくい面をもっています。成立しない場合には破産手続に移行してしまいます。


事業再生にあたり、第二会社方式で旧会社を抜け殻として特別清算を申し立てるような場合、第二会社方式そのものに詐害的な側面があるならば、債権者としては不同意とすることで破産に移行させるという対策も考えられます。しかし第二会社方式が正当であると認めるならば、特別清算に応じることが合理的な選択肢といえるでしょう。

いずれになるかは債権者との交渉次第ということになります。


過去の粉飾決算などのため実在性のない資産があったり、債権者の同意が得られないような場合に、会社の解散を行わず放置することで「みなし解散」に持ち込む方法についても拙著「事業再生に伴い、残った借入金と会社の処理の仕方」に詳述してありますので参考にしてください。

取締役と会社の利益衝突

2015年04月14日(火) 

取締役会非設置会社では、取締役が業務を執行し会社を代表することになります(348条1項)。

取締役会設置会社では取締役会の構成員として業務執行の決定に参加し、業務執行取締役として会社の業務を執行することになります(362条)。

このように取締役の権限は強力なものであるため、会社との利益が衝突する場合に会社の利益を害するのを防止する必要が生じます。


例えば「競業取引」の制限として、取締役が知りえた会社の事業上の機密等を利用して会社の利益を害するのを防止するため、取締役が自己または第三者のために競業取引を行う場合は、株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の事前の承認と取締役会への事後報告が要求されています。

また、「利益相反取引」の制限として、取締役がその地位を利用しまたは他の取締役と結託して会社の利益を害するのを防止するため、取締役が利益相反取引(直接取引と間接取引)を行う場合は、競業取引の場合と同様に規制されています。


さらに会社との訴訟においては、代表取締役等が会社側を代表するべきところ、監査役設置会社では「監査役が会社を代表」するものとされており(386条1項)、監査役非設置会社でも株主総会や取締役会が会社を代表する者を定めることも可能としています。馴れ合い訴訟を防止して会社の利益を保護する趣旨です。


このように、取締役の強大な権限を制限ないしは抑制することで、会社の利益を保護しています。取締役だからと言って好き勝手なことはできないというわけです。


株価が2万円を回復して思うこと

2015年04年11日(土) 

一時的とはいえ、15年ぶりに日経平均が2万円を回復したと報道されています。アベノミクスとは何だか良くわかりませんが、回復したという事実は誰にでも明らかな客観的な事実です。

一方で、地方や中小零細企業では増収増益という面では恩恵を被っているとはいいがたいのも事実です。株価だけが先行上昇するという現象は、まさにバブルであり要注意です。


株で儲ける要因は、究極的には二つに絞られると思います。

以前、本欄で指摘した通りです。すなわち、「運が良いこと」と「インサイダー情報をつかんだこと」です。金融理論だ、金融工学だと理屈をつけるのは簡単ですが、それは自己満足であり、結局は「運が良かった」「インサイダー情報をつかんでいた」から儲かったと言えるのではないでしょうか。

現に、歴史は繰り返します。

バブルで儲けた人、バブルで損した人。どちらも同数存在するのです。

なぜならば、同数がないと売買は成り立たないからです。


私は株式投資を一切行いません。運もインサイダー情報もないからです。

よって、株価上昇の恩恵を直接的には受けていません。それだけにアベノミクスとやらを冷静に見ていると思います。


歴史は繰り返します。

上昇もあれば下落もある。それがリスクというものであり、リスクの対価として利益があるのです。

ミクロ理論経済学の考え方で説明するならば、不確実性下における経済行動として、「リスク回避の程度」によって経済主体の行動が変わるのです。私のように、株式投資に対してリスク回避的(=手を出さない)な経済主体は、リスク愛好的(=手を出す)な経済主体に比べて、株価上昇時の局面では利得の機会を失っているというだけの話です。反対に、株価下落時の局面では損失の機会がないということになります。


さらに上昇するのか、ミニバブルがはじけて下落するのか。運もインサーダーもなく、金融理論や金融工学の専門ではない私には分かりません。

「株価の将来は分からない」というのが、唯一絶対の真理ではないでしょうか。


リスク回避的な私としては高みの見物を決め込むことにします。


事業再生でM&Aを行うときは一定の対策が必要になります

20150409日(木)

M&AとはMergers(合併)and Acquisitions(買収)の略です。端的には複数の企業が一つになったり(合併)、他の会社を買ったりすること(買収)です。


事業再生にあたってM&Aが行われる場合がありますが、通常のM&Aでは経営権を失うことに留意しなければなりません。後継者がいないため企業を第三者に譲渡するのであれば、真正の売買として経営権を譲渡することは合理的ですが、事業再生にあたって経営権を維持したい場合に安易にM&Aを行うのは得策ではありません。


金融機関の論理として、「経営者責任を問う」という観点から、「全くの第三者への事業譲渡」が望ましいという面があります。会社を第三者に譲渡すことで経営者の責任を果たしたと判断しやすくなるわけです。

このような単純なM&Aでは、会社の経営権を他人に譲渡することになります。経営者責任を果たして他人に経営権を渡したという点を確かめるため、代表者を第三者にしただけではなく株主が第三者になっていることが求められることがあります。


この場合、信頼できる第三者に株主になってもらい、将来において株式を取り戻す約定をしておくことで経営権を取り戻す道を残すことが可能になります。但し、返済が進むことで純資産が増加することで株式価値が高まれば贈与の問題が生じるので注意が必要です。株式移転(取り戻し)のタイミングと方法を個別の状況に応じて慎重に判断することになります。


このような戦略的な対策を行うことなく、単にM&Aで事業承継を進めるのは不動産の仲介業と何ら変わるものではなく、事業再生の専門家のなせる業ではありません。M&Aを行うにしても、従来の経営権を確保する手段を講じた上で進めなければならないことに注意が必要になります。

事業譲渡か会社分割かの判断

2015年04月07日(火) 

事業譲渡は「事業を売買する」という取引行為ですが、会社分割は会社法に規定された組織再編行為です。どちらも事業が第二会社に移転しますので結果は同じように見えますが、手続や効果に差が生じます。


会社分割では「債権者の個別合意がいらないが保護手続が求められる」「労働者を承継するので退職・新規雇用が必要ない」「許認可を引き継げる余地がある」「税金や登記費用を節約できる場合もある」等のメリットがあります。事業再生にあたって事業譲渡にするべきか、会社分割にすべきかを判断するための判断ポイントになるといえます。


しかしそれでは不十分なのです。


会社分割では従来の会社を分割して承継するため、全くの第三者への譲渡という要素が薄らぎます。債権放棄を伴う事業再生において、経営者責任を問うという債権者の観点からは「会社分割で債権債務を切り離すのではなく、全くの第三者への事業譲渡」の方が経営者が責任を果たしたことになると判断できます。同様の観点からは、「分割した会社を第三者に譲渡する」ことで経営者の責任を果たしたと判断しやすくなります。


すなわち、事業譲渡か会社分割かを議論するにあたって、一方的に債務者の立場から、制度上のメリットだけを考えていたのでは不十分なのであり、債権者への配慮が求められるのです。

このあたりを見落としたまま、法的、制度的な面だけからメリット・デメリットを判断し、身勝手な対策を講じる専門家?が多いのは困ったことだと思います。


政治家は抽選で選ぶべし

2015年04月05日(日) 

うちわを配った法務大臣様や、デタラメな政治資金問題を起こした経済産業大臣様、不倫相手との路チューがばれた農水政務官様、遅刻を涙流して謝罪する外交防衛委員長様。皆様、女性議員のセンセイです。国会をサボって旅行に行った行かないと騒がれた揚句、所属政党から除名された国会議員のセンセイも女性議員です。


女性蔑視をするつもりは、サラサラありませんが、残念ながら資質に問題がある女性議員が多いのも事実です。このままでは女性活用だかなんだかもお題目に終わってしまうことでしょう。女性だからという理由で重用するのは、逆の意味で性差別であることを自覚すべきです。


3日には統一地方選が告示されましたが、地方議員では政務活動費の不正使用が大問題になったばかりです。

国民の政治不信、政治離れが加速するのも無理からぬところだと思います。
比例区で復活当選するという現行制度は絶対に見直すべきだと思います。小選挙区で落選したという事実は、有権者にしてみれば拒絶の意思を示したのであり、落選者の復活当選は民意に反することになります。


いっそのこと無作為による抽選で一定数を選んではいかがでしょうか。
私は裁判員制度には反対ですが、抽選で「一定数の議員」を選ぶという方法は議論の余地があると思います。比例区で復活する落選者や、○○チルドレンよりは、無作為で選ばれた市民に自覚を持って活動してもらう方が有意義だと思うからです。

抽選で選ばれるのですから一期限りです。再選を願って利益誘導しがちな落選者や○○チルドレンよりもはるかに期待できるのではないでしょうか。


「抽選で選ぶ方がマシだ」との思いに陥ってしまうほど、今の政治家の質の低下は否めないと思います。残念なことですが、「地方選挙など投票に行くだけ時間の無駄だ」と本気で考えています。


泣きたいのはこっちの方だ

2015年04月02日(木)

参議院の外交防衛委員会で委員長を務めている自民党の片山さつき議員が、会議に遅刻したために審議日程が遅れた問題をめぐり、片山氏は2日の委員会で涙混じりに謝罪したとの報道がなされています。先月30日の会議に数分間遅刻したため、野党側が反発し審議日程が遅れていたとのことで、今回が初めてではないとも報道されています。


数分の遅刻が許されるわけではありませんが、目くじら立てる程の事ではないように思います。

それよりも、「涙混じりに謝罪」した方がよほど問題ではないでしょうか。

女だから涙することが許される、あるいは大目に見てもらえるのでしょうか?
一国の「外交防衛委員会」の「委員長」様が涙を流して遅刻を謝罪していて良いのでしょうか?
いい年をした「おばさん」が涙を流して謝罪するのは見苦しい限りです。泣くなら辞任してから泣けと声を大にしたいところです。


こんな甘えたおばさんが「外交防衛委員会」の「委員長」様を務めているようでは、第一線で外交や防衛に携わる人々は浮かばれません。

泣きたいのはこっちの方だと言いたくもなります。


事業再生ではキャッシュフローがプラスであることが重要です

2015年04月01日(水) 

どのような立派な経営計画を作ったところで、計画が下振れする場合が生じることは避けられません。このような場合、当初の計画が実現可能なものでなかった可能性がありますし、また、計画自体は合理的であったものの、経営環境の変化により実績が下振れした可能性もあります。

いずれにしても計画が下振れした原因を探る必要があります。


事業再生にあたって、もっとも重要なポイントはキャッシュフローがプラスであるかどうかという点です。当初の計画に比べて下振れしたとしても、プラスであれば事業価値そのものが否定されるものではありませんが、マイナスであるならば事業存続の価値が否定されることになりかねません。

無理に事業を継続させるために、先祖伝来の資産を売却して事業につぎ込むようでは、資産の切り売りでしかありません。資産が外部に流れてしまいます。このように傷口が広がる前に事業を廃止し、清算に向かうということも必要になります。


事業再生を成功させるためにはキャッシュフローがプラスでなければならないのです。

金融機関にしても、キャッシュフローがマイナスのような事業に対して支援することはできません。事業が有益であるのはキャッシュフローがプラスだからであり、事業が有益であるからこそ再生の支援をするのだということを見失ってはなりません。

株主が一人の会社でも議事録が必要です

2015年03月31日(火) 

大塚家具の株主総会が世間の注目を集めましたが、株主総会を招集するには、予め招集通知を発することが必要となります(299条)。

株主に総会出席の機会と準備の時間的余裕を与え、株主の利益を保護するために他なりません。このため、招集手続きを省略することについて事前に株主全員の同意があるときは、招集手続を経ることなく株主総会を開催できます(300条)。

このように考えると、株主が一人の会社では、単独株主の同意があれば株主全員の同意があったことになるので招集通知を省略できることになります。


招集手続を省略することにつき事前に株主全員の同意が無かった場合でも、株主全員が株主総会に出席し、総会の開催に同意すれば有効な株主総会決議の成立を認めることができます(全員出席総会)。

株主が一人の会社では、単独株主が株主総会に出席し、総会の開催に同意すれば全員出席総会として有効な株主総会決議が成立することになります。


ところで、株主総会の議事については議事録を作成しなければなりません(318条)。

株主が一人の会社においても、議事録の作成が必要かどうかが問題になります。この点、議事録の閲覧・謄写の請求をなし得るのは、株主だけではなく債権者も含まれますので(318条)、債権者の利益保護のためにも議事録の作成は必要となります。

よって、株主が一人の会社といえども議事録の作成を省略することはできません。


「株主は自分だけなのだから自分の好きなようにできるのであって、議事録などは作らなくて良いのだ」とはならないというわけです。


ホームページの移管作業

2015年3月29日(日) 

ホームページの移管作業を3月31日(火)に行います。

作業は一時間程で完了する見込みですが、作業中は下記の障害が予想されます。


1.移管中は「@chiyoda-cmt.com」のメールでの受信が出来ません。

2.「http://chiyoda-cmt.com/」のホームページが非表示になります。


メールならびにホームページ閲覧に不具合が生じた場合は、移管作業が原因です。恐れ入りますが、一時間以上後にアクセスするようにお願いします。

ご不便をおかけしますがご了承ください。


大塚会長が打つべき「捨て身の戦法」

2015年03月28日(土) 

かねてから「楽しみ」にしていた大塚家具の騒動に決着がつきました。

久美子社長の主張が通った形です。信条として大塚元会長に賛同する私としては納得がいきませんが、利害関係がない立場ゆえに「どちらでもいい」という気分です。


それにしても父親としての元会長はさぞかし傷ついたことでしょう。

創業者として我が子のように可愛いであろう自分の会社を、同じく可愛い我が子に奪われたのですから、心痛たるやいかばかりのことでしょうか。深く同情する次第です。


株主の審判が下った以上、元会長としては今後の反撃は困難ではないでしょうか。多くの株主の賛同を集めるのは難しいからです。

私が元会長の経営参謀であるならば、「捨て身の戦法」を進言します。

すなわち、次の諸策を講じます。


まず、自己の保有株をすべて会社に買取請求をして資金化します。さらに全ての自己資産を売却あるいは現物出資して新会社を設立します。私財を投げ打って資金化し、それを基に新会社を設立するのです。


失礼ながら、元会長も老い先が長いとは言えないでしょう。

いつの日にか相続が発生した際に、敵に回った長女に財産を残してどうなるものでもないはずです。それよりも私財を全て投げ打って設立した新会社を、味方についた長男に残したら良いのではないでしょうか。


苦労して築きあげた現大塚家具は大きなダメージを受けるでしょう。しかしそれは、元会長に反対した株主が選んだ道です。元会長が自身の権利を行使するのに文句を言われる筋合いはありません。反対した株主、債権者、従業員の皆さんは、久美子社長の下、低価格化路線なりなんなりを好きにすれば良いのです。


元会長と長男は、新会社を設立し、高級家具路線・対面販売路線を極めれば良いでしょう。

高級家具路線を良しとする従業員、取引先もついてくるのではないでしょうか。元会長に従った多くの社員(=会長派のレッテルにより冷や飯を食わされる)の今後のためにも、さらには高級家具のメーカー(=低価格化路線により取引が先細りになる)も救われると思います。

本気で戦うのであれば、捨て身の戦法もやむを得ないのではないでしょうか。


骨肉の争い程、解決が難しいものはありません。和解を期待するのは無理というものです。

今回は親と娘という形で世間の注目を集めましたが、娘ではなく経営権の奪取を狙う第三者との争いであっても同じではないでしょうか。


従来の経営者による経営継続を実現するためには、相手が第三者であっても、娘であっても同じです。新会社による再出発。これが従来の経営者である元会長に残された唯一かつ有効な手段だと思います。

少数株主の保護

2015年03月27日(金) 

今日は大塚家具の株主総会が開催されます。

私の信条としては会長を支援したいところですが、結果は数時間後に判明します。


会社の意思決定は株主の意思で決められます。すなわち多数決の原理に支配されるのです。

株主には、その出資額に応じて議決権を与えるべきであり、基本的には多数派株主の意向を反映すべきだからです。しかし、多数派株主が少数派株主の利益を不当に害するおそれもあるので、少数派株主の保護が図られています。


たとえば資本多数決の限界として次のような配慮がされています。

①株主平等原則(109条)に違反した決議がなされた場合など、強行法規違反は決議無効となる。

②特別利害関係人の議決権行使など、著しく不当な決議がなされた場合には決議取消の訴により遡及的に無効になる。


また、資本多数決の修正として次のような配慮がされています。

①株式買取請求権(116条)によって反対株主の投下資本回収を保障して経済的な救済を図る。

②累積投票制度による取締役選任(342条)により少数派株主にも取締役選任の道を与える。

③役員解任の訴え(854条)により不正行為をした役員が資本多数決にものをいわせて居座ることを防ぐ。


その他にも、監督是正権により少数派株主の保護を図られています。

単独株主権としては、

①違法行為差止請求権(360条)

②募集株式発行差止請求権(210条)

③代表訴訟提起権(847条)があります。

少数株主権としては、

①株主総会招集請求権(297条)

②株主提案権(847条)

情報収集権利としては、

①会計帳簿閲覧請求権(433条)

②検査役選任請求権(358条)

③取締役の説明義務(314条)などが認められています。


このように、抵抗勢力が少数株主であっても、少数株主を保護するための手段を無視することはできませんので注意が必要です。

大塚家具の株主総会で負けた側が次にどのような手を打ってくるのか、私にとっては、新たな「楽しみ」の始まりというところです。


新しい書籍が発売になります

2015年03月24日(火)

3月25日に新しい書籍が発売になります。
書名は「貸倒引当金の多寡が債権放棄に及ぼす影響ならびに事業譲渡を伴う事業再生における課税の公平」です。


本書は、対立する経済主体間でどのような相互関連があるかを分析したり、経済行動の合理性を大所高所から論ずるのではなく、債権者あるいは債務者という一つの経済主体の行動分析を通し、不良債権の解消策のあり方を探ることを目的としたものです。
具体的には、経済主体の意思決定メカニズムについて検証するとともに、現実の経済社会の中で個々の経済主体がどのように機能するのかを検証し、不良債権の解消のために求められる諸策を探ることを目的としています。


第Ⅰ部では債権者に着目して債権放棄に関し、第Ⅱ部では債務者に着目して事業譲渡に関し、不良債権処理の推進のあり方を検証しました。経営学、経済学、法学(税法を含む)、会計学(税制度を含む)の各分野から多面的なアプローチを試みています。
さらに、不動産鑑定評価書と営業権評価書の実例を掲載することで、実務でも活用できるように配慮しました。


専門書なので小さい書店では在庫が無いと思います。
お求めに当たっては、大きな書店をご利用いただくか、出版社に直接、あるいはネット書店をご利用ください。


事業計画と返済計画

2015年03月23日(月)

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。


第11回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「事業計画と返済計画」で、その要旨は次の通りです。

ーーー

要旨:

実現可能性が求められる「事業計画」と、均衡性・公平性が求められる「返済計画」とは異なります。両者が相まって事業再生計画が完成するのです。日頃から債務者の経営状況を把握する立場にある会計事務所としては、「事業計画」の作成は比較的容易であっても、金融機関の論理に配慮した「返済計画」の作成や金融機関との交渉は荷が重いかもしれません。返済計画の作成に無理に関与するよりも、会計事務所はモニタリング機能を発揮し、事業再生計画が計画通り進むことを見守ることが大切なのです。

ーーー


記事を読むにはミロク情報サービスの会員になる必要があります。
会員は(1)会計事務所向けと(2)企業経営者向けに分かれています。


(1)会計事務所の先生の場合は「tvs会員」になる必要があります。
下のアドレスから著者名を指定して検索できます。
http://tvs.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html


(2)企業の経営者の場合は「GOODWILL PLUS会員」になる必要があります。
下のアドレスから著者名を指定して検索できます。
http://goodwill.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html


多くの有益な情報を入手できますので、入会することをお勧めします。
私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。


入会にあたってはお近くの(株)ミロク情報サービスの営業拠点にご連絡ください。営業拠点は下のアドレスから検索できます。
http://www.mjs.co.jp/office/tabid/479/index.php#no2


取締役会から株主総会への権限移譲

2015年03月20日(金)

代表取締役の選定は取締役会の権限とされています(362条2項)が、定款で株主総会の権限を拡大する余地が認められています(295条2項)。そこで、代表取締役の選定を定款で株主総会の権限とできるかが問題となります。


株主総会は会社の最高意思決定機関であり、本来すべての事項を決定できるはずですが、代表取締役の選定権限を取締役会に与えたのは、会社の合理的経営を確保でき、株主の利益になるからです。これは代表取締役の選定権限を取締役会よりも下位機関に委譲できないことを意味するにすぎず、上位機関である株主総会に委譲することまで禁止する趣旨ではありません。したがって、定款で株主総会に権限委譲することは認められると考えられています。


代表取締役の選定の他、多額の借財の決定も取締役会の権限とされています(362条4項)。定款で株主総会の権限を拡大する余地が認められている関係で、取締役会の決議事項としている多額の借財の決定を株主総会の決議事項とできるかが問題となります。

株主総会は最高意思決定機関であり、すべての事項を決定できるはずですが、業務執行の決定権限を取締役会に与えたのは、会社の合理的経営を確保でき株主の利益になるからです。したがって、会社の合理的経営確保のため設置された取締役会の存在を否定しない限度で、株主自身が望む場合は業務執行の決定権限を株主総会に委譲することも許されます。


このように、株式会社の本質または強行法規に反せず、会社の基本的重要事項に関するものであれば、定款による株主総会への権限委譲は認められることになります。株主総会への権限移譲が認められるならば、取締役会を開くことなく株主が株主総会で決めることができるということになります。


本日(3月18日)よりホームページをリニュアルしました

2015年03月18日(水)

先日の本欄でお知らせした通り、従来のホームページには不備が散見されたためホームページを全面リニュアルすべく準備をしておりましたが、本日より新しいホームページに移行しました。
一部に最終調整中の箇所がありますが、逐次、修正していきます。
今月一杯は移行作業中のため、仮環境(仮アドレス)になっています。


移行作業が月末には完了しますので、その後は本番環境に正式に移行します。
その際は、改めてお知らせします。

今後はできるだけ多くの情報をタイムリーに提供していきたいと思っています。
ご意見・ご要望等をメールにてお知らせいただければ幸いです。


大塚家具の内紛

2015年03月14日(土)

大塚家具の会長(父親)と社長(娘)の内紛劇で騒がれています。上場企業でありながら、親子の確執が表面化し主導権争いになっていると騒がれています。


たたき上げの創業者と奇麗な女社長の争いは、ビジュアル的にも関心を引きますし話題性はあると思います。しかし「親子の確執」という点に焦点をあてるから騒ぎになるだけであって、「高級家具の対面販売」vs「低価格路線」という「経営方針の違い」という意味では、一般的にもよくある主導権争いだと思います。


私は株主ではありませんが、もし株主であったならば、迷うことなく「会長派」です。


「本来であれば企業内部で解消すべき争い」を、「外部の株主を巻き込む形で表面化させた」ことに問題があるのではないでしょうか。創業以来、「高級家具の対面販売」で成長してきた会社には、販売先だけではなく取引先との関係も含めた企業風土というものがあるはずです。これを否定し、「低価格路線」に大きく変更するのは、企業風土の破壊であり、会長側が公言するように、まさにクーデターであると思います。


私は企業風土の変更を否定するものではなく、むしろ積極的に進めるべきだと考えますが、外部を巻き込むような対立に発展させてしまったのは、正しい形で企業風土の変更をすることができなかったという点で現経営陣である社長側(娘側)の大きな経営ミスだと思います。


たとえば「低価格路線」を指向する形のアンテナショップを別会社で限定的に運営し、結果を慎重に判断してから「高級家具の対面販売」への変更を模索するなど、ソフトランディングの方法はいくらでもあったはずです。
報道によれば現社長は一橋大学で経営を学んだ才女とのことですが、内部対立を招いてしまったという点では経営の資質に欠けると言わざるを得ません。机上の空論に長ける才女なのでしょうが、現実の企業経営には通用しない机上の空論を展開してしまったために内紛を公にしてしまったのではないでしょうか。進め方に難ありと言わざるを得ません。
そのような経営手腕に欠ける者に経営を任せるべきではなく、久美子社長は内紛を招くことで企業価値を損ねているのであり、よって私は会長を支持するというわけです。


才女であるならば、自らの力で新設した会社で「低価格路線」なり、なんなりを自由に進めるべきではないでしょうか。親から受け継いだ企業風土を変える形でのクーデターが正しい姿であるとは思えません。
事業再生に当てはめるならば、苦労して経営してきた従来の経営者から、新手の手法で経営を乗っ取るM&Aに似ていると思います。そもそも、そのような手法は私の行動指針に反するやり方なのです。


報道によれば機関投資家は株価が高騰したのを機に売却に走っているとのこと。
大塚家具の今後がどうなろうが、親子のどちらが経営権を握ろうが、彼らには関係ないとのであり、利食いができればそれで良いというわけなのでしょう。


利害関係が全くない私にとっては、大塚家具の将来がどうなろうが、ハッキリ言ってどうでも良い話しです。
現経営者の無能ゆえに招いた内紛劇の行方がどうなるのか。
単なるドタバタ劇として楽しみ・・・といったところです。


鳩山に旅券返納命令をすべし

2015年03月11日(水)

産経新聞ニュース(3月11日)他によると次のような報道がなされています。
『鳩山由紀夫元首相が10日、クリミア入りし、政府を困惑させている。ウクライナ南部クリミアからの報道によると、鳩山氏は10日、クリミアの中心都市シンフェロポリの空港に到着。地元の親ロシア政府「クリミア共和国」のムラドフ副首相が歓迎した。鳩山氏はロシアの査証(ビザ)でクリミア入りしたものとみられる。(中略)鳩山氏のクリミア入りについて、民主党の枝野幸男幹事長は10日、「民主党は一切関知するものではない」との談話を出した。枝野氏はクリミア併合に反対する日本政府の立場を支持した上で、「誤解を与え、ロシアに利用される恐れもあり、軽率とのそしりを免れない」と批判した。』


先日の本欄では公民権を停止すべしと訴えましたが、外国を巻き込んで日本国の国益を損ねる結果になってしまいました。まさに国賊としか言いようがありません。


つい先日、外務省はシリアへの渡航計画を表明していた新潟市のフリーカメラマン男性に対し、旅券の返納を命じたばかりですが、鳩山にも同様の措置をとるべきではないでしょうか。
自らの生命の危機と引き換えにシリアに行くのは本人の勝手であり自己責任で好きにすれば良いのですが、国益を損ねてまでクリミアに行くのは鳩山個人の好き勝手では済まない問題です。その意味では旅券返納命令の必要性は高いと思います。


「鳩山は静かにしていろ」と、声を大にしたいと思います。


株主総会の招集の瑕疵

2015年03月09日(月)

前回の本欄では株主総会の瑕疵に関する訴えの制度を明らかにしました。今回は、招集手続きに絞って検討を加えることにします。


そもそも、取締役会設置会社における株主総会の招集は、取締役会で決定しなければならないとされています(298条4項)。


取締役会決議を経ないまま代表取締役が勝手に株主総会を招集した場合、取締役会決議を欠く代表取締役の行為の効力はどうなるのでしょうか。無効とすることで守られる会社の利益と、有効と信頼した第三者の取引の安全を比較衡量して決すべきといわれています。
すなわち、株主総会の招集行為は会社の内部的行為にすぎず、会社の利益だけを考慮すればよいから無効と解することになります。


株主総会の招集が無効であるということは、代表取締役が招集した株主総会における当該決議は、有効な取締役会決議を経ていない点で「招集手続に法令違反がある」ことになります。したがって、当該決議は株主総会決議取消しの訴え(831条)の対象となります。
一定の提訴権者が当該決議の日から3か月以内にこの訴えを提起することにより、当該決議を取り消すことができるのです。認容判決が確定すれば、当該決議は遡及的に無効となります(838条)。


もしも代表取締役ではなく平取締役が株主総会を招集したのであれば、有効な取締役会決議を経ていない点に、本来の招集権者による招集でないという瑕疵が加わることになります。瑕疵が著しい場合であり、決議不存在と法律上評価される場合と考えられますので、当該決議は株主総会決議不存在確認の訴え(830条1項)の対象となります。

この場合は、誰でも、いつでも、どんな方法によってもこれを主張できることになりますが、必要があれば830条1項の訴えを提起することもできます。


このように株主総会の招集手続をおろそかにすると、後になってツケが回ってくるので慎重にすすめることが必要です。


株主総会の瑕疵に関する訴え

2015年03月08日(日)

株主総会決議は株主や会社債権者等多数の者の利害に影響を及ぼすので、株主総会に瑕疵がある場合の無効処理を民法の一般原則に委ねるのは妥当ではないといえます。そこで、瑕疵の内容や程度に応じて、(1)決議取消しの訴え(831条1項)、(2)決議無効確認の訴え(830条2項)、(3)決議不存在確認の訴え(830条1項)の3つの制度を設けられています。


まず、(1)決議取消しの訴は、次の三つの場合があります。
ⅰ)株主総会の招集手続または決議方法が法令・定款に違反し、または著しく不公正な場合(831条1項1号)
ⅱ)株主総会の決議内容が定款に違反する場合(同条項2号)
ⅲ)特別利害関係株主の議決権行使により著しく不当な決議がされた場合(同条項3号) 株主等の一定の者が、決議の日から3か月以内に、この訴えを提起することにより、当該決議を取り消すことができます。


これらは軽微な瑕疵であることが多いので、無効とはせずに取り消すことができるものとし、瑕疵の主張の可及的制度の要請から提訴権者と提訴期間を制限されています。さらに法律関係の画一的確定の要請から認容判決には対世効を認め(838条)、認容判決の確定によって初めて遡及的に無効になるとして、法的安定性が図られています。


決議取消事由がある場合でも、招集手続または決議方法の法令・定款違反である場合に、違反事実が重大でなく、決議に影響を及ぼさないと認められる場合は、決議取消しの訴えを棄却することができるとされています(831条2項)。違反は軽微な瑕疵であることが多く、再度決議をやり直しても同じ結果となることが予想されるからです。


反対に、決議の内容が法令に違反している場合や株主総会が開催されていないのに議事録だけが作成されている場合など、瑕疵の程度が大きい場合は、民法の一般原則に従って、誰でも、いつでも、どんな方法によってもこれを主張できます。これらの場合は瑕疵の程度が大きいので、利害関係人の保護を重視する必要があるからです。


さらに、決議の効力を巡る争いを抜本的に解決するために、必要があれば830条の規定する(2)決議無効確認の訴え(決議の内容が法令に違反する場合)や(3)決議不存在確認の訴え(決議の事実がない場合または決議不存在と法律上評価される場合)を提起することもできます。


世間を騒がせている大塚家具の内紛劇のように、株主の中に抵抗勢力がいる場合には、株主総会の瑕疵が問題にならないように注意が必要です。


新刊発表とホームページの変更

2015年03月04日(水)

当社のクライアントの皆様には内報済ですが、3月の中旬をめどに新刊が店頭に並びます。
新刊の題名は「貸倒引当金の多寡が債権放棄に及ぼす影響ならびに事業譲渡を伴う事業再生における課税の公平」です。
経営学博士の学位を取得した際の博士論文に加筆修正した学術書です。
出版スケジュールを調整した関係で今のリリースになりました。
執筆にあたっては5年の歳月をかけており、学位審査時にあたっては博士号を持つ大学教授5人の審査を受けていますので学術的内容は優れていると自負しています。


店頭発表が決まり次第、本欄でお知らせします。


さらに、3月の中旬から下旬をめどにホームページをリニュアルします。現在、作業を進めています。
メールが届かなかったり、一部の内容に不備があったりと、ご迷惑をかける事例が続いたため全面的にリニュアルすることにしました。
移行作業にあたって、3月一杯はホームページが不安定な状況になるかもしれませんが、その際はご容赦ください。

千代田区に区民住宅が必要なのか

2015年03月02日(月)

東京都千代田区の区民住宅で火災があったとの報道がなされています。
区民住宅とは何でしょうか。
千代田区役所のHPによると、「区民住宅とは住宅に困っている中堅所得層の世帯で千代田区内に居住または在勤(アルバイト、パート等を除く)している方または、親か子が千代田区内に居住する方を対象にした公共賃貸住宅です。」となっています。


都内千代田区で住宅に困っているとは何のことでしょうか。
都内に住みたくても住めないから、近郊に移り住み通勤ラッシュに堪えて都内に通勤しているのが普通の姿ではないでしょうか。
千代田区に住みたくても住めないという意味では、多くの人が困っているのです。


「千代田区で住宅に困っている」なら「郊外に引っ越すべき」であり、わざわざ税金を使って千代田区に住宅を用意する必要はないのではないでしょうか。
千代田区内に区民住宅が必要なのでしょうか。


火災現場は25階の高層マンションとのこと。さぞかし眺望に優れ、千代田区内で便利、かつ住み心地が良いことでしょう。羨ましい限りです。
「福祉に名を借りた放漫行政ではないのか」「住民のゴネ得による居座りはないのか」「そもそも区民住宅に永住を許して良いのか」等々、都内一等地の高層マンション(=区民住宅)の火災事故に接し、公共住宅制度の盲点を垣間見た思いです。


この際、都心の公共住宅は廃止すべきではないでしょうか。


キャッシュフローと価値の把握
2015年02月28日(土)

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。


第10回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「キャッシュフローと価値の把握」で、その要旨は次の通りです。

ーーー

要旨:

再生後の事業経営にあたっては資金繰りが大きな課題になります。金融機関としてみれば新たな融資には慎重になるからです。特に債権放棄が伴うような事業再生では、再生後の追加融資は極めて困難な場合が少なくありません。キャッシュフローの重要性は極めて高くなるのです。また、資産価値の把握にあたっては競売やM&Aも視野に入れた検討が必要になります。本稿では価値の把握を念頭に置き、キャッシュフローの重要性を明らかにします。

ーーー


記事を読むにはミロク情報サービスの会員になる必要があります。
会員は(1)会計事務所向けと(2)企業経営者向けに分かれています。


(1)会計事務所の先生の場合は「tvs会員」になる必要があります。
下のアドレスから著者名を指定して検索できます。
http://tvs.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html


(2)企業の経営者の場合は「GOODWILL PLUS会員」になる必要があります。
下のアドレスから著者名を指定して検索できます。
http://goodwill.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html


多くの有益な情報を入手できますので、入会することをお勧めします。
私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。


入会にあたってはお近くの(株)ミロク情報サービスの営業拠点にご連絡ください。営業拠点は下のアドレスから検索できます。
http://www.mjs.co.jp/office/tabid/479/index.php#no2


補助金と政治献金
2015年02月27日(金)

「補助金の交付決定通知から1年以内の政治献金を禁じる政治資金規正法」に違反する事例が立て続けに問題になっています。
自らの要望が実現するように、特定の政党や政治家に献金することは悪いことだとは思いません。当然の行為だと思います。しかし、補助金を受ける一方で献金をしていたのでは、結果的に補助金が政治活動資金になってしまいますので、法の趣旨は理解できるものだと思います。


献金を受ける側にしてみれば、全てについて補助金支給の有無を確認することは困難です。したがって、「知らなかった」という抗弁はやむを得ないと思います。
このような事例が発覚した時に、受け取った政治家を責めることに間違いがあるのではないでしょうか。
責められるべきは、補助金を受けたことを知りつつ献金した側だと思います。


受け取った政治家に「受け取った額」を返金させるのではなく、献金した側に「補助金の全額」を返還させるべきだと思います。これにより献金する側は慎重な姿勢を取らざるを得ないからです。数百万の献金のために数千万の補助金を返還させられたのでは経済合理性が成り立ちません。よって、問題となるような献金は生じなくなるからです。


このような解決策を講じるのが国会のあるべき姿であり、政争の具として、罷免だ、任命責任だと騒ぐ姿は情けないと思うのは私だけでしょうか。


取締役会の招集手続の瑕疵
2015年02月25日(水)

前回の株主総会の招集手続の瑕疵に続き、今回は取締役会の招集手続の瑕疵を取り上げます。


取締役会の招集通知は、取締役全員の同意がある場合(368条2項)を除いて、取締役全員に発する必要があります(同条1項)。この趣旨は、取締役全員に出席の機会を与えて議論を尽くさせるためです。
一部の取締役に招集通知がなされず、当該取締役が欠席して取締役会決議がなされた場合のように、取締役会決議に瑕疵がある場合の効力については、株主総会決議に瑕疵がある場合(830条、831条)と違って特別の規定がありませんので、民法の一般原則により原則として無効となります。


しかし、招集通知を受けなかった取締役が出席しても決議の結果に影響を及ぼさない特段の事情がある場合(たとえば当該取締役が名目的取締役である等)には、831条2項の趣旨を類推して例外的に有効であるとされます。このような場合にまで無効とするのは、形式的であり法的安定性を害するからです。


敵対する取締役を排除する目的で招集しなかった場合は決議の結果に影響を及ぼさない特段の事情といえるかどうか、慎重に判断することが必要になります。このような場合、『決議の結果に影響を及ぼさない特段の事情』とは言い難い場合が多いと思います。したがって、無効という扱いを受けることになりますのでご注意ください。


株主総会の招集手続の瑕疵
2015年02月24日(火)

先日の本欄で株主総会と取締役会の比較をしました。今回は株主総会に的をあてて、招集手続きに瑕疵があった場合の問題を検討します。


株主総会を開催するには、株主に出席の機会と準備の余裕を与えるため招集通知の発出が必要ですが、招集通知を欠いても、株主全員が開催に同意して出席すれば適法な総会となるとされています。しかし、一部の株主への招集通知を欠いて開催された株主総会決議は、招集手続に瑕疵あるものとして、株主総会決議取消しの訴え(831条)または不存在確認の訴え(830条1項)の対象となりますので、反対株主を無視するわけにはいきません。


株主への招集通知もれが取消原因か不存在原因かは、株主数と持株数の両面から判断すべきとされていますが、その瑕疵の主張を提訴期間等の面において制限することが相当でないほど瑕疵が著しい場合は不存在原因となります。


招集通知もれが不存在原因にあたる場合は、誰でも、いつでも、どんな方法によってもこれを主張できるのですが、830条の不存在確認の訴えを提起することもできます。

取消原因にあたる場合は、提訴権者・提訴期間が制限された831条の決議取消しの訴えを提起しなければならず、提訴なく堤訴期間が経過した場合は瑕疵ある決議も有効に確定します。


招集通知もれが取消原因の場合は決議取消しの訴えによりますが、招集通知もれという招集手続に法令違反がある場合でも、違反事実が重大でなくかつ決議に影響を及ぼさない場合は、裁量棄却が認められています(831条2項)。
招集手続の法令違反等は軽微な瑕疵であることが多く、再度決議をやり直しても同じ結果となることが予想されるからです。裁量棄却が認められた場合、当該決議は有効となります。


反対株主が存在する場合には慎重に対応しておかないと、後日に禍根を残すことになるので注意が必要です。


国賊は公民権を停止すべし
2015年02月21日(土)

2015年2月21日の朝日新聞デジタルによると、『首相時代に米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設問題をめぐって迷走した鳩山由紀夫氏が20日、沖縄県庁で同県の翁長(おなが)雄志知事と会談した。県外移設を断念して政権の座を降りた鳩山氏だが、この日は「辺野古阻止」を掲げる翁長氏を激励した』とのことです。


「お前、まだ何かやってんのか?」という思いで一杯です。
鳩山の無責任なスタンドプレーによって、まとまりかけていた辺野古移転を打ち壊したのは万民の知るところです。散々、迷走した揚句、結局は何もできなかったどころか、今でも争いを引きずることになってしまいました。まさに歴史に残る無能総理だと思います。


政界を追い出される形で引退したにもかかわらず。どの面下げて沖縄に行くのでしょうか。
いい加減にしてもらいたいところです。


福島原発で自らの出しゃばり精神ゆえに被害を増大させてしまった管と、沖縄問題をこじらせてしまった鳩山は、公民権を停止すべき国賊ではないかとさえ思います。


このような輩の言動に左右されてしまう程度の国民が、国民主権の名の元に為政者を選び、自らの利益だけを念頭に置いた政治を進める…。日本が、このようなレベルの二流国家になってしまったのは悲しい限りだと思います。


久しぶりに鳩山のニヤケタ顔を見て、日本の将来が心配になってしまいました。


作られた美談
2015年02月20日(金)

伝統的なミクロ理論経済学では、すべての経済人は合理的に行動するとの前提を置きます。すなわち、1円でも経済的利益の多い方を選択するという考え方です。
一方、行動経済学に代表されるように、伝統的なミクロ理論経済学の完全合理性仮説を見直す動きもあります。経済人は常に合理的に行動するのではなく、感情が左右する場合もあるという考え方です。このように考えると、常に1円でも多い方を選択するという考え方は成り立ちません。


メジャーリーグの20億円の年俸を断って、広島カープに4億円で移籍したプロ野球選手が話題になっています。伝統的なミクロ理論経済学の立場からは、完全合理性仮説に反する理解不能の行動であるということになります。しかし、心と感情が左右する行動経済学の視点からは理解できる話ということになります。言うなれば、「20億のメジャーリーグよりも4億の広島が好きだから」という美談に仕立て上げることができるわけです。


しかし、別の評価もできるのではないでしょうか。
すなわち、メジャーリーグで20億円を稼ぐとは言っても、20億円を稼ぐというメリットの他に、何らかのデメリットがあったのではないのかという見方です。例えば、そのデメリットが17億円に該当するのであるならば、差し引き3億円の利得でしかないことになります。日本での4億円にはデメリットがないのであれば、広島の4億の方がメジャーリーグの3億円より経済合理性に優ることになります。
ちょうど資産から負債を控除して純資産を求めるようなものです。


このようなデメリット(負債)の評価をすることなく、メリット(資産)の評価だけを取り上げて、美談を作り上げることは事の本質をも失っていると言わざるを得ません。東日本大震災のときの「絆」や、東京オリンピックの「おもてなし」、イスラム過激派による日本人殺害事件の「ジャーナリズム」等々、作られた美談が気になって仕方がありません。


株主総会と取締役会の招集と議決権行使の違い
2015年02月17日(火)

株主総会は、株主によって構成され、会社の基本的重要事項につき会社の意思を決定する必要的機関であり(295条2項)、取締役会は、取締役全員で構成され、業務執行の意思決定と取締役や執行役の職務執行を監督する権限を有する機関です(362条、416条)。
両者は役割が異なりますので、次のような違いがあります。


まず招集方法ですが、株主総会を招集するには、2週間前までに招集通知を発出し(299条)、議題等を明らかにしなければなりません。株主に出席の機会と準備の余裕を与えるためです。ただし、取締役会を設置している非公開会社は株主が少数かつ変動せず株主間の関係が緊密なため株主総会の招集通知は1週間前までに発出すればよいとされています。
一方、取締役会の招集通知は1週間前までに発出すればよく、定款で短縮も可能です(368条)。通知は口頭でもよく議題を示す必要もありません。立ち話でも良いということになります。取締役は経営にあたる受任者であるため(330条)、取締役会への出席は義務であり、また、取締役は少数ですから株主総会ほど厳格な招集手続を要求しなくても出席の機会は確保できるからです。


次に議決権ですが、株主総会では1株1議決権(308条1項)の資本多数決であるのに対して、取締役会では1人1議決権(369条1項)の頭数多数決となります。
取締役会では、取締役は個人的信頼に基づいて選任された者である以上、対等に尊重される必要があるからです。株主総会では議決権の代理行使(310条)や書面投票・電子投票が認められており、できるだけ株主に議決権行使の機会を与えるようになっています。
一方、取締役会では、そもそも取締役会制度が取締役の協議と意見の交換によって一定の結論を得るため、本人が出席することが求められています。


決議に瑕疵がある場合の法的効果については、順次、本欄でお知らせしますが、中小零細企業の場合には株主総会にしても取締役会にしても、議事録の作成を忘れがちですので注意が必要です。


従来の銀行が第二会社に融資する場合と融資しない場合
2015年02月12日(木)

第二会社方式で事業再生を行う場合、債権者との関係をどのように理解すべきでしょうか。
債務者Aが第二会社Bを利用して事業再生を行う場合を例にとると、従来のX銀行が新会社Bに融資する場合と、新しい銀行Yが新会社Bに融資を行う場合とでは大きな違いがあることに注意すべきです。


まず、第一のケース、すなわち従来のX銀行が新会社Bに融資する場合を考えます。
この場合、X銀行は新会社Bの経営計画の妥当性を十分に把握する必要があります。なぜならば、事業再生が完了した後も新会社Bとの取引が続くのであり、いい加減な計画を鵜呑みにしたために第二次破綻が生じるようでは管理能力すら問われかねないからです。
また、債権放棄を伴う場合は、損金処理が否認されないようにしなければならないという問題もあります。
安易に債権放棄を行うと、後日、税務調査等で貸倒損失の損金計上が否認されかねません。
債権放棄の客観性を高めるため、再生支援協議会等の第三者の関与を求めるのは、再生計画の妥当性を高めるだけではなく、債権放棄の必要性、客観性を高めることで、貸倒損失の損金計上を否認されないようにする事前準備という側面を有しているのです。


一方、第二のケース、すなわち新しい銀行Yが新会社Bに融資を行う場合はどうでしょうか。
この場合、X銀行は新会社Bの経営計画には大きな関心は無いといえます。なぜならばY銀行に融資が移るのであって、極端な話、新会社Bが破綻するか否かはY銀行の問題であってX銀行の問題ではないからです。
X銀行にとっては新会社Bの経営計画よりも、旧会社Aに対する債権放棄の妥当性の方が重要です。
安易に債権放棄を行うと、後日、税務調査等で貸倒損失の損金計上が否認されかねないことは、第一のケースと同じだからです。


このように、第一のケースに比べると第二のケースでは、新会社Bの経営計画の妥当性に銀行Xの関心が無いという点に大きな違いがあるといえるでしょう。
その意味で、第二のケースの方が第一のケースより、事業再生を進めやすいということができます。


指導鑑定士としての認定を受けました
2015年02月07日(土)

この度、「不動産鑑定士・税理士 髙橋隆明事務所」は日本不動産鑑定士協会連合会より実地演習実施機関として認定されるとともに、指導鑑定士としての認定を受けました。


不動産鑑定士になるためには、短答式試験と論文式試験に合格した後、さらに実務修習を受けなければなりません。実務修習は国土交通省が認定した研修機関で実務修習(実地演習を含む)を受けることになります。実務修習の中の実地演習は、日本不動産鑑定士協会連合会の認定を受けた指導機関において、認定を受けた指導鑑定士のもとで行われることになります。


この「実地演習実施機関」として認定を受けるとともに、「指導鑑定士」としての認定も受けました。
単なる認定指導鑑定士としてではなく、税理士として実務面のノウハウを指導に反映するとともに、博士(経済学)、博士(経営学)の学位のみならず修士(不動産学)の知識も指導に反映する形で最終合格をサポートしたいと思っています。
不動産鑑定士論文試験に合格し、不動産鑑定士を目指して実地演習を希望する方はご連絡ください。

詳しくは日本不動産鑑定士協会連合会のホームページをご覧ください。


テロ行為の増加が心配です
2015年02月04日(水)

武装集団によってヨルダン人パイロットが殺害された映像が流されました。
すでに殺害されていたことは容易に推測できたことですが、1月3日には殺害されていたとのヨルダン側の発表がありました。殺害されていたことを知っていたのであるならば なぜヨルダン政府はパイロットの解放にこだわったのでしょうか。一縷の望みがあったので解放を求めたのだと思いますが、知っていたなら後藤氏の開放より前にパイロットの開放に拘ったことに説明がつきません。
知っていたなら、「後藤氏を見殺しにしたのか」と言われかねないのであり、「知らなかったので引き換え開放を交渉したが、今になって知った」ことにしておく方が得策だったのではないでしょうか。


武装集団は今回の事件で 自らの交渉力を大きく棄損したと思います。
武装集団は女死刑囚と後藤氏との引き換えを条件に持ち出し、実現しないならばパイロットをすぐに殺すと言っていましたが、その時点では生きていたということを前提にした要求でした。ヨルダン政府の発表により、実現不可能な要求をしていたということが露見してしまったのです。ヨルダン政府は「見殺しを問われる」ことを覚悟の上で、「武装集団を追い込む」道を選んだのでしょうか。


もはや、要求が実現するのか分からない相手に身代金を払う者などなくなってしまったと言うべきでしょう。
「約束を守らない相手に身代金を支払う意味がない」という選択肢は正しいという考え方が補強されたことになります。身代金を支払う者がいなくなるのですから、身代金ビジネスは成立しなくなるのです。


このように考えると、武装集団は今回の事件で自らの身代金ビジネスを放棄したことになります。身代金ビジネスの道を放棄した武装集団が、自らの主義主張を貫くにはテロ行為が手っ取り早いということになりかねません。交渉力が大きく棄損した武装集団は、その終焉を垣間見せたと言えるのでしょうが、一方で、テロ行為が増加する危険性が増したというべきでしょう。被害の拡大が心配です。


法人格否認の法理
2015年02月03日(火)

法人たる会社の形式的独立性を貫くと正義・衡平に反する場合に、問題となった具体的法律関係だけについて会社の法人格を否定し、会社と社員を同一視する法理を法人格否認の法理といいます。
そもそも法が法人格を認めるのは、その団体が社会的に有用だからです。社会的に有用でなく権利主体として認めるに値しない場合は、法人格を否認すべきであるというのが根本にある考え方です。そこで、民法1条3項の権利濫用の禁止を実定法上の根拠として、法人格否認の法理は認められています。


法人格否認のケースは濫用の場合と形骸化の場合に大別されます。

法人格の濫用の場合とは、会社の背後にいる者が違法または不正の目的を達成するために会社法人格を利用する場合で、たとえば、法律上または契約上負担する競業避止業務を回避するために別会社に取引を行わせた場合などがこれにあたります。
適用要件は、(1)会社の背後にいる者が実質上会社を支配しうる地位にあたること(支配の要件)と(2)支配的地位を有する者が違法または不正の目的を有すること(目的の要件)の2つが必要です。


次に、法人格の形骸化の場合とは、会社事業と社員個人の事業とが実質上同一視される場合です。たとえば、会社が実質的には社員の個人経営である場合や子会社が親会社の事業の一部門に過ぎない場合に、会社の債権者から背後の社員や親会社に対する請求を認めるような場合です。
適用要件は、会社の背後にいる者が会社を支配していることという完全支配の要件が要求され、この要件の具体的な判断基準としては、会社と背後者相互の財産の混同、両者の業務活動の混同、両者の会計区分の欠如、会社法上の運営手続の不遵守等があげられます。


法人格否認の法理が適用されると、当該事案の解決に関する限りで、会社が独立した権利義務の帰属主体であることが否認されます。
法的安定性の観点から、同法理の適用は慎重になされるべきであると言われています。
たとえば形骸化による法人格否認を厳格に適用するとなれば、多くの零細企業が法人格を否認されることになりかねません。それだけに慎重な適用が求められます。


事業再生にあたって濫用的な第二会社方式を強行すると、法人格否認の法理に基づいた訴訟を提起される可能性もありますので注意が必要です。


無理な要求は実現不能だということ
2015年02月01日(日)

ISILに拘束されていたジャーナリストの後藤氏が殺害されたとの報道がなされています。
予想された通りの結果になってしまいました。


後藤氏が拘束されている間、中東専門家、経済専門家、弁護士、タレント等々のコメンテーターが、そろって個人的な推察を垂れ流していました。
誰でもできるような個人的な想像を「専門家の分析」「コメンテーターのコメント」として、だらだらと話している姿を見て、「中東専門家なら個人的な推察でなく事例を挙げて根拠を示せ」と感じたのは私だけでしょうか。
「なぜ女死刑囚が選ばれたのか」「他にどんな囚人があるのか」「他にどんな人質がいるのか」そういった現地の事情を伝えるのが「専門家」ではないでしょうか。この点を見過ごし、「今はこういった交渉がなされているのではないか」「これからはこういう展開になるのでは」等々の「個人的想像」を聞かされるたびに「お前の想像など聞きたくないわ」と思ってしまいました。


私は、ことある度に話してきました。
「パイロットは死んでいる、あるいは出せる状態ではない」「だからパイロットは動画ではなく画像しか出せない」「ISILの『後藤を解放する代わりに死刑囚の釈放しろ、受けないならパイロットを処刑する』との要求は交渉になっていない」「いちゃもんつけて、死んでいるパイロットを処刑したことにしたいだけ」「まもなく二人とも処刑される」「ISILが強要した奥様のメッセージにも出ているように感情論はISILには通用しない」等々は、これまでの経緯を冷静に判断すれば分かる話です。


何度もISILの映像が放映されています。食傷気味です。東日本大震災の直後に津波の映像を繰り返し見たことを想い出してしまいました。いい加減にしてもらいたいところです。
後藤氏のジャーナリストとしての活動も繰り返し流されています。その意義を否定するものではありませんが、ジャーナリズムを過度に美化するのはいかがなものでしょうか。
これからしばらくの間、ジャーナリズムを美化したコメントや映像が流されるかと思うとウンザリします。


既に死んでいるパイロットを引換の対象にすること自体に無理があります。善し悪しは別として、無理なものは無理なのです。無理な要求は実現不能なのです。 実現可能なものを実現することが、真の「交渉」だと思います。
相手の要求はもとより無茶苦茶なのですが、当方の要求も実現不可能なものであったのでは無茶苦茶だと言わなければなりません。
相手が応じられるような「落とし所」が求められるのです。


北朝鮮に拉致された被害者の救出にあたっても、日本の要求に無理がないのか今一度、冷静に見直すべきではないでしょうか。


情報の非対称性と事業再生における会計事務所の役割
2015年01月28日(水)

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。


第9回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「情報の非対称性と事業再生における会計事務所の役割」で、その要旨は次の通りです。

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要旨:

「当事者の一方だけが情報を持ち、他の当事者が情報を持たない場合には正常な取引を進めることが難しくなります。このことをミクロ経済学では「情報の非対称性」といいます。債権者と債務者は、返済をめぐって利益が相反する関係になりますが、たとえば債務者の返済能力をとれば、「本当はもっと返済できるのではないか」という漠然とした疑問を債権者として感じているのは当然のことです。なぜならば、債務者は自分のことなので全てを知っているのに対し、債権者は外から推測することしかできないからです。両者の間には情報の非対称性が生じているのです。返済能力に関する正しい情報を共有しないと事業再生を成功に導くのは困難なのです。今回は情報の非対称性と事業再生における会計事務所の役割について明らかにします。」

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記事を読むにはミロク情報サービスの会員になる必要があります。
会員は(1)会計事務所向けと(2)企業経営者向けに分かれています。


(1)会計事務所の先生の場合は「tvs会員」になる必要があります。
下のアドレスから著者名を指定して検索できます。
http://tvs.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html


(2)企業の経営者の場合は「GOODWILL PLUS会員」になる必要があります。
下のアドレスから著者名を指定して検索できます。
http://goodwill.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html


多くの有益な情報を入手できますので、入会することをお勧めします。
私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。


入会にあたってはお近くの(株)ミロク情報サービスの営業拠点にご連絡ください。営業拠点は下のアドレスから検索できます。
http://www.mjs.co.jp/office/tabid/479/index.php#no2


重要な財産の譲受・処分
2015年01月26日(月)

会社の取引が少額ではなく重要な財産の譲受けは処分にあたるなら、取締役会決議が必要となります(362条4項1号)。これは会社に重大な影響を及ぼすので合議体で慎重に判断させるためです。重大な影響をかどうかは、個々の会社毎に区々ですので画一的には判断できません。財産の代金の額、総資産や経常利益に対する割合、財産保有目的、従来の取扱い等を考慮して相対的に決することになります。


取締役会決議が求められるところ、取締役会が正しく開催されない場合が問題になります。
取締役会決議を経てはいるが、取締役会の開催にあたり取締役招集通知漏れがあった場合などです。このように、取締役会決議に瑕疵がある場合の効力については、株主総会決議に瑕疵がある場合と違って特別の規定がありませんので、民法の一般原則により原則として無効となります。
ただし招集通知を欠映された取締役が取締役会に出席しても決議の結果に影響を及ぼさない特段の事情がある場合(当該取締役が名目的取締役である等)には、831条2項の趣旨を類推して、例外的に有効であるとされています。このような場合にまで無効とするのは、あまりにも形式的であり、法的安定性を害するからです。


有効な取締役会の決議を経ずに代表取締役が行った場合については、2015年01月24日(土) 付の本欄で「代表取締役の権限濫用」として述べたことと同じ扱いになります。
すなわち、取引の安全を図る観点から取締役会決議は内部的意思決定手続にすぎないと考えるべきであり、たとえ決議に不備があっても原則として取引は有効であり、会社が相手の悪意を立証したら信義則違反ないし権限濫用を理由に履行を拒絶できることになります。


代表取締役の権限濫用
2015年01月24日(土)

会社が多額の借財を行う場合は取締役会の決議が必要であって、代表取締役が単独で行うことはできません。しかし少額の借財は代表取締役の代表権の範囲内であって、代表者が単独で行うことができます。
ところで、代表取締役が自己の利益を図るために金銭を借りた場合には権限濫用にあたります。このような場合、会社は責任を負うのかが問題になります。


判例は心裡留保に関する民法93条ただし書を類推適用し、「原則として有効であるが、相手が代表取締役の意図を知りまたは知ることができたときは無効となる」としています。しかし、このように考えると軽過失の相手まで保護されないことになり、取引の安全を害するため妥当ではないとの批判があります。
そこで、「権限濫用をするような代表取締役を選定した以上、そのリスクは会社が負担すべきであり、利益均衡上、相手方が悪意の場合にのみ債務の履行を拒絶し得るとすれば足りる」との見解があります。
この立場からは、「権限濫用の場合であっても契約は有効に成立するが、悪意の相手方が権利を主張する場合には会社は、信義則違反ないし権利濫用を理由に債務の履行を拒絶できると解すべきである」ということになります。


いずれにしても代表取締役が権限を濫用して少額の借財を行った場合、相手が悪意であるならば会社は責任を免れることができるというわけです。


博士までの道
2015年01月19日(月)

私は東京税理士会本郷支部に所属していますが、支部からの依頼を受け支部会報の新年号に年男として寄稿することとなり、この度、会報が配布されました。記事の内容は幹事役員と打ち合わせた結果、会員の参考になるであろうということで、博士号の取得までの道のりを紹介することにしました。


セミナーを行っていると、受講者の中から博士号取得の相談を受けることもあります。
修士号取得により税理士試験の一部免除を目指す事務職員も少なくないようです。
会計事務所の所長や事務職員にとって、博士や修士の学位取得を目指すということは少なからぬ興味があるようです。


何らかの形で役立つならばとの思いから、本ホームページの「高橋博士の研究室」の中に「博士までの道」として寄稿文をアップしました。参考になれば幸いです。


不動産の価格と競売制度の限界
2015年01月16日(金)

不動産の価格は一般に3つの視点から決定されます。
3つとは、「費用性」「市場性」「収益性」の3つです。不動産鑑定では、これを「価格の三面性」と言います。

費用性とはその不動産にどれくらいの費用を投じたかに着目したもので原価方式と呼ばれます。専門用語では原価法による積算価格と呼びます。
市場性とは周辺地域で同じような不動産がいくら位で取引されているかに着目したもので比較方式と呼ばれます。専門用語では取引事例比較法による比準価格と呼びます。
収益性とはその不動産からどれほどの収益が得られるかに着目したもので収益方式と呼ばれます。専門用語では収益還元法による収益価格と呼びます。


この3つの視点を勘案し、それぞれの試算価格を比較検討して最終的に価格が決定されるのですが、どの試算価格を重視するかは、「住宅用か商業用か」「既存の不動産か新しく開発した不動産か」「環境を優先するか利便性を優先するか」等々の違いによって変わってきます。用途や、性格、収益性等の様々な要因が絡み合って価格が決まるのです。


鑑定理論による価格の概念は別として、実務では価格を求めるために競売が利用されることがあります。
というのは、競売が申し立てられると裁判所選任の不動産鑑定士が鑑定を行い、この鑑定に基づいて裁判所が売却基準価格を設定します。売却基準価格とは、「この基準価格を上回る金額で入札すべし」という金額であって最終価格ではありませんが、ひとつの目安であることは間違いありません。そこで売却基準価格を参考にして抵当権抹消などの金額のよりどころにするという考え方です。


確かに一理ありますが、大きな誤りが潜んでいます。
というのは、競売価格を求める場合には現状を所与として評価を行うため、取り壊して別用途で使用することが最も有効的な場合には適正価格と競売価格が乖離しかねないという問題が発生するのです。
たとえば地方の郊外などで土地価格が安い場所に、取り壊しが求められるような建物が建っている場合は、安い土地価格から高い取り壊し費用を控除することで適正価格が赤字になってしまうこともあります。このよな場合でも、競売評価にあたっては、取り壊し費用の減価(これを建付減価と言います)や、建物の古さを勘案した減価(建物観察減価)、売りにくさを勘案した減価(市場性修正)にも事実上の限界が設定されることもあります。
このように競売価格(売却基準価格)が適正価格(正常価格)を上回ってしまう例も生じるのです。


このような場合には競売を行っても入札がなされず、結果的には何回も競売手続きをやり直すことになってしまいます。競売により風評被害を引き起こすだけではなく、落札者すら現れず資産が劣化していくという弊害のみが目立ってしまいます。競売制度の限界ということができるでしょう。


事業再生において競売制度を利用するケースが散見されますが、競売制度の特殊性を理解しないまま、生半可な知識や経験で取り組むことは危険ですので注意してください。


フランスの風刺画とペンの暴力
2015年01月14日(水)

フランスの政治週刊紙「シャルリー・エブド」パリ本社の銃撃事件後、初めての発行となる最新号の1面で、預言者ムハンマドの風刺画を全面に描かれているとの報道がなされています。イスラム教徒の反発を招くのは明らかです。


表現の自由とはいえ、このような無神経な行動はいかがなものでしょうか、いささか疑問に感じます。
表現の自由は、ペンの暴力と紙一重というべきです。
欧米流の考え方を、表現の自由の名のもとに異文化に対して押し付ける行為が自由に認められるべきでしょうか。大いに疑問です。
つい先日も、アメリカの映画会社が北朝鮮の金正恩をパロディーの材料にしましたが、これもいかがなものでしょうか。いやしくも一国のリーダーに対する行為として許容されるのでしょうか?
オバマ大統領をサルにたとえたりするような非礼と変わりがないように思えます。


私は国粋主義者でも右翼でもありませんし、皇室に過度の敬意を感じませんが、他国のメディアから天皇陛下が卑下されるような場面に遭遇したならば、日本国に対する蔑視と感じるかもしれません。良い印象を持つはずがありません。
イスラム教徒であろうが、北朝鮮であろうが、自らに対する蔑視として感じていることでしょう。


風刺するにしても、風刺の対象をイスラム教の全てにするのではなく、イスラム国に代表されるようなテロ集団に限定すべきではないでしょうか。預言者ムハンマドを対象にすることで、善良なイスラム教徒まで巻き込むような、ペンの暴力が発動されてしまったと言えると思います。
フランス人の全てが同じとは言いませんが、フランス人独特の驕りを感じます。
先進国を自負するならば、自由な国家を標榜するならば、自らは、もっと謙虚にあるべきではないでしょうか。


事業再生は経営者自身の意思で進めることが重要です
2015年01月13日(火)

どのような場合でも経営者に迷いがあって当然です。
当社に相談にみえる経営者は、拙著を読むなり、他のコンサルタントに相談するなりして、事業再生について自らの意思を持っている場合が大半です。


しかし、中には迷いを感じながら事業再生に臨むケースもあります。
このような場合には、十分に計画の内容を説明し、理解してもらうことが重要になります。
というのは、中途半端な姿勢で事業再生に臨むと、債権者にすれば「誰かに入れ知恵されて計画を策定したのではないか」という疑念を感じてしまうからです。そうなると、「経営者本人の意思ではなく、第三者の入れ知恵ならば、経営者を説得して本意させよう」ということになってしまいます。
債権者として債務者の再生に協力するどころか、債務者の本意を促すということになってしまうのです。


これではスムーズに進むわけがありあせん。
最悪の場合、矛先がコンサルタントに向けられてしまいます。
「入れ知恵をするようなコンサルタントや会計事務所には介入してもらいたくない」ということになりかねません。
このような間違いを避けるため、事業再生は経営者自身の意思で進めることが重要なのです。顧問先の再生を進めようとする会計事務所の場合、会計事務所ではなく、顧問先の意思として進めることに十分な配慮が必要です。


M&Aで乗っ取られないようにすべきです
2015年01月08日(木)

業界の競争が激しいとき、事業再生に名を借りた乗っ取りが行われることがあります。乗っ取る方にすれば、まさに労せずして業容を拡大できるというわけです。
これまで経営者が努力して築いてきた営業の基礎となるものを格安で入手できるのだからおいしい話です。そっくりそのまま安値で入手し経営を引き継ぐのだから、事業再生に名を借りた乗っ取りといえるでしょう。
それでも雇用は確保され、取引先の連鎖倒産はなく、事業再生は成功したように見えます。犠牲になるのは経営者のみというわけです。


たとえば旅館などは典型例でしょう。現にいくつもの相談が寄せられました。
一番多いのは新館を建設したが客足が伸びず、借入金が膨らんで返済できないというものです。個人経営の旅館のみならず、宮崎のシーガイアのように銀行が主導して大々的に投資をしたものの客足が伸びず、結局は外資系企業に安く売ってしまったという話は枚挙にいとまがありません。銀行主導のプロジェクトでさえ失敗するのですから個人経営企業が失敗しても無理ない話なのです。


多くの場合、借入金が少なければ経営は成り立つ大半です。別に新規参入者の力を借りなくても、借入金を削減してくれれば良いのです。わざわざ新参者に安く売るなら、その金額まで借入金を圧縮してくれればいいのです。
事業再生の名のもとに金融機関と交渉し、安く買いたたく新参者は圧倒的に有利といえるでしょう。もともと借入金が少なければ成り立つ事業ですから、従来の経営者が継続しても十分成り立つのです。
あたかも経営手腕があるかのような言い方は本質を歪めているとしか言いようがありません。事業再生に名を借りた乗っ取りを美化しているようなものです。


中には安く買いたたいたにもかかわらず経営が苦しいと騒ぐ新参者もいますが、滑稽にしかみえません。
こういう新参者は個人保証をしていない場合も少なくありません。もともとの経営者は苦労に苦労を重ね、さらには個人保証のリスクも背負い自己責任を果たしたのに比べ、金融機関から安く買いたたいた揚げ句、経営が暗礁に乗り上げても自己責任も果たさない新参者は不公平であるともいえるでしょう。


無策のまま安易にM&Aに応じてしまったのでは、経営責任を追及され、放り出されるのは旧経営者ということになってしまいます。
このような憂き目に合わないように「早め」の「正しい」対策が必要なのです。


競売処分と任意売却
2015年01月05日(月)

最近、不動産の処分が問題になる例が続いています。たまたま、似たような事例が続いただけで、一般的に不動産処分が増えているわけではありません。
拙著でも紹介していますが、競売よりも任意売却で処分する方が債権者にとっても債務者にとっても有利なのです。というのも債権者にしてみれば競売よりも任意売却の方が高く処分できる可能性が高いからであり、債務者にしてみれば第三者に奪われることなく不動産を確保できるからです。


任意売却の方が競売よりも高く処分できるというのは、競売減価が解消されることで不動産の価格が上がるからに他なりません。
競売減価とは、一般の不動産市場と異なり売主の協力のない売買であること、事前に物件に立入ることができず引渡の保証等の安全性が確保されていないこと、保証金を必要とし代金も即納しなければならないこと、同時履行の関係になく引渡までの期間が必ずしも保証されていないこと、さらに土地境界は原則として確定したものでなく地積も原則は公薄渡しであること等の特殊性を有しているため、この特殊性が競売落札価格を低下させるというわけです。


競売が問題になりそうな場合にはお気軽にご連絡ください。


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