2018年

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2018/12/26 敵と味方を見極める
2018/12/18 いつまでも負債を抱えるという選択
2018/12/13 破産による影響
2018/12/10 どのような場合に破産するのか
2018/12/06 無駄な破産
2018/11/30 経営者の決意が必要
2018/11/26 事業再生の成功
2018/11/21 子会社を譲渡する場合の株主総会決議
2018/11/13 M&Aと株主総会決議
2018/11/07 敵と味方を見極める
2018/11/02 無駄な自殺をした例
2018/10/29 企業価値評価
2018/10/25 手形をだまし取られた例
2018/10/16 不動産屋に情報を漏らした弁護士の例
2018/10/10 銀行に対して何もしなかった弁護士の例
2018/10/06 直前にキャンセルされて資産を奪われた例
2018/09/28 第二会社の取締役
2018/09/23 詐害的会社分割と法改正
2018/09/14 不動産鑑定評価の手法と評価額の変動(2)
2018/09/10 不動産鑑定評価の手法と評価額の変動(1)
2018/09/06 不動産鑑定評価の流れ
2018/09/03 地域企業再生論の講義
2018/08/28 究極の第二会社方式
2018/08/22 抵当権消滅請求から競売になった例
2018/08/20 抵当権消滅請求から競売が取り下げとなった例
2018/08/14 二重入札
2018/08/11 抵当権消滅請求制度
2018/08/07 債権放棄の合理性
2018/08/02 二つの再生方法
2018/07/25 競売の経済的合理性
2018/07/16 競売の中止
2018/07/11 競売手続の流れ
2018/07/04 リゾートマンションの滞納管理費回収交渉における代替案の形成
2018/06/27 公的支援制度
2018/06/25 競売価格の実勢価格との乖離
2018/06/18 日本交渉学会で研究発表を行います
2018/06/11 価格の三面性
2018/06/04 なぜ競売価格は低いか
2018/05/30 鑑定評価における正常価格
2018/05/25 特定調停の利用
2018/05/19 土地の価格の種類と価格水準
2018/05/17 ミュンヘンに滞在します
2018/05/14 SWOT分析が必要な理由
2018/05/06 短期返済能力と長期返済能力
2018/05/01 情報の非対称性と交渉の決裂リスク
2018/04/28 会社の清算
2018/04/23 誤った法的整理の例
2018/04/18 法的整理が有益な場合
2018/04/14 私的整理は二種類ある
2018/04/12 私的整理のメリット
2018/04/06 私的整理と法的整理
2018/03/30 競売より任売が望ましいこと
2018/03/27 債務者の防衛行動
2018/03/20 事業再生後の第二のステップ
2018/03/14 新刊のお知らせ
2018/03/10 競売を誘発することの危険性
2018/03/07 競売価格が安くなる理由と競売価格の客観性
2018/03/01 個別合意と有期返済がカギになる
2018/02/27 債権者の回収行動(訴訟)
2018/02/20 債務者ではなく債権者が判断すること
2018/02/16 正しい返済能力を開示すること
2018/02/12 実現可能な計画を作るべし
2018/02/06 達成できない計画は無意味
2018/02/03 背伸びした再生計画
2018/01/31 債権者の回収行動(手続)
2018/01/23 法的整理によらない保証債務の免責
2018/01/16 どういう場合に破産するのか
2018/01/10 破産が求められる場合
2018/01/05 過料の制裁


敵と味方を見極める
2018年12月26日(水)

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第56回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「敵と味方を見極める」で、その要旨は次の通りです。

ーーー

要旨:

事業再生を進めていると様々な人々が集まってきます。自らの利益を求めて、それぞれの立場で勝手な動きをすることが少なくありません。不動産の任意売却に関する利権を求めて何人もの不動産業者が群がってきたり、反社会的勢力の別動隊が動いたりします。そのような人々は、「敵と味方を見極める」という観点からは分かりやすいといえますが、態度や外見では識別しにくい場合も少なくありません。「怪しい人」に騙されないようにするのはもちろん、「怪しくない人」にも騙されないようにしなければなりません。

ーーー

 

記事を読むにはミロク情報サービスの会員になる必要があります。
会員は(1)会計事務所向けと(2)企業経営者向けに分かれています。

 

(1)会計事務所の先生の場合は「tvs会員」になる必要があります。
下のアドレスから著者名を指定して検索できます。
http://tvs.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html

 

(2)企業の経営者の場合は「GOODWILL PLUS会員」になる必要があります。
下のアドレスから著者名を指定して検索できます。
http://goodwill.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html

 

多くの有益な情報を入手できますので、入会することをお勧めします。
私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。

 

入会にあたってはお近くの(株)ミロク情報サービスの営業拠点にご連絡ください。営業拠点は下のアドレスから検索できます。
http://www.mjs.co.jp/office/tabid/479/index.php#no2

 

いつまでも負債を抱えるという選択
2018年12月18日(火)

個人の場合は、寿命とともに死んでしまいます。しかし、企業の場合は清算しない限り死ぬことはありません。会計学でいうところの企業継続の大原則です。

法人、個人のどちらにしても、負債を抱えたままにしておくという方法も多く採用されています。いわば、いつまでも負債を抱えているというわけです。

 

ゼロから再起を図る場合は破産してスッキリするのも良いと思いますが、「今さら再起するよりも、親族に経営を譲ろう」と考えているのであれば、破産する必要はなくなってしまいます。まさに死ぬまで負債を抱えたままにしておけばよいのです。変な話ですが、死んだときに相続人が相続放棄をすれば良いというわけです。

現に、私の扱う事例で自己破産したケースはありません。破産をしない道、すなわち、再生の道を模索するからです。まずは再生の方法を探るのが先決なのであって、破産をする必要がない状態を作り上げてしまえば良いのです。

 

債務者として守りたいものがあるはずです。

「これだけは奪われたくない」というものがあるならば、それを他に移しておくのです。もちろん、合法的に移すことが必要です。だまって隠したのでは隠匿になりますし、債権者を騙して移したなら詐欺になる可能性もあります。

あくまで、債権者の合意を前提に、知恵を絞って移すのです。きちんと手続をすることで、債務者の破綻リスクを排除することができます。これが、まさに再生の技術 なのです。万が一、債務者が清算手続を行うことを余儀なくされたとしても、リスクを排除しておけば安全です。無い袖は振れないというわけです。

対象がなくなってしまえば、債権者としてどうしようもありません。差し押さえしようにも対象がないわけです。回収できなければ手を出してくることはありません。債権者としても無駄な労力を使う暇はないのです。

 

あくまで債権者の納得が前提であって、債権者をごまかしたりしたのでは、うまく行きませんので注意が必要です。債権者の同意を得て事業の再生を実現することは多くの場合に可能です。まずは、再生の可能性を徹底的に追うべきです。破産などは最後の最後の手段あるいは破産そのものが必要ないとさえ言えるでしょう。

 

破産による影響
2018年12月13日(金)

破産したからといっても犯罪者扱いされるわけではありません。

「破産者だからといって別に気にすることは無い」と嘯く人もいます。ある意味では気楽なものです。

 

破産者となると、一定の期間は一定の職業はできなくなりますし、破産管財人が選任されるような事件の場合には、居住地や通信の制限も生じることがあります。その他、官報に掲載されますし、破産者の本籍地の破産者名簿に記載されます。更に、市区町村発行の身分証明書に記載されます。

このように、ひとたび破産するとなると様々な法的制限を受けるわけですが、制限の一つ一つは大したことはないと言えなくもありません。この程度の不利益ならさっさと破産してしまおうと考える人が現れてもおかしくはないでしょう。

法的な不利益よりも、むしろ問題になるのは、破産宣告を受けたということで生じる信用低下です。いわゆるブラックリストに載ることになりますので、当分の間は新規の借り入れやローンが組みにくくなるわけです。

 

信用低下に加え、実社会における世間の目も冷たくなるのは致し方ありません。

事業を再生するという目的のためには、このような信用低下という不利益が最大の問題になるわけです。言い換えれば、事業を再生するためには、再生の足かせになってしまうような「破産による信用低下」だけはどうしても避けておくべきなのです。同業者が足を引っ張る目的で、破産した事実を言いふらすケースもあるので困ったものです。

まさに、信用低下こそ、破産による最大の影響だということができるでしょう。

 

 

どのような場合に破産するのか
2018年12月10日(月)

そもそも破産とは必要なのでしょうか。主たる債務者が再生するのではなく破産するときは、連鎖的被害を避けるために保証人が破産することもやむなしと言えるかもしれません。たとえば身の危険を感じる場合も破産は有効です。

 

たとえば、反社会的勢力から威されるような場合、身を守るためにも裁判所の力を借りて破産宣告を受けるということが有効な手段かもしれません。

さらに、債権者が不明あるいは多数の場合も同様です。債権が多数ある場合には債権者の特定が出来ないこともありますし、手形が市場に流通している場合なども債権者の特定が難しい状態になります。このような場合には債権者と個別に話し合いをするというのは事実上不可能ですので、裁判所の力を借りて、一挙に解決するしか方法がないわけです。

債務をスッキリ片付けて出直したい場合も破産手続を選択する意味があるでしょう。

そもそも破産する必要はないというのが私の考え方なのですが、中には、破産宣告を受けるという不利益、不名誉を覚悟の上で、出直すために一度スッキリしたいという判断もあるでしょう。

 

このような場合には自己破産を選択するのもやむを得ないといえるかもしれません。

 

無駄な破産
2018年12月06日(木)

個人が消費者金融に手を出し、いつの間にか借入が雪だるま式に膨れ上がったため返済が不能になり、結局は自己破産に追い込まれるという話はよく聞く話です。たしかに、このような場合には自己破産という道も有効な選択肢であるかもしれません。

しかし、個人が借入を行ったのではなく、企業が借入を行い、その際に保証人になったものの結局は保証人としての責任を問われてしまったという場合も少なくありません。少なくないというよりは、日本の中小企業の借入はほぼ100%、経営者の連帯保証が求められているのが実態です 。

 

不幸にして事業の経営が暗礁に乗り上げた場合、経営者は連帯保証責任を追及されることになります。

主債務者は法人です。この主たる債務者である法人が破産するのなら保証人の破産も検討すべきかもしれません。なぜならば主債務者から回収ができないとなれば、債権者は保証人に請求せざるを得ないからです。保証人に請求しないとなると回収の怠慢となってしまうからです。従って債権者としては保証人に対して何らかの請求をせざるを得ない のです。

しかし、主たる債務者が破産しないのであれば保証人が破産する必要はないと言うべきです。

 

そもそも、主たる債務者である企業が救われ、保証人が破産するというのはおかしな話です。にもかかわらず、このような例は少なくありません。民事再生法に基づく再生計画でも散見されています。主債務者である企業については、その経営を第三者に移譲することで「再生」を実現し、一方、連帯保証人である個人は破産することにより責任を免じてもらうわけです。

 

これで良いのでしょうか?保証人を犠牲にして、主たる債務者だけが救われるというのはいかがなものでしょうか。経営者を破産させて事業の再生が成功したと言えるのか大いに疑問です。大いに疑問です。

勧められるままに無駄な破産を行っている場合が散見されますが、まったく馬鹿げた話だと思います。

 

経営者の決意が必要
2018年11月30日(金)

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第55回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「経営者の決意が必要」で、その要旨は次の通りです。

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要旨:

事業再生に関わる業務を行っていると、再生計画に確固たるポリシーを持たない経営者と出合うことがあります。このような経営者の場合は事業再生が難しいといえます。事業再生を成功させるためには経営者の決意が必要であることを明らかにします。

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会員は(1)会計事務所向けと(2)企業経営者向けに分かれています。

 

(1)会計事務所の先生の場合は「tvs会員」になる必要があります。
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(2)企業の経営者の場合は「GOODWILL PLUS会員」になる必要があります。
下のアドレスから著者名を指定して検索できます。
http://goodwill.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html

 

多くの有益な情報を入手できますので、入会することをお勧めします。
私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。

 

入会にあたってはお近くの(株)ミロク情報サービスの営業拠点にご連絡ください。営業拠点は下のアドレスから検索できます。
http://www.mjs.co.jp/office/tabid/479/index.php#no2

 

事業再生の成功
2018年11月26日(月)

そもそも事業再生を成功させるとは何をもって成功というのでしょうか。

従業員の雇用や取引先の保護が目的であるならば、民事再生法による再生も一つの選択肢です。この場合、経営者の保護は二の次であり、会社を再生するために経営権を譲渡し、経営者が引責するという方法も考えられます。経営者の意向よりも会社の再生が優先されるのです。

 

一方、私的整理であれば風評被害も回避できますし、なによりも個々の債権者と相対交渉することで柔軟な解決策を模索することができるのです。すなわち、債務者に経営権を残したまま、第二会社方式で会社を再生する方法も進めやすくなるケースが多くみられます。柔軟な解決策を模索することができる点に、私的整理の最大のメリットがあると言っても過言ではありません。

 

いきなり裁判所に訴えて法的整理を進めるのではなく、まずは債権者との対話が求められるのです。債権者をないがしろにして債務者が独自に行動したのでは、債務者主導の事業再生を実現することはできません。

経営者一族の個人保証についても同様です。主たる債務者の再生に合わせて、個人保証も債務者が主導する形で免責を受けておくべきです。

 

子会社を譲渡する場合の株主総会決議
2018年11月21日(水)

M&Aにおいて株主が個人とは限りません。親会社たる法人が子会社株式を譲渡する場合も考えられます。この点に関し、子会社株式を譲渡する場合の例外規定が平成26年に新設されていますので注意が必要です(467条1項2号の2)。

 

本来、子会社の株式の譲渡は業務執行として取締役会決議事項であり(362条2項1号)、株主総会決議は求められていません。しかし、議決権の過半数を有しなくなる場合には、事業の重要な一部の譲渡がなされたのと実質的に異ならないといえます。そこで、譲渡する子会社株式の帳簿価額が親会社の総資産額の5分の1を超え、かつ親会社が子会社の議決権総数の過半数を有しなくなるとき売主たる親会社において株主総会の特別決議が必要 になりました。反対株主の株式買取請求も認められています(309条2項11号、469条1項)。

 

かかる改正があったことすら知らないまま、「株式譲渡の場合は株主が合意すれば良いのであり、株主総会決議は問題にならない」という理解をしている専門家?がまだまだ少なくないようです。しかし、売主たる親会社において株主総会の特別決議をしないと、事業譲渡の場合と同じく株式譲渡が無効となりますので注意が必要です。

 

このような法の改正点は、論理的に説明する問題ではなく、「改正を知っているか知らないか」という知識量の問題になります。知識のない人に相談しても、正しい回答は得られません。ためしに「株式を譲渡する形でM&Aを考えているのですが、売主が株式売却をするにあたり株主総会決議が必要になるケースはありますか?」と尋ねてみてはいかがでしょうか。「親会社である売主が子会社を処分する場合を想定して、株式を譲渡する形でM&Aを考えているのですが・・・」というヒントをあげれば答えやすいかもしれません。

467条1項2号の2の改正を知らず、「株式譲渡は株主の権利です。譲渡制限株式の場合は別ですが、そうでなければ個々の株主が譲渡したいのであれば株主総会は不要です」といった回答をするようでは知識不足と判定できるかもしれません。

もっとも、全部で979条もある会社法の、ほんの一部の新追加規定です。極めてマイナーな論点ですので弁護士でも知らない人が少なくありません。この点を割り引いて判断することが必要かもしれません。

 

M&Aと株主総会決議
2018年11月13日(火)

M&Aの態様には合併、株式併合、事業譲渡など、様々な形がありますが、最もシンプルな形は株式譲渡です。譲渡側と譲受側の株主が合意すれば良いだけです。単純に譲渡人と譲受人が友好的な取引ができるのであれば無難な方法だといえるでしょう。それはそれで結構なことです。

しかし常にスムーズな取引ができるとは限りません。「株式譲渡の場合は株主が合意すれば良いのであり、株主総会決議は問題にならない」と甘く考えるのは大変な誤りですので注意が必要です。

 

M&Aにおいて会社の株式を取得する目的としては、「会社の支配権を取得し事業を継続する」「会社の資産を利用する、売却する」等が考えられます。

会社の株式を100%取得できれば良いのですが、仮に3分の2未満しか取得できない場合、将来において自由に株主総会の特別決議ができないという危険が残る ことになります。

特別決議ができないと、その後の合併や、事業譲渡等ができません(309条)。すなわち、抵抗勢力が存在するままでは、会社の支配を意のままにできないということになります。

株主が抵抗勢力であるのかどうかは判然としない場合もありますし、気が変わるということもあり得ます。3分の2以上の賛成が得られるのかがわからないままでは、怖くて手が出せないということになってしまいます。

 

株式譲渡型のM&Aが行われる戦略的な理由としては、「一度、会社の支配権を取得し、その後で吸収合併する」ということも考えられます。なぜそのような回り道を選ぶのかというと、無防備なまま吸収合併すると債権債務を包括承継することになり、思わぬ債務を負担する危険があるからです。簿外債務の危険がなくなるまでは別会社として保有しておき、危険がなくなったと判断した時点で吸収することで簿外債務を承継する危険を回避することができるというわけです。

 

 

敵と味方を見極める
2018年11月07日(水)

例えば売主が3000万円で売ることを不動産業者に任せたとします。この場合、売主の最大期待値は3000万円です。売主は、その物件しか売るものはありません。

そこに、2900万円で不動産を探している買主が出現したとします。買主は、3000万円の物件は予算外なので対象外です。2900万円なら買うけれど、3000万円では買いません。このような場合、不動産業者はどうするでしょうか?

 

選択枝は二つです。売値を下げるか、買値を上げる、のどちらかです。

多くの場合に、2900万で決着すると言えるでしょう。なぜならば、売主は、その不動産しか売るものが無いという弱みがあるのに対し、買主は他の不動産を買えば良いという決定的な強みがあるからです。したがって、両者が交渉を行う場合、2900万円を提示する買主が有利と言うことになります。

時間とともに金銭価値下がる、すなわち、現在の1万円は、将来の1万円以下の価値しかないという考え方(割引現在価値)を勘案すれば、「時間をかけて3000万円を受け取るよりは、今、2900万円を受け取ろう」という考え方から、売主としては譲歩することが現実的といえるでしょう。

 

交渉をまとめるためには、売主が譲歩することが現実的なのです。この点に着目した不動産業者は、売主から3000万円での売却を任されたにもかかわらず、成約させたいがために、売主に対して2900万円への値引きを勧めてくることがあります。信頼して売却を任せた業者が、いつの間にか、買主の立場に立ってしまっているというわけです。

このような事例は不動産取引だけに限られません。味方であるはずの立場の者が、自らの利益のために依頼者の足元を見て行動するという事例は数知れません。

 

誰にとって経済合理性が高まるのかを見極めながら、騙されないように注意し、正しい判断をすることが必要だと思います。

 

無駄な自殺をした例
2018年11月02日(月)

その人は零細企業の経営者でした。

経営成績は利益が見込めず、財政状態は債務超過で、業績の回復は難しく、客観的にみて事業継続は困難な状況でした。

将来を悲観した経営者は、「保険金で借入金を返して欲しい」との遺書を残して自殺してしまいました。自ら軽四を運転し、壁に激突していったのです。

その後、生命保険会社からは死亡保険金が支払われ、その保険金は返済に回されました。しかし、自動車保険の内容である搭乗者傷害保険からは保険金が支払われませんでした。搭乗者傷害保険では、自殺は免責になっているからでした。生命保険と損害保険は違うのです。

 

たしかにこの例は、再生は難しい事例でした。家族のためを思い、保険金を残そうとした経営者でしたが、その思いは実現できなかったのです。

この例では悪質な債権者はいませんでした。債権放棄による再生は困難であっても、原債権者に債権譲渡をしてもらうことで、出現した債権者との交渉により負債の削減は可能な事例でした。第二会社方式による負債の削減も可能でしたし、残った会社をみなし解散に持ち込むことも可能だったのです。これまでに紹介してきたような事業再生のノウハウを活用することで事業再生は可能だったのです。

自己破産は必要ありませんでした。まして、自殺をしてまで負債の削減を図ることはなかったのです。

 

この例に限らず、さまざまな形で悲惨な事例が起きているのは残念なことだと思います。

 

企業価値評価
2018年10月29日(月)

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第54回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「企業価値評価」で、その要旨は次の通りです。

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要旨:

事業再生において企業価値の把握が問題となるのは、たとえばM&Aで会社そのものを譲渡する場合の他、第二会社方式において融資を受ける場合、営業権を無担保債権者に配分する場合、対象企業の返済能力を把握する場合等々があります。ここでは第二会社方式で事業再生を行う場合に、企業価値をどのように算出するのか、どのような点が価格決定に影響を及ぼすかを整理します。

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会員は(1)会計事務所向けと(2)企業経営者向けに分かれています。

 

(1)会計事務所の先生の場合は「tvs会員」になる必要があります。
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(2)企業の経営者の場合は「GOODWILL PLUS会員」になる必要があります。
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http://goodwill.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html

 

多くの有益な情報を入手できますので、入会することをお勧めします。
私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。

 

入会にあたってはお近くの(株)ミロク情報サービスの営業拠点にご連絡ください。営業拠点は下のアドレスから検索できます。
http://www.mjs.co.jp/office/tabid/479/index.php#no2

 

 

手形をだまし取られた例
2018年10月25日(木)

後継者がいない中小企業がありました。

経営状態は芳しくない状況でした。経営者は高齢であり十分な経営ができない状態で、実子は独立していて後継はできず、従業員の中にも後継者を見いだせない状態でした。多額の負債も後継者の出現の障害になっており、M&Aを専門とする業者による事業譲渡も成功しませんでした。

そこに出現したのが同業者の某氏でした。

 

共同経営による事業再生計画を持ち出し、部長職に就任した某氏は、持ち前の饒舌さを活かして金融機関との交渉を進めました。

しばらくすると、資金繰りに詰まった経営者に対し、保証人ではない経営者の配偶者を保証人に立て、街金から融資を受ける策を提案してきました。

不信に思った経営者から、この段階で当社に相談が寄せられたのでした。話を聞くために某氏と面談したところ、実に話がうまく、常に積極的な姿勢を示すことで自分のペースに持っていくタイプでした。明らかな疑問、問題が発覚したのではありませんが、あまりにも饒舌であるために、かえって信用性に疑問を感じたのでした。

 

早速、興信所を通して調査をしましたが、大きな問題点は発見できませんでした。

さすがに、街金から融資を受ける提案については経営者も拒絶したのですが、次は、「韓国の金融機関から外貨融資を受ける」「取引先に提示して信用を得る」等々の口実で手形を預かりたいと言い出してきました。

私は危険を指摘したのですが、切羽詰まっていた経営者は、金融機関の受けが良い某氏を信じ、「某氏に賭けてみる」とまで言い出しました。結局、某氏に2千万円の手形を預けてしまったのです。

 

その後は、恐れていた通りの結果になってしまいました。

某氏は手形を持ち逃げし、雲隠れしてしまったのです。もちろん、会社の事業継続は不可能となり、破産手続きに移行してしまいました。

 

この例は立派な犯罪です。

内部の不正により資金繰りが破綻した典型的な例でした。普段は慎重な経営者であっても、切羽詰まると藁をもすがる思いとなり、正常な判断ができなくなるのです。このような例は枚挙にいとまがありません。軽々な判断をする前に、是非、信頼できる専門家に相談してもらいたいと思います。

 

この例では親族が相談相手でした。しかし肝心なところでは親族に相談せず、独断で実行してしまったのです。正常な判断ができないのであれば、法的には共同代表にしたり、実務的には法人印とゴム印を分けて管理するなど、事前の対策が必要になるかもしれません。

 

不動産屋に情報を漏らした弁護士の例
2018年10月16日(火)

ある経営者が事業再生の相談をするために某専門家A氏を訪ねました。

経営者としては、風評被害を防止するため、法的整理ではなく私的整理で進めることとし情報の漏えいには相当の配慮をしていました。

再生計画を作成する過程で、遊休不動産と処分不動産をリストアップし某専門家A氏に渡したのでした。当然の作業であり、ここまでは問題はありません。問題はその後でした。

ある日突然、経営者の下にいくつかの不動産業者から連絡が入り始めたのです。「不動産売却のお手伝いをします」というものでした。

不信に思った経営者が業者に尋ねたところ、「A氏から連絡があり、おおよその価格を知りたいと尋ねられた」のことでした。すべての不動産の所有者が同一人だったので、不動産業者として役に立てるのではないかと考え連絡してきたというのです。

 

某専門家A氏は不動産の価格を知りたいがために、本来は秘密にすべき不動産の売却計画を街の不動産業者に相談してしまったのです。街の不動産業者に情報を漏らすべきではないのに、こともあろうか、不動産業者に不動産のリストをポンと渡して評価を依頼したのでした。

せっかく、私的整理で極秘裏に進めようとしているのに、脇が甘いために情報が漏れてしまったという一例でした。

 

このような「専門家?」は某弁護士でした。このような偽専門家が少なくないので注意が必要です。不動産の評価すらできない者が、「専門家」を名乗ることに大いに疑問を感じるところです。秘密を守るべき弁護士が情報を漏洩する形になってしまったのです。

弁護士の質の劣化は本当に困ったものです。

 

銀行に対して何もしなかった弁護士の例
2018年10月10日(水)

実際に合った話です。

風評被害などの危険を恐れる某経営者が弁護士に私的整理による事業再生を相談しました。しかし、弁護士からは会社を民事再生法により再生することを勧められました。どうしても法的整理に踏み切る決断ができないまま、経営者は私的整理による再生を決断し、金融機関に対しての交渉を弁護士に委任しました。

弁護士は私的整理による事業再生を受任し、取引先にその旨を通知しました。

 

しかし弁護士はろくに銀行との交渉をしないままに放置したのです。当然、各金融機関は不満を感じ、受任通知を受けている金融機関は、窓口である弁護士に連絡をしたのですが、弁護士はのらりくらりとした対応しかしませんでした。弁護士の進め方に疑問を感じた経営者は私に相談してきたのでした。

打ち合わせの結果、ただちに弁護士を解任し、銀行と直接交渉することになりました。その後、金融機関を回り、事情を話して誤解を解き、私的整理に移行したのでした。

 

そもそも、この事例は民事再生の必要はないものでした。

金融機関を丁寧に回り、理解と協力を得れば十分に再生が可能な事例だったのです。破産するよりも事業を継続させることで回収額は増えるし、冷静に考えれば再生を選ぶべき事例でした。清算より再生が経済合理性が成り立つのであり、再生する以上、あえて法的整理にすることもなく、誠意を示し私的整理で進めれば良い事例だったのです。

それにもかかわらず、弁護士は法的整理に持ち込む画策をしたのでした。資産の処分や、最悪の場合には事業譲渡までを念頭に置き、それらの法的手続きに関与することを狙っていたのでしょう。銀行交渉を怠ることで、債権者が何らかの法的手続きに着手することを期待していたのかもしれません。懲戒処分に相当するような事例でした。

 

直前にキャンセルされて資産を奪われた例
2018年10月06日(土)

某中小企業での実話です。

資金繰りに詰まったため、某コンサルタントに相談して所有不動産を売却することにしました。その不動産は担保に入れてなかったため、抵当権者の承諾は得る必要はありませんでした。

 

所有する不動産は3千万円程度の評価であったところ、某コンサルタントの紹介で2千5百万円で売却の話がまとまりました。しかし、資金が必要な日が近づいてきても売却話が進みませんでした。

「ああだ、こうだ」と理由をつけては引き延ばされ、結局は土壇場でキャンセルになってしまいました。

 

某コンサルタント曰く、「これでは資金繰りに問題が出るでしょう。当方の知人に購入してもらいましょう」と、1千万円で「知人?」に譲渡することになったのでした。

実に3千万円の不動産を1千万円で奪われてしまったわけです。

 

「知人?」が某コンサルタントと通謀していたのであれば、それこそ詐欺ではないでしょうか。切羽詰まった経営者は、時として正常な判断ができなくなることがあるものです。

私はこのような多くの「切羽詰まった経営者」を目の当たりにしてきました。

「半永久的に使える超小型電池」「淡水魚と海水魚を同時に生かせる水槽」「水道水を活性水にする部品」等など、インチキな儲け話に活路を見出そうとして失敗した経営者も少なくありません。

 

誰が味方で、誰が敵なのかも見失ってしまうのでしょう。手遅れになる前に、信頼できる専門家に相談してもらいたいと思います 。冷静なアドバイスが期待されるところです。

 

第二会社の取締役
2018年09月28日(金)

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第53回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「第二会社の取締役」で、その要旨は次の通りです。

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要旨:

第二会社で事業再生を目指す場合、正常な形ではなく、ゴタゴタ劇が繰り返されることも少なくありません。抵抗勢力がいるような場合はなおさらです。教科書に書かれているような、正常時を想定した法律論では太刀打ちできないことになります。ここでは正式な取締役ではない場合の他、取締役の競業避止義務の内容と、社外取締役の制度について整理しておきます。

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記事を読むにはミロク情報サービスの会員になる必要があります。
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多くの有益な情報を入手できますので、入会することをお勧めします。
私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。

 

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詐害的会社分割と法改正
2018年09月23日(日)

事業再生において詐害的会社分割が問題になることがあります。

会社の事業が順調にいく採算部門と、そうではない非採算部門がある場合に、採算部門を切り離し、非採算部門だけを残す形で会社を分割する方法で事業再生が行われることがあります。この方法自体には問題はありません。適正に行われる限り、適法です。

 

問題となるのは、債権者を害する目的で(端的には、より多くの債務を旧会社に残す)会社分割が行われる場合です。

旧会社(分割会社)は新会社(承継会社)に事業や資産を分割するわけですが、この際に旧会社は新会社から移転した事業や資産の価値の対価を受け取ります。したがって、残った債権者は会社分割に異議を述べることができません(810条)。異議を述べられない債権者は、分割を承認しなかった債権者に該当しませんので(828条2項)、会社分割無効の訴えを提起することができないことになります。

 

この点については、以前から、何らかの形で債権者の保護を図る必要があるのではないかとの指摘がなされていました。なぜならば、不当に低い金額で事業や資産を分割移転することが横行していたからです。具体的には、新会社に移転する資産の評価を低くするというわけです。

 

そこで26年の会社法改正で残存債権者を害する目的で会社分割が行われた場合に、会社分割が行われた日から2年以内に請求することで、承継された財産の価格を限度として残存債権者は承継会社に債務の履行を請求できるようになりました(764条6項)。

具体的に表すならば、正常な価格を下回る価格で新会社に事業や資産を分割しても、764条6項に該当するような場合には、正常価格と移転価格(下回る価格)との差額を新会社は請求されてしまうというものです。この規定により、いわゆる詐害的会社分割を排除できるようになったのです。

 

事業譲渡にしても会社分割にしても、第二会社方式による事業再生は、新しい会社を作って事業を移せば済むというような単純な話ではありません。その程度であれば、誰でもできる話であり、戦略的事業再生とは言えません。せっかく移転した事業を、後日になって覆されないように対処しておかなければならないのです。

 

不動産鑑定評価の手法と評価額の変動(2)
2018年09月14日(金)

(3)収益還元法

対象建物の経済的残存耐用年数に対応する当該建物及びその敷地の純収益の現価の総和(「純収益の有期還元額」と呼びます)を求め、経済的残存耐用年数満了後に対象建物を取り壊した場合の更地価格の現価を加えて収益価格を試算しています。

 

価格が増減する要因としては、土地の収益と費用を把握する時点で、どの数値を採用するかという点があります。実績地が明らかな異常値(不動産を有効活用しようとしていない場合など)である場合は、そのまま採用することはできません。異常値をそのまま採用してしまった場合には不当鑑定になりかねませんので適切に補正することになります。還元利回りの判断は収益価格に直結します。明らかな異常値で還元することはできませんが、還元利回りの多寡は収益価格の増減に直結することになります。収益還元法は理論的な価格であるだけに、純収益の把握や還元利回りの設定の段階での判断の差異が結果として収益価格を増減させることになります。

 

ところで、収益還元法と言ってもいくつかの方法があります。中でも直接還元法とDCF法が多くの場合に採用されます。

 

ⅰ、直接還元法

直接還元法の適用においては、純収益や復帰価格の変動予測を還元利回りの査定において織り込む一方、DCF法の場合は、それらの予測を毎期の純収益に織り込む点で評価の過程に違いがあるとされています。

単年度の純収益を還元して収益価格を求める手法ですので、その純収益は、純収益及び総費用の項目毎に過去の推移及び将来の動向を慎重に分析し、標準化されたものを採用とします。

特に、実際に運営している不動産については、現在又は直近の純収益が標準化されたものではなく、特異なものである可能性があるため、そのまま採用したのでは正しい判断ができないこともあります。空室率や大規模修繕費等については各年度の変動が大きいので注意が必要です。臨時巨額の支出は平準化することが必要となるわけです。

 

ⅱ、DCF法

DCF法とはディスカウントキャッシュフローの略です。

不動産を運用している期間のキャッシュフローを求めるのですが、それを現在価値に割り引くことで現在の価格を求めようという考え方です。要するに何年か運用した後に転売するという考え方で、運用期間中のキャッシュフローと転売した時のキャッシュフローの合計を求めるというものです。もちろんこれを現在価値に割り引くのでディスカウントというわけです。

DCF法は、連続する複数の期間に発生する純収益及び復帰価格を予測して、それらを明示することから、収益価格を求める過程について説明性に優れたものですが、あくまでも説明性に優れているということであって、収益価格としての精度、説得力が高いということではありません。計画を年度別に積み上げる過程で、より明示的に計画が策定できるので信頼性が高いと言えるでしょう。換言すれば、計画のたて方次第で収益価格が変動するということになります。

 

 

不動産鑑定評価の手法と評価額の変動(1)
2018年09月10日(月)

不動産鑑定評価の手法には原価法、取引事例比較法、収益還元法があります。

 

(1)原価法

土地については、近隣地域の地域要因を備えた標準画地の標準価格を、取引事例比較法を採用して求めた価格を標準としつつ、標準地の公示価格を規準とした価格等との均衡を十分に考慮し査定した後、標準画地と形状・地積等の個別的要因について比較して価格を求めます。

建物については、対象建物と類似の建物の建築費を参考として、新規に再調達する場合の再調達原価を査定し、つぎに、建物の現況及び地域的特性の推移・動向を判断した後、評価対象建物の築後の経過年数を勘案して建物の積算価格を求めます。

価格が増減する要因としては、土地の比準を行う際に個別分析要因を高く(低く)判定したり、建物の再調達価格を求める場合の建築費や経年変化の減価を高く(低く)判定することが考えられます。このような判断の差異が結果として積算価格を増減させることになります。

 

(2)取引事例比較法

取引事例について事情補正及び時点修正を行った上で各事例と対象不動産との価格形成要因の比較を行い、さらに対象不動産を標準画地と比較して比準価格を求めた後、想定した標準画地と対象不動産の形状・地積等の個別的要因について比較して対象不動産の比準価格を求めます。具体的には、標準画地の比準価格に、対象不動産の個別的要因格差率及び地積を乗じて、対象不動産の比準価格を試算します。 いずれの取引事例も対象不動産と代替・競争関係にあり、規範性が高いものを採用します。

時点修正率は、採用した地価公示地の変動率のみならず、一般住宅地の変動率も参考に地価動向を分析して査定します。比準価格は、現実の市場において発生した取引事例に基礎を置くもので、市場の実態を反映し実証的な価格となります。

価格が増減する要因としては、土地の比準を行う際に個別分析要因を高く(低く)判定することが考えられます。事例の選定時点で特別な事情(売り急ぎや買い急ぎ)があるようなものを選択しても、事情補正を行うので価格の増減に直結することはありません。比準の段階での判断の差異が結果として比準価格を増減させることになります。

 

不動産鑑定評価の流れ
2018年09月06日(木)

不動産の鑑定評価にあたっては、最初に鑑定評価の基本的事項を把握し、その後、価格形成要因の分析を行います。

 

(1)鑑定評価の基本的事項

鑑定評価の条件、価格時点、価格の種類、依頼目的、鑑定評価を行った年月日、対象不動産の確認、物的確認、権利の態様の確認を行います。この段階では、鑑定評価の基本的となる重要な点を明確にします。

 

(2)価格形成要因

続いて、一般的要因、地域要因、個別的要因の分析を行います。

 

ⅰ、一般的要因の分析

社会経済情勢の分析を行った後、地価の平均変動率を求め、地価の推移・動向を判定します。

ⅱ、地域分析

対象不動産が所在する地域の概況を明らかにした後、対象不動産に係る市場の特性を適正に分析します。対象不動産の同一需給圏(対象不動産と競争的な関係になる市場というような概念の地域のことです)、想定される需要者、近隣地域の範囲、標準的使用を把握します。

ⅲ、個別分析

対象不動産の状況、対象不動産に係る典型的な需要者層、競争関係にある不動産との比較における優劣、最有効使用の判定を行います。とりわけ最有効使用の判定は、鑑定全体を左右します。たとえば店舗が最有効である場合に、店舗ではなく住宅が存在する場合など、最有効使用との差がある場合には、差をどのように判定するのかという論点に発展します。仮に、最有効使用の判定そのものに差異が生じる場合には、鑑定評価額が大きく異なることになります。

 

地域企業再生論の講義
2018年09月03日(月)

9月になりました。

かねてからお知らせしている通り、9月18日から愛媛大学の正規授業として集中講義を開催します。テーマは「地域企業再生論」で、授業内容は本ホームページの「学会・教育活動」のページで紹介しています。授業で使用するレジュメについてもダウンロードできるようにしてあります。

 

単に地域企業再生の方法論に留まらず、会計学、経済学、経営学の視点から理論に裏付けられた地域企業の再生を理解すべく授業内容を構成しました。あくまで大学における授業ですので、実務面だけではなく理論と実務の融合を目指すことが授業の目的です。

 

次代を担う学生諸君の教育を通し、企業再生のあり方を深めていきたいと考えています。

 

究極の第二会社方式
2018年08月28日(火)

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
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第52回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「究極の第二会社方式」で、その要旨は次の通りです。

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要旨:

事業再生にあたって新たな会社に事業を移転する場合、第二の会社を利用するため第二会社方式と呼びます。この場合、従来の会社との倒産隔離をしておかなければなりません。中には債権者を出し抜く形で詐害的に第二会社方式を強行する例も見られますが、とんでもない誤策です。正しい形で第二会社方式を進めることで節税原資としての営業権を確保し、その営業権を無担保債権者への返済額原資とするのです。第二会社方式による再生は簡単なようで難しいということを理解しておくことが必要です。

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私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。

 

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抵当権消滅請求から競売になった例
2018年08月22日(水)

私が不動産鑑定士として試算したところ、競売を取り下げて任意売却にしたほうが回収額は2倍弱となるような例がありました。また、個別の経済合理性では競売を取り下げる方が圧倒的に有利であるのに、競売の取り下げに応じなかったという例もありました。

 

競売手続が進行した場合には、おそらく低額の落札で終わると予想されたため、債権者たる金融機関に取り下げを勧めましたが、金融機関の論理ゆえに競売続行となりました。金融機関としては個別案件の経済合理性よりも、金融機関全体の論理を優先した結果、競売の取り下げに応じなかったというものです。

 

債務者は200の支払いをするので競売を取り下げるべく債権者に申し入れたものの金融機関の拒絶により競売が継続され、債務者は140と80で入札し、他の札が入らなかったために80で落札したというものです。二重入札で確実性を高めました。

保証金20を負担したものの、100で取得することができたため、債務者にとっては有利な決着となりました。

 

債権者にしてみれば、200を得られるところ、80で終わってしまいましたので、個別の案件として見る限り経済合理性が否定されます。しかし、それは競売の結果であり、「債権者としてやるべきことをやった結果である」「他の回収案件に示しがつかないような解決をしなかった」という点で、いわば個別の経済合理性を否定しても、全体の観点から見れば経済合理性が成り立つというわけです。

 

抵当権消滅請求から競売が取り下げとなった例
2018年08月20日(月)

債権者との交渉の中で、任意売却する場合にいくらなら納得するのかを打診したところ、予定していた評価額を大幅に上回る金額を提示してきた例がありました。そこで月々の返済を停止し、債権者が競売に着手するのを待つことにしました。

 

膠着状態が続き、債権者が競売を申し立てなかったため、抵当権消滅請求を行うことにしました。債務者が用意した第二会社に対象不動産を備忘価格で譲渡した後、抵当権消滅請求を行うことにしたのです。

債権者には丁寧に接し、すべての段階で債権者との連絡を絶やしませんでした。抵当権消滅請求を行うことも直前に報告しました。

 

その後、債権者は抵当権消滅請求を拒絶し、競売を申し立てました。直ちに裁判所選任の不動産鑑定士が売却基準価額の調査を行った結果、予想していた評価額とほぼ同額となりました。債権者としては客観的な価格を把握したかったのです。そこで、再度の交渉を行った結果、売却基準価額を若干上回る金額での任意売却で合意し、債務者が設立した別会社が合意した金額を支払うことで抵当権の消滅を実現したのでした。

 

この例は売却価格を引き下げるために、いわば捨て身の戦術を採用した例です。

全くの他人に競落されてしまうという危険があるものの、金融機関の提示額が明らかに高い場合には、抵当権消滅請求を検討すべきであるということができるでしょう。

債権者は一度、抵当権消滅請求を拒絶していますが、最終的には競売を取り下げたという結果になったのでした。

 

二重入札
2018年08月14日(火)

競売の入札は1回しかできません。同一人が二重に入札しても無効になってしまいます。

別人で入札するのであれば有効ですので、別人名義で重複入札をすることがあります。

 

売却基準価額を100とした場合のイメージ

正常価格     約140(正常価格:売却基準価額=100:約70)

売却基準価額   100

買受可能価額    80(売却基準価額の80%)

保証金        20(売却基準価額の20%)

 

上の例で、一つの札を80で入れます。この際、20の保証金が必要になります。別名義で、もう一つの札を140で入れます。この際、さらに20の保証金が必要になります。この時点で、この競売には二つの札が入ることになります。

 

開札の結果、他に入札がなかった場合は140が一番札で落札になります。ここで、この札を放棄します。保証金の20は負担することになりますが、二番札の80で落札できることになります。すなわち、放棄した20と落札した80の合計100で取得できるわけです。

仮に第三者が80を超え140未満で入れていた場合は、一番札の140で落札します。放棄してしまうと、第三者が落札してしまいますので放棄はできません。この場合、三番札となる80の保証金20は戻りますので、140で落札することになります。

 

このように、名義を変えて二重入札することで、安く入手できることになりますので、第三者の動き(情報)を把握しながら、適切な金額を設定することが大切です。なお、第三者が140以上で入札してきた場合は、落札できなくなってしまいますので、140が妥当かどうかを慎重に判断するべきであることは言うまでもありません。

 

抵当権消滅請求制度
2018年08月11日(土)

競売は債権者が主体的に実行する手段であるのに対し、抵当権消滅請求制度は債務者が主導する形で抵当権を消滅させる手段です。抵当権者の同意を得て行う任意売却の手続がより好ましい手段ですが、適正な価格を提示して任意売却を迫っても、金融機関が応じない場合も少なくありませんので、このような場合には有用な制度ということができます。

 

具体的には次のようなステップで進めることになります。

(ⅰ)対象不動産の買主として別会社を用意する。

(ⅱ)買主が物件を抵当権付きのまま購入し、所有権移転登記を行う。

(ⅲ)買主は抵当権者に、抵当権消滅請求を行う。

(ⅳ)抵当権者が2ヶ月以内に増加競売の申立をしなければ抵当権の効力が消滅する。

(ⅴ)抵当権者が応諾した場合は、代金を抵当権者に支払う。

(ⅵ)抵当権者が拒否した場合は、競売手続が開始される。

 

このように、抵当権を消滅するために消滅請求制度は有効な手段ですが、実際には資金手当てができないのが実情です。なぜならば、新規融資をするのも金融機関であり、同じ金融機関として他の金融機関の抵当権を消滅する目的での融資は行いにくいという事情があります。代金の提供が登記を消滅する前に必要となりますが、一般的に金融機関の融資は抵当権設定を条件としますので抵当権消滅登記前に金銭が必要となる制度は難しい側面があるわけです。

換言すれば、親類縁者からの借入を含め、何らかの形で自己資金を調達できるのであれば有効な手段ということができます。

 

なお、地方都市で実際にあった例ですが、「金融機関に対して抵当権の消滅請求を行う」というだけで、地元の司法書士(複数)は「金融機関との対立行為」と誤解し、金融機関との関係が悪化することを恐れて抵当権消滅請求の手続きを躊躇したことがあります。結局、地元では信頼できる司法書士が見つからず、東京の司法書士に委任することで対処しました。このようなレベルの低い対策が求められることもありますので注意が必要です。

 

債権放棄の合理性
2018年08月07日(火)

損して得取れという言葉があります。この考え方は、債権回収にも当てはまります。

 

一口に債権放棄といっても、それを実現するためには取締役会での検討を経て決せられます。そのためには稟議書を書く必要があります。

稟議書を書くにしても、単に「個々のケースでは法的整理より私的整理のほうが有利です」では通りません。なぜ債権放棄をしなければならないのかについて個別の経済合理性を検討した後、債権放棄をすることに問題がないのかを検証しなければなりません。

 

たとえば債権者側からの提案に全く聞く耳を持たないとか、自分勝手な要求ばかりするとか、そういう債務者の要求を鵜呑みにするわけにはいかないのです。たとえ個々のケースで見れば経済合理性が認められても、身勝手な要求に応じていたのでは他のケースに示しがつかないというわけです。

 

このように、個々のケースだけではなく、全体を見渡す観点から債権放棄の経済合理性を判断することが求められるのです。

 

二つの再生方法
2018年08月02日(木)

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第51回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「二つの再生方法」で、その要旨は次の通りです。

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要旨:

借入金を減らして事業を再生させるには、二つの方法があります。従来の会社がそのまま借入金を削減して再生する方法と、第二会社を利用する方法です。いずれの方法にしても、第一ステージで借入金を削減した後、第二ステージとして飛躍することになります。借入金を削減することは第一ステージの終わりであり、第二ステージの始まりなのです。ここでは二つの方法の概要を紹介し、それぞれについて留意する点を整理しておきます。

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(2)企業の経営者の場合は「GOODWILL PLUS会員」になる必要があります。
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多くの有益な情報を入手できますので、入会することをお勧めします。
私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。

 

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競売の経済的合理性
2018年07月25日(水)

債権者としては債務者の協力により任意売却できればそれで良いともいえます。競売より高く売れるならば経済合理性が肯定されるというわけです。

 

しかし、債務者が設立した別会社に不動産を売却するというような場合、価格の客観性が確保されないという問題が残ります。債権者と債務者が結託して安い価格で移転したのではないかという懸念です。このような懸念を払拭するために競売制度を利用すれば透明性が高まるという面も否定できませんが、単に価格の客観性を確保するだけであれば不動産鑑定を行えば済むことです。わざわざ競売を申し立てる必要はありません。

 

競売により債務者に対する深刻な信用不安というものが生じるという側面もあります。産業の育成、発展をひとつの課題とする金融機関としては、競売という引き金を引くことで債務者の命を絶つような行為をすることは本意ではありません。できれば引き金を引かずに済む方法で解決したいというのが本音なのです。

 

さらに、競売による時間的ロスも問題になります。

売却基準価額を決定し、入札期日が設定される等々、時間がかかるという問題があります。最近は改善されつつありますが、1年近くかかるのも珍しくありません。

一方、債務者が任意売却に応じるのであれば不動産市場で取引を行うことになり、無駄な費用と時間が節約できるのです。したがって、債権者としても競売ではなく任意売却で担保処分をすることが経済的合理性が高いということができるのです。


競売の中止
2018年07月16日(月)

ひとたび競売手続が開始されると、これを停止するには申し立て権者が取り下げるしか道がありません。

資料を取り寄せて金額を把握し、債権者と話し合いを行って債権者が満足する金額を支払うことで取り下げの合意を得るのです。しかし、債権者としては手間暇かけて競売を申し立てているのですから、簡単に取り下げに応じることはできません。

それでも、例えば「特殊な物件であるために金額の算定ができず裁判所の評価を求める場合」などは、比較的、取り下げに応じやすい案件ということができます。この場合には裁判所の評価を基準として交渉がしやすくなるというわけです。

 

簡単に取り下げたのでは他の回収事案への示しがつかない等の理由、すなわち金融機関独特の論理により取り下げに応じないケースもあります。個別案件としては競売を取り下げて任意売却にした方が多額の回収ができるものの、金融機関全体の中で判断した場合には取り下げには合理性がないというような論理になるわけです。特に政府系金融機関や中小金融機関等、柔軟な対応ができないような金融機関の場合に見られるケースといえるでしょう。

 

入札がなかった場合には特別売却となり先着順での落札となります。特別売却でも売却されない場合、買受可能価額を下げて(2割程度)改めて期間入札が行われます。この繰り返しは3回行われ、それでも売却できない場合には「裁判所は競売手続を中止できる」ことになっています(民事執行法68条の3)。

 

競売手続の流れ
2018年07月11日(水)

競売が申し立てられると不動産鑑定士の評価がなされ、その後は裁判所主導により手続きが進められます。一例をあげると、次のようなスケジュールで進められます。

 

期間入札

売却実施処分決定、1月6日

公告開始、2月16日

入札開始、4月5日

入札終了、4月12日

開札、4月19日

売却決定、4月26日

代金納付通知、5月9日

代金納付、5月30日

 

特別売却

売却開始、4月21日

売却終了、4月25日

 

不動産の競売に関して「物件明細書」「現況調査報告書」「評価書」という書類があり、これらは3点セットと呼ばれています。3点セットは時期がくれば誰でもコピーを入手できます。これとは別に、執行に関する「執行事件記録」という書類があり、当事者や担保権者など法律上の利害関係人は閲覧しコピーをとることができます(民事執行法17条)。

 

裁判所選任の不動産鑑定士が作成した評価書も「執行事件記録」の一部なので民事執行法に基づいて、当事者として閲覧できます。当事者だからこそ早めに情報を入手できるというわけです。 債権者もとることはできますが、通常はそこまでしません。債権者にしてみれば、焦って見込み額を知る意味がないです。待っていれば売却基準価額として公示されるのですから、わざわざ裁判所にコピーを取りに行く必要はないからです。

 

リゾートマンションの滞納管理費回収交渉における代替案の形成
2018年07月04日(水)

昨年に引き続き、日本交渉学会の学会誌に査読論文が採用されました。

査読論文の制度とは、匿名の査読者が論文の審査を行い、合格した論文だけが学会誌への掲載が認められるというものです。

 

今回の査読論文の題は「リゾートマンションの滞納管理費回収交渉における代替案の形成」で、さまざまな特性を有するリゾートマンションの滞納管理費回収交渉における抵当権者と管理組合の交渉に着目し、交渉の失敗を回避するための代替案の形成について考察したものです。

 

とりわけ、リゾートマンションの管理費は比較的高額であるのに対し物件価格は低い中で、滞納となった管理費の回収は法的に特別の扱いを受けるため、特に抵当権が設定されている場合に滞納管理費の回収を放置していると、物件を処分して回収することが困難になることが考えられます。

滞納管理費をめぐる各当事者間の交渉の決裂リスクを回避し、経済合理性を高める形で交渉を成立させるための施策について交渉学の視点から検討したものです。

 

興味のある方にはPDFファイルでお送りしますので、お申し出ください。

 

公的支援制度
2018年06月27日(水)

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第50回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「公的支援制度」で、その要旨は次の通りです。

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要旨:

古くは平成15年に始まった中小企業再生支援協議会から、新しくは「よろず支援拠点」など、今では公的支援制度が整備されています。ここでは認定支援機関の制度の他、中小企業再生支援協議会、経営改善支援センター、よろず支援拠点の三つの制度を紹介するとともに、それぞれの制度の使い分けについて整理します。

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会員は(1)会計事務所向けと(2)企業経営者向けに分かれています。

 

(1)会計事務所の先生の場合は「tvs会員」になる必要があります。
下のアドレスから著者名を指定して検索できます。
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多くの有益な情報を入手できますので、入会することをお勧めします。
私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。

 

入会にあたってはお近くの(株)ミロク情報サービスの営業拠点にご連絡ください。営業拠点は下のアドレスから検索できます。
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競売価格の実勢価格との乖離
2018年06月25日(月)

競売価格を求める場合には現状を所与として評価を行うため、取り壊して別用途で使用することが最も有効的な場合には、適正価格と競売価格が乖離しかねないという問題が発生します。

たとえば地方の郊外などで土地価格が安い場所に、取り壊しが求められるような建物が建っている場合は、安い土地価格から高い取り壊し費用を控除することで適正価格が赤字になってしまうこともあります。このような場合でも、競売評価にあたっては、取り壊し費用の減価(これを建付減価といいます)や、建物の古さを勘案した減価(建物観察減価)、売りにくさを勘案した減価(市場性修正)に事実上の限界が設定されることもあります。このため競売価格(売却基準価額)が適正価格(正常価格)を上回ってしまう例も生じることになります。

 

このような場合には競売を行っても入札がなされず、結果的には何回も競売手続きをやり直し、裁判所の判断により少しずつ金額が引き下げられることになってしまいます。競売により風評被害を引き起こすだけではなく、落札者が現れず資産が劣化していくという弊害のみが目立ってしまうのであり、競売制度の限界であるといわれています。

 

某県の事情を調査したところ、建付減価の上限は▲50%まで、建物観察減価の上限は▲70%まで、市場性修正(減価)の上限は▲40%までとするのが一般的のようです。競売価格を求めた調査報告書では、これらの減価率が採用されています。その結果、現況、工場・事務所の対象不動産については正常価格がマイナス評価(備忘価格として1万円)であるにもかかわらず、減価率が十分でないために競売価格が高く評価されています。まさに正常価格と競売価格の逆転現象と額の乖離が生じる典型例であるということができるでしょう。

 

価格決定に不服がある場合は、執行異議の申し立てを行うことができます。裁判所は不動産鑑定士の意見を聞き、異議の理由が認められるなら再鑑定を行います。時間と費用がかかりますが、これは競売の申立人の負担になります。

 

日本交渉学会で研究発表を行います
2018年06月18日(月)

6月23日と24日に日本交渉学会の第31回全国大会(2018年)が開催されます。

会場は明治大学駿河台キャンパス・リバティタワー1125教室です(東京都千代田区神田駿河台1-1)。

 

今回は私も「リゾートマンションの滞納管理費回収交渉における代替案の形成」と題して研究発表を行います。

学会会員以外でも参加可能です(大会参加費:会員3,000円 非会員4,000円 学部学生・院生無料)ので、興味のある方は学会事務局にご相談ください。

 

価格の三面性
2018年06月11日(月)

不動産鑑定評価においては「費用性」「市場性」「収益性」の3つの要素を勘案します(価格の三面性)。

 

「費用性」とはその不動産にどれくらいの費用を投じたかに着目したもので原価方式と呼ばれます。専門用語では原価法による積算価格と呼びます。
「市場性」とは周辺地域で同じような不動産がいくらくらいで取引されているかに着目したもので比較方式と呼ばれます。専門用語では取引事例比較法による比準価格と呼びます。
「収益性」とはその不動産からどれほどの収益が得られるかに着目したもので収益方式と呼ばれます。専門用語では収益還元法による収益価格と呼びます。

 

この3つの要素を勘案し、それぞれの試算価格を比較検討して最終的に価格が決定されるのですが、どの試算価格を重視するかは、「住宅用か商業用か」「既存の不動産か新しく開発した不動産か」「環境を優先するか利便性を優先するか」等々の違いによって変わってきます。用途や、性格、収益性等の様々な要因から最も有効な使用方法を判断し価格を決定します。

 

競売が申し立てられると裁判所選任の不動産鑑定士が鑑定を行い、この鑑定に基づいて裁判所が売却基準価額を設定します。売却基準価額とは最終価格ではありませんが、ひとつの目安であることは間違いありません。

 

競売の場合は一般の不動産市場と異なり、売主の協力のない売買であること、事前に物件に立入ることができず引渡しの保証等の安全性が確保されていないこと、保証金を必要とし代金も即納しなければならないこと、同時履行の関係になく引渡しまでの期間が必ずしも保証されていないこと、さらに土地境界は原則として確定したものでなく地積も原則は公薄渡しであること等の特殊性を有しているため、この特殊性が競売価格を低下させる要因になります。

 

なぜ競売価格は低いか
2018年06月04日(月)

不動産の競売市場については特別の事情があります。

 

一般の不動産市場と異なり売主の協力のない売買であること、事前に物件に立入ることができず引渡の保証等の安全性が確保されていないこと、保証金を必要とし代金も即納しなければならないこと、同時履行の関係になく引渡までの期間が必ずしも保証されていないこと、土地境界は原則として確定したものでなく地積も原則は公薄渡しであること等の特別な事情があります。

 

これらの事情を有しているため、評価に際しては、この事情が売却基準価額に反映されることになるのです。
実際には正常価格を3割程度減額した価格が売却基準価額として設定される例が多いようです。

 

平成17年4月から改正民事執行法が施行されました。従来の最低売却価額制度が見直され、新しく売却基準価額・買受可能価額の制度が導入されています。売却基準価額は、これまでの最低売却価額と同じ価格水準です。

 

正常価格:売却基準価額=100:約70という関係になります。なお、不動産鑑定理論では正常価格(かかく)と呼び、競売実務では売却基準価額(かがく)と呼びます。

 

売却基準価額から2割を控除した額は買受可能価額と呼ばれ、買受可能価額以上の額であれば、入札することができます。売却基準価額と買受可能価額の両方が開示され、入札の際の保証金額は原則として売却基準価額の2割となっています。保証金は落札した場合には代金に充てられますし、落札できなかった場合には返金されます。

 

鑑定評価における正常価格
2018年05月30日(水)

不動産の鑑定評価にあたって、特に条件がなければ正常な市場を想定して価格を求めます。これを正常価格と呼びます。その価格は比準価格、積算価格、収益価格の3種類に分かれます。

 

取引事例比較法の比準価格

市場性に着目し、類似の不動産の取引価格と比較して求められる価格です。取引動向に左右されますが、一般的には他の方法に比べて高めに求められる傾向があります。

 

原価法の積算価格

コストに着目し、土地と建物の価格を別々に求めて合計するものです。

 

収益還元法の収益価格

生み出す収益に着目し、純収益を利回りで還元して求める価格です。収益をどのように求めるかによって左右されます。一般には取引価格に比べて低くなります。

 

不動産の類型に応じ、例えば貸家であれば収益価格が重視されますし、自用の不動産であれば、積算価格や比準価格が重視されることになります。一定の許容範囲内で不動産鑑定士が判断することになります。利回りを高くすれば価格は安くなりますし、利回りを低くすれば価格は高くなります。許容範囲の中で価格は上下する余地があるのです。

 

不動産鑑定士が求めた価格は価格の範囲ではなく、具体的な金額で示されます。例えば比準価格が1億円で、収益価格は8千万円の場合に、不動産鑑定士は根拠を示しつつ、たとえば9千万円とか、8千万円という具体的な一つの金額で示すことになります。

価格はピンポイントで示すことになっているため、8千万円から9千万円といった範囲で示すことはありません。すなわち、不動産鑑定士が異なれば鑑定評価額も変わるのです。高値もあれば安値もあるというわけです。正常価格には範囲が生まれるため、極端な高値・安値の鑑定評価は不当鑑定として否認されるとしても、許容範囲でのバラツキは排除できません。

 

特定調停の利用
2018年05月25日(金)

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第49回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「特定調停の利用」で、その要旨は次の通りです。

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要旨:

民事調停法の特例として「特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律」(特定調停法、平成12年2月17日施行)があります。特定調停は裁判所の調停委員が調停により利害関係を調整するものですが、法的拘束力は無く、債権者は調停に応じる義務はありません。よって、特定調停による解決を行うのであれば事前に根回しをしておき、調停の場で最終確認をするという方法が効果的です。ここでは特定調停について概要を整理します。

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記事を読むにはミロク情報サービスの会員になる必要があります。
会員は(1)会計事務所向けと(2)企業経営者向けに分かれています。

 

(1)会計事務所の先生の場合は「tvs会員」になる必要があります。
下のアドレスから著者名を指定して検索できます。
http://tvs.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html

 

(2)企業の経営者の場合は「GOODWILL PLUS会員」になる必要があります。
下のアドレスから著者名を指定して検索できます。
http://goodwill.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html

 

多くの有益な情報を入手できますので、入会することをお勧めします。
私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。

 

入会にあたってはお近くの(株)ミロク情報サービスの営業拠点にご連絡ください。営業拠点は下のアドレスから検索できます。
http://www.mjs.co.jp/office/tabid/479/index.php#no2

 

土地の価格の種類と価格水準
2018年05月19日(土)

不動産は土地と建物で構成されています(正確には土地とその定着物)。その価格には複数のとらえ方があります。

建物は、同じものを新築する場合の新価、経年減価を勘案した時価で大きく分かれます。土地は、一物五価ともいわれるように、複数の制度化された価格が存在します。例えば、公示価格や路線価、固定資産税評価額などです。金額の目安としては公示価格100として路線価は約80、固定資産税評価額は約70という水準で収められています。

 

時価

実際に売買される価格は、まさに時価となります。しかし、実際に売買しないと時価が判明しないというのでは困ります。そこで、専門的な国家資格者である不動産鑑定士には「実際に売買されるであろう価格」を想定して時価(正常価格)を鑑定することが認められています。

 

公示価格

全国の都市計画区域に選定した標準地の毎年1月1日時点の価格を毎年3月下旬に国土交通省が公表する価格です。これは全国の不動産鑑定士の評価を基に国土交通省が公示しています。公示価格は土地価格の基準となる価格です。時価に比べて若干低い金額になっているのが普通ですが逆転現象も生じています。

 

基準地価

都道府県が不動産鑑定士の評価を参考に毎年7月2日時点の価格を毎年9月に公表しています。公示価格が都市計画区域内を対象としているのに対し、基準地価は区域外の林地等も対象としています。

 

路線価

国税庁が毎年1月1日時点の市街地の街路の価格を毎年8月上旬に公表しています。相続税や贈与税の計算をする場合に活用する指標とされています。路線価は公示価格の80%程度の価格となっています。

 

固定資産税評価額

各市町村が1月1日現在の土地、家屋、償却資産の所有者に対し、その固定資産の価格(固定資産税評価額)を基に固定資産税が課されます。この基準となる価格が固定資産税評価額で、これは3年毎に見直されています。固定資産税評価額は公示価格の70%程度の価格となっています。

 

ミュンヘンに滞在します
2018年05月17日(木)

2018年5月31日から6月15日までドイツ・ミュンヘンに滞在することになりました。

ミュンヘンは30年前に1年間、留学した所であり、現在の私の「基本を形成」してくれた第二の故郷です。

日本とドイツは時差が7時間あることから、電話連絡が不自由になります。 つきましては、この間は電子メールにて連絡をさせていただきます。

ご連絡にあたっては、下記のアドレスをご利用ください。

 

takahashi@chiyoda-cmt.com

 

時間差は生じますが、返信します。

ご理解のほど、宜しくお願いいたします。

 

SWOT分析が必要な理由
2018年05月14日(月)

SWOT分析は、評価対象企業の強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)について検討することで、それぞれの頭文字をとってSWOT分析と呼ばれています。

強みと弱みはその企業の内部環境を表し、機会と脅威は外部環境を表しており、SWOT分析により事業の優劣や特性を把握することで、見積られるキャッシュフローの合理性を検証することが可能になるというわけです。

 

SWOT分析は経営学部を例にとれば学部の学生レベルが学ぶような基礎知識です。

SWOT分析を通じて事業計画の実行可能性を検討しても完全な将来予測は困難ですが、SWOT分析さえしないで計画を作成しても、説得力に欠ける我流と判断されてもいたしかたないでしょう。

 

将来のキャッシュフローが合理的に見積られているかどうかを分析するためには、事業を取り巻く経営環境について正しく理解することが求められるのであり、そのためには古典的であるもののSWOT分析が求められているということができるのです。現に認定支援機関向けのマニュアルに掲げられている事業計画の雛型においてもSWOT分析が採用されています。

 

債務者が営む事業をGOOD部門とBAD部門に区別し、BAD部門を縮小・売却・清算する方法も、古典的とはいえ試みることは有意義であるといえます。債務者の返済能力に関わる情報を債権者と債務者の間で正しく共有し、事業を取り巻く経営環境を正しく理解したうえで事業計画を作成することが求められます。

小難しい理論や複雑な方法が求められているのではありません。むしろ単純でわかりやすい経営計画が求められているのです。奇抜なアイデアに基づいた曖昧な計画よりも、手堅い計画が求められていることに留意すべきです。

 

短期返済能力と長期返済能力
2018年05月06日(日)

債務者の返済能力とは何でしょう。

この返済能力は、二つの返済能力に分けてとらえることができると思います。ひとつは、たとえば1年間でいくら返済できるかという短期的な返済能力です。もうひとつは、○年間でいくら返済できるという長期的な返済能力です。

 

一般的に、会社の会計期間は1年ですので、ここでも短期的な返済能力は1年としてとらえることにします。そうなると、長期的な返済能力は年間返済額×年数としてとらえることになります。

もし、債務者が1年に獲得できる利得の全部を債権者に返済するとしたら、債務者はヤル気が起きないかもしれません。債務者にも何らかの配分があるからこそ、ヤル気が起きるのです。だからといって、多くの配分を債務者に与えたのでは、債権者が黙っていません。そこで、どこで折り合うかという問題が生じることになります。

 

ところで、年間返済額×返済年数で求められる長期の返済能力は、まさしく返済期間の長短により左右されることになります。この返済期間を決めるのは債権者の自由なのです。なぜならば、債務者には返済義務があるのですから、全額を返済するまで継続しなければなりません。たとえ何十年かかろうが、債権者が受け入れる限り返済する義務を負うのです。

 

しかし、たとえば全額返済に100年以上かかるような場合に、100年間も債務者が返済に追われるようでは、債務者のヤル気が起きないのも無理のないところです。債務者のヤル気が起きなければ、短期返済能力が下振れしてしまうため、結局は長期返済能力も下振れするというジレンマに陥ってしまうのです。

 

債務者のヤル気を確保することを「インセンティブを与える」というように表現します。債権者の事情を勘案しながら個別合意をすること(合意の個別化)と、債務者の利得を確保するために返済期間を有期可すること(返済の有期化)が解決策として有効になります。この点について、『不良債権をめぐる債権者と債務者の対立と協調』と題してミクロ経済学の視点から論文をまとめ、2011年に経済学の博士号を拝受しました。ファーストプレス社から出版していますので興味のある方は参考にしてください。

 

情報の非対称性と交渉の決裂リスク
2018年05月01日(月)

金融論の世界では、融資取引にあたって情報の非対称性が存在するのは常識です。情報の非対称性が存在することを前提として、メインバンクシステムとか、リレーションシップバンクシステムといって、金融機関が債務者の情報を少しでも多く把握することで、情報の非対称性を緩和するべしと説かれているのです。

 

不良債権になると、話は一層深刻です。

たとえば債務者が「当方の返済能力は年間で100が限度です」と主張したところで、債権者に「いや、年間で120は返済できるはずだ」と言われたのでは話がまとまらないというわけです。債権者が債務者の実際の返済能力を過信したがために、まとまる話もまとまらなくなってしまうのです。まさに、「情報の非対称性」ゆえの悲劇です。

 

貸付金の返済にあたって、債権者が納得する返済額は債務者の返済能力内にあるとは限りません。債権者は債務者の返済能力の限度を知らず、債務者は債権者が受忍できる下限値を知らないからです。

債権者は債務者の努力水準を把握できず、よって返済額を把握できないため、債権者の要求は、時として債務者の能力を超えたものとなり、交渉決裂リスクを有することになるのです。

債権者が債務者の返済能力の上限値を超える要求をすると、債務者は返済できないので破綻してしまうというわけです。言い換えれば、破綻するかどうかは、債権者の要求如何にかかっているのです。債務者としては債権者が過大な要求をしないように、真の返済能力を債権者に理解してもらうことが大切なのです。

 

会社の清算
2018年04月28日(月)

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第48回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「会社の清算」で、その要旨は次の通りです。

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要旨:

第二会社方式で事業再生を成しとげた場合に、従来の会社は清算することになりますが、会社を清算するには費用と時間がかかります。債務超過の恐れがある株式会社は、普通清算ではなく特別清算をしなければなりません。ここでは会社の清算について整理します。

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記事を読むにはミロク情報サービスの会員になる必要があります。
会員は(1)会計事務所向けと(2)企業経営者向けに分かれています。


(1)会計事務所の先生の場合は「tvs会員」になる必要があります。
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http://tvs.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html


(2)企業の経営者の場合は「GOODWILL PLUS会員」になる必要があります。
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私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。


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誤った法的整理の例
2018年04月23日(月)

以前、私が金融機関の回収責任者を務めていた時の事例に、次のようなものがありました。

主たる債務者の経営が破綻し民事再生手続が開始されました。その中で、経営権を他人に譲渡するという再生計画が成立しました。経営権を他人に奪われた典型例です。

民事再生法の適用を申請する前に、債務者から相談はありませんでした。突然、民事再生手続の開始を申し立てたのです。


私は「弁護士に恵まれなかったのだなあ」と感じました。「弁護士ではなく、債権者である我々に泣きついてくれば少しは協力したのに・・・」と思ったのです。もともと、「無理な返済を求めていた」と考えていましたので、「泣きついてくれば減額や事実上の一部免除の相談に乗ろう」と内心では考えていたからです。ところが何の連絡も無いまま、債務者は民事再生法にすがったのでした。


経営権を他人に奪われた経営者は自己破産しました。

他人に経営権を移譲することで主債務者である法人は「再生が成功」したわけです。一方、連帯保証人でしかない経営者は自己破産したのです。不幸な話です。


事前に相談しなかったのは本人の責任です。弁護士に相談するのも良いのですが、それよりも債権者に相談すべきだったのです。せめて、弁護士を通して債権者に相談すべきだったのです。債権者に相談せずに、事務的に民事再生法に頼ったという点では弁護士の怠慢かもしれません。


話はこれで終わりません。実は、経営者の親族も保証人だったのです。

債権回収の責任者として私は、「あ、この親族は破産手続をしていないな。とりあえず請求しておこう。回収額はせいぜい100万程度かな」と思いつつ、返済するように書面を郵送しました。すると半月もしないうちに弁護士から手紙が送られてきました。いわく「自己破産を申立てることになった」とのことでした。

そのときも、一切の相談がありませんでした。

相談があれば100万で解決できた事例なのです。たった100万で破産しないで済んだのに弁護士が事務的に進めたために破産させられたという、無益な法的整理の典型例の一つです。

事業再生の進め方を知らない弁護士に任せると、とんでもないことになるので注意が必要です。


法的整理が有益な場合
2018年04月18日(水)

どのような場合に法的整理が有益なのでしょうか。

たとえば債権者が多数であったり特定できない場合は、私的整理で合意を得ることが難しく、この場合は法的整理により裁判所の力を借りて強制的に合意形成をすることが得策となります。

さらに、私的整理で計画の合意を形成しようとしても、一部の少数債権者が不合意である場合 には、法的整理の多数決原理で強制的な合意を形成することも考えられます。少数の非協力的債権者を排除するわけです。


但し、法的整理で合意が形成されない場合には破産手続きに移行してしまいますので、あらかじめ主要債権者との根回しを行うことで、合意が得られるような準備をしておくことが大切です。せっかく再生を目指したのに、根回しが不足していたために破産の憂き目を見るようでは泣くに泣けません。

根回し不足による失敗は、「有益であるはずの法的整理が不利益になってしまう」という大きな失敗です。

未だに、このような失敗が散見されるのは困ったものです。


私的整理は二種類ある
2018年04月14日(土)

一口に私的整理といっても単純ではありません。一括合意型と個別合意型があるのです。


一括合意型とは、既述のような合実計画を作成し、全金融機関の合意を求めるものです。バンクミーティングを開催する、あるいは、再生支援協議会の場を利用する等により、全ての金融機関の合意を一括して得るという意味で一括合意型の私的再生といえます。

個別合意型とは、全ての金融機関の合意を得られない場合に、たとえば抵当権を有する債権者と個別に話しあって、先に合意を得て不動産を第二会社に移転する等が代表的な事例です。 一括合意ができないから個別に合意をするというわけです。


個別合意が成立するかどうかは個々のケースによって異なりますが、競売価格や競合第三者の提示価格よりも上回る金額であれば、抵当権者たる債権者の個別合意を得やすくなるといえるでしょう。


私的整理のメリット
2018年04月12日(木)

債務者の立場から事業再生を考えると、私的整理のメリットは魅力的です。外部に知られないことから風評被害にさらされる危険はないわけですし、また、債権者との合意を得ることで柔軟な対応が可能なのです。

この点は極めて大きなメリットです。

たとえば、抵当権を有する債権者と個別に話し合い、債権者の合意が得られるのであれば、任意の先にサッサと処分してしまうことができるのです。いちいち裁判所の確認を得る必要はありませんし、全体計画に拘束されることもありません。


債務者が主導する形で財産処分や計画立案を進めることができるのが大きなメリットです。

相談相手がいるのであれば、「法的整理ではなく私的整理が望ましい理由」を尋ねてみることをお勧めします。答えが、「風評被害を避けることができる」という点のみであり、「私的整理は柔軟な対応ができる」という点が抜けているようであれば、相談相手の技量を大いに疑うことをお勧めします。


私的整理は相対的に合意を取り付ければ柔軟に進められるのですから、債権者を小まめに回り、債務者主導の計画を進めるべきなのです。魅力的な私的整理を先行させるべきなのですが、往々にして弁護士は法的整理に誘導する傾向があります。 個々の債権者を訪ねて合意を取り付けるよりも、裁判所の威光を借りて、法的、事務的に進めた方が楽だからです。

法的整理は抵当権の実行を停止させたり、多数決により小額債権者の抵抗を阻止したりする効果が期待されますが、半面、再生計画に債権者の合意が得られなければ破産手続に移行するという危険もあるのです。慎重な対応が必要なのであり、むやみに法的整理を進めると逆効果にもなりかねません。


私的整理と法的整理
2018年04月06日(金)

法的整理とは端的に言えば裁判所を通して会社整理を行うことです。一方、私的整理とは裁判所を通さずに行う手続をいいます。


私的整理は債務者と債権者が債務の返済方法について話し合いを進め、個別的あるいは集団的な合意によって処理を進める手続ですので、法的整理のように多数決によって少数者の権利が変更または制限されることはありません。あくまで債権者の個別の同意がなければ債権者の権利内容が変更されるものではなく、合意するかしないかは個々の債権者の自由です。


私的整理は法的整理に比べて、迅速かつ低廉に進められる点がメリットです。法的整理の場合には手続終了まで数年以上かかるのも珍しくなく、申立てにあたって裁判所に多額の予納金を納めなければなりません。私的整理ではこのような予納金は不要となります。

私的整理は債務者と債権者の間の話し合いで進められるため、取引先などの外部の第三者に知られないという大きなメリットがあります。

さらに、私的整理では、債権者の取扱いに差を設けるなどの柔軟な対応が可能であるというメリットもあります。たとえば債務免除を行うにしてもメインバンクが多くを負担するというような再生計画であれば債権者の合意は得られやすくなるのであり、メインバンク寄せという対策が講じられることも少なくありません。


一方、デメリットとしては私的整理の場合は不正が起きやすいということが挙げられます。

裁判所を通さずに行われるために、強行な姿勢を貫く債権者からは合意を得られない場合には私的整理そのものが進められないこともあります。 この場合は、一部債権者による内整理ということが選択されることになります。また、私的整理を規制する法律はないため、いつ何時、債権者の態度が変わり、競売などの法的手段を講じてくるかが不明であるという不安定要素も否定できません。さらには、債権者側としては債務者の履行が確実に行われるのかという懸念があるのもデメリットといえます。


競売より任売が望ましいこと
2018年03月30日(金)

競売には様々な危険があります。

競売により資産を奪われるという危険だけではなく、競売により債務者に対する深刻な信用不安というものが生じる危険もあります。場合によっては風評被害が企業に致命的な打撃を与えることもあります。


さらに、競売による時間的ロスも問題になります。売却基準価格を決定し入札期日が設定される等々、手続に時間がかかるという現状があります。最近は改善されつつありますが1年以上かかるのも珍しくありません。


産業の育成、発展をひとつの使命とする金融機関としても、競売という引き金を引くことで債務者の命を絶つことは本意ではなく、できれば引き金を引かずに済む方法で解決したいというのが本音 なのです。

債務者が任意売却に応じるのであれば不動産市場で取引を行うことになり、無駄な費用と時間が節約できます。その上、高い金額で処分できる可能性もあります。したがって債権者としても競売ではなく任意売却で担保処分をすることが望ましいのです。


もし第二会社で担保不動産を買い戻したいのであれば、価格の妥当性を確保しつつ任意売却で処分するのが無難です。周到な計画の基に進めるならば良いのですが、安易に競売手続きに持ち込み、第三者に奪われる危険を冒すべきではありません。


債務者の防衛行動
2018年03月27日(火)

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第47回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「債権者の防衛行動」で、その要旨は次の通りです。

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要旨:

法的整理の弊害を回避し、事業再生をスムーズに進めるためには、どうしても債権者の協力が必要になります。債務超過を解消するためには債権放棄を受けることが最も効果的ですが、中小企業のために銀行が債権放棄に応じることは困難です。債権放棄が容易でない中で、仮差押えを避けるため取引口座を変えたところで不十分です。口座の変更は一時的な避難にすぎません。ここでは事業再生における債務者の防衛行動と各種の制度について整理します。

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事業再生後の第二のステップ
2018年3月20日(火)

事業再生を成功させた経営者が、第二のステップに移行するには本業の成績を伸ばすことが求められます。

借り入れ過剰であったために不良債権に分類されていた当時は、返済に追われるだけではなく、新規の融資を獲得することもできず、経営成績を伸ばすには様々な足かせがあったのです。そのため、思うように成績を伸ばすことができなかったというわけです。


事業再生が成功し経営が安定すると、金融機関からの融資が可能になります。

まさに第二のステップに移行することで、一層の発展が期待できることになります。


今回の新刊は、自動車、不動産、保険の営業を取り上げ、それぞれの営業成績を伸ばすために会計と税務の基礎知識を習得することを目的にしました。第8章は各業種別に異なる内容になっていますが、第7章までは共通の内容です。したがって、取り上げた3業種以外でも、応用することができるようになっています。


本書が、経営者と従業員が一丸となって第二ステップを成功させるための一助になれば幸いです。


新刊のお知らせ
2018年3月14日(水)

新刊が店頭に並ぶことになりました。

既にアマゾン等のネット書店では取り扱いを開始しています。


今回の新刊は、会計と税務の基本的な知識を整理した後、特定の業種に絞る形でビジネスにおいて知識を活用できるように工夫しました。特定の業種として自動車営業、不動産営業、保険営業の3つを取り上げ、3分冊としてあります。これらの業種のビジネスマンが、会計と税務の知識を活用して顧客にアプローチする方法を整理しました。

事業再生を成しとげて、第二の飛躍を図るためにも、自社の競争力を高めることが求められます。

単に「当社の商品は良いです」「ぜひ、購入をお願いします」では、顧客のニーズを満たしているとはいえません。会計と税務の知識を活用し、税効果を強調する形で顧客にアプローチすることで信頼を獲得でき、ひいては他社との競争に勝ち抜くことができるのです。

かかる観点から、事業を発展させるための基礎知識を整理したつもりです。


詳しくは、「出版物紹介」のページをご覧ください。


競売を誘発することの危険性
2018年3月10日(土)

競売制度を利用して裁判所の評価を受け、これを基に債権者と交渉を行い、競売を取り下げてもらうという方法もあります。この方法は拙著の中でも繰り返し紹介しています。

ただし、この方法はそれなりの根回しが必要です。むやみに競売を誘発するのは危険ですから注意して欲しいと思います。


無責任なコンサルタントのアドバイスに従い返済を停止し競売に持ち込んだ後、「買い取りをしたいので競売を取り下げてくれ」と銀行に申し込んだが断られたという経営者からの相談は後を絶ちません。

典型例として、銀行からは一定の提案があったのにこれを無視し返済を止め競売に持ち込んだものがいくつも見られます。断られた段階で当社に相談が持ち込まれるものの、「時すでに遅し」となることが少なくありません。銀行の言い分としては、「当行からの提案を無視され、競売の稟議まで上げたものを今更、逆提案をされても応じられない」という、至極当たり前の返答になるわけです。


銀行には「コンサルタントの無責任なアドバイスを真に受けてしまった」という経緯を説明したところで、安価での買い戻しには応じられないという銀行の主張は変わりません。

度重なる交渉により、競売を取り下げてもらうことはできるとしても、当初の銀行提案で決着することになれば良い方です。

なんのことはない、話が元に戻っただけのことです。無責任なアドバイスに従ったがための綱渡りであり、危うく大切な資産を失うところだったのです。


競売価格が安くなる理由と競売価格の客観性
2018年03月07日(水)

競売は一般の不動産市場と異なり、売主の協力が得られない売買であること、事前に物件に立入ることができず引き渡しの保証等の安全性が確保されていないこと、保証金を必要とし代金も即納しなければならないこと、同時履行の関係になく引き渡しまでの期間が必ずしも保証されていないこと、さらに土地境界は原則として確定したものでなく地積も原則は公薄渡しであること等の特殊性が見られます。


これらの事情を有しているため、評価に際しては特殊性が売却基準価格に反映され、任意売却と比べて安い金額になるのです。

実際には正常価格の7割程度が売却基準価格となることが多いようです。


債権者としては債務者の協力により任意売却できるならばその方が有利になります。一般に、任意売却の場合は競売で処分するより高く売れるので経済合理性が肯定されるからです。

債務者が設立した別会社に不動産を売却するという場合のように、任意で売却したとしても価格の客観性が確保されないという問題が残ります。

債権者と債務者が結託して安い価格で移転したのではないかという懸念です。このような懸念を払拭するために競売制度を利用すれば透明性が高まるという面も否定できません。


個別合意と有期返済がカギになる
2018年03月01日(木)

債権者によって満足額が異なるところ、全債権者を対象に、一律の事業再生計画を提示して合意を得ることは時として困難を伴います。

このような場合、全債権者を対象に一律合意を目指すのではなく、私的整理を進める過程で個々の債権者と個別合意を目指すことで事業再生計画を成立させるというのは私的整理の最大のメリットであるといっても過言ではありません。


もちろん、債務者が努力しないと債権者のためにもなりません。債務者の利得の一定部分を債権者が取り上げるとすると、債務者は努力水準を減らしてしまい、努力を減らした結果、望ましい返済能力が実現できなくなってしまうのです。感覚的に、わかりやすく言い換えるならば、「せっせと努力しても、どうせ債権者に持っていかれるのなら、馬鹿馬鹿しいから努力するのはやめよう・・・」ということになってしまうのです。


何らかの形で、債務者のヤル気を確保しなければならないのであり、たとえば債権者が納得した債務者の返済能力による利得の全額を、債権者が納得した期間に渡って債権者に全額を与えるという方法が考えられます。永久に返済を続けるとなれば債務者のヤル気が失われてしまいます。よって返済期間は有期である必要があるのです。


このように、一括合意を目指すような計画が全てではなく、「債権者別の個別合意」と「回収期間の有期化」が、債権者と債務者の双方の利得を最大にするために望ましい方法となる場合もあるのです。


債権者の回収行動(訴訟)
2018年02月27日(火)

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第46回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「債権者の回収行動(手続)」で、その要旨は次の通りです。

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要旨:

前回は債権者の回収のための手続について概要を整理しました。今回は、回収のための訴訟について整理します。

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債務者ではなく債権者が判断すること
2018年02月20日(火)

債務者から「このままでは全額返済に50年かかる。10年分の返済をするから残余を放棄してくれ」と求めたり、あるいは、「全額返済に50年かかることを隠して10年で完済する」との偽の計画書を提示してはなりません。


「このままでは全額回収に50年かかる。しからば、10年分の一括回収で満足することとし、残余は債権放棄をするか・・・」これは、債務者ではなく債権者が判断することなのです。

このあたりを見失っている事例が増えてしまっています。

債権回収の何たるかを知らない偽専門家が、場当たり的な対応をしている例が多いのは困ったものです。


交渉技術を有していない弁護士に交渉を任せるのは、藪医者に手術させるようなものです。

能力のない弁護士には十分に注意することが必要です。


正しい返済能力を開示すること
2018年02月16日(金)

実際は10年どころか50年以上かかるにもかかわらず、返済能力を偽り達成不可能な多めの返済をすることで10年で完済するとの計画を策定したとしましょう。


背伸びをして10年で返済するとしたところで、1年後には化けの皮が剥がれて、再計画の策定となるのは目に見えています。1年の時間稼ぎに過ぎないのです。

時間稼ぎをしている間に債務者が再生できるならば、まだ良いかもしれません。しかし、債務者の再生が目的ではなく、その間に債権者がせっせと貸倒引当金を計上し、債務者の破綻に備えているとしたら本末転倒です。

債務者としては実際に達成可能な計画を提出し、完済には50年以上かかることを提示すべきなのです。


計画が実態を正しく表わしているならば、債権者としては、完済まで50年を待つか、あるいは一括回収を目指すかの判断をすることになります。この場合の一括回収とは、たとえば10年分の融資を行う別の金融機関を利用して10年分の回収を行い、残余を放棄するというものです。


いわゆる第二会社方式で、債務者自らが買い受けるという方法はこの考え方に他なりません。第二会社方式については拙著でも繰り返し紹介しているので参考にしてもらいたいと思います。

債務者から債権放棄を求めたり背伸びした返済計画を提示してはならないのです。


実現可能な計画を作るべし
2018年02月12日(月)

「銀行主導で計画を作らされた」「銀行が紹介した会計事務所が作成した」「バブル期の計画と大差ない計画を提出させられた」等々、およそ達成不能な内容の再生計画が作られることが少なくありません。

「銀行が勝手に計画を作ってきた」という零細企業もあります。共通しているのは、「無理な内容だが、債務者が再生するように作られている」というところです。


実際に計画の内容を見ると、本来ならば、超長期の返済期間が必要であるにもかかわらず、とてもではないが計画の達成は無理だと思われるような短期間での返済を実現するような計画が見られます。「そんな計画が実現するならば、今のような状況には至らなかっただろう」というような内容です。笑い話にもなりません。


たとえば売り上げを大きく伸ばしてみたり、あるいは、経費を大きく減らしてみたり、なかには、その両方で超健全企業になる計画すらみられます。

このような達成不能な計画をそのまま提出して良いのでしょうか。融資を引き出すためとか、返済猶予を認めてもらうためといった理由で、達成不能な計画を作成し提出することがみられます。

このような取り組みについて私は否定的です。


新規の融資を受けられるならばともかく、達成不能な計画でお茶を濁したところで単なる時間稼ぎにしかなりません。新たな融資をしてもらえるわけでもないのですから、むしろ達成可能な範囲で計画作成し提出することで真の返済能力を提示するべきなのです。


達成できない計画は無意味
2018年02月06日(火)

債権者主導で無理な計画を作ったのか、債務者主導で作ったのかは別として、無理な計画は期間の経過とともに達成できないことが発覚してしまいます。


背伸びしたところで不良債権化した先に新たな融資は行われません。そうであれば、早いうちに事実を告知することで不良債権化していることを公表し、貸倒引当金を多く計上するように誘導すべきです。貸倒引当金が多ければ債権放棄がしやすくなるからです。


偽りの計画を基に債務者区分を要管理先に留めるのではなく、真の計画を基に区分を破綻懸念先に格下げすることで貸倒引当金を正しく計上するように誘導することで債権放棄に向けて準備を進めるというわけです。拙著「どうしたら銀行に債権放棄をしてもらえるか」(ファーストプレス刊)で詳述しましたので、是非参考にしてもらいたいと思います。


債権者に対して事実を正しく伝えることから不良債権の解消に向けて、金融機関との交渉が始まると言っても過言ではないでしょう。無理な計画を提示するなどということは、事実を正しく伝えていないという点でまったく無意味なのです。


このことは過去において粉飾決算を行った場合も同じです。

在庫で調整したりして売上を伸ばしたり、あるいは、評価損を立てずに資産のままにしておいたりと、調整の仕方はさまざまでしょうが、過去の粉飾についても正直に開示するべきです。金融機関としても薄々気づいている場合が多いのです。それを正直に告白することで、過去は事実ではなかったが、現在と将来は正しく処理していることを裏付けることにもなります。だからこそ、過去の過ちは正直に告げるべきなのです。もちろん経営者の定性評価は大きくダウンします。正直に告白すれば常に免罪符を得られるわけではありませんので誤解のないように注意してください。


背伸びした再生計画
2018年02月03日(土)

背伸びした再生計画を策定し、金融機関に提出する例が少なくありません。無理な再生計画を策定するケースは、ふたつに大別することができるでしょう。


ひとつは、銀行には詳細を伏せる形で背伸びした再生計画を策定する場合です。これは新しい融資を引き出したいがために、無理な計画を策定する場合が典型的な例です。少しでも経営状態を良くみせることで新しい融資を引き出したり、他行への返済のための融資を求めるというものです。


実際には新しい事業への融資が行われるわけでもなく、下手をすれば「偽の決算書により融資を引き出した」という詐害行為により詐欺罪が成立する恐れすらあります。きわめて危険な行為だと思います。

新規の融資ならともかく、「借りて返す」ということの繰り返しをしていたのでは、いつまでたっても残高は減りません。新たな事業を進めるわけでもないのに、背伸びした計画書を提出するのは、無駄な抵抗をしているようなものです。


もうひとつは、銀行の指導により背伸びをした計画に誘導された場合です。

これは一昔前、不良債権の処理が急がれていた時代には散見されました。本来ならば、もう少し悪い査定をしなければならないのに、そうなると貸倒引当金を多額に計上しなければならないので、銀行が主導する形で背伸びした再生計画を策定することで債務者を少しでも良く見せ、程度の軽い不良債権を装っていたのです。


債権者の回収行動(手続)
2018年01月31日(水)

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
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第45回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「債権者の回収行動(手続)」で、その要旨は次の通りです。

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要旨:

債権者が債権を回収するためには、さまざまな方法を駆使することが必要になります。不良債権の回収などの本格的な回収は、多くの場合に本部の管理部門が行います。いわば回収の専門部隊です。筆者は損害保険会社の本店回収部隊で回収責任者を務めていました。債権者が行う債権回収行動は手続と訴訟に大別されます。今回は債権者の回収行動について代表的なものを紹介することにします。なお、ここで紹介する方法はあくまでも一例にすぎません。他にもさまざまな方法があることに留意してください。

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法的整理によらない保証債務の免責
2018年01月23日(火)

不謹慎な弁護士などは無意味な破産を勧めることがあります。その方が事務的で簡単だからです。中には、売らなくても良いのに債務者に資産を売らせ、破産手続きの中で手数料を稼ごうとする輩もいます。本当に注意してもらいたいと思います。


自己破産に持ち込み、自己破産手続きの過程でM&Aを持ちかけることで手数料を稼ごうとするコンサルタントもいます。一体、誰が味方で、誰が敵なのか…、十分に見極めなければなりません。


自己破産を勧める輩がいたら、一度、聞いてみればよいのです。

「なぜ自己破産をするのでしょうか?」と質問してみるのです。

この質問に対し、「そのほうがスッキリして良いでしょう」とか、「破産以外に道はないですよ」などと答えるようであれば、そういうレベルの人には二度と相談すべきではありません。分かっていない証拠です。相談相手として不適格だと思います。


債権者としては、私的整理という形で個人保証を免責することはできません。免責するには、何らかの大義名分が必要なのです。

この点、「経営者保証に関するガイドライン」が平成25年12月5日に公表され、平成26年2月1日から適用されています。ガイドラインにより、端的には「一定期間の生計費に相当する額」や「華美でない自宅等」について残存資産として手元に残したり、残債務の債務免除を求めることが可能になっています。

このガイドラインに従うことで、法的整理ではない形で保証債務の免責を受けることも可能です。


どういう場合に破産するのか
2018年01月16日(火)

破産が必要なのかという点について一般に誤解されていることが少なくありません。破産はどういう時に行うのでしょうか。


典型的な例のひとつは、反社会勢力のような債権者に苦しめられたり、たくさんの債権者がいて収集がつかないような時に、裁判所の力を借りて「債権者との関係を整理する」ために行う場合が考えられます。

会社を清算する場合の他、個人であれば人生をリセットしたいという場合もこれに近いと言えるでしょう。


債権者の協力が得られない場合に、無理をして「負債を消して会社を清算する必要」はありません。まして、わざわざ自己破産してまで、「負債を消す」必要はありません。債務が消せない場合には、債権者が満足する範囲で返済を進め、最終的に返済を停止した段階で、会社を休眠すれば良いのです。


債権者が申し立てる破産もあります。

たとえば、債務者が隠匿している資産がある場合や、債務者の詐害行為があるために、これらのことを明らかにするとともに裁判所の力を借りて「債務者の財産を正しく分配する」ために行う場合です。

このような例は、債権者との関係が余程こじれている場合に取られる手段であり、債権者が破産を申立てることは一般的ではありません。隠匿財産があるならばともかく、一般的には債権者が破産を申立てるメリットはありません。

破産により微々たる回収に甘んじるよりも、事業を継続させて回収を図ることの方が総額において勝る場合が多いのです。


破産が求められる場合
2018年01月10日(水)

債権者に自己破産の道を迫られる債務者が少なくないので注意してもらいたいと思います。


債権者は債務者の管理に必要以上の労力をかけたくないというのが本音です。債務者に自己破産してもらいたいのです。というのは、どうせ回収ができないのであれば、債務者が破産してくれれば債権者としては債権の償却手続きがしやすくなります。換言すれば、債権者は自分たちの償却手続きをスムーズに進めるために、債務者に自己破産してもらいたいのです。


有税償却する場合と異なり無税償却の場合は、損金として処理ができるため、金融機関としては無税で償却することが合理的だからです。無税償却の要件であるところの債権が全額回収不能かどうかの判断は最終的には税務当局の判断によることになるのですが、債務者の実態から最終不能額を判定するためには、個々の債務者の実態調査を行い、担保余力、債権回収見込額等を把握する必要があります。

具体的には(1)債務者が事実上倒産しており会社実態がなく、所有資産や収入からの回収ができない、(2)不動産・有価証券等の担保はすべて処分している、(3)手形支払人からの回収ができない、(4)保証人の支払い能力が無い、(5)債務者の返済能力がない、(6)その他回収の手段がないこと等の調査を行います。


不動産等の担保処分をすべて行った後でなければ、直接償却はできないとされています。なぜならば、直接償却は貸出金全額が回収不能と認定されなければ実施できないからで、貸金等の一部償却は認められていないのです。保証人がいる場合も同様で、保証人の資産・収入の両面を調査して、いずれからも回収ができないことを疎明する必要があります。

将来担保物件が任意処分、または競売により処分された時点で、債務者・保証人の資産・収入の現況から判断して、今後まったく回収ができないことを疎明してはじめて直接償却を実施することができるのです。


債務者が自己破産をしてくれれば「保証人の資産・収入の両面を調査して、いずれからも回収ができないことを疎明」という要件を満たすので、債権者としては債務者や保証人に自己破産をしてもらいたいというわけです。


過料の制裁
2018年01月05日(金)

会社の登記は登記すべき期間が定められています。

原則としてその登記の事由が発生したときから、本店の所在地においては2週間内、支店の所在地においては3週間内とされています(会社法第915条)。登記期間内に登記を怠り、その後に申請をしても登記期間を経過していることを理由に却下されることはありませんが、登記の申請を怠った会社の代表者個人が過料の制裁を受ける可能性が出てきます(会社法第976条第1項)。


この過料については、100万円以下の過料としか定められていないため、どの位遅れると、どの程度の過料が課せられるのかということは明らかではありません。おそらく、登記の申請が遅れれば高額になるのでしょう。定かではありませんが、数万円からせいぜい十数万円とも言われています。過料は裁判所から会社の代表者個人に通知され、会社の代表者個人が納付する ことになります。


あくまでも定められた清算を行うのが本来の姿であり、みなし解散は過料の対象であることに注意してもらいたいところです。

法により「解散とみなされる」ということは、その時点で課税処分がなされるのであり、いわば問題の先送りに過ぎません。


とはいえ、10年以上も先に問題を先送りすることで、その時点では当事者の関係も変わっていることも想定されます。

たとえば、代表者は何年も前に死亡していたというような例も少なくないと予想されます。かかる観点から、みなし解散に関して過料の処分を課したり、課税処分を課したりすることに、どこまで実効性が認められるのか疑問でもあります。


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