2019年

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2019年12月31日(火) 清算の中止
2019年12月29日(日) 普通清算
2019年12月25日(水) 清算とは
2019年12月21日(土) 事業再生の進め方
2019年12月17日(火) 解散とは
2019年11月30日(土) 特定調停
2019年11月20日(水) 中小企業再生支援協議会
2019年11月07日(木) 各種制度の利用
2019年11月02日(土) 違法性を問題にしない状況も大切
2019年10月27日(日) 会計事務所に期待されること
2019年10月20日(日) 会社分割で第二会社に移す
2019年10月15日(火) 事業譲渡で経営を継続する
2019年10月08日(火) 資産譲渡で財産を保全する
2019年09月29日(日) 債権者破産の申し立て
2019年09月24日(火) 会計事務所の信頼性
2019年09月20日(金) 債権の償却手続
2019年09月15日(日) 会社分割無効の訴え
2019年09月01日(日) 法人格否認の法理の適用
2019年09月01日(日) 法人格否認の法理の適用
2019年08月14日(水) 取締役の第三者責任の追及
2019年08月12日(月) 各種無効の訴え
2019年08月06日(火) 債権者代位権
2019年08月01日(木) 詐害行為取消権(債権者取消権)
2019年07月26日(金) 債権者の本気度
2019年07月16日(火) 競売
2019年07月12日(金) 仮差押えの効果
2019年07月05日(金) 仮差押えの手続
2019年06月28日(金) 資産査定のあり方
2019年06月23日(日) 期限の利益の剥奪
2019年06月16日(日) 時効による債権消滅
2019年06月05日(水) 担保漏れ
2019年05月30日(木) リスケではなく債権放棄を求めて話がこじれた例
2019年05月24日(金) 配分交渉に手間取り買主を失った例
2019年05月17日(金) 金額の客観性と利得の移転
2019年05月12日(日) 客観性の無い「高い」金額と、客観性のある「低い」金額
2019年05月07日(火) リスケではなく債権放棄を求めて話がこじれた例
2019年04月30日(火) 事業再生に成功する経営者
2019年04月21日(日) 無担保不動産を資産譲渡して新債権者の要求に屈した例
2019年04月13日(土) 債権者には理解と協力を求めるべき(2/2)
2019年04月10日(水) 債権者には理解と協力を求めるべき(1/2)
2019年04月06日(土) 債務者の失敗
2019年04月01日(月) 高崎経済大学での授業が始まります
2019年03月27日(水) 従来の会社はどうなるのか
2019年03月21日(木) 役員の問題行動により失敗する取締役会
2019年03月16日(金) 取締役の責任軽減
2019年03月11日(月) 取締役の責任
2019年03月05日(火) 第三者が株主や役員になる場合
2019年02月28日(木) 別会社を第三者名義にすべきなのか
2019年02月22日(土) 再生計画の作成と公表
2019年02月15日(金) 第二会社の必要性
2019年02月09日(土) 組織再編の必要性
2019年02月02日(土) 競売配当と他の抵当権
2019年01月26日(土) 利益の一致点
2019年01月20日(日) 債権者は疑っている
2019年01月14日(月) 債権者と債務者の配分問題
2019年01月08日(火) 債権者の立場にも配慮する
2019年01月03日(木) 債権者間での営業権代金の分配

 

2019年12月31日(火) 清算の中止

清算事務が終了した時は、決算報告を作成し、株主総会の承認を受けます。清算事務の終了及び株主総会により決算報告が承認されると清算が結了し、会社の法人格が消滅します。会社の法人格が設立の登記によって生ずるのとは異なり、登記を待たずに消滅することになります。

 

清算人等は、清算結了後2週間以内に、清算結了の登記を行う必要があり、その登記によりその会社の登記記録は閉鎖されます。

 

なお、株主総会の特別決議によって解散をした会社は、清算手続きが結了するまでの間は、株主総会の特別決議によって解散を中止し、再び会社の営業活動を継続することができるとされており、「清算をしようと思ったが、やっぱり清算をしないで営業再開する」という選択が可能というわけです。

 

2019年12月29日(日) 普通清算

定時株主総会または臨時株主総会に、議決権を有する株主の過半数が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成による特別決議により会社の解散を決議することで解散の登記を行うことになります。

解散により取締役は全員清算人となりますが、清算人選任の決議により、特定の人物を清算人に選任することもできます。清算人は会社の財産を調査し、清算会社となった日における財産目録、貸借対照表を作成し、株主総会に報告して承認を受け、さらに、清算人は、会社の取引業務を終了させるなどの処理をします。

 

清算手続きでは会社の財産を整理して債権者に弁済し、残余財産を株主に分配します。会社の財産である不動産、動産については売却するなどして換価し、会社が有している売掛金等の債権は回収することになります。

 

会社の債務の弁済にあたり、債権者間で不公平が生じないようにするため、債務の弁済については手続きが法定されており、債権者に対し解散後遅滞なく、2ヶ月以上の期間を定めて会社に対する債権を申し出るべき旨を官報に公告することになっています。知れている債権者に対しては、2ヶ月以上の期間を定めて会社に対する債権を申し出るべき旨を個別に催告します。

債権者に対する債権申出の期限が終了するまでは債務を弁済してはならず、この手続きは省略することはできません。官報に公告を申し込むためには、さらに1〜2週間がかかるため、結局、清算手続きには2ヶ月以上が必要になります。

 

2019年12月25日(水) 清算とは

会社は、解散することで法人格が消滅し、自ら権利・義務の主体とはなれなくなります。会社の銀行口座を持ったり、不動産を所有したり、取引行為を行ったりすることはできなくなるのです。

会社が解散するには、その会社が現在持っている権利・義務を整理することになります。整理とは、会社の財産である会社名義の預金口座を解約したり、会社名義の不動産を別の者に移転させたりするということなのです。

 

一方で、会社の借入については返済をしなければなりません。最後に残った財産があれば株主に分配することになります。

このように、会社が解散するにあたり会社の契約を終了させたり、会社が有している債権・債務を整理し、残った財産を株主に分配するのが清算の手続です。

 

2019年12月21日(土) 事業再生の進め方

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第64回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「事業再生の進め方」で、その要旨は次の通りです。

ーーー

要旨:

今回は事業再生に関わる債権者と債務者の関係のみならず複数の債権者間の関係について明らかにした後、私的整理の進め方を整理します。さらには資金手当ての必要性と経営権の維持に着目しつつ、自力再生・再生ファンド・M&Aについて整理します。

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記事を読むにはミロク情報サービスの会員になる必要があります。
会員は(1)会計事務所向けと(2)企業経営者向けに分かれています。

 

(1)会計事務所の先生の場合は「tvs会員」になる必要があります。
下のアドレスから著者名を指定して検索できます。
http://tvs.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html

 

(2)企業の経営者の場合は「GOODWILL PLUS会員」になる必要があります。
下のアドレスから著者名を指定して検索できます。
http://goodwill.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html

 

多くの有益な情報を入手できますので、入会することをお勧めします。
私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。

 

入会にあたってはお近くの(株)ミロク情報サービスの営業拠点にご連絡ください。営業拠点は下のアドレスから検索できます。
http://www.mjs.co.jp/office/tabid/479/index.php#no2

 

2019年12月17日(火) 解散とは

会社の解散は「会社の法人格を消滅させる原因となる事実」です。清算は「会社が解散する際に、会社の財産についての権利・義務関係を整理する手続」です。

換言すれば、解散とは会社が営業活動を中止して財産の整理を行うことであり、この財産の整理手続が清算手続であるといえます。

 

清算手続では、解散した会社の債権・債務を整理することになりますが、残った財産があれば株主に分配することになります。しかし、資産よりも負債が多い債務超過となる場合には、普通清算で会社を終わらせることはできません。このような場合には、公正な清算をするために裁判所の監督のもとで特別清算を進めることになります。

破産の場合は裁判所が選任した破産管財人が、債務者の全財産の管理と処分を行うのに対し、特別清算の場合は清算人が管理と処分を行うので、ある程度自由に進めることができる点に特徴があります。

自由にできるということは、たとえば身内に比較的有利な条件で譲り渡すというようなことも考えられるでしょう。

 

2019年11月30日(土) 特定調停

平成12年2月に民事調停法の特例として「特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律」(特定調停法、平成12年2月17日施行)が施行されています。

 

会社更生法や民事再生法はある程度債権者の同意とその手続に時間を要しますが、特定調停法は債権者の同意がなくても債務者だけで申し立てが可能であり、無担保でも民事執行が停止できる等のメリットがあります。

特定調停法は債務者の経済的再生のために、民事調停で債権者との金銭債務の利害関係を裁判所の調停委員が調停を行うものですが、債権者に対して法的拘束力は無く、調停委員による調整に応じる義務もありません。

 

特定調停法に基づく特定調停は、ある程度の返済見通しがある場合、あるいはきちんとした再生計画を作成できた場合には有効な選択肢であるといえるでしょう。

本来はサラ金に苦しむ個人債務者を救済するため、債務の一部免除を促す目的で立法されたものですが、これまでに多くの法人も利用しています。

 

なお、中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律(通称:中小企業金融円滑化法)が平成25年3月末日に終了したことへの対応策として日本弁護士連合会が「金融円滑化法終了への対応策としての特定調停スキームの手引き」を平成25年12月に策定しており、平成26年12月には「経営者保証に関するガイドラインに基づく保証債務整理の手法としての特定調停スキーム利用の手引き」を策定しています。さらに、平成29年1月には「事業者の廃業・清算を支援する手法としての特定調停スキーム利用の手引き」を策定しています。

 

2019年11月20日(水) 中小企業再生支援協議会

経営不振に陥った中小企業の再生を支援する機関として中小企業再生支援協議会が全国に設立されています。

これは中小企業の再生を進めるために産業活力再生特別措置法に基づき各都道府県に設置された組織で、中小企業の特性を踏まえつつ常駐する専門家が再生に関する相談や再生計画策定支援を行っています。

多くの場合、商工会議所が事務局になっています。経営改善計画を作成しても、債権を持っている金融機関の合意を得られなければ計画は実行できません。

 

中小企業再生支援協議会による解決は私的整理手続であり、強制力はなく、多数決で決することはできません。すなわち、同意が得られない対象債権者を拘束することはできず、したがって、一部の対象債権者の同意が得られないときは再生計画が成立しないところに限界があります。

 

2019年11月07日(木) 各種制度の利用

私的整理による事業再生は裁判所の介入を求めることなく、個々の債権者と債務者が相対的に話し合うものです。あくまで当事者の話し合いですので、その方法は自由です。しかし、客観性や公平性を確保するため、様々な制度が用意されています。

 

下表は日本弁護士連合会のホームページで紹介されているものですが、債務者の規模と、それに見合う制度が整理されています。中小・零細企業の事業再生は中小企業再生支援協議会や特定調停が守備範囲とされています。

実際には、わざわざ中小企業再生支援協議会や特定調停のスキームを利用するまでもなく、相対的な話し合いで解決してしまうのが大半です。

負債総額

年間売上

主な私的再生手法

主な法的再生手法

50億円以上

100億円以上

事業再生ADR

地域経済活性化支援機構

私的整理ガイドライン

会社更生手続

民事再生手続

10億円~50億円

20億円~100億円

中小企業再生支援協議会

地域経済活性化支援機構

民事再生手続

1億円~10億円

3億円~20億円

中小企業再生支援協議会

特定調停

民事再生手続

1億円以下

3億円以下

特定調停

民事再生手続

(日本弁護士連合会のHPより抜粋・引用)

 

2019年11月02日(土) 違法性を問題にしない状況も大切

事業再生はあくまでも法律の範囲内で行われるべきものです。違法行為は厳に慎まねばなりません。たとえば二重契約によって債権者を欺くようなことは控えるべきです。

 

もそも、違法行為が問題になるのは、違法行為を問題にする誰かがいるからに他なりません。違法行為を行わない以上、そもそも違法性は問題にはならないはずですが、仮にグレーゾーンの行為があった場合に抵抗勢力がいると問題になるのです。抵抗勢力が事を荒立てる場合もあるからです。したがって、違法性を問題にするような抵抗勢力を作らないことが重要になります。

 

グレーゾーンはあくまでグレーであり黒ではありません。

債権者を始めとした利害関係者が積極的に合意し、あるいは消極的に黙認してくれるならば、第二会社による事業再生にクレームが生じる余地がありません。まとまりかけた計画を潰すようなことは債権者も望んでいないからです。

このように考えると、違法性が議論とならないような状況を作り上げておくことも大切だという事ができるでしょう。

 

2019年10月27日(日) 会計事務所に期待されること

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第63回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「会計事務所に期待されること」で、その要旨は次の通りです。

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要旨:

今回は、事業再生にあたって会計事務所に期待されていることを具体的に明らかにします。さらに、企業経営者に課せられた社会的使命についても考察を加えます。

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(1)会計事務所の先生の場合は「tvs会員」になる必要があります。
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(2)企業の経営者の場合は「GOODWILL PLUS会員」になる必要があります。
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多くの有益な情報を入手できますので、入会することをお勧めします。
私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。

 

入会にあたってはお近くの(株)ミロク情報サービスの営業拠点にご連絡ください。営業拠点は下のアドレスから検索できます。
http://www.mjs.co.jp/office/tabid/479/index.php#no2

 

2019年10月20日(日) 会社分割で第二会社に移す

会社分割とは会社が事業に関して有する権利義務の全部または一部を他の会社に包括的に承継させることをいいます。

会社分割の制度に従えば何でも良いというものではなく、詐害的会社分割(会社法764条)や、会社分割無効の訴え(会社法828条)には注意する必要があります。

 

会社分割により事業を再編しても、新しい会社がその事業を行うにあたって必要な許認可が承継されるか否かは別問題です。大別すれば、届出すら不要な事業、届出だけは必要な事業、改めて許認可を得る必要がある事業ということになります。さらには許認可がなければ会社分割すら認められない場合もあります。事業の形態には様々なものがありますので、個々のケースは主務官庁に照会することが必要になります。

 

2019年10月15日(火) 事業譲渡で経営を継続する

事業譲渡とは一定の事業目的のために組織化された有機的一体として機能する財産(事業財産)の譲渡であり、譲受人が事業活動を承継し、譲渡人が21条の競業避止義務を負う契約とされています。

 

事業再生にあたって、順調な経営ができている部分を第二会社に移転することで新たな会社が事業を継続するわけです。資産価値を超過した部分は営業権として評価されます。

事業譲渡により事業の再生を図る場合、大きく分けると、譲渡会社と譲受会社間の利害関係の調整の他、株主に対する調整、債権者に対する調整が必要になります。従来の会社に対する債権者が第二会社に対して従来の会社の債務を求めることはできないこと、取引行為であり資金確保が必要になることは資産譲渡の場合と同様です。

 

2019年10月08日(火) 資産譲渡で財産を保全する

資産譲渡は、全くの第三者たる別法人を設立し、この法人が不動産のような純資産を譲り受けるものです。

たとえば、企業が営業危機に直面した場合に、業績の良い事業部門を業績不良の事業部門と切り離し、業績の悪い部門を潰してしまう方法が考えられます。この方法は業績の良い部門だけをつまみ食いするというものですので、負債を残して業績の良い部門だけを第二会社で引き取る形になります。

第二会社は従来の会社とは別の独立した法人ですので、従来の会社に対する債権者が第二会社に対して従来の会社の債務を求めるわけにはいきません。

 

第二会社に資産や事業を譲渡するということは、これらを第二会社に売買するという取引行為です。したがって、金銭の授受は不可欠な要素になり、これに必要な資金を調達しなければなりません。抵当権が設定された資産である場合は、債権者の理解と合意を得たうえで抵当権を消滅し、その後に第二会社に移すことになります。

 

2019年09月29日(日) 債権者破産の申し立て

債権者にしてみれば、債務者が自ら破産申し立てすれば償却できるので、時として自己破産を勧めてきます。というのも、債務者が破産手続を行ってくれれば、裁判所のお墨付きを得る形で「回収不能」が明らかにされるからです。したがって、債務者が破産の申し立てを行うことは、債権者にとってはありがたいことでもあるという側面を持っているのです。

 

債権者にとって破産がありがたいならば、債権者が勝手に債務者の破産を申し立てれば良いのです。一定の要件を満たせば、債権者が債務者の破産を申し立てることも可能です。いわゆる債権者による破産申し立てです。

しかし、破産申し立てを行うにも予納金が必要になるのであり、この金を出してまで破産を申し立てる価値があるのかを考えてしまうのが実情です。その点、サービサーのような債権を新たに購入した立場の新債権者にとっては、まさに経済合理性だけが判断の基準です。破産を申し立てることで債務者の財産を白日の下にさらし出し、その結果、回収額が最大化になるのであれば、躊躇なく破産を申し立ててきます。

 

破産をちらつかせ債務者に揺さぶりをかけるという目的もあります。ちょうど、競売を申し立てることで揺さぶりをかけるのと同じです。

破産にしても競売にしても、取り下げができるので、取り下げを条件にして債務者を追い込むわけです。多くの場合、何かの資産を隠匿している債務者は屈服します。それでも債務者が要求に応じない場合には、債権者としては粛々と手続を進めれば良いというわけです。債権者による破産申し立ては、究極の回収手段であるといえるでしょう。

 

2019年09月24日(火) 会計事務所の信頼性

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第62回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「会計事務所の信頼性」で、その要旨は次の通りです。

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要旨:

法的に専門能力を認められている会計事務所は、無資格・無責任な偽専門家とは信頼性が大きく異なります。その信頼性こそ、職業会計人たる会計事務所に求められるのであり、着実性・確実性を重視することが重要なのです。事業再生にあたって会計事務所の信頼性は極めて高いといえます。

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会員は(1)会計事務所向けと(2)企業経営者向けに分かれています。

 

(1)会計事務所の先生の場合は「tvs会員」になる必要があります。
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(2)企業の経営者の場合は「GOODWILL PLUS会員」になる必要があります。
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多くの有益な情報を入手できますので、入会することをお勧めします。
私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。

 

入会にあたってはお近くの(株)ミロク情報サービスの営業拠点にご連絡ください。営業拠点は下のアドレスから検索できます。
http://www.mjs.co.jp/office/tabid/479/index.php#no2

 

2019年09月20日(金) 債権の償却手続

債権者としては、いわゆる不良債権を片付けなければならないという大きな課題を背負っています。いつまでも不良債権を抱えているわけにはいかないのです。債権者にとって不良債権を片付けるとは、実務的には無税償却を行うことでもあります。

 

この無税償却にあたっては、債権が全額回収不能かどうかの判断を行うことになります。最終不能額を判定するためには、個々の債務者の実態調査を行い、担保余力、債権回収見込額等を把握する必要があるのです。具体的には、次のような調査が行われます

ⅰ、債務者が事実上倒産しており会社実態がなく、所有資産や収入からの回収ができない

ⅱ、不動産・有価証券等の担保はすべて処分している

ⅲ、手形支払人からの回収ができない

ⅳ、保証人の支払能力がない

ⅴ、債務者の返済能力がない

ⅵ、その他回収の手段がない

 

さらに、不動産等の担保処分をすべて行った後でなければ、直接償却はできないとされています。なぜならば、直接償却は貸出金全額が回収不能と認定されなければ実施できないからで、貸金等の一部償却は認められていないためです。

保証人がいる場合も同様で、保証人の資産・収入の両面を調査して、いずれからも回収ができないことを疎明する必要があります。

このように、まず間接償却を実施し、将来担保物件が任意処分、または競売により処分された時点で、債務者・保証人の資産・収入の現況から判断して、今後まったく回収ができないことを疎明して、はじめて直接償却を実施することができるのです。

 

このような作業は、実務上の大きな問題になっており、たとえば小額債権の場合には、費用対効果から回収管理業務に真正面から取り組むことができず、後回しになってしまうのが実情です。

 

2019年09月15日(日) 会社分割無効の訴え

会社分割が行われると、従来の会社は分割会社として残り、分割の結果できる新しい会社は承継会社となります。

分割会社の債権者は、分割会社が移転した純資産の対価を取得して責任財産は変勤しないため、異議を述べることができません。しかし、自己の債権が承継の対象に含まれ、分割後に分割会社に対し債務の履行を請求できない債権者にとっては、債務者の交替という重大な影響が生じるため、異議を述べることができます(789条1項)。また、承継会社の債権者は、承継会社の責任財産に変動が生じ、債権回収が困難となる可能性があるため、常に異議を述べることができます(799条1項)。

 

この異議を述べることができる債権者は分割を承認しなかった債権者となり、会社分割無効の訴えを提起することができるとされています。

たとえば、会社分割の手続に瑕疵があった場合などには、会社分割無効の訴えが提起される危険がありますので注意が必要です。この訴えは分割の日から6か月以内に提起する方法によってのみ可能な制度で、株主、取締役、監査役、清算人、破産管財人の他、分割を承諾しない債権者すなわち債権者保護手続で異議を述べた債権者も提起することができます。

 

分割計画書又は分割契約書の作成を怠ったり、必要的記載事項の虚偽記載や記載漏れも無効原因となります。さらには、備置きを怠ったり、承認決議に瑞庇があったり、債権者保護手続を行わなかった場合も同様と考えられます。

債権者を出し抜くような形での事業再生は将来に禍根を残しかねません。債権者の合意を得ることで抵抗勢力を極力作らないようにすることが肝要です。

債権者を害することを知って会社分割を強行した場合の責任が764条で新設されました。すなわち、「残存債権者を害することを知って新設分割をしたことを知ったときから2年以内に請求すれば(6項)、承継した財産の価格を限度として債務の履行を請求できる(4項)」と規定されています。資産を安価で移転するような詐害的会社分割を防ぐというのが立法の趣旨です。

 

2019年09月01日(日) 法人格否認の法理の適用

ある法人を隠れ蓑にして個人が責任を逃れるような場合に、その法人格を否認して、背後に隠れる個人あるいは別法人の責任を追及するための法理が、法人格否認の法理と呼ばれるものです。

具体的には、ある法人と個人あるいは別の法人とが実質的には同一であるにもかかわらず契約締結をある法人が行い、実際の債務履行の段階になって個人と法人は別の人格であるとして債務を逃れるような場合に、背後に隠れる個人あるいは別の法人の責任を追及する場合に適用されるものです。

 

この法理が適用されるのは、法人格が形骸化している場合と、法人格を乱用している場合があります。形骸化の場合とは、社員が存在しない、会社資産と個人あるいは他の法人の資産の混同がある、経理処理も混同している等の事実を主張・立証することになります。また、乱用の場合とは、従業員が同一である、取引先も同一である等の事実を主張・立証することになります。

 

債権者が法人格を否認して個人の責任を追及する場合、個人を相手として債務の履行を請求し、その請求の理由として法人格否認の法理を主張します。

法人格否認の法理は一般条項としての規定であり、どのような場合にかかる法理が認められるかについては、個々のケースにより裁判所が判断することになります。

 

2019年08月25日(日) 商号続用責任の追及

第二会社に資産や事業を譲渡するのは自由ですが、債務の移転には債権者の個別的同意が必要となります。債務者が変更になるのは債権者にとって重要な問題なので個別の合意が求められているのです。個別合意が要件ですので、それ以上の保護は不要ですので、債権者異議手続が置かれていないのです。

ただし、野放しになっているわけではなく、商号を続用する場合、または、会社が債務引受けの広告をした場合は、債権者の利益保護のため譲受会社にも請求ができるとされています(22条1項、23条1項)。これが商号続用責任です。

 

一般の商人が営業を譲渡する場合には「営業譲渡」という用語が用いられ、会社については「事業譲渡」として、両者を区別しますが、会社法が制定される前は、一般の商人だけではなく会社についても「営業譲渡」という用語が使われていました。

事業譲渡において従来の商号を続用する場合、外見上は同一に見えるため取引関係に入った第三者を保護する目的で、譲渡人の営業上の債務について譲受人も責任を負うとされているのです。もっとも、商号続用の場合でも譲渡人の債務について責任を負わない旨の登記をすることで譲受人は債権者一般に対して責任を負わないこともできます。さらに、譲渡人と譲受人が特定債権者に通知した場合には、その債権者に対して責任を負わないことになります。

 

事業譲渡の場合に譲受人が債務も負う旨の広告をしたような場合には、その外観的な事実を信じた者を保護するためにも、事業の譲受人に責任を負うことになっています。この場合の広告とは「事業を譲り受けた旨」の広告のことです。さらに、取引先に対する挨拶状も場合によっては広告ととられる危険があります。

事業の譲受人が、事業の譲受に際し、広告や事業譲渡人の取引先に挨拶状を出すときに事業譲渡人の債務を引き受ける旨の記載をすると、事業譲渡人の債権者は事業譲受人に対して支払いを請求することができるというわけです。この「債務を引き受ける」というのは、必ずしも「債務引き受け」という記載がなくても、事業譲渡人の債権者が事業譲受人が事業譲渡人の債務を引き受けたと信ずるようなものであればこれに該当するとされています。

実際、裁判で争われた例で、第一審と第二審で判断が分かれたことすらあるのです。したがって、このような広告や挨拶状を出すにあたっては、債務の引き受けはしていない旨を明記しておくなどの配慮も必要になります。

 

2019年08月14日(水) 取締役の第三者責任の追及

会社法429条では取締役等の第三者に対する損害賠償責任が規定されています。

悪意または重大な過失によって第三者の損害を与えた場合に、取締役等は個人として損害賠償責任を負うという規定です。本来であれば役員等と第三者は直接の法律関係には立たないのであり、個人として責任を負うものではないのですが、株式会社の社会的重要性と、会社における役員等の重要性に鑑み、第三者を保護する観点から特別に法定された損害賠償責任です。

 

会社からの回収が困難になった債権者としては、役員等の個人資産から回収しようとするのは当然のことです。悪意または重大な過失によって借入金の返済が不能になったような場合であれば、個人的に連帯保証はしていないと安心することはできないというわけです。

 

2019年08月12日(月) 各種無効の訴え

債務者が債権者の回収を妨げるような行為を行っても、その行為が違法であるならば、債権者としては様々な無効の訴えで対抗することになります。民法の規定である無効・取消だけではなく、会社法では様々な無効の訴えを規定しています。

会社法第二章の第一節は会社の組織に関する訴えを規定しています。

ただし、提訴権者の制限もあり、たとえば会社設立無効の訴えでは債権者は提訴権者ではありません。あらゆる無効の訴えができるのではありませんが、第二会社を利用した事業再生に関しては、会社分割無効の訴え(828条)や、株主総会等の決議不存在または無効の訴え(830条)等が問題になります。

 

2019年08月06日(火) 債権者代位権

民法の規定として債権者代位権という債権者の権利が認められています(民法423条)。これは債務者が自らの権利を行使しない場合に、債権者が債務者にかわって債務者の権利を行使することが認められるという制度です。

その目的は債務者の財産保全であり、たとえば債務者が時効中断の手続をしない場合とか、移転登記を行わない場合などに、債権者が債務者になりかわって債務者の権利を行使することが認められるのです。

 

この他にも、取引先や関連会社に対して債権を有しているにもかかわらず、その回収をしようとしない場合に、債権者が債務者に代わって債権回収を行い、その結果として回収した金銭を自己の債権に充てるということも考えられます。

 

これは債権者の権利として認められているものですが、そもそも債務者が自己の権利行使すらしない場合を想定した規定です。債権者の理解と協力を得て企業を債権する立場にある債務者としては、債権者に債権者代位権を行使させるようであってはなりません。このような場合には債権者の理解と協力を得られるべくもないからです。

 

2019年08月01日(木) 詐害行為取消権(債権者取消権)

民法の規定として詐害行為取消権(債権者取消権)が認められています(民法424条)。

これは、債権者への債務返済の原資となる債務者の財産を保全し、債権者平等の原則に従い債権を回収するために認められている制度で、債務者の財産を不当に減少させる債務者の行為の効力を取り消して財産を債務者の基に取り戻すというものです。この権利は裁判上でしか主張することはできません。

 

債務者が、ある債権者の権利を害する行為を行った場合、債権者は詐害行為取消権に基づき裁判を提起することになります。取消しの対象となる財産が不動産であれば、債務者への返還を求めるのですが、金銭であれば直接債権者に支払うよう求めることも可能です。金銭の返還を求める場合は、結果として訴訟を起こした勤勉な債権者が独占することになるわけです。不動産が債務者から受益者を経て転得者に移転しているときは、債権者は受益者に対する損害賠償、転得者に対する不動産返還のいずれも請求できることになります。

 

たとえば、ある債権者が他の債権者に抜け駆け的に債権の回収を図る事で債務者の債権を不当に減少させ、他の債権者に損害を与えた場合などに詐害行為取消権が行使されることになります。債権者Aが債務者と通謀して債権者Bの債権回収を逃れるために期限前に債権を回収したり、債務者が担保不動産を売却して金銭に換えてしまった場合なども具体例として考えられます。

 

個々の事例毎に詐害行為が認定されることになるわけですが、債務者が一部の債権者と通謀して他の債権者を害するような財産処分を行った場合は詐害行為が成立すると考えて良いでしょう。

 

 

2019年07月26日(金) 債権者の本気度

債権者との交渉にあたっては、債権者の「本気度」を見極めることが必要です。

 

たとえば差押さえを例にとります。債権者が本気で債務者の息の根を止める覚悟、すなわち破産させてもやむなしと考えているとします。この場合には債務者のメイン口座や事業用資産を差押さえたりしてきます。ところが、債務者の息の根を止めるのが目的ではなく、揺さぶりをかける目的であれば、たとえば自販機の売り上げ代金が振り込まれる入金口座に対し、売上債権を狙って仮差押さえをしてくるなどの小細工をすることがあります。この揺さぶり策は、取り下げを念頭に置いた競売申し立てでも使われます。

 

もし債権者が債権者破産の申し立てをするような話を始めたら要注意です。債務超過を理由に債権者破産を申し立てる危険が迫っているかもしれないからです。債権者が破産を申し立てるのは、破産手続で全てを白日の下に引きずり出すことが目的です。この場合でも担保権を有している債権者は強い立場にあります。担保の範囲で優先的に回収可能だからです。担保権者はどのような場面でも強い立場にあるのです。

一方、無担保債権者も厄介です。担保も無く、失うものが無いから強いのです。債務者が破産する危険が高いとしても、その危険をあえて冒してでも回収を強化してくることもあるのです。まさに、無い袖は振れない債務者が強いのと同様、担保の無い債権者も厄介なのです。

 

このように、債権者の本気度を確認する糸口としては、「回収のためにどのような行動をしているか」という点で推し量ることができるのです。

 

2019年07月16日(火) 競売

担保不動産を処分して一括回収を進める場合、金融機関としては債務者の協力により任意売却できればそのほうが良いのです。一般に、競売で処分するより任意売却の方が高く売れるので、経済合理性が肯定されるからです。

しかし、どうしても任意売却に応じない場合や、価格の客観性が確保されない場合には競売による換金が選択されることになります。多くの場合、抵当権に基づく競売処分となります。

 

抵当権者であれば誰でも競売を申し立てられるわけではありません。競売で入札がなされた場合に、配当が期待できる範囲の先順位抵当権者でないと有効な競売を申し立てることはできないのです。

正確に言うならば、配当が期待できないような後順位抵当権者が競売を申し立てても裁判所の職権により「無剰余取消」の処分がなされることがあり、この場合、競売は中止になってしまうのです。費用をかけて競売を申し立てても職権で取り消されるくらいならば、税所から申し立てることを控えるというわけです。

 

2019年07月12日(金) 仮差押えの効果

債務者は、銀行預金債権について仮差押えがなされてしまうと、預金を引き出せないのはもちろんのこと、銀行融資の返済について期限の利益を喪失し、銀行融資の一括返済を迫られるばかりか、倒産に追い込まれてしまうおそれさえ出てきます。

 

このような仮差押えが実務上多く使われている理由は、仮差押えがなされれば債務者もしくは先順位抵当権者が任意売却することを防止するだけではなく、債務者に心理的圧力を加えることもできるからです。また、手続自体は簡単であり、わざわざ弁護士に頼まずとも、担当者レベルで行うことができるので実務上多く行われているのです。

仮差押えには二つの目的が考えられます。一つは、金の流れを断つことであり、もう一つは、資産処分の道を断つことです。どちらも兵糧攻めのようなものということができます。債権者として、本当に債務者を「殺す」ことも厭わないならば、仮差押えではなく、競売や破産申し立てによる回収を選択するはずです。換言すれば、「殺したくない」から仮差押えの道を選ぶのです。回収手順でいえば、初期あるいは軽微の方法といえるでしょう。

 

仮差押えの場合は、対象となった資産の処分ができないわけではありません。しかし将来、仮差押えから差押えになったとき、仮差押え後に取引先から資産を取得した者に対して、優先して差押えの効力を主張できます。したがって、資産を取得したところで、将来権利を失うかもしれないので一般的には仮差押えがなされている資産を取得しようとする者は現れないのです。

 

2019年07月05日(金) 仮差押えの手続

債務者が返済をしない一方で、返済の原資になるような財産を処分しようとしている場合などに、裁判所に対して債務者の財産を仮に差押えるよう申し立てることを仮差押えといいます。これは将来において強制執行をするために、債務者の処分権を制限することで債務者の財産の現状を保全するという制度です。債務者の口座を凍結する場合にも利用されます。

 

仮差押え命令は、債権者の申し立てにより裁判所の決定で行われるのですが、仮差押え命令の申し立てがされたことが債務者に知られてしまうと、債務者が急いで仮差押えの財産を処分してしまうおそれがあります。そこで、債務者に知られないように行う必要があるのです。

 

債務者にしてみれば、財産の処分が事実上できなくなるし、債権であれば支払いを受けられないことになります。たとえば銀行口座でいえば、口座からの引き出しができなくなるというわけです。債務者が受けるダメージは大きいため、債務者に対して弁済を促す効果はきわめて大きい方法です。

債権者が仮差押えにより将来の強制執行可能な資産を確保できたとしても、それだけでは債務者の資産を換金することはできません。強制執行をするには「債務名義」が必要になるのです。債務名義には、債務者との合意により公証役場で作成する公正証書や、裁判で合意した場合に作成される和解調書等がありますが、債務者の協力が得られない状態となった後は、訴訟を提起して判決を得て判決書を債務名義とすることになります。

 

2019年06月28日(金) 資産査定のあり方

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第61回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「資産査定のあり方」で、その要旨は次の通りです。

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要旨:

これまで金融機関の資産査定は金融検査マニュアルに基づいて実施されていました。金融機関の資産査定が大きな岐路にさしかかっています。今回は、従来の資産査定の問題点を洗い出し、今後のあるべき姿を整理します。会計事務所としてどのように関与すべきかについても考察を加えます。

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記事を読むにはミロク情報サービスの会員になる必要があります。
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(1)会計事務所の先生の場合は「tvs会員」になる必要があります。
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多くの有益な情報を入手できますので、入会することをお勧めします。
私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。

 

入会にあたってはお近くの(株)ミロク情報サービスの営業拠点にご連絡ください。営業拠点は下のアドレスから検索できます。
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2019年06月23日(日) 期限の利益の剥奪

決められた期限までは返済しなくても良いという権利のことを期限の利益と呼びます。「期限の利益は債務者にあり」といわれるように、債務者にとっての利益であり権利です。期限の利益の剥奪とは、債務者から期限の利益を奪うことです。

 

期限の利益を失うと、債務者は借入金など全ての債務を全額直ちに返済しなければなりません。債務者に重大な影響が生じますので、どのような場合に期限の利益を失うかは法定されています。民法137条では債務者が期限の利益を失う場合として、破産、担保の滅失等、担保提供義務の不履行の三つが定められています。

金融機関にとっては、民法の規定のみでは不十分なため、銀行取引約定書において期限の利益喪失条項を定めています。この条項は、債務者がその信用を損なうような一定の事実が生じた場合に、期限の利益を喪失し、債務者が直ちに全額を弁済しなくてはならなくなる特約です。

 

これには一定の事実が生じれば自動的に期限の利益が失われる「当然喪失」と、金融機関が期限の利益の喪失を請求した場合に期限の利益が失われる「請求喪失」の二種類があります。

(1)当然喪失となる一定の事実とは、 次のような場合です。

・破産、民事再生手続開始、会社更生手続開始等の申し立てがあったとき

・手形交換所の取引停止処分を受けたとき

・弁護士等へ債務整理を委任したとき、自ら営業の廃止を表明したときなど、支払を停止したと認められる事実が発生したとき

(2)請求喪失となる一定の事実とは、 次のような場合です。

・債務者が債務の履行を一部でも遅滞したとき

・担保物件に対して差押えまたは競売手続の開始があったとき

・保証人について上記のような事実が生じたとき

 

実際にどちらの約定になっているかは、金銭消費貸借契約を締結した際の契約書で確認することになります。

金融機関としては当然喪失の場合は何もせずとも債務者の期限の利益はなくなりますが、請求喪失の場合には債務者に対し、「期限の利益を喪失したので一括して返済すべし」という請求をすることになります。いわば、「宣戦布告」にあたるといえるでしょう。

 

2019年06月16日(日) 時効による債権消滅

サービサーとの返済交渉が決裂し競売がなされました。競売により回収が債権者として最後の回収となり、債権者は放置したまま5年が経過しました。

債権の消滅時効が成立したので、債務者はサービサーに連絡したところ、「入金記録があり、返済を受けているので時効は中断している」と反論されてしまいました。サービサーの一方的な事実無根の主張でした。当然に事実の証明はできないものであり、サービサーの監督官庁である法務省にクレームを入れたところ、数日後にサービサーから詫びが入り、債権の消滅時効が認められました。時効中断手続を怠るという、債権者の債権管理ミスの典型例だったのです。

 

消滅時効は債務者が援用して初めて効果を生じます。何もしないと債権は消滅しません。

一方で、債務者が一部弁済を行ったり、債務の承認を行ったりすると時効の進行が中断していまいます。せっかく5年の期間が経過し、消滅時効にかかっているのにもかかわらず、取り立てに来た債権者にいくらかを支払ったために時効が中断してしまうということもあり得る話です。

このような時効の中断は、「債務者側の債権管理ミス」ということができますが、より単純な話として、「債権者側の債権管理のミス」が生じる場合があります。回収を怠り、時効にかかってしまうというものです。まさに初歩的なミスです。

この例にもあるように、債権者による債権回収の懈怠が発生するのは、競売などで大きな回収を行った後や、サービサーへの債権譲渡が行われた後に発生することが少なくないようです。いわば大きな回収を行った後、そのまま債権管理を放置したために時間が経過してしまうというわけです。債権者としては、いくらかの一括返済を受けて残債権の放棄をすれば良いものを、残債権の時効が成立した後になって、債務者から時効の援用があって初めて債権の回収漏れに気づくというわけです。これでは回収額を下げてしまうことになります。まさに債権者側の失敗というわけです。

この例では、サービサーが嘘を並べて時効中断を主張してきました。もちろん、中断事由が生じたことは債権者が立証しなければなりませんので、無駄な抵抗に等しいのです。監督官庁にクレームを入れたところ、サービサーは数日で非を認めてきました。

最近はこのような極端な例は見受けられないようですが、サービサーの目に余る行為については監督官庁にクレームを申し立てるというのも有効な方法です。

 

2019年06月05日(水) 担保漏れ

金融機関が地元の銀行と都市銀行の2行の例でした。

都市銀行は一部の土地に抵当権を設定しておらず、抵当権の設定がなかった部分には、地元の銀行が抵当権を設定していました。その後、都市銀行はサービサーに債権譲渡を行い、サービサーが競売を申し立てました。ところが、抵当権の設定漏れがあったため、サービサーとしては一部の土地から回収ができなくなってしまったのです。

 

不動産の競売が行われる場合、抵当権に基づく競売の申し立てが一般的です。金融機関としても債権保全を図るため、融資にあたって担保を求めるからです。

しかし、抵当権があれば常に競売を申し立てられるものではありません。たとえば、不動産を競売により処分して100の回収が期待できる場合に、第一順位の抵当権者が100以上の抵当権を設定していれば、後順位の抵当権者には配分がなされません。これを無剰余と呼びます。

競売をしても配分が期待できないなら、そのような抵当権者は競売を申し立てる利益がないので、競売を申し立てたところで、その競売手続きは取消となってしまいます。裁判所の職権で無剰余取消として取り消されるのです。したがって、無剰余となるような無剰余の抵当権者は脅威ではないということになります。

この例では一部に剰余がありませんでした。無剰余なので取消になるのか、あるいは不動産を一体として把握することで競売が続行されるのか裁判所とも協議した結果、競売続行となりました。競売は続行になったものの、抵当権の設定漏れの部分については都市銀行には配分されず、地元の銀行に配分されたことは言うまでもありません。

実際のところ、抵当権の設定漏れは散見されます。債権管理の初歩的ミスということができます。このような場合には、他の債権者が抵当権を設定することが考えられます。いわば他の債権者の抵当権によって守られるという形になるのです。

 

2019年05月30日(木) リスケではなく債権放棄を求めて話がこじれた例

金融機関の論理を知らない弁護士なのか、あるいは自己の報酬を確保するため私的整理ではなく法的整理を選択したのかもしれません。理由は不明ですが、明らかに債権者にとっても債務者にとっても経済合理性が成り立たない法的整理を選択した例があります。

 

金融機関の実務を知っていれば、債権放棄が通らないことを分かったはずです。

ましては粉飾決算を行っていた事例ですので、このような案件で債権放棄を行うことは経済合理性が成り立たないばかりか、金融機関としては無税直接償却の道が確保できない事案でした。

リスケで解決できるケースなのに下手な交渉を始めてしまったために話がこじれてしまったのです。

 

経営者にしてみればリスケより債権放棄の方が良いに決まっています。返済額が減るからです。弁護士にしてみれば、私的整理ではなく法的整理に持ち込むことで合法的に資産を売却させ、弁護士報酬を確保できます。資産の売却を伴わないリスケよりも合理的というわけです。

 

債権放棄を安請け合いし、会社更生法だ、M&Aだと、経営者の望まない方向に進んでしまっても、弁護士は痛くも痒くもないのかもしれません。手付金はもらっていますし、今度は、会社更生法、M&Aの案件として手数料を稼ぐつもりだったのでしょうか。

弁護士やコンサルタントは「相談する」相手ではなく、「利用する」相手なのです。

経営者としても、最低限度の知識を得ておく必要があるといえます。

 

2019年05月24日(金) 配分交渉に手間取り買主を失った例

抵当権を設定している債権者と抵当権を設定していない債権者間で、債務者からの回収額の配分を巡って争いになる例は少なくありません。

 

事業を売却することで借入金の返済を計画していた例で、第三者である譲受人は100の買取額を提示してきました。譲受人は不動産を80、営業権を20と評価していたのですが、抵当権を設定している債権者は80では不足するといい、抵当権を設定していない債権者は80では多すぎるといい、配分交渉に手間取ることになったのです。

 

さらには、金額の客観性を確保するため特定調停による解決を求めてきました。何らかのお墨付きがないと債権放棄ができないというわけです。

当然のことながら時間がかかることとなり、譲受人は買受を拒絶してきてしまいました。債権者間の配分交渉が手間取り、買主が手を引いてしまった典型例です。

 

事業再生は債権者と債務者の対立として捉えられがちですが、実際には債権者と債権者の間の対立問題であることが少なくありません。

端的な例が、有担保債権者と無担保債権者の配分交渉です。抵当権を設定している債権者については、不動産を処分した額を優先的に配分します。

その後、債務者から回収した額を無担保債権者が、債権額に応じて按分する形で配分します。

すなわち、不動産処分の額が多いか少ないかという問題は、有担保債権者と無担保債権者との配分交渉の問題でもあるのです。

 

2019年05月17日(金) 金額の客観性と利得の移転

競売手続の中では、裁判所選任の不動産鑑定士が対象不動産の評価を行い、その結果を裁判所に報告します。

その金額を基に裁判所では売却価格を決定します。不動産鑑定士が行う不動産鑑定は基本的な手法は同じですので、どの不動産鑑定士が行っても金額に大差は生じません。ということは、競売手続を行わなくても、不動産鑑定士に鑑定を依頼すれば金額を把握することができるのです。

 

債権者にとっては「なぜその金額で抵当権の消滅に応じたのか」をはっきりと疎明しておく必要があります。安易に定額で抵当権の消滅に応じたのでは、将来において貸倒損失が生じたときに損金処理を否認されかねないからです。よって競売処分による金額の客観性は重要な判断基準になるのです。

 

結果論であると片づけてしまえばそれまでですが、任意売却で示した金額を債権者が拒絶して競売処分に持ち込んだ結果、大幅に低い金額での落札となった例は少なくありません。中には半額近くになった例もあります。最初に提示した金額で債権者が抵当権消滅に応じておけば良かったのに、これを拒絶して競売に持ち込んだために債権者の回収額が大幅に減ってしまったわけです。金額の客観性を重視したために、低い回収額に甘んじることになるという失敗に他なりません。

 

この場合、債務者は競売に札を入れます。低い金額で落札できれば、債務者に利得が生じることになります。いわば債権者が得るはずだった利得が債務者に移ったのです。ただし、債務者としては「落札できるか不確実である」というリスクを負担することになります。入札額の決定、二重入札の実施などの慎重な対応が求められます。

 

2019年05月12日(日) 客観性の無い「高い」金額と、客観性のある「低い」金額

そもそも債権者は多くの債権を抱えており、一つの債権から多くの回収を行うことだけが経済合理性の判断基準ではありません。また、債権放棄をするのであれば、なぜその額で放棄しなければならないのかを明確にしなければなりません。たとえ、結果的に回収額が減ったとしても、それはそれで大義名分が成り立つという意味で経済合理性が認められるのです。とはいえ、何らかの理由により結果的に回収額が減ってしまうという例は少なくありません。

 

抵当権が設定されている不動産を別会社で購入するため、抵当権者に抵当権の消滅を請求したものの拒絶された例は少なくありません。抵当権者に対して抵当権消滅請求をした例で、抵当権者が拒絶して競売を選択したり、あるいは抵当権者自らが競売を申し立てることもあります。

いずれにしても、せっかく債務者が競売ではなく任意売却による高値での購入を申し出たのに、債権者が競売の道を選択するわけです。その結果、低い回収額になってしまうという「金額の失敗」となります。いわば、任意売却という恣意的な処分ではなく、競売という客観的な処分を選択した結果、回収額が少なくなるというものです。

 

不動産を市場で売却する価格(これを正常価格と呼びます)に比べ、競売価格は一般に3割程度低い価格水準になります。競売で処分するよりも任意売却の方が高値で処分できるのです。

しかし、不動産の正常価格がいくらなのか、競売価格がいくらなのかは判然としません。買主が出現して「この金額で買います」と言っても、その金額が妥当なのかは不確実なのです。しかし、競売制度によって不動産を処分したのであれば、その金額は最高の入札額ですので客観性があることになります。

換言すれば、客観性の無い「高い」金額と、客観性のある「低い」金額のどちらを選ぶかという意思決定の問題になるわけです。

 

2019年05月07日(火) リスケではなく債権放棄を求めて話がこじれた例

長年にわたり粉飾決算をしていた経営者が資金繰りに詰まり、金融機関に対して粉飾の事実を公表するとともに返済条件の見直しを申し出たケースがありました。

粉飾の事実を知った金融機関は一応に態度を硬化させたものの、適切なリスケジュールを行うことで回収が可能であると判断するに至りました。ところが突然に出現した弁護士が債権放棄を求めてきたため、金融機関の足並みが乱れ始めたのでした。足並みが乱れ、一部の金融機関が回収に走ったため、全行一致でリスケに応じるとの姿勢を示していた金融機関もリスケを拒否することになったのです。

 

本件は、時間をかけてリスケを行えば返済が可能なケースでした。

粉飾決算を行っていた事実はマイナスの評価であることは事実でしたが、リスケさえすれば全額回収が可能であるため、全行一致で協力すれば正常化も可能な案件だったのです。

しかし、弁護士に「どのような解決を望むのか」を聞かれた経営者は「できれば債権放棄をしてもらいたい」と答えたのです。これを真に受けた弁護士は、リスケによる事業再生を方向転換し、債権放棄を求めて各金融機関と交渉を始めてしまいました。その結果、話がこじれてしまったというわけです。

 

一部の金融機関は競売を開始し、これに対抗するために民事再生法による再生を行い、最終的にはM&Aで身売りするという形になってしまいました。

無能な弁護士による失敗例の一つといえるでしょう。

 

2019年04月30日(火) 事業再生に成功する経営者

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第60回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「事業再生に成功する経営者」で、その要旨は次の通りです。

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要旨:

事業再生のコンサルティングを行っていると、さまざまな人々と出会います。再生を目指している経営者はもちろん、弁護士、会計士、税理士、そして銀行やサービサー、金融機関から債権を譲り受けた新債権者などです。まさに十人十色なのですが、再生に成功する経営者には共通点があるように感じます。今回は事業再生に成功する経営者に共通する点について明らかにします。

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(1)会計事務所の先生の場合は「tvs会員」になる必要があります。
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多くの有益な情報を入手できますので、入会することをお勧めします。
私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。

 

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2019年04月21日(日) 無担保不動産を資産譲渡して新債権者の要求に屈した例

収益用不動産を取得するとき、多くの場合に金融機関からの融資を受けます。このとき、当然ながら金融機関は抵当権を設定します。その不動産に抵当権をつければ十分であり、他に不動産があるとしても、それらには抵当権を設定しないことも少なくありません。

担保価値が低い場合には追加担保の提供を求められますが、債権が保全される範囲での追加担保を求められることがあっても、すべての不動産に抵当権が設定されるわけではありません。

 

ある債務者は複数の事業用不動産を持っており、抵当権を設定していない他の不動産もありました。金融機関からは、これら抵当権のついていない不動産を売却して返済するように求められていました。

ところが債務者はこれを無視し、債権者の度重なる要求を巧みにかわし、抵当権付きの不動産を別会社に移すときに抵当権が設定されていない不動産も一緒に移してしまいました。債権者は抵当権抹消に応じたのですから納得したように見えますが、そうではありません。債務者が債権者を押し切る形で移転を強行したのです。

 

債権者は債権譲渡をする都合上、とりあえず抵当権の抹消には応じたものの、抵当権がない不動産を売却すべしとの要求を撤回したわけではありませんでした。

問題はその後に発生しました。債権譲渡が行われ、出現した新債権者が強硬な要求をしてきたのです。すなわち、抵当権がついていないことを良いことに、不動産を別会社に移転したのは詐害行為だと主張してきたのです。

新たに出現した債権者の執拗な要求は強硬でした。詐害行為取消権を行使するだけではなく、債権者による破産申立もちらつかせながら、債務者を揺さぶってきたのです。最後には債務者が白旗をあげる形になりました。まさに、新債権者の粘り勝ちです。結局、別会社に移した抵当権のついていない不動産の多くを売却し、新債権者に返済することになりました。

現債権者への根回し不足と、新債権者の要求に耐えられなかったという債務者の弱さが問題だったと言えるでしょう。

根回し不足のまま安易に別会社に移転してしまった後、大騒ぎをした例でしたが、後の祭りだったというわけです。

 

2019年04月13日(土) 債権者には理解と協力を求めるべき(2/2)

すべての弁護士にあてはまるわけではありませんが、時として悪質な弁護士は依頼者の資産を売却させるように誘導します。売却により資金を確保し、その中から自らの報酬を確保するのです。私的手続で資産を売却すれば債権者に返済すべきところ、法的手続の一貫として資金を作ったのであれば、弁護士報酬を確保できるからです。

 

確かに、債権者への返済が増えれば債務者の内部留保は減るのですから、債権者と債務者は一つのパイを奪いあうという、利益が相反する関係にあるとも言えます。しかし、債権者と債務者が協力し合うことでパイを大きくすることができれば、結局はお互いの取り分は増加するのであり、この観点からお互いの利益は一致します。

債務者は債権者を刺激してはならないのです。債権者に協力を求めるためには、頭を下げてお願いするべきなのです。特別の計画に従って返済を停止するのは良いのですが、やみくもに返済を停止するのは、いたずらに債権者を刺激するのであり極めて危険な賭けのようなものです。

 

債務者が破産すると収益を計上できないわけですから、債権者も回収額が減少してしまいます。担保処分して回収するしかないからです。それでも債権者は債務者の破産という道を選択しました。なぜならば、債務者が歩み寄るという姿勢を最後まで見せなかったからです。的外れな主張を繰り返し、敵対的な姿勢を貫いているような債務者との話し合いは不可能と判断したのです。

 

債権者には理解と協力を求めるべきです。債権者を敵に回すことは致命的になりますので注意が必要です。債権者と敵対する債務者の末路は破産しかないのです。同じような過ちを繰り返すことが無いように十分に注意することが必要です。

 

2019年04月10日(水) 債権者には理解と協力を求めるべき(1/2)

この事例の債務者は状況を全く理解していませんでした。自ら捲いた種とはいえ、債権者が本気で破産を進めていることに気づかず、的外れな行動を取ったのです。これが債務者の第一の間違いでした。

その一方で、債務者は民事再生法による再生手続の開始を申し立てました。新たに債務者が選任した代理人弁護士は「債権譲渡を争ったり時効主張したのは間違いであった。債権者の協力を得ながら再生を図りたい」との方針転換を申し入れてきました。

遅ればせながら、やっとまともな姿勢を示したのです。

 

債務者は抵当権の目的物である不動産を手放したくないというのが本心でしたが、債務者の代理人である弁護士は「債務者は不動産を手放すことも考えている」との認識でした。債務者側弁護士の話を受け、債権者は「債務者が不動産を手放すことを条件に民事再生に応じても良い」旨を回答しました。しかし、債務者本人は不動産を手放すことを拒絶したのです。

自らが選任した弁護士は「物件売却する」といい、債務者本人は「物件売却しない」という、相反する主張を行っていて債権者と合意できるはずがありません。

債務者は債権者との交渉においても失敗したのです。これが債務者の第二の間違いでした。

(つづく)

 

2019年04月06日(土) 債務者の失敗

債権者と債務者の回収・返済交渉を通して、お互いの利益が最大化するような形で決着すべきところ、債務者側の失敗で事業再生が頓挫したり、債権者側の失敗で回収の極大化が実現しないようなケースも少なくありません。

債務者側の失敗とは何でしょうか。

 

そもそも債務者は返済義務を負っていますので、借入金の限度内であれば、より多くの返済を行うということは失敗ではありません。返済義務を履行しただけの、いわば当たり前の話です。返済義務をきちんと果たした結果、債務者が破綻しないで済むべきところ、何らかの理由で破綻の憂き目に合ったり、事業再生が実現できなかったようなケースが債務者側の失敗となります。

 

債務者の返済停止が長引き、これが債権者の逆鱗に触れ、債権者が本気で破産を申し立てたことを受け、債務者が「債権者の破産申立は返済を求めるための方便に過ぎないのであるから、そのような破産申し立ては棄却するよう」に裁判所に求めた例があります。

裁判所から破産の開始決定が出されると、債務者は特別抗告で「債権者の行為は商業道徳上の問題がある」とか「債権の一部は消滅時効で消滅している」といった的外れな主張を繰り返したのです。まさに債権者を相手に争う道を選んだのでした。さらに債務者は民事再生を申し立てたものの、結局、裁判所の指定した期日までに債務者と債権者の話がまとまらず、他の債権者も差押えなどの法的手段に訴えることになり、再生の道が閉ざされてしまいました。見守っていた他の債権者が見切りをつけて一斉に動き出したからです。

債権者と争う道を選んだために失敗した債務者の典型例です。

 

2019年04月01日(月) 高崎経済大学での授業が始まります

新元号が令和に決まり、新たな時代への変化を感じます。

4月から高崎経済大学地域政策学部での授業が始まります。授業は「事業再生論」で、同大学が公募していた授業を担当することになった次第です。

 

高崎経済大学は群馬県高崎市に所在する公立大学です。群馬県には国立群馬大学があり、高崎経済大学は高崎市が中心となった公立大学として位置づけられています。学生数は3000人を超えており、優秀な学生が多数学んでいます。

 

昨年も開講されていた授業再生論を私が引継いだ形になりましたが、授業内容は私が完全にリニュアルしました。授業の内容は本ホームページの「▶学会・教育活動」の頁、「(3)事業再生論(高崎経済大学)」として紹介してあります。

 

敬愛大学、愛媛大学での授業も好評を得ている中、高崎経済大学でも理論と実務の融合を目指し、学生にとって有意義な内容の授業を提供していく所存です。

 

2019年03月27日(水) 従来の会社はどうなるのか

第二会社方式で再生が完了した場合、従来の会社はどうなるのでしょうか。そのまま休眠させるという方法もありますし、あるいはきれいさっぱり清算してしまうこともあります。

 

たとえば資産を譲渡した場合に、その代金を分割とする場合が考えられます。もちろん担保に入れた資産の場合には、分割では担保抹消ができないので一括支払いを余儀なくされます。しかし、たとえば営業権のように担保設定になじまない資産の場合には分割もありえるのです。現に私は20年分割とした例も扱いました。

 

分割代金を受けるだけのために旧会社を残すこともあります。この場合は受け取った分割代金で旧会社の残債を返済するというわけです。もちろん、多くの場合に、痺れをきらした債権者が債権放棄や債権譲渡で不良債権の処理を図ってくることになるのですが、それは債権者側の事情であって債務者の立場からは無関係ということになります。

 

一方、全ての資産を移した場合のように収益がゼロになる場合も少なくありません。むしろ、収益がゼロになることの方が一般的でしょう。このような場合、会社は存続不要になるのです。

たとえば父親が旧会社の代表者として会社と運命をともにし、実子に別会社の経営を任せるという形が多いようです。このように事業再生とは、まさに相続対策でもあるのです。

 

2019年03月21日(木) 役員の問題行動により失敗する取締役会

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第59回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「役員の問題行動により失敗する取締役会」で、その要旨は次の通りです。

ーーー

要旨:

財務コンサルティング業務の一環として、筆者は代表取締役の他、取締役や社外取締役として多くの会社の取締役会に関与しています。様々な会社の取締役会を経験することで、取締役会運営の限界を肌で感じてきました。今回は取締役会の会議運営に焦点を当て、役員の問題行動により取締役会の運営が失敗する典型例について問題点と解決策を整理します。

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記事を読むにはミロク情報サービスの会員になる必要があります。
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私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。

 

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2019年03月16日(金) 取締役の責任軽減

会社法は、取締役の責任を強化し会社の利益を保護するために、取締役の会社に対する責任の制度を設けています。たとえば423条1項では、取締役は「任務懈怠があり」「損害が発生し」「相当因果関係がある」場合は、会社に対して、これによって生じた損害を賠償する責任を負うこととされています。

この責任は免除できますが、取締役会等で簡単に免除できるとなると、安易に責任が免除されるおそれがあります。そこで、取締役の責任の免除には総株主の同意が求められます(424条、120条、462条、464条、465条)。

このように、取締役の責任の免除は要件が厳格で免除は困難であり、任務懈怠責任において取締役に高額の賠償責任を負わせたのでは、経営を萎縮させてしまうことになりかねません。そこで、任務懈怠責任については、下記の3つの責任の一部免除制度が設けられています。

 

ⅰ、取締役が職務を行うにつき善意・無重過失であった場合は、賠償責任を負う額から最低責任限度額を控除した額を限度として、株主総会の特別決議によって一部免除できる(425条1項、309条2項)。

ⅱ、一定の会社では、取締役が職務を行うにつき善意・無重過失であった場合で、かつ、特に必要と認められる場合は、事前に定款規定を置いておけば、事後に取締役の過半数の同意・取締役会決議によって一部免除できる(426条)。

ⅲ、業務を行わない取締役や社外取締役等の任務懈怠責任について、職務を行うにつき善意・無重過失であった場合は、一定の額を限度とする旨の責任限定契約を締結できる旨を定款で定めることができる(427条)。

 

とりわけ3点目について、平成26年の会社法改正で大きな変更点がありました。

改正前は取締役・監査役で責任限定契約を締結することができるのは、「社外取締役・社外監査役」に限定されていましたが、取締役については業務執行を行わない社内取締役も対象とされ、監査役は社内外を問わず対象となりました。責任限定契約締結の対象が拡大し、社外取締役及び社外監査役である旨を登記する意味がなくなったため、その旨の登記が廃止されています。ただし、定款においてその旨を定めておく必要があります。

事業再生にあたって第二会社の役員を引き受ける場合、取締役の責任が問題になりますが、このような場合にも「責任限定契約」を締結しておくことでリスクを回避することが可能になったのです。ただし、429条の第三者に対する損害賠償責任の免責ではありませんのでご注意ください。

 

2019年03月11日(月) 取締役の責任

取締役の責任として429条と423条の違いを明確に理解しておくことが必要です。ときどき質問を受けるポイントでもあります。

 

本来、取締役と第三者は直接の法律関係には立ちません。取締役は株式会社の機関であり、内部の人間であるからです。そもそも会社とは別人格なのです。しかし、株式会社の社会的重要性と、会社における役員等の重要性に鑑み、第三者を保護する観点から特別に法定されたのが429条の損害賠償責任です。すなわち、会社外部の第三者に対する責任です。

 

取締役は会社に対しで善管注意義務(330条)および忠実義務(355条)を負い、この義務に違反して会社に損害を与えた場合は、民法上の債務不履行責任を負うとされています(民法415条)。しかし、会社法は、取締役の責任を強化し、会社の利益を保護するために、特別な取締役の会社に対する責任の制度を設けているのです。すなわち、会社内部における責任です。

 

423条の責任は責任限定をする余地がありますが(424条以下)、429条の責任は第三者に対するものであるため事前に免責するということはできません。第三者に対する損害賠償責任を低減するためには、必要に応じて損害保険(たとえば施設管理者賠償責任保険等)でリスクを転嫁しておくことが必要となります。

 

2019年03月05日(火) 第三者が株主や役員になる場合

諸般の事情から全くの第三者が株主や役員になる場合も考えられます。

この場合、将来に禍根を残さないためには当事者間でしっかりと約定しておくことが必要です。株主は一定の条件で株式を移転することになります。たとえば1千万円の資本金であれば1千万円を授受することで株式を移転することが考えられます。しかし、これは必ずしも正しい方法ではありません。というのも、別会社は経営が順調に推移することが当然であり、事件の経過とともに株式価値も増加するからです。

 

別会社を立ち上げたときには10億円の資産に対して10億円の負債があり、その結果、1千万円の資本金も1千万円であるという状態です。しかし、時間の経過とともに返済も進み、当然ながら負債は減り、資本の部の剰余金が増加するわけです。極端な話、時間の経過とともに10億円の返済が完了した時点を想定します。この場合、資本の部は10億円の剰余金を計上しているのであり、もはや株式価値は1千万円ではなくなっているのです。

このような状態になって1千万円で取引を行ったならば、受け取った側には贈与税の課税がなされる可能性もでてきます。したがって、長い間にわたり第三者名義にしておくことは得策ではないというべきなのです。

 

当事者間で株式の譲渡契約を締結しておくことで株式取得の道を確保することは当然です。停止条件をつけておくことも考えられます。役員については後任の役員を確保しておくことも必要です。後任者がなければ前任者は退任できないことになってしまうからです。

このような問題を回避するために、あらかじめ就任承諾書、改印届に捺印を受けておくことが必要になります。この場合、添付書類として印鑑証明書が必要になりますので、3ヶ月ごとに新しい印鑑証明書と差し替えすることになります。

登記に必要な書類を預けるということは、相手が勝手に登記を行うのではないかという心配がつきまといます。しかし、こればかりは回避できない問題です。第三者が株主や役員になる場合には、当事者が信頼できる関係にあることが絶対に必要なのです。もちろん、きちんとした約定も必要です。安易な姿勢では将来に禍根を残すことになるので注意が必要です。

 

2019年02月28日(木) 別会社を第三者名義にすべきなのか

会社法が制定されてから10年以上が経ちました。会社法により別会社を利用した事業再生はやりやすくなりました。たとえば、最低資本金制度が撤廃されたために資本金の負担は少なくなりました。さらに、設立手続の容易化も実務を進める上では歓迎すべきものです。

 

別会社を設立するにあたって株主や役員を決める必要があります。どちらも設立にあたって不可欠です。

ここで問題になるのは、株主や役員を全くの第三者にしておく必要があるのかという点です。

別会社への資産移転にあたって実子に経営権を譲るといった場合のように、事業再生を相続対策としてとらえる場合には実子にしたいのは当然です。しかしそれでは債務者一族間の移転であることが明らかになってしまいます。

役員の氏名は登記簿から判明しますが、株主は登記事項ではありません。株主が誰であるかが判明することは少ないといえるでしょう。

決算書には株主の記載欄があります。決算書は融資先から提出を求められますので決算書から株主が判明することはよくあることです。もっとも、この場合の債権者は別会社の債権者であって、旧会社の債権者に別会社の決算書を提出することはありませんので、旧債権者に別会社の株主が分かるというものではありません。

 

債務者の一族ではまずいのでしょうか。

たとえば銀行が全くの第三者に物件を売却することと引き換えに競売を取り下げるというような姿勢を示している場合には、債務者一族が別会社の役員になったのでは話が進まないことがあります。このような場合には債務者一族ではなく全くの第三者を役員にしなければなりません。

これに対し、たとえば競売になってしまった物件を競売に応じる形で入札して落札するのであれば、債務者一族が役員になっていても何の問題もありません。

このように考えると、別会社の役員を債務者一族にするのか、あるいは全くの第三者にするべきなのかは、個々の事案により異なるのであり、端的には債権者の考え方次第であるということもできます。

 

2019年02月22日(土) 再生計画の作成と公表

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第58回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「再生計画の作成と公表」で、その要旨は次の通りです。

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要旨:

再生計画を作成し、完成したものを金融債権者に唐突に提示しても協力を得るのは難しいでしょう。とりわけ債権者に債権放棄という痛みを求めるのであれば、勝手に再生計画を作成し、「これでお願いします」と債権者に提示したところで通るわけがありません。少しずつ順序を踏んで再生計画を作成すべきであり、いわば、再生計画を作成するための計画から練らなければならないのです。再生計画ができあがった後も、定期的な見直しと計画変更が必要な場合もあります。これらは再生計画を作成するのと同じ位に重要な作業でもあるのです。

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2019年02月15日(金) 第二会社の必要性

ある一つの事業から生み出される利益は、第二会社にしたからと言って変わるものではありません。今までの会社であろうが、新しく受け皿になる別会社であろうが同じなのです。それなのにわざわざ別会社を受け皿にするというのは、いわば回り道をするようなものです。法人格を変えるチャンスを利用して債権放棄を受けるためなのです。

 

従前の会社への融資は不良債権でも、新しく別会社に対して行う融資は正常債権になります。わざわざ別会社を設立して受け皿とするのは、債権者の都合に合わせたものだと言うこともできるでしょう。債権者の事情も考えることが必要なのです。

 

別会社に資産を移転するにあたっては、今までの会社と新しい会社の間の倒産隔離が絶対条件になります。せっかく資産を移転しても、旧会社の倒産に別会社が巻き込まれてしまっては何もならないからです。事業譲渡の場合で商号続用する場合や、債務引き受け広告を行った場合などに、事業譲渡会社の債務を営業譲受会社が引き継ぐとの法律の規定があります。会社分割の場合には会社分割無効の訴えもあります。

 

国税徴収法の第二次納税義務に注意することも必要になります。この制度は、別会社で資産を所有している場合のように、形式的には第三者が財産を所有している場合であっても、実質的には本来の納税者が財産を所有していると認められる場合に、形式的な権利者に納税義務を負わせるという制度です。

この第二次納税義務が成立する要件として、滞納者が財産を無償又は著しく低い額の対価による譲渡その他第三者に利益を与える処分をし、このため滞納者の国税の全額を徴収することができないこととなった場合に、その財産の譲受人又は受益者に対して第二次納税義務を賦課するとされています。

 

2019年02月09日(土) 組織再編の必要性

経営が破綻した企業の中には、利息免除で全額が元本充当となっているような末期的な例もあります。元本棚上げで利息支払いではありません。利息ではなく元本を支払うというものです。

金融機関としては、もはや利息で稼ぐのではなく、元本充当で不良債権残高を減らそうとしている のです。

 

この状態が続くわけがありません。

組織に何の変化もなく、新しい金融機関から融資を受け、今までの金融機関に返済することで債権放棄を求めるということができるのでしょうか。それとも、組織再編した上で、新しい金融機関から融資を受け、今までの金融機関に返済することで債権放棄を求めるのでしょうか。

 

この場合、組織再編は不可避といえます。新しい金融機関にしてみれば、組織を変更することで倒産隔離ができるからこそ融資をするのです。今までの金融機関にしても、組織再編もないまま、「債権放棄をしてください」「はいわかりました」とはなりません。別会社を介在させることが必要になるのです。いわゆる第二会社方式と呼ばれる事業再生方法です。

このとき、第二次納税義務が問題になるようでは第二会社方式の再生はできません。せっかく別会社を作っても、第二次納税義務の危険があるようでは、金融機関としては怖くて融資ができないからです。

組織再編を行うことと引き換えに債権放棄を求めるということは、別会社の株主や取締役をどのように選任するか 、取締役の責任をどのように位置づけるかという新たな問題が生じることになります。

 

2019年02月02日(土) 競売配当と他の抵当権

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
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第57回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「競売配当と他の抵当権」で、その要旨は次の通りです。

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要旨:

競売が行われた結果、対象不動産が落札されると落札代金が配当されます。入金された落札代金はどのように配当されるのかを明らかにしたうえで、配当が期待されない債権者が申し立てた競売の扱いがどうなるのかを整理します。さらに、抵当権が設定されていない物件について、あえて抵当権を設定することの効果を明らかにします。

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私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。

 

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2019年01月26日(土) 利益の一致点

事業が行き詰った場合に債務者としては何をすべきなのでしょうか。行き詰った事業の再生計画を策定し再生を目指すことは当然のことです。再生計画を基にどのように行動するのかが問題なのです。

弁護士に相談して裁判所に駆け込むべきなのでしょうか。そうではありません。すぐに裁判所に駆け込むのは債権者を敵視していると言わざるを得ません 。このような対応は間違っているのです。駆け込む先は裁判所ではなく債権者なのです。

 

債権者と債務者は「パイを大きくすることでお互いの取り分が大きくなる」という点で利益が一致するわけです。

融資を実行した銀行のような原債権者と、債権譲渡で出現したような新債権者 では回収行動が異なりますが、共通する点があるのです。それは「回収事件を早く完了させたい」という点です。

よく、ファイルをクローズすると言います。これは回収事件を解決し、ファイルそのものを棚の奥にしまうことです。まさにファイルを閉鎖するのでファイルクローズなのです。

 

債権者にとっての解決とは、債権者が納得する金額を回収することです。納得した金額を回収した後、債権は債権放棄で残債を放棄するか、債権譲渡で債権そのものを他人に譲ることになります。いずれにしても債権者は債権を失うことになりますので、回収事件としては解決することになるのです。

債権者にとって回収事件を早く解決することは重要です。なぜならば、回収にかかわる人員をいつまでも抱えているわけにはいかないからです。長期に渡って、いわゆる回収コストをかけることはできないのです。

このように、「早く解決したい」という点でも債権者と債務者の利益は一致 しています。お互いの信頼と協力により「パイを大きくし」「早期に解決する」ことができるならば双方のメリットになるのです。

 

2019年01月20日(日) 債権者は疑っている

債権者は「もっと多く回収できるのではないか」という不透明性に懐疑的になっています。この場合における「もっと多く」とは、パイ自体を大きくできるのではないかという意味と、同じパイでも食べる部分を大きく することが出来るのではないかという意味の二つです。

さらに、自分だけ不利益な扱いを受けているのではないかという不公平性も気になるものです。これらの警戒感が債権者を懐疑的にするのです。

このような債権者の疑いは、きれいごとを並べても解消することはできません。とりわけ、パイの取り合いについては債権者と債務者で利益が相反しますので、調整は簡単ではありません。

 

基本となるのは双方の信頼関係です。

利益は相反する以上、信頼関係がなければ合意はできません。信頼関係があれば合意するとは言えませんが、信頼関係がなければ合意できないことだけは事実です。信頼関係といっても友人同士のような信頼はあり得ません。そのような信頼ではなく、大人の関係、すなわち、お互いの立場に配慮しつつ自分の立場を主張するような関係です。

 

逆の状態、すなわち、最悪の状態とは債権者と債務者が音信不通の状態に陥ることです。

原因、理由、経緯はどうであれ、債権者と債務者の連絡が途絶えることが最悪の状態なのです。このような場合、債権者の懐疑心を増長させるだけです。事態は改善することはなく、事業の再生に債権者が協力するようなことは皆無と言って良いでしょう。

 

2019年01月14日(月) 債権者と債務者の配分問題

分け合うパイを大きくすることで返済総額を高めるという面に限って見れば、債権者と債務者は利益が一致しています。

債権者と債務者が反目し合うことで全く無関係の第三者に儲けさせるよりは、債権者と債務者が協力しあって事業を遂行することで利益を確保する 方が返済総額が増えるというわけです。

 

お互いが食べるパイを大きくすると言う目的のためには、債権者と債務者が協力することで双方に有利になるのだということを見失ってはいけません。

安易に裁判所に駆け込むというのは、まさに大事な部分を見失っているのだという点は既に指摘しました。裁判所ではなく債権者に協力を求めなければならないのです。

 

問題はパイをどのように分けるのかという点で債権者と債務者が対立するという点です。

債務者が多くを留保するならば債権者への返済が少なくなりますし、反対に、債権者への返済が増えれば債務者の留保分が少なくなってしまうというわけです。

それだけではありません。債権者が複数の場合には債権者間の配分も争点になるのです。債権者間の配分問題は、債務者としては口出しできない点が厄介であるといえるでしょう。

 

2019年01月08日(火) 債権者の立場にも配慮する

債務者は債権者とどのように付き合い、あるいは対峙すべきなのでしょうか。

 

債務者として債権者の理解を期待するのであるならば、債務者も債権者の立場を考える必要があると言えるでしょう。債権者に理解や協力を求める以上、債務者も債権者の立場に配慮し、理解と同意を得られやすいような道を選択すべきなのです。

 

債務者が債権者に対して良い感情を抱くことができるはずがありません。それは無理と言うものです。しかし、いつまでもいがみ合っていたのでは双方にとって不利益なのです。たとえば再生の進め方一つにしてもそうです。

 

仮に、全く同じ再生計画を進めるのであれば、法的手続として公開して進めるよりも、私的手続として非公開で進めた方が返済総額が高まることは間違いありません。

信用低下によるマイナスを防げるだけでも返済総額が高まる というわけです。

相手の立場に配慮しつつ、対立から協調へ、いかにして持ち込むべきかを見極めることが大切です。

 

2019年01月03日(木) 債権者間での営業権代金の分配

複数の債権者がいる場合に、その一部の債権が債権譲渡でサービサーに移ることがあります。当然ながら、債権譲渡は各行別に行われますので、櫛の歯が欠けるように少しずつ原債権者が新債権者に代わっていく ことになります。

全体の中の一部の債権が譲渡された場合、新たに出現した債権者が強硬な回収を迫ることがあります。このような場合、債権者間の力関係が崩れることが問題 になります。たとえば一部の債権者が競売を申し立てると、他の債権者も追従することが少なくありません。まさにハゲタカの餌食になりかねないのです。そうならないためには、債権者間の回収姿勢のバランスを崩してはならないというわけです。新債権者の強硬な回収方針を回避しつつ、個別の合意に持ち込む対策を講じる必要があるのです。

 

不動産の評価額は、すなわち有担保債権者への返済額となります。それでは無担保債権者の利益にはなりません。無担保債権者の取り分も考慮しなければなりません。一方、債務者の返済能力には限度があります。有担保債権者と無担保債権者の配分交渉が問題になる のです。

この点、営業権であれば無担保債権者も分配を受けられるという利点があります。

無担保債権者の抵抗を抑えるために営業権とすることで債権者間の配分交渉を解決に導く可能性がでてきます。この場合、担保債権者の納得が必要になりますが、営業権は5年で償却するために節税効果が期待できるので、キャッシュフローとしては多少の無理がきくというわけです。

 

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