2020年

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2020年12月30日(木) 財産評価基本通達による評価額と不動産鑑定額の乖離(6/6)
2020年12月23日(水) 経営者自身が計画を策定する
2020年12月15日(水) 経営者の決意
2020年12月09日(水) 営業権算出にあたっての年数判断
2020年12月03日(木) 営業権算出にあたっての利益
2020年11月24日(火) 売価と買価
2020年11月15日(日) 営業権の把握
2020年11月08日(日) 企業価値判断
2020年11月01日(日) 財産評価基本通達による評価額と不動産鑑定額の乖離(5/6)
2020年10月30日(金) 費用性
2020年10月25日(日) 企業価値の評価
2020年10月10日(土) 社外取締役の活用
2020年10月05日(月) 競業避止義務
2020年09月30日(水) 退任したのに退任登記が未済の場合
2020年09月20日(日) 退任したのに代表取締役を名乗っている場合
2020年09月13日(日) 名目取締役の場合
2020年09月07日(月) 取締役が正式に選任されていない場合
2020年09月01日(火) 財産評価基本通達による評価額と不動産鑑定額の乖離(4/6)
2020年08月27日(木) いつの時点で戻すか
2020年08月19日(水) 取締役を第三者にする場合
2020年08月10日(月) 株主を第三者にする場合
2020年08月06日(木) 第二会社の株主と取締役の選任例
2020年07月28日(火) 支配権と代表権
2020年07月21日(火) 形式上の第三者
2020年07月13日(月) 経営者の交代を求められる理由
2020年07月06日(月) 経営権の形態
2020年07月01日(水) 財産評価基本通達による評価額と不動産鑑定額の乖離(3/6)
2020年06月25日(木) 他社と合併させる方法
2020年06月20日(土) 事業譲渡、会社分割、M&A
2020年06月15日(月) 第二会社による再生
2020年06月11日(木) 飛躍を目指す
2020年06月04日(木) 第二ステージになすべきこと
2020年05月27日(水) 従来の会社を清算し、第二会社を本来の姿に戻す
2020年05月19日(火) 第二会社を利用する方法
2020年05月14日(木) 従来の会社を利用する方法
2020年05月09日(土) 再生への道
2020年04月23日(木) 公的支援制度の使い分け
2020年04月14日(火) よろず支援拠点
2020年04月04日(土) 経営改善支援センターの限界
2020年04月01日(水) 経営改善支援センター
2020年03月26日(月) 支援協議会の限界
2020年03月17日(火) 中小企業再生支援協議会
2020年03月10日(火) 中小企業経営力強化支援法
2020年03月05日(木) 民事調停法の17条決定
2020年03月02日(月) 特定調停の利用方法
2020年02月28日(金) 財産評価基本通達による評価額と不動産鑑定額の乖離(1/6)
2020年02月23日(日) 特定調停を利用するメリット
2020年02月17日(月) 廃業・清算を支援する手法としての特定調停スキーム
2020年02月08日(土) 保証債務整理の手法としての特定調停スキーム
2020年01月30日(木) 金融円滑化法終了への対応策としての特定調停
2020年01月26日(日) 廃業のための特定調停
2020年01月16日(木) 会社の終わらせ方
2020年01月11日(土) 破産より特別清算
2020年01月05日(日) 特別清算

 

2020年12月30日(木) 財産評価基本通達による評価額と不動産鑑定額の乖離(6/6)

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第70回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「財産評価基本通達による評価額と不動産鑑定額の乖離(6/6)」で、その要旨は次の通りです。

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要旨:

今回は鑑定評価書を利用する際の留意点、鑑定評価書の種類と費用、さらには国税当局が行う独自鑑定の実施基準についても明らかにします。会計事務所として不動産鑑定を有効に活用するという観点から、相続税申告の他にも債権者間の調整、競売、顧客管理の各場面についても検討を加えます。

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記事を読むにはミロク情報サービスの会員になる必要があります。
会員は(1)会計事務所向けと(2)企業経営者向けに分かれています。

 

(1)会計事務所の先生の場合は「tvs会員」になる必要があります。
下のアドレスから著者名を指定して検索できます。
http://tvs.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html

 

(2)企業の経営者の場合は「GOODWILL PLUS会員」になる必要があります。
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多くの有益な情報を入手できますので、入会することをお勧めします。
私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。

 

入会にあたってはお近くの(株)ミロク情報サービスの営業拠点にご連絡ください。営業拠点は下のアドレスから検索できます。
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2020年12月23日(水) 経営者自身が計画を策定する

事業再生にあたって再生計画を作る場合、経営者自身が計画を作成することが大切です。経営コンサルタントに頼りすぎるのは必ずしも望ましいことではありません。もちろん専門的な知識をもっているコンサルタントの力を借りるということは効果的であり効率的ですが、作成の全てを丸投げするような姿勢は絶対に慎むべきです。

 

再生計画においては実現可能性の高い計画が求められています。奇想天外な発想で無理に売り上げを伸ばす必要はありません。この点が事業計画と再生計画の違いなのです。両者を混同したまま計画を策定する間違いが散見されますので注意が必要です。

たとえば、親から子供への世代交代を兼ねた事業再生が少なくありません。いわゆる第二会社の経営者を子供にするというわけです。このような場合には、事業を引継いで次の時代の経営者となる子供が事業計画を作成することが最も望ましい形なのです。事業計画を作成する過程で、先代(親)の苦労を知るでしょうし、ノウハウを継承することもできるからです。自分で事業計画も作れないようであるならば、次代を担う経営者として失格であるといえるかもしれません。

 

経営者の決意の態様として、「事業を継続しない」「廃業する」という選択肢もあります。勇気ある撤退というわけです。勇気ある撤退をせず、従来の経営者一族に経営権を残すために究極の第二会社方式で事業再生を図るのであれば、将来において経営に従事する一族の当事者、たとえば子供や配偶者は自分自身の判断で引き継ぐべきです。間違っても、「現在の経営者が強く薦めるから引き受ける」ようであってはなりません。次代を担う後継者の決意が問われるのです。

次代を担う経営者がしっかりした事業計画を主導的に作成できるような場合には、事業再生が成功しやすいということがいえます。

 

2020年12月15日(水) 経営者の決意

事業再生には経営者の固い決意が必要であることは、会計事務所向けのセミナーや拙著の中で何回も繰り返してきました。

計画の詳細や具体的な進め方は、少しずつ決めていけば良いのですが、方向性は経営者自身が見出すべきものなのです。経営者以外の第三者が方向性まで誘導するようでは、押し付けられた事業再生になってしまいます。

 

事業再生に取り組む決意ができていないならば、せいぜい暫定的リスケでお茶を濁しておいた方が良いかもしれません。この場合は手遅れになるリスクにも注意しなければなりません。手術を嫌い、内服薬で治そうとしているうちに手遅れになる重症患者と同じです。

百パーセント成功する手術がないのと同様に、事業再生という手術も百パーセント成功するとは限りません。事業再生に取り組むことによるリスクを理解した上で、事業再生という手術を受けるべきなのです。

手術をしてでも治したいという気持ちにならないならば、手術を受けるべきではありません。自己責任で運命を決めるべきなのです。

 

2020年12月09日(水) 営業権算出にあたっての年数判断

取引価格を巡って売主と買主が相対する場合、論理的に考えれば年数は買主が決定することになります。なぜならば、将来の経営は買主があたるのであり、何年間分の利益を営業権の根拠とするかを主体的に決めるのは買主ということになるからです。売主は経営から離脱しますので決定に関与する立場にないということもできます。

安定的な業種であれば年数を長く、流動的な業種であれば短くとらえて交渉の材料にすることになります。

 

中小零細企業の場合には、所有と経営が一体化している場合も少なくありません。このような状況において、法人について機械的・画一的に判断したのでは実体を正しく反映していないことになります。

たとえば、お手盛りで高い役員報酬を支払っていたり、関連会社に多額の支払いをしていたりといった会社があるかもしれません。このような場合には適正な額に修正した上で利益を算出し、この利益を基に年数を乗じて営業権の額を算定します。

 

2020年12月03日(木) 営業権算出にあたっての利益

一般的には税引後の経常利益を基礎にしますが、営業利益や、当期純利益、さらには減価償却費を加算したキャッシュフローベースでの分配可能利益を計算の基礎額とする場合があります。

 

本業の利益である営業利益に経常損益を加減して企業全体の利益である経常利益を求めるのですから、本業の利益の占める割合いかんで、どちらの利益を基に計算するのが高く(低く)なるかが決まります。税引後当期純利益は節税原資の多寡により税額が左右されますし、減価償却費を加算したキャッシュフローベースを根拠にする場合には、償却資産の多寡により大きく異なります。

 

たとえば事業継続に必要な資産が保有資産であるならば、維持管理費、固定資産税、減価償却費が発生します。減価償却費が高くなればキャッシュフローベースでの利益は高くなります。反対に、保有資産ではなく賃借物件であれば、賃料がかかりますが維持費、固定資産税、減価償却費は発生しません。

 

資産を保有する場合と賃貸の場合のいずれが高く(低く)なるかは一概にいうことはできません。個々のケースに応じて、いずれの利益が比較的高い(低い)のかを判断し、取引の根拠とすることになります。売主にすれば高い金額を、買主にすれば低い金額を指向して、有利な選択をした金額を根拠として交渉に臨むことになります。

 

2020年11月24日(火) 売価と買価

制度化された不動産鑑定の場合、鑑定価格は3つの価格算出方法により求められた試算価格を比較検討して最終的に一つの価格が決定されます。しかし、企業価値については制度化された算出方法が存在しません。よって、一つの価格が決定されるものではなく、売主が算出した価格(売り希望価格)と、買主が算出した価格(買い希望価格)が異なることになります。

 

売主と買主が何らかの理由で取引成就にこだわる場合は別として、一般に売主の立場としては売り物は一つですが、買主の立場としては買い物は他にもあります。換言すれば、買主は、「他を購入する」という交渉材料で、価格の引き下げ交渉が可能になるのです。これに対するには、売主は他の買主を探し出し、「他に売る」という交渉材料を持ち出すしかないのです。

 

このように、価格の決定にあたっては、単に理論的な算出方法だけで決まるのではなく、交渉により決められるという面も否定できません。この点、交渉を行う際の理由付けとして、売主としては金額が低くなる理由を、買主としては高くなる理由を整理しておくことが求められます。

 

2020年11月15日(日) 営業権の把握

超過収益力、すなわち営業権の求め方は、次の二つに大別されます。

 

(1)企業価値から資産価値を控除する

全体の企業価値から資産価値を控除した額を超過収益力、すなわち営業権として捉えます。

 

企業価値―資産価値=営業権

 

市場性に着目した類似取引比準法や、収益性に着目した収益還元法は全体の企業価値を求め、ここから資産価値を控除した残額を営業権として把握します。この方法では、ダイレクトに求めるのは企業価値であり、営業権は残額として求めることになります。

不動産の鑑定評価においても収益価格は土地と建物を複合した不動産として全体の価格を求め、必要に応じて土地と建物を分けることになります。

 

不動産の場合、土地と建物の複合不動産の場合には、類似事例が見つからないこともあり、比準価格を省略することもあります。企業価値評価も同様ということになります。

 

(2)営業権に資産価値を加算する

超過収益額たる営業権と資産価値を合計した額を企業価値として把握します。

 

資産価値+営業権=企業価値

 

費用性に着目した考え方で、営業権に資産価値を加算して企業価値として把握します。この方法では、ダイレクトに求めるのは営業権であり、企業価値は合計額として求めることになります。

不動産鑑定においても原価法は土地と建物を別に求め、合計する形で不動産全体の価格を求めることになります。

 

2020年11月08日(日) 企業価値判断

類似の取引や企業を基準として企業価値を計算する方法として類似取引比準法があります。この方法は、考え方としては合理的ですが、業種によって類似企業が存在しなかったり、仮に見つかったとしても諸条件の差をどのように反映させるのかが曖昧なままになってしまいます。したがって、求められた数値は必ずしも該当企業の状況を反映しないということになります。

類似事例が存在しない場合や、諸条件の格差が大きすぎる場合などには採用できない方法といえるでしょう。

 

収益性に基づく企業価値判断は収益還元法とも呼ばれ、将来の予測キャッシュフローを投資利益率で割り引いた現在価値をもって企業価値と考える方法です。この方法においても、ネットの企業価値すなわち株主分配価値を把握する場合には負債を控除しますが、事業再生における第二会社方式では負債を引き継ぎませんので、負債を簿価で把握しないことになります。

収益還元法の中でも特にDCF法の場合には、将来の計画をどのように見込むかによって数値が大きく変動されます。事業再生における第二会社方式の場合、将来の経営は第二会社で買主が行うものですので、買主が自身の計画に基づいて算出した収益価格は買主には説得力がありますが、売主には必ずしも妥当しないことになります。同様に、経営にたずさわらない売主が将来の収益計画に基づく収益価格を算出しても買主には妥当しないことになります。

 

2020年11月01日(日) 財産評価基本通達による評価額と不動産鑑定額の乖離(5/6)

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第68回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「財産評価基本通達による評価額と不動産鑑定額の乖離(5/6)」で、その要旨は次の通りです。

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要旨:

財産評価基本通達に準拠して求めた評価額をそのまま利用するのではなく、鑑定額との比較を行うことは大切です。今回は、どのような場合に鑑定額<評価額となるのかを検証するとともに、不動産鑑定評価を実施するにあたっての留意点を考察します。更に、否認されない不動産鑑定評価書のあり方についても考察を加えます。

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記事を読むにはミロク情報サービスの会員になる必要があります。
会員は(1)会計事務所向けと(2)企業経営者向けに分かれています。

 

(1)会計事務所の先生の場合は「tvs会員」になる必要があります。
下のアドレスから著者名を指定して検索できます。
http://tvs.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html

 

(2)企業の経営者の場合は「GOODWILL PLUS会員」になる必要があります。
下のアドレスから著者名を指定して検索できます。
http://goodwill.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html

 

多くの有益な情報を入手できますので、入会することをお勧めします。
私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。

 

入会にあたってはお近くの(株)ミロク情報サービスの営業拠点にご連絡ください。営業拠点は下のアドレスから検索できます。
http://www.mjs.co.jp/office/tabid/479/index.php#no2

 

2020年10月30日(金) 費用性

貸借対照表の資産・負債を時価で評価し、時価資産の合計額から時価負債の合計を控除して導出した時価純資産額と営業権の合計を企業価値とする考え方です。すなわち、時価純資産額+営業権=企業価値となります。この場合、営業権は利益に年数を乗じて求めます。

 

ⅰ.営業権算出の基礎となる利益

過去3~5年の平均利益を基礎とします。1期だけの数値ではブレが生じる可能性があるので、数年の平均値を採用します。この場合、一般的には税引後の経常利益を基礎にしますが、他にも、営業利益や、当期純利益、さらには減価償却費を加算したキャッシュフローベースでの分配可能利益を基礎とする場合があります。この違いについては後述します。

 

ⅱ.営業権算出の基礎となる年数

一般的には利益の3年から5年といわれていますが、現状の利益が安定的に続くと予想される業種(たとえば安定的な資産経営に依存するような業種)の場合には長期で計算し、逆に流動的な業種(たとえば流行に左右されやすい業種)の場合には短期で計算する傾向があります。

 

ⅲ.資産・負債の時価評価

資産の時価評価について、たとえば不動産鑑定制度のように確立された制度がありますが、負債の制度に関しては確立された制度はありません。借入額の総額はあくまで簿価であり時価とは異なります。債務者の返済能力をもって負債の時価と位置付けることが最も合理的な考え方となるでしょう。返済能力とは担保処分による回収可能額と、債務者自身の返済能力の合計値となります。しかし、このような負債の時価概念は債務者目線でとらえた考え方に他なりません。債権者目線でとらえるならば、全額回収すなわち負債の簿価=負債の時価になるからです。

 

2020年10月25日(日) 企業価値の評価

第二会社方式で事業再生を行う場合、売主と買主が相対する場合は価格決定が争点になります。身内に経営権を残すために形式上の第三者に譲渡するのであれば、売主と買主が相対しませんので、価格決定が争点になることはありません。とはいえ、無担保債権者に配分するために営業権を認識するのであれば、売主と買主の間で争いがなくとも、債権者間の争いを避けるために営業権の価格を客観的に明らかにする必要が生じます。

 

ここで取り上げる価格決定に関する論点は、諸般の事情から価格決定に争いが生じる場合を想定しています。

 

価格の把握にあたっては「費用性」「市場性」「収益性」の3つの要素を勘案します(価格の三面性)。この基本的な考え方は企業価値の算出にあたっても同じです。

「費用性」とは投じた費用に着目したもので原価方式と呼ばれます。「市場性」とは類似の例がいくらくらいで取引されているかに着目したもので比較方式と呼ばれます。「収益性」とはどれほどの収益が得られるかに着目したもので収益方式と呼ばれます。

 

2020年10月10日(土) 社外取締役の活用

平成26年の会社法改正前は、取締役の責任を限定するには社外取締役であることが必要でした。責任を限定するために、わざわざ社外取締役に留まることもありました。しかし、会社法の改正により社外取締役でなくとも責任限定契約を締結することができるようになったため、責任限定のために社外取締役にする必要はなくなっています。

 

取締役は、多くが社内出身者であり、代表取締役等の意向によって株主総会で選任され、事実上代表取締役等の支配下に置かれてしまっており、法が期待した機能、特に代表取締役等に対する監督機能が十分に発揮されていない会社も多くみられます。このような問題に対処することが期待されるのが、代表取締役等と独立した立場にある社外取締役です。

会社法は社外取締役をすべての会社に強制することはなく、特別取締役を定める場合と委員会を設置する場合に限り強制しています(373条、400条)。これ以外の場合、社外取締役を設置する義務はなく、社外取締役を設置するか否かについては、各会社の判断に委ねられています。

 

事業再生においては、第二会社の透明性を強調する目的で、あえて社外取締役制度を採用することもあります。社外取締役による外部コントロールを強調することで、新たな金融機関や取引先の信任を得るというわけです。この点、例えば有資格者たる会計人が第二会社の取締役や社外取締役に就任することは、会社の信用補完の観点からも望ましい形だということができます。

 

2020年10月05日(月) 競業避止義務

取締役は会社の業務執行の意思決定をなす取締役会の一員として事業の機密に通じているので、得意先や取引機会を奪うなど、会社の利益を犠牲にして自己または第三者の利益を図る危険があります。このような危険を回避するため会社法は取締役に競業避止義務を課しています。

 

会社法356条1項は、「取締役は、次に掲げる場合には株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない」と規定しており、取締役が会社と競業するような取引を行なう場合を挙げています。

ここで、株式会社の事業に属する取引とは、『会社が実際に行う事業と市場において競合し、会社と取締役との間に利益衝突を生じるおそれのある取引』といわれています。

 

競業取引であるなら取締役会の承認が必要になるところ、これが為されず会社に損害が生じているならば、会社は取締役に対し法令違反に基づく損害賠償を請求できることになります。この損害額は取締役が得た利益の額と推定されています(423条)。さらに、株主は取締役を解任でき、取締役および監査役に対して監視義務違反により損害賠償を請求することもできます。

取締役退任後は会社と取締役との間に委任契約関係はなくなりますので、原則として退任後の取締役は競業避止義務を負わないとされています。しかし、在任中から顧客を移転し、従業員の引き抜きをしているなどの先行する行為がある場合や、退任後に大量の従業員を引き抜く場合などの、特段の事情がある場合には、在任中の委任契約に伴う付随義務として負う競業避止義務に違反することがあるとされています。

事業再生のどさくさに紛れて、一部の取締役が沈みかけている泥船から抜け出して第二会社を設立するような場合などは、これに該当するといえるでしょう。

 

2020年09月30日(水) 退任したのに退任登記が未済の場合

取締役が退任したのに退任登記がなされておらず、登記簿上は従来のまま取締役になっている場合、会社は責任を負うのでしょうか。また取締役個人は429条の責任を負うのでしょうか。

 

まず会社の責任ですが、退任登記がない以上、908条1項により『登記の後でなければ、これをもって善意の第三者に対抗することができない』とされており、善意の第三者には対抗できません。よって、相手が善意なら会社は責任を負うことになります。この点は条文をあてはめて解釈するだけですので問題にはなりません。

次に退任した取締役の個人責任ですが、429条の責任は取締役であることが前提です。退任した以上、もはや役員ではないので429条の責任は負わないのではないかという点が問題になります。この点、取引の安全を図るため、たとえば明示の承諾を与えた場合は908条2項を類推適用し、取締役でないことを善意の第三者に対抗することはできないと解されています。もっとも、退任登記は会社が行うものであり、退任した取締役にはできませんので、黙示の許諾では足らず明示の許諾が求められています。

 

取締役でないことを善意の第三者に対抗することはできない結果、取締役であることを前提とした429条の責任を問われることになり、退任したとはいえ、個人としての責任を負うことになります。会社も個人も責任を問われる可能性がありますので、退任に伴う登記はしっかりと済ませておくことが必要です。

 

2020年09月20日(日) 退任したのに代表取締役を名乗っている場合

代表取締役が退任した後、従業員になり登記もしたのに代表取締役を名乗っている場合は、退任しているので取締役ではなく会社に効果は帰属しないのではないかとも考えられます。ここで、354条を類推適用し表見代表取締役の規定を適用できないかが問題になります。

 

そもそも、354条は外観法理により取引安全を図る趣旨です。同条を適用するには「外観の存在」「帰責性」「外観への信頼」が必要になります。この354条は取締役であることが要件なので、退任して取締役でなくなった以上、直接適用はできません。

この点、取引相手を保護する必要性は取締役の地位にあったか否かで変わらず、使用人が代表権を有するような名称を使用していた場合にも趣旨が妥当します。よって354条を類推適用することができると解されており、会社は責任を負うこととされています。

 

2020年09月13日(日) 名目取締役の場合

取締役の権限は広範かつ強力なものなので、取締役の業務執行に対する監査・監督制度が厳格に規定されています。その責任は極めて重大です。

会社法が制定された平成17年以前は、取締役が3人以上必要でした。その当時、知人に頼まれて取締役を引き受けたという例も少なくありません。従来の会社に名前だけ取締役で残ってしまっているのです。

 

このように、経営に関与していない名目取締役であっても、取締役は取締役会の構成員である以上、他の役員を監視する義務を負うとされています。監視義務は非上程事項にも及び、不当な業務を発見したら自ら取締役会招集請求権・招集権を行使して取締役会の監視機能を働かすべきであるとされています。すなわち、経営に関与していない役員であっても、代取の独断専行を見逃したのであれば、それは監視義務違反であり、会社に対する悪意・重過失による任務懈怠が認められるので責任追及がなされるのです。

名前を貸しただけの名目取締役であっても責任は免責されません。このような危険を勘案し、必要に応じて取締役の辞任を視野に入れた見直しを行うべきでしょう。

 

2020年09月07日(月) 取締役が正式に選任されていない場合

取締役が正式に選任されていないのに登記簿上は取締役になっている場合、会社は責任を負うのでしょうか。また、取締役個人は429条の責任を負うのでしょうか。

 

ⅰ.会社の責任

会社法908条2項に「故意又は過失によって不実の事項を登記した者は、その事項が不実であることをもって善意の第三者に対抗することができない」という規定があります。この規定は登記申請者の責任を定めた規定であり、登記申請者ではなく不実登記に加担した取締役に直接適用できないともいえます。

しかし、908条2項の趣旨は取引の安全を図ることにあるのであって、登記申請者でなくとも不実登記の出現に帰責性あるものに類推適用すべきといえます。たとえば明示・黙示の承諾を与えた場合は908条2項を類推適用し、取締役でないことを善意の第三者に対抗することはできないと解されています。したがって会社は責任を負うことになります。

 

ⅱ.個人の責任

429条の責任は取締役であることが前提です。選任されていない以上、役員ではないのであり429条の責任は負わないのではないかという点が問題になります。しかし、明示・黙示の承諾を与えた場合は908条2項の類推適用により取締役でないことを善意の第三者に対抗することはできないことになります。この場合、取締役であることを前提とした429条の責任を問われることになり、選任されていないとはいえ、個人としての責任を負うことになります。「正式に頼まれていない」「正規の手続を踏んでいない」という言い訳は通用しないので注意が必要です。

 

2020年09月01日(火) 財産評価基本通達による評価額と不動産鑑定額の乖離(4/6)

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第67回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「財産評価基本通達による評価額と不動産鑑定額の乖離(4/6)」で、その要旨は次の通りです。

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要旨:

今回は、「更地」と「建物及びその敷地」を取り上げ、実際の不動産鑑定評価の手順に従って、不動産鑑定評価書の記載内容を明らかにします。手順の各段階において、鑑定額に影響を与えるような判断が行われる箇所について、本文中に下線を引くことで明示します。

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(1)会計事務所の先生の場合は「tvs会員」になる必要があります。
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2020年08月27日(木) いつの時点で戻すか

形式上は第三者の会社にした場合、いつかの時点で本来の経営者に戻すことになります。形式上も、実質上も、本来の経営者に戻すわけです。その時期はいつにすべきでしょうか。

 

この点について、筆者は「事業再生が完成した数年後」が目安になると考えています。というのも、「第三者への経営権の委譲があったので債権放棄を行った」「従来の経営者の保証債務を免責した」という場合、債権者の立場を考えなければならないからです。

債権者には検査・監査が入ります。検査・監査では、債権放棄の実態を精査されることになります。その時点で債権放棄をした事案の詳細を聞かれたとき、「はい、その件は息子さんが設立した会社に事業を譲渡したことを承認し、同時に〇億円を債権放棄しました」では通らないのです。たちまち寄付金認定となり、損金処理を否認されてしまいます。

 

すなわち、検査・監査の時点では、債権者としては「債務者は第三者の会社に事業を移転した」という形にしておくことが、債権者に対する大人の対応というものです。換言すれば、債権者の為に、検査・監査の時までは、形式上の第三者でなければならないのであり、そのために数ヶ月では足りないといえるでしょう。

 

2020年08月19日(水) 取締役を第三者にする場合

第三者が取締役を引き受ける場合は、後任を確保しておくことも重要な課題となります。

後任者がいなければ、前任者の退陣に支障をきたすからです。こうした問題の発生を防ぐために、あらかじめ就任承諾書、改印届に捺印を受けておくことも必要になります。添付書類として必要になる印鑑証明書は、3ヶ月ごとに新しい印鑑証明書と差し替えておくことになります。

 

登記に必要な書類を第三者に預けると、勝手に登記してしまうのではないかと心配になるでしょうが、こればかりは避けて通れません。第三者が株主や役員になる場合は、信頼関係が大変重要になるのです。もちろん、きちんとした約定も必要になります。安易な姿勢では将来に禍根を残すことになるので要注意です。

 

2020年08月10日(月) 株主を第三者にする場合

株主を第三者名義にしておく場合、一定の条件で株式を本来の経営者に移転することになります。この場合、将来において株式を本来の経営者に移転する旨の約定が

必要になります。

 

第二会社の経営は順調に推移するという仮定に立つと、残債の減少に合わせて株式価値が増加することになります。たとえば、第二会社を立ち上げたときの資産10億円に対して同額の負債があれば、純資産はゼロに近い価値しかありません。しかし、時間の経過とともに負債は減り、資本の部の剰余金は増えていきます。10億円の返済が完了した時点では純資産は10億円となってしまいます。

額面上の資本金額で取引を行えば、受け取った側に贈与税が課されることになります。その意味で、長い間にわたり第三者名義にしておくのは得策とはいえません。

 

2020年08月06日(木) 第二会社の株主と取締役の選任例

第二会社方式で事業再生を行うにあたって、実子に経営権を譲る場合などは、事業再生に加え相続対策も兼ねることになります。この場合、実子名義を望むのは当然です。しかし、それでは債務者一族間の移転であることが明らかになってしまいます。

取締役の氏名は登記簿を見ればわかります。株主の氏名は登記事項ではありませんが定款に記載されています。しかし、債権者から定款の提出を求められることは一般的ではありません。したがって、定款から株主の氏名が明らかになることは少ないといえます。

 

そもそも債務者一族が役員に名を連ねることは得策なのでしょうか。

たとえば、銀行がまったくの第三者に物件を売却することと引き換えに競売の取り下げを検討しているとき、債務者一族が第二会社の役員に就くと話は帳消しになってしまいます。帳消しにならないまでも、「一族が役員なのだから、もっと金額を高くしてくれ」などと言われ、金額交渉で不利になりかねません。この場合は債務者一族より、まったくの第三者の方が適しているといえます。

金融機関の立場からは、債務者がその所有する財産を「第三者」に売却して返済したからこそ、残余の部分の債権放棄を検討できることになりますので、譲渡先は「第三者」の形をとることが「落としどころ」ということになります。かかる観点から、既存の金融機関に対しては第二会社は第三者であるという形式を満たしておくべきでしょう。

これに対し、たとえば、競売にかけられた物件を競売に応じる形で入札して落札するのであれば、債務者一族が役員でもなんら問題はありません。公の制度を利用して公明正大に取得したのであり、第三者を装う必要はないからです。

 

このように、第二会社の役員を債務者一族にするのか、あるいは、まったくの第三者にするのかは、個々の事案により異なるのです。諸般の事情から、まったくの第三者が株主や役員になる場合、将来に禍根を残さないためにも、当事者間でしっかりと約定しておくことが肝心です。

 

2020年07月28日(火) 支配権と代表権

株主としての支配権と、取締役としての代表権を分けて考える必要があります。

 

ⅰ.第二会社の支配権

従来の会社の株主をA氏とします。

第二会社の株主もA氏であると、第三者への事業譲渡になりません。よって、形式上の株主は他人(=B氏)にしておく必要があります。形式上とは付属明細で開示される公開用の情報のことです。A氏とB氏の間の約定は別途手当てすることになります。この場合、遠い将来において株主を変更するとなると贈与税の問題が生じるので注意が必要です。

 

ⅱ.第二会社の代表権

従来の会社の代表者をA氏とします。

第二会社の代表者もA氏であると、第三者への事業譲渡になりません。よって、形式上の取締役は他人(=B氏)にしておく必要があります。形式上とは登記簿で開示される公開用の情報のことです。A氏とB氏の間の約定は別途手当てすることになります。この場合、B氏は会社法423条、429条の責任を負うことになるので注意が必要です。

いずれの場合であっても、保証人は第二会社の債権者との話し合いで決めれば良い問題であり、従来の会社の債権者には無縁のことです。第二会社の債権者が、事業再生に対して積極的な債権者であれば、保証人をB氏ではなくA氏とすることを受け入れることが少なくありません。

一口に第二会社方式といっても、様々な留意点があるのです。

 

2020年07月21日(火) 形式上の第三者

たとえば他人に渡したくない不動産があり、これに抵当権がついているとします。このような場合、抵当権者に抵当権を抹消してもらうためには一定の金銭を支払うことになります。

その金額は不動産の価格ということになりますが、その金額をどのように決めるのでしょうか。 親族に譲渡するとなれば、一般的には低廉譲渡であるとの疑いを持たれていまいます。「身内に安く譲渡するのであろう」との疑いが払しょくできないので、債権者としても金額に納得しにくいというわけです。

 

このとき、第三者が出現し購入するとなれば、身内ではない第三者が提示した金額なので一目置かざるを得ないということになります。このように、第三者が第二会社の経営者となることで交渉を有利にすすめることができるのです。

さらには、親族や従業員の場合は第二次納税義務を負うという問題もあります。第二次納税義務は「事業を移転した時点」を基準に判断されるため、その時点では第三者にしておく必要があるのです。

そこで、当面の間、形式上の第三者の役割を演じる「味方」を確保することが有効です。この「味方」は、将来において経営権を戻してもらうという役割を演じるのであり、信頼できる者でなければなりません。一時的に味方になってくれたとしても、将来において裏切られたのでは経営を奪われてしまうということになりかねませんので注意が必要です。

 

誰にどういう条件で「第三者」を演じてもらうのか。「取締役を演じてもらう」場合と「株主を演じてもらう」場合のそれぞれについて明確にしておく必要があります。お互いに信頼関係がなければ成り立たない、究極の「第二会社方式」といえるでしょう。

 

2020年07月13日(月) 経営者の交代を求められる理由

事業再生において「第二会社方式」が採用される理由の一つとして、「第三者に経営権が移転している」という外観上の問題を作出することができるという点があります。すなわち、従来の経営者A氏が経営責任を取った結果として、経営権をB氏に移転する形をとれるというわけです。

この場合、金融機関としては「経営者A氏は経営責任を果たした結果、経営権も第三者であるB氏に移転し、さらには資産も処分した。よって、これ以上の回収はできない」ということで、無税直接償却という形で不良債権を最終処理するのです。

 

経営者に経営責任を果たしてもらうという論理は、金融機関の独特な論理であるということもできます。経済合理性だけを考えるならば、経営権が第三者に移ろうが、従来の経営者一族に残ろうが、どちらでも良いのです。しかし、それでは「債権者は債権を放棄するという形で貸付責任を果たしたのに、経営者は責任を果たしていないのは不公平だ」ということになってしまうのです。

 

このような考え方の是非は別として、現に「経営権は第三者にすること」が第二会社方式における債権者の条件になることは少なくありません。

A氏には経営者責任を果たしてもらうので、第二会社の取締役に就任することは認められないというわけです。中には第二会社の株主になることも認めないという例もあります。たとえば、従来の経営者が父親である場合、第二会社の経営者が子供であることを認めないというようなケースです。まさにケースバイケースであり、債権者の考え方次第で決まることになります。

 

2020年07月06日(月) 経営権の形態

「経営者」という言葉には曖昧さがあります。代表取締役のような会社の代表者を指すのか、それとも、株主のような支配者を指すのでしょうか。

会社法の視点に立つと、株主(支配者)は取締役(代表者)より上位に置かれます。株主は取締役の任命権者だからです。中小企業の場合、この両者が同じであることが多いため、経営者の交代は次の三つのパターンに分けられることになります。

 

ⅰ.代表取締役は退任するが、株主でいるパターン。

ⅱ.代表取締役は退任しないが、株主ではなくなるパターン。

ⅲ.代表取締役を退任すると同時に、株主でもなくなるパターン。

 

ⅰの場合、支配権は有していますので、いつでも代表取締役に復帰できることになります。

ⅱの場合、会社の実効支配権は持っていないものの、それまでの実績を買われて短期的に続投するケースです。いわゆる雇われ社長です。

ⅲの場合、支配権も代表権も喪失し、法的には無関係の第三者となります。

 

2020年07月01日(水) 財産評価基本通達による評価額と不動産鑑定額の乖離(3/6)

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第67回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「財産評価基本通達による評価額と不動産鑑定額の乖離(3/6)」で、その要旨は次の通りです。

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要旨:

今回は不動産鑑定評価の鑑定方法の概要を明らかにします。財産評価基本通達による評価方法と鑑定方法の考え方の違いを把握する前提として、不動産鑑定評価を行なう手順を具体的に明らかにします。

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記事を読むにはミロク情報サービスの会員になる必要があります。
会員は(1)会計事務所向けと(2)企業経営者向けに分かれています。

 

(1)会計事務所の先生の場合は「tvs会員」になる必要があります。
下のアドレスから著者名を指定して検索できます。
http://tvs.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html

 

(2)企業の経営者の場合は「GOODWILL PLUS会員」になる必要があります。
下のアドレスから著者名を指定して検索できます。
http://goodwill.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html

 

多くの有益な情報を入手できますので、入会することをお勧めします。
私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。

 

入会にあたってはお近くの(株)ミロク情報サービスの営業拠点にご連絡ください。営業拠点は下のアドレスから検索できます。
http://www.mjs.co.jp/office/tabid/479/index.php#no2

 

2020年06月25日(木) 他社と合併させる方法

企業の吸収合併は、合併される会社の債権債務を引受者である会社が引き継ぐことになります。

従業員の雇用も引き継がれます。中小企業の場合には特別の魅力、たとえば高い技術力等を目的として合併が行われます。

合併会社が存続して解散する会社を吸収する吸収合併の他、関係会社の全部が解散して第二会社を設立する新設合併があります。いずれの場合も、解散によって直ちに従来の会社は消滅し、清算手続をしなくても良いのが特徴といえます。

この方法は第三者の会社に吸収されてしまいますので、従来の経営者が経営を継続する形の事業再生の立場からは馴染まない方法ということになります。

 

経営権を他人に奪われるような場合に、経営者のヤル気を確保することが難しいことは自明の理です。債務者にとってのヤル気とは、自らの経営権を確保するということに他なりません。

経営権を確保する方法として、現状の経営体制のままで継続できるなら、それはベストな状態といえます。あるいは債権放棄を受けられるなら、債務免除益の問題を解決さえすれば一件落着となります。

しかし多くの場合には簡単にいきません。一部の債権者の合意が得られない場合などは、個別合意型の私的整理に取り組まざるを得ません。この場合には、第二会社に移転する等の外科的手術が必要になるのです。

 

2020年06月20日(土) 事業譲渡、会社分割、M&A

たとえば企業が経営危機に直面した場合に、業績の良い事業部門を業績不良の事業部門と切り離し、業績の悪い部門を潰してしまう方法が考えられます。この方法は業績の良い部門だけをつまみ食いするというもので、負債を残して業績の良い部門だけを第二会社で引き取るというわけです。

 

収益用不動産のような資産のみを第二会社に譲渡する「資産譲渡」や、黒字の事業をまるごと第二会社に譲渡する「事業譲渡」といった方法があります。さらには黒字の事業部門を新しい会社に分割する「会社分割」といった方法もあります。

 

株式譲渡方式は株式の移動という形ですので手続は比較的簡単です。

ただし、事業譲渡と異なって資産のみならず負債も負担しなければならない点で、買収する側としては慎重にならざるを得ないという側面も有しています。譲渡価額の決定には、資産をどのように評価するかの問題も発生します。

この方法は負債を引き継ぐことになりますので、負債を整理するためには、事業譲渡や会社分割で第二会社とし、その後、第二会社を売却する方法もあります。

 

2020年06月15日(月) 第二会社による再生

法的整理の弊害を回避して私的整理で事業再生を成功させるためにはどうしても債権者の協力が必要になります。端的にいえば債権放棄が考えられますが、中小企業のために銀行が債権放棄に応じることは滅多にありません。

 

全くの第三者たる第二会社を利用して、資産譲渡、事業譲渡、会社分割等の組織再編を行うことで事実上の債権放棄を目指すことが有効な手段となります。これにより、事実上の債権放棄を受けるわけです。

 

手形の不渡りによる銀行取引停止処分を受けていた場合には、第二会社にしないことには手形や小切手を発行できないことになります。また、再生に非協力的な債権者によって営業中の差押さえなどを回避するためにも、別法人たる第二会社により事業を継続する道が選択されます。

 

第二会社は従来の会社とは別の独立した法人です。従来の会社に対する債権者が、第二会社に対して従来の会社の債務を求めるわけにはいきません。

 

2020年06月11日(木) 飛躍を目指す

借入金を削減した会社は順調に事業を展開できます。そもそも返済能力に見合った借入金しか負担していないのですから、当然と言えば当然です。順調に事業展開ができるため、多くの場合、節税に頭を悩ますことになります。

事業が軌道に乗ると、収益用不動産を取得して資産形成をするような例が多くみられます。

自らの経験を活かし、同業他社の経営権を取得するケースも少なくありません。まさに自身の経験を活かし、不良債権として苦しんでいる同業他社の経営権を取得するわけです。当然ながら形式上の経営権ではなく、実質上の経営権を所得するのです。いわゆるM&Aで同業他社の経営権を効率的に取得するような例が多くみられます。

 

2020年06月04日(木) 第二ステージになすべきこと

借入金が削減され、再スタートするということは第一ステージの終わりを意味するに過ぎません。

換言すれば、借入金を削減することができても、新しい会社が実際に再生できるかどうかは第二ステージで決まります。事業再生とは、単に借入金を削減するだけではなく、借入金を削減して生まれ変わった新しい会社が飛躍することです。

借入金を削減するという第一ステージの終わりは、新たな飛躍をするという第二ステージの始まりなのです。

 

債権放棄を受けて再出発したものの経営が行き詰まり、返済が不可能になることを第二次ロスと呼ぶことがあります。

同じ第二次ロスでも、従来の会社が債権放棄を受けていた場合は問題です。債権者は既に債権放棄をしているのですが、その際に、従来の会社からは「再生計画」を提示されているはずです。再生計画が提示されたにもかかわらず再度の経営破綻を招来してしまったのであり、本来、実現可能性が高いものであるべき再生計画に不備があったことになります。このような場合には、再度の債権放棄は難しいと言わざるを得ません。

 

これに対し、従来の会社の借入金を減らすために第二会社方式を利用した場合に、その第二会社が経営破綻した場合は事情が異なります。第二会社の債権者と従来の会社の債権者が異なる場合は、第二会社の債権者にとっては初めての経営破綻になります。したがって、第二次ロスにはならないわけです。

ただし、実質的な経営者は同一ですので、経営能力が欠如しているという烙印が押されれば、第二次ロスが生じた場合と同様に、再度の債権放棄は困難になります。

 

2020年05月27日(水) 従来の会社を清算し、第二会社を本来の姿に戻す

第二会社に経営を委譲した従来の会社は残務整理にあたります。残務整理といっても借入金が残っています。なぜならば、第二会社には事業継続に見合う範囲の負債を移転しただけで、その余の部分、すなわち債務超過部分は従来の会社に残っているからです。

 

借入金が残ったままでは会社の清算ができません。債権者から債権放棄を受けることができれば、清算手続を進めることができます。この場合は、債務免除益に対する対策を講じないと課税処分を受けるので注意が必要となります。清算の方法としては法的整理の他、みなし解散の制度なども考えられます。

 

第二会社がスタートした後、その第二会社が諸般の事情から形式上の第三者に経営権を委ねている場合には、経営権を本来の姿に戻す必要があります。既述の理由で形式上の経営権は第三者のものになっていますが、この状態を放置するわけにはいきません。実質上の経営者に経営権を戻す手続を行うことが求められます。

そもそも第二会社は借入金は圧縮され、利益が出る体質の会社です。時の経過とともに第二会社の資産価値は上昇していきます。第二会社株主を形式上の第三者にした場合に、これを放置しておくと、本来の株主に株式譲渡を行う時点で資産価値のあるものを譲渡することになってしまいます。この場合、贈与税が生じることになりますので、移転の時期を慎重に見極めることが必要です。

 

2020年05月19日(火) 第二会社を利用する方法

「経営者責任を果たすべし」という金融機関の論理を勘案する時、従来の会社が債権放棄を受けることが困難なこともあります。その場合は、新しい第二会社を利用して債権の放棄を受けることになります。従来の会社(たとえば父親が経営者)が、資産譲渡、事業譲渡、会社分割等の方法を利用して第二会社(たとえば子供が経営者)に経営を委譲するのです。この場合、父親が経営する従来の会社には残務処理を担ってもらいます。多くの場合は清算することで消滅することになります。一方、子供が経営する第二会社には更なる飛躍を期待することになります。

 

従来の会社から、資産譲渡、事業譲渡、会社分割等の方法で第二会社に経営を引き継ぎ、第二会社がスタートすることになります。

多くの場合、この第二会社は融資を受けることになります。金融機関には事業計画を提出し、信用を得ることになるのですが、第二会社は新しくスタートした会社であり再生会社ではありません。したがって作成すべき計画は、再生計画ではなく事業計画ということになります。事業計画と再生計画を混同しないように注意が必要です。

 

ところで、この第二会社は、従来の会社が単純に債権放棄を受けられないための苦肉の策として利用するものです。債権者の同意が得られれば別ですが、債権者の論理に配慮して形式上の経営者(株主、代表取締役等)を擁立することが求められることもあります。このような場合は、信頼できる第三者に形式上の経営者を担ってもらうことになります。この場合でも、実質的に従来の経営者が経営権を確保しておかねばなりません。無策のまま悪意の第三者に乗っ取られるようなことがあってはならないのです。

 

2020年05月14日(木) 従来の会社を利用する方法

従来の会社が、そのまま債権放棄を受ける方法があります。債務者である従来の会社に対して債権放棄を行うので、きわめて単純な図式となります。この場合は、そもそも第二会社が必要になりません。

この方法は、単純ですが簡単ではありません。

 

債務者には返済義務がありますので、債務者は債権放棄を求める立場にありません。債権放棄をするか否かは債権者が決めることなのです。その債権者には債権者の論理があります。

たとえば金融機関は、預金者から集めた預金を運用するのですから、受託責任を負っています。債務者の返済が困難だからと言って、簡単に債権を放棄するわけにはいかないのです。回収の最大化に努力しなければならず、他の債権者との整合性を図る必要もあります。

 

債権者が債権放棄を余儀なくされ、貸倒損失という損失を被る以上、債務者には経営者責任を果たしてもらわないことには説明がつかないのです。このように、従来の会社がそのままの状態で債権の放棄を受けるには、相応の手続が求められることになります。実現可能な再生計画を作成し、返済可能な最大額を返済することを疎明する必要があるのです。その返済計画が認められて初めて債権放棄を受けることになります。

この方法の場合、従来の会社を再生させますので「再生計画」が必要になります。同じ計画でも、第二会社を利用する場合には第二会社の「事業計画」を作成することになり、再生計画ではありません。事業計画と再生計画は異なることに注意が必要です。

 

2020年05月09日(土) 再生への道

諸般の事情で借入金が膨らんだ結果、返済能力を超えてしまったものの、借入金さえ適正水準であれば事業を継続できる会社は少なくありません。このような会社を再生させるためには、どうしても借入金を削減することが必要になります。

 

このような場合に借入金を削減させて事業を再生するには、二つの方法があります。

一つは「従来の会社を利用する方法」です。従来の会社がそのまま事業を継続して債権放棄を受けるため、この方法の場合には第二会社が必要になりません。

もう一つは「第二会社を利用する方法」です。従来の会社から資産を譲渡したり、事業を譲渡したり、あるいは会社を分割するなどの方法で事業を第二会社に移転する方法です。さらには会社そのものを譲渡する方法もとられます。いずれも会社の借入金は削減され、適正な水準の借入金を有する会社として再生されることになります。

 

どちらも同じく借入金を削減するのですから、わざわざ第二会社を経由しなくても良さそうなものですが、そこには金融機関の論理というものがあり、従来の会社に対して債権を放棄するのは困難な場合があるのです。

 

2020年04月23日(木) 公的支援制度の使い分け

さまざまな公的支援制度について、どのような場合に、どの制度を利用するべきかを整理しておきます。

 

1、規模の違い

最もハードルが低いのはよろず支援拠点です。無料で様々な相談を受け付けており、専門家のサポート無しに経営者が単独で相談することができます。次に、経営改善支援センターについては、認定支援機関と金融機関の協調により補助金の申請が可能になりますので、特に規模の違いはありません。最もハードルが高いのは中小企業再生支援協議会であって、多くの場合には複数の金融機関を抱えるような企業が、債権者と債務者の協議というだけではなく、金融機関相互間の調整も兼ねた協議を行います。

 

2、目的の違い

経営相談については、よろず支援拠点が受け付けてくれます。単なる経営相談の場合には中小企業再生支援協議会は扱いません。経営改善支援センターは補助金の窓口ですので、一般的な経営相談は行っていません。

早期対策に関しては、経営改善支援センターが新たな事業分野として業務を開始しました。よろず支援拠点でも経営相談として相談を受けられます。

事業再生の相談に関しては中小企業再生支援協議会が行います。補助金の申請は経営改善支援センターとなります。よろず支援拠点では専門家の紹介を受けることができます。

 

3、補助金の申請

補助金の申請窓口は経営改善支援センターだけが行っています。

 

4、専門家の紹介

認定支援機関や専門家の紹介は、よろず支援拠点で行っています。中小企業再生支援協議会は公平な第三者の立場から、金融機関との協議の場として機能する他、協議に必要な範囲で専門家を選任・紹介します。経営改善支援センターでは専門家の紹介は行っていません。

 

2020年04月14日(火) よろず支援拠点

経済産業省が主導する形で、「地域の支援機関と連携しながら、中小企業・小規模事業者が抱える様々な経営相談に対応するよろず支援拠点」が平成26年から全国に開設されています。

 

(1)支援事業の内容

同省のホームページによると、「全国385万の中小企業、中でもその9割を占める小規模事業者からの相談対応を担う既存の支援機関には機関ごと地域ごとに支援のレベル・質・専門分野、活動内容等のバラツキがあるなどの課題もあり、相談体制の更なる整備が必要です。このため、新たに「よろず支援拠点」を各都道府県に整備し、地域の支援機関と連携しながら、中小企業・小規模事業者が抱える様々な経営相談に対応します」とされています。

よろず支援拠点では、課題を分析して一定の解決策を提示するという経営革新支援の他、資金繰りの改善や事業再生等に関する経営改善のための相談、さらには必要に応じて再生・経営改善案件に対する複数の専門家で編成した支援チームによる支援も行っています。認定支援機関等との接点が無いような経営者の相談にも応じており、必要に応じて認定支援機関や専門家の紹介も行っています。

 

(2)現状と限界

よろず支援拠点では中小企業の「起業から安定までの各段階」に応じて広く経営相談を行っています。中小企業再生支援協議会や経営改善支援センターと異なり、認定支援機関や専門家の紹介を行っている点に特徴があります。

相談は無料とされているため経済的負担をせずに利用できますが、無料相談ゆえの限界があります。無料で対応するため時間的な制約もあり、踏み込んだ対応は期待できません。

認定支援機関や専門家を紹介された場合は、それぞれの能力に依存することになります。費用の補助などの支援はありませんので、紹介された後の対応は無料ではなく、それぞれの専門家と改めて必要な報酬を約定することになります。紹介された専門家は事業再生に特化されたものではありませんので、事業再生に関する知識・経験はそれぞれの専門家?次第ということになります。

 

2020年04月04日(土) 経営改善支援センターの限界

経営改善支援センターが対象とする企業は、借入金が数千万円、数億円といった中小零細企業を対象とする公的支援制度です。借入金が数十億円であっても利用できないというわけではなく、借入金の返済能力や売り上げの規模で判断しますので、借入額がそのまま妥当するものではありません。

 

経営改善支援センターで認定支援機関の紹介は行っていませんので、あらかじめ認定支援機関としての専門家に依頼することになります。

経営改善支援センターを利用する場合、一般的には金融機関に相談をしながら、認定支援機関たる税理士と経営改善支援センターから費用補助を受けることになります。

いわば、費用補助の窓口に近いということができるでしょう。 。

 

2020年04月01日(水) 経営改善支援センター

経営改善支援センターは中小企業再生支援協議会に設けられた機関で、平成24年に立ち上げられた認定支援機関の制度的支えになっています。

 

ⅰ.経営改善計画策定支援

条件変更や新規融資などの金融支援が必要な中小企業・小規模事業者が、国の認定を受けた外部専門家(認定支援機関)の支援を受けて経営改善計画を策定する場合、経営改善計画策定支援に要する費用について、総額の3分の2(上限200万円)まで支援を受けられます。

財務上の問題があり、金融支援を受ける必要がある場合に、認定支援機関が経営改善計画の策定を支援し、中小企業・小規模事業者が認定支援機関に対し負担する経営改善計画策定支援に要する計画策定費用及びフォローアップ費用の総額について、経営改善支援センターが費用の一部を負担するというものです。

支払の対象となる費用は、認定支援機関による経営改善計画策定支援に係る費用(計画の策定費用、事業デューデリ費用、財務デューデリ費用、モニタリング費用等)のうち3分の2が上限とされています(最大200万円。規模に応じて金額は異なります)。経営改善計画策定支援に係る費用、計画策定後 3 年間の定期的な計画進捗状況の確認・金融機関等への報告の実施の費用も対象とされています。

 

ⅱ.早期経営改善計画策定支援

中小企業・小規模事業者の経営改善への意識を高め、早期からの対応を促すため、認定支援機関による経営改善計画策定支援事業のスキームを活用し、中小企業・小規模事業者が基本的な内容の経営改善(早期経営改善計画の策定)に取り組むことにより、平常時から資金繰り管理や採算管理が行えるよう支援を行うものです。(中小企業庁HPより)

具体的には、認定支援機関が資金実績・計画表やビジネスモデル等の早期の経営改善計画の策定を支援し、計画を金融機関に提出することを端緒にして自己の経営を見直し、早期の経営改善を促すものです。早期経営改善計画策定支援に要する計画策定費用及びモニタリング費用の総額について、経営改善支援センターが、3分の2(上限20万円)を負担するものです。

 

2020年03月26日(月) 支援協議会の限界

中小企業再生支援協議会を利用する企業の規模としては、数億円から数十億円規模の借入金を抱える企業が目安となります。借入金額が少ない零細企業にはハードルが高いといえます。

 

利用にあたっては金融機関と協調して相談することが前提であり、債務者が単独で申し込んでもあしらわれてしまいます。事業再生に疎い経営コンサルタントが身勝手な計画を作成し、金融機関に無断で持ち込んで門前払いを食らった例もあります。このような場合には、後掲の「経営改善支援センター」や、「よろず支援拠点」を利用することになります。

 

事業再生に必要な再生計画の作成は、公平な第三者としての立場から支援協議会が主導することになります。もっとも、中小企業再生支援協議会は協議の場を提供するものであり、自らが積極的、主体的に計画を作成するわけではなく、実際の作成は選任された支援チームが行うため、計画作成にあたっては支援チームを構成する専門家に対して相応の費用が必要になります。

 

なお、再生計画にあたっては第二会社を経由することもありますが、第二会社を経由することなく、従来の会社がそのまま債権放棄を受けるという方法も採用しやすくなります。中小企業再生支援協議会という公的機関が介在することで公平性が担保され、金融機関が債権放棄をしやすくなるためです。

 

2020年03月17日(火) 中小企業再生支援協議会

中小企業再生支援協議会は産業競争力強化法に基づき、平成15年から全国に設置されています。現実には、中小企業の再生支援業務を行う者として認定支援機関たる商工会議所に設置されています。

 

中小企業再生支援協議会では、「事業再生に関する知識と経験とを有する専門家(金融機関出身者、公認会計士、税理士、弁護士、中小企業診断士など)」が統括責任者(プロジェクトマネージャー)および統括責任者補佐(サブマネージャー)として常駐しています。

 

中小企業者からの相談を受け、アドバイスを行ったり、支援機関の紹介や、専門家の紹介などを行い(第一次対応)、事業性など一定の要件を満たす場合には再生計画の策定支援(第二次対応)を実施しています。

ⅰ.経営相談・・・第1次段階対応

様々な経営上の問題点を抱えている中小企業に対してその具体的な課題を抽出し、最も適した施策等のアドバイスを行ないます。

ⅱ.再生支援・・・第2次段階対応

必要と判断した企業に対して、中小企業診断士、弁護士、公認会計士、税理士、取引金融機関等の専門家による個別支援チームを立上げて、経営改善計画案の作成支援やその実施とフォローアップ等の支援を行っています。

 

中小企業再生支援協議会は公正中立な第三者機関であり、中小企業や金融機関の代理人にはならず、あくまで公正中立な第三者としての立場から活動しています。企業の事業面、財務面の詳細なデューデリを実施したり、経営分析等を実施したり、さらには債務者の再生計画の策定を支援し、金融機関に再生計画案を提示して金融機関との調整を実施しています。

 

2020年03月10日(火) 中小企業経営力強化支援法

「中小企業の海外における商品の需要の開拓の促進等のための中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律等の一部を改正する法律(中小企業経営力強化支援法)」は平成24年8月に施行されました。

この法律は、中小企業の経営力の強化を図るため、「中小企業の支援事業を行う者を認定し、その活動を後押しするための措置」、「中小企業の海外展開を促進するため、中小企業の海外子会社の資金調達を円滑化するための措置」の二つの措置を講じています。

 

中小企業の経営力の強化を図るため、既存の中小企業支援者、金融機関、税理士・税理士法人等の中小企業の支援事業を行う者が支援機関として認定されています。この認定を受けたものが「認定経営革新等支援機関」であり、この経営革新等支援機関を認定するという制度こそ、この法律の肝であると言っても過言ではないでしょう。

この経営革新等支援機関を通じ、中小企業に対して専門性の高い支援事業を提供することになります。

 

しかし、財務諸表の関連性やキャッシュフロー計算書の意味を知らない弁護士や、基本的な節税対策を知らない中小企業診断士、詐害行為取消権他の諸法制度を知らない税理士等、士業であれば容易に認定支援機関として認定される制度設計のあり方に若干の疑問を感じざるを得ません。専門的な知識と経験が必要になる事業再生に関する知識が欠如している例が散見されることは、制度の限界ということができるでしょう。

 

2020年03月05日(木) 民事調停法の17条決定

調停が成立する見込みがない場合に、裁判所が当事者双方の公平を考慮しながら、職権で事件解決のための必要な決定が17条決定と呼ばれるものです。この決定は債権者が特定調停に同意したのと同じ効果があります。

 

17条決定は決定告知を受けた日から2週間以内に当事者は異議を申し立てることができ、債権者が異議を申し出ることによって17条決定の効力は失われます。

債権者としては仮に17条決定の内容に異論があるとしても、「できるだけのことはした」という形を整えることができます。よって、不良債権の最終処理を行うために、多少の不満があっても異議を申し立てるのではなく調停案を受け入れることも少なくありません。

 

裁判所に17条決定を出してもらえれば、金融機関としては、それを受け入れる形で直接償却に持ち込むことができるというわけです。このようにしておけば、後日、検査・監査で否認されるリスクがなくなるため、安心して債権放棄ができるのです。些細な違いであれば、調停の中身よりも調停で決定されたという事実の方が大切なのです。

 

2020年03月02日(月) 特定調停の利用方法

特定調停を申し立てても調停には強制力がありませんので、債権者が強硬な姿勢を崩そうとせず合意に至らない場合もあります。調停期日に合意が成立しない場合は不成立として終了してしまいます。

 

調停には強制力がないからこそ、事前の十分な根回しが重要になります。根回しもしないで、とりあえず調停を申し立てれば良いというものではありません。民事再生法においては、債権者の攻撃に対抗するため緊急避難的に、とりあえず民事再生を申し立ててから計画を策定するというような姿勢で臨む場合もあります。法的整理だからこそできる不遜な態度だとさえいえるでしょう。

調停はそうはいきません。拘束される義務も、合意する義務もないからです。債権者に拒否されたならば話し合いにすらなりません。

よって調停においては、適切な再生計画を策定し、金融機関を回り計画を説明し、意見や要望を反映する形で修正を行うのです。タイミングを見計らいバンクミーティング(債権者会議)を行い、最終の合意案に近づけていきます。

 

このようにして十分な根回しを行って合意内容の大筋に納得を得た後に、最後に合意する場として特定調停を利用するのが効果的です。

 

2020年02月28日(金) 財産評価基本通達による評価額と不動産鑑定額の乖離(1/6)

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第65回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「財産評価基本通達による評価額と不動産鑑定額の乖離(1/6)」で、その要旨は次の通りです。

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要旨:

会計事務所が行った相続税申告事案に狙いを定め、更生の請求によって相続税の還付を受けるというビジネスモデルも存在します。例えば財産評価基本通達が認める減価要因を適正に適用しないことで過大評価となれば還付が認められるでしょうし、通達に従って正しく評価したとしても、不動産鑑定評価による更に低い鑑定額が認められれば、これも還付が認められるでしょう。大切なクライアントを守るためには財産評価基本通達の正しい理解は当然のことであり、さらには不動産鑑定評価による鑑定額との比較も大切なのです。かかる観点から、今回から6回に分け、財産評価基本通達による評価と、不動産鑑定評価基準による鑑定について考察します。第1回目の今回は、時価の概念を整理した後、財産評価基本通達と不動産鑑定評価制度の概要と不動産鑑定評価の有用性を明らかにします。

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記事を読むにはミロク情報サービスの会員になる必要があります。
会員は(1)会計事務所向けと(2)企業経営者向けに分かれています。

 

(1)会計事務所の先生の場合は「tvs会員」になる必要があります。
下のアドレスから著者名を指定して検索できます。
http://tvs.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html

 

(2)企業の経営者の場合は「GOODWILL PLUS会員」になる必要があります。
下のアドレスから著者名を指定して検索できます。
http://goodwill.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html

 

多くの有益な情報を入手できますので、入会することをお勧めします。
私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。

 

入会にあたってはお近くの(株)ミロク情報サービスの営業拠点にご連絡ください。営業拠点は下のアドレスから検索できます。
http://www.mjs.co.jp/office/tabid/479/index.php#no2

 

2020年02月23日(日) 特定調停を利用するメリット

特定調停を利用するメリットは次の通りです。

 

1、債務者及び保証人のメリット

債務者は債権者である金融機関の理解を得た上で、金融機関に対する債務以外の債務を支払うこともでき、商取引先等の関係者に大きな影響を与えません。また、経済的合理性の観点から全対象債権者の理解を得た上で、少額債権者は全額保護するなどの差を設けた計画も可能です。通常清算手続又は特別清算手続のコストは必要ですが、破産管財人報酬の支払いは不要となりますので費用を抑えることができます。

一定の範囲で保証人の資産を残すことも可能で、信用情報機関に登録されず官報等で個人情報が公表されることもないので、破産手続の場合に比べて保証人の経済的更生が図りやすいといえます。

 

2、金融機関のメリット

特定調停によって裁判所が関与するために手続が公正であることが担保されていますし、債権放棄を行う場合にその額を貸倒損失として損金算入が認められます。安心して債権放棄に応じることができるわけです。

 

2020年02月17日(月) 廃業・清算を支援する手法としての特定調停スキーム

中小事業者の再生だけでなく円滑な廃業・清算のニーズが高まっていることを受けて、日本弁護士連合会は最高裁判所等の関係機関と協議し、新たに廃業支援型の特定調停スキームの手引き書を策定しています。

 

廃業支援型の特定調停スキームは、特定調停手続の活用により、事業の継続が困難で金融機関に過大な債務を負っている事業者について、経営者保証に関するガイドラインの適用により保証債務を処理することも含めて、債務免除を含めた債務の抜本的な整理を行い、かかる事業者を円滑に廃業・清算させて、経営者や保証人の再起支援等を図る制度です。(日弁連HPより抜粋・引用)

 

廃業支援型の特定調停スキームは、経営者保証に関するガイドラインを利用して債務免除を含めた債務の抜本的な整理を図るものです。

 

2020年02月08日(土) 保証債務整理の手法としての特定調停スキーム

保証人の債務整理のみを特定調停で進める単独型の活用も想定して、特定調停手続による同ガイドラインに基づく保証債務の整理の手順についてまとめた「経営者保証に関するガイドラインに基づく保証債務整理の手法としての特定調停スキーム利用の手引き」を平成26年12月12日付けで新たに策定されています。(日弁連HPより抜粋・引用)

 

個人保証をしている中小企業が窮境に陥った場合に、保証人はその経済合理性の範囲内で一定の残存資産を手元に残すことができ、その余の資産を換価・処分して一括返済し残余の保証債務の免除を受けるというのが経営者保証に関するガイドラインの要旨です。特定調停を進めるには、主たる債務者・保証人・支援専門家(弁護士、公認会計士、税理士等の専門家で全ての対象債権者がその適格性を認めるもの)が協同で行うことになります。

たとえば、保証人が残存資産を手元に残して保証債務を一部履行して残存する保証債務の免除を受けるためには、保証人が全ての対象債権者に対して、保証人の資力に関する情報を誠実に開示し、開示した情報の内容の正確性について表明保証を行うことが必要です。そして、支援専門家が対象債権者からの求めに応じて、当該表明保証の適正性についての確認を行い、対象債権者に報告することも必要となります。

 

特定調停手続を円滑に実施するためには、いきなり調停を申し立てるのではなく、事前に十分に債権者と協議を行うことが肝要です。事前に債権者から合意の見込みを得ておくことができれば、特定調停手続を迅速かつ円滑に成立させることが容易になります。

 

2020年01月30日(木) 金融円滑化法終了への対応策としての特定調停

中小企業金融円滑化法が平成25年3月末日に終了したことへの対応策として、主に中規模以下の中小企業の事業再生を支援するため、最高裁判所、経済産業省中小企業庁と協議し、特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律(平成11年12月17日法律第158号)に基づく特定調停制度を活用するスキームを策定し、平成25年12月から「本特定調停スキーム」の運用が開始されています。

 

特定調停スキームは、民事再生等の法的再生手続によれば事業価値の毀損が生じて再生が困難となる中小企業について、弁護士が、税理士、公認会計士、中小企業診断士等の専門家と協力して再生計画案を策定し、金融機関である債権者と事前調整を行った上、合意の見込みがある事案について特定調停手続を経ることにより、一定の要件の下で債務免除に伴う税務処理等を実現し、その事業再生を推進しようというものです。

 

この特定調停スキームは資金繰りに窮するなどにより経営困難な状況に陥り、本格的な再生処理が必要となる中小企業のうち、比較的小規模な企業の再生を支援することを目的としています。

債務者の事業規模としては、日本弁護士連合会のホームページで、年間売上(年商)20億円以下、負債総額10億円以下の企業が例示されています。さらには、約定金利を支払える程度の収益力があり、法的整理ではなく、私的整理が相応しい場合が対象として想定されています。

 

2020年01月26日(日) 廃業のための特定調停

企業経営者の高齢化に伴い、M&Aで企業を第三者に譲渡することが多くなってきました。後継者が不在で、かつM&Aで相手が見つからない会社は廃業することになります。事業再生においても、第二会社に事業を移転した従来の会社は廃業するのであり、後継者不在で廃業する企業と似たような立場にあるといえます。

 

中小事業者の再生だけでなく円滑な廃業・清算のニーズが高まっていることを受けて、「廃業支援型の特定調停スキーム」が平成29年1月に策定されています。

 

これは特定調停手続の活用により、事業の継続が困難で金融機関に過大な債務を負っている事業者について債権放棄を含めた債務の抜本的な整理を行い、事業者を円滑に廃業・清算させて、経営者や保証人の再起支援等を図る制度です。十分な根回しを行いながら、特定調停を行うという方法も考えられます。

 

2020年01月16日(木) 会社の終わらせ方

第二会社方式で事業等を移転した後、残った会社を清算する場合、債権者に対する不意打ちとなることを避けるため、あらかじめ債権者に対して「法的に清算する」との断りを入れておきます。

 

ⅰ.解散の登記

最初に特別決議で解散を決議した後、解散の登記を行います。この時点で、会社を法的に消滅させるという対外的な意思表示を示したことになります。その後の会社の清算手続は清算人が行うことになりますので、解散の登記とともに清算人の登記を行います。

 

ⅱ.催告と公告

清算人は債権者への催告と公告を行います。このとき、単に一方的に書面を送り付けるのではなく、「普通清算で清算結了させたいので、債権放棄をお願いしたい」との依頼をしておきます。債権者が一定額の支払を求めてきた場合には、受け入れ可能ならば受諾し、残余の債権放棄を受けます。場合によって特定調停を行うことが条件になることもあります。

 

ⅲ.特別清算の申し立て

債権額を調査した結果、債務超過の疑いがある(事業再生に関連する多くの場合は債務超過です)株式会社の場合は特別清算を申し立てなければなりません。しかし、特別清算の申し立てを行う時期について定めはありませんので、ただちに申し立てるのではなく債権者の姿勢を見極めます。特別清算では3分の2以上の同意が必要ですので、債権者を回って同意を得る根回しをするのです。

同意が得られる目途がついた時点で、特別清算を申し立てます。3分の2以上の同意が期待できるようになるまで申し立てはせず、じっくりと交渉を繰り返します。債権者としても貸倒引当金を計上する等の準備が必要ですので、時間をかければ応諾し易くなるのです。

どうしても債権者の同意が得られない場合には、「破産手続に移行する」「継続の登記を行う」という選択肢が考えられます。あるいは「廃業のための特定調停を申し立てる」「いつまでも放置して、みなし解散に持ち込む」という選択も可能です。

 

2020年01月11日(土) 破産より特別清算

第二会社方式による事業再生にあたり従来の会社を抜け殻として特別清算を申し立てるような場合、第二会社方式そのものに詐害的な側面があるならば、債権者としては不同意とすることで破産に移行させるという対策も考えられます。しかし第二会社方式が正当であると認めるならば、特別清算に応じることが合理的な選択肢といえるでしょう。いずれになるかは債権者の判断次第ということになります。

 

特別清算は破産に比べると柔軟な対応が期待できる上に、「企業倒産」という印象も少ないので、債権者の合意が得られるならば破産ではなく特別清算を選択すべきです。

破産法の改正で破産は利用しやすくなったので、特別清算ではなく破産にすべしという論理は、破産により債務者が被る不利益を理解しない「他人事」の論理でしかありません。

 

合意が期待できない場合には、とりあえず解散の登記を行い普通清算に着手して「会社を法的に清算する決意」を示すことで、債権者に残債の放棄を依頼することが得策です。債権者としては「経営者が清算に向けて本気で動いていること」を目の当たりにして、残債の放棄を真剣に考えることになるからです。

この場合、債権者が放棄に同意しない場合には、そのまま放置するのです。解散登記を行い清算会社になったまま、特別清算の申し立てをしないで放置するというわけです。特別清算の申し立て時期に制限はありませんので、債務超過の清算会社が特別清算を申し立てなければ、債権者が破産を申し立てない限り、清算会社のまま動きが止まってしまうのです。債権者としては本意ではありませんので、適正な解決金の授受により債権放棄に同意すること、すなわち特別清算が成立する可能性が高まるはずです。

 

2020年01月05日(日) 特別清算

株式会社であって債務超過である場合には普通清算ではなく、特別清算を行う必要があります(510条)。特別清算の申し立ては清算会社として行うこととされています。特別清算は、破産手続ほど厳格な手続を要さないため、比較的迅速に処理が進行します。

 

特別清算は株式会社のための制度であり、会社法が制定される前から存在していた特例有限会社の場合には適用されません。債務超過の特例有限会社の場合には裁判所の監督下において破産手続が進められることになります。

 

破産手続では裁判所によって破産管財人が選任されますが、誰が就任するか分からず、経営者が主導的に進めることができません。しかし、特別清算であれば経営者が清算人に就任できますので、主導的に清算手続を進めることが可能なのです。破産管財人の否認権を行使される危険がないため、債務者としては破産より特別清算の方が有利に進める側面もあるということができます。

特別清算手続は総債権額の3分の2以上の同意が得られないと成立しません(567条1項)。したがって、債権者が非協力的な場合には成立しにくい面をもっています。成立しない場合には破産手続に移行してしまいます。

イメージとしては、普通清算が基本であるところ、債務超過であれば特別清算をしなければならず、債権者の協力を得られない場合には特別清算ができず、破産に移行してしまうという流れになります。

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