2017年

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2017/12/27 みなし解散
2017/12/24 回収・返済交渉の失敗(債権者側の失敗)
2017/12/19 スマホに依存した現代社会
2017/12/17 休眠会社
2017/12/10 廃業したホテルの再生
2017/12/05 電子書籍による新刊を発表しました
2017/11/30 回収・返済交渉の失敗(債務者側の失敗)
2017/11/25 債務者が有する債権の債権譲渡
2017/11/19 新債権者(サービサー)から債務者指定先への債権譲渡
2017/11/13 原債権者(銀行)から新債権者(サービサー)への債権譲渡
2017/11/07 債権譲渡における小額債権の扱われ方
2017/11/03 債権譲渡価格の算出
2017/10/31 別会社を利用した事業再生(2)
2017/10/25 債権譲渡価格の決定方法
2017/10/17 債権譲渡はどのように行われるか
2017/10/10 ノーベル経済学賞
2017/10/04 債権譲渡を行う必要性と問題
2017/09/27 別会社を利用した事業再生(1)
2017/09/26 保証協会の管理事務停止措置
2017/09/21 自称専門家が増えてきていること
2017/09/14 回収不能債権額の確定要件
2017/09/09 「事業再生読本」の予約販売が始まりました
2017/09/05 債権放棄の問題
2017/08/29 債権者と債務者の利益が一致する二つのポイント(2)
2017/08/24 「事業再生読本」の紹介
2017/08/22 金融機関の最終処理(2/2)
2017/08/19 金融機関の最終処理(1/2)
2017/08/14 町会議員が国会議員の政策秘書を兼務すること
2017/08/09 新刊「事業再生読本」
2017/08/02 第三者の介入
2017/07/27 債権者と債務者の利益が一致する二つのポイント(1)
2017/07/22 債権者の中の抵抗勢力
2017/07/16 株主の中の抵抗勢力
2017/07/11 社外取締役
2017/07/05 日本交渉学会の査読論文に採用されました
2017/07/03 金融機関の論理と経済合理性の判断
2017/06/28 破産を迫られた経営者と保証人の事例(2)
2017/06/22 中学生は中学校に行くべし
2017/06/18 言い訳を繰り返す経営者
2017/06/15 複数の債権者への返済類
2017/06/07 一括合意が得られない場合
2017/06/03 返済猶予の種類
2017/05/29 破産を迫られた経営者と保証人の事例(1)
2017/05/27 第二会社の事業計画
2017/05/20 二つの再生方法
2017/05/15 不確実性下の事業計画
2017/05/08 事業計画と再生計画
2017/05/03 奇抜なアイデアは避けて新規事業は別会社で行うべき
2017/04/28 M&Aと株主総会決議
2017/04/22 返済計画と債権者間の調整
2017/04/17 事業計画と返済計画
2017/04/11 条件闘争の必要性
2017/04/08 自主避難者を保護する必要はない
2017/04/04 旅行業者の自己破産は詐害行為ではないのか
2017/04/02 清算価値と競合価値
2017/03/28 さまざまな問題事例
2017/03/25 安倍昭恵という迷惑な御仁
2017/03/23 債務免除と債権放棄
2017/03/20 一括回収と分割回収の違い
2017/03/14 キャッシュフローが重要であること
2017/03/11 震災の節目
2017/03/07 債務者のヤル気と返済額
2017/03/02 地下に埋設されているゴミの撤去は土地所有者の義務ではない
2017/03/01 不良債権に関する情報の非対称性
2017/02/25 不動産の鑑定評価と詐害的会社分割
2017/02/17 貸倒引当金と債権放棄
2017/02/12 中小企業の特性
2017/02/08 債務者区分と債権分類(2/2)
2017/02/04 債務者区分と債権分類(1/2)
2017/01/28 価格の概念と競売制度(3/3)
2017/01/24 法人税は費用か利益処分か
2017/01/19 経営成績と分配可能利益のいずれを重視するか
2017/01/15 豊洲市場は中止して原発を新設すべし
2017/01/14 不動産鑑定評価書と競売のための評価書(2/2)
2017/01/09 不動産鑑定評価書と競売のための評価書(1/2)
2017/01/05 交渉学という学問(2/2)
2017/01/01 交渉学という学問(1/2)


みなし解散
2017年12月27日(水)

法的清算手続きは時間と費用がかかります。会社を清算せずに休眠させるのも一案ですが、その後はどうなるのでしょうか。

わざわざ手続きをしなくとも、株式会社が事業活動を停止し、その後、会社についての一切の登記を行わないまま長期間が過ぎると、「みなし解散」として法人格を消滅させる制度があるのです。つまり、休眠会社になって12年が経過すると、事実上、手間暇をかけずに会社を解散させてしまうことができる のです。このことは拙著「事業再生に伴い残った借入金と会社の処理の仕方」で詳述した通りです。


平成18年の会社法改正により取締役の任期が2年ではなく、最長10年までに自由に決めることができることになったため、休眠の期間が12年間に改正されています。中小企業の場合などは、役員が任期によって変更されることはほとんどありませんが、役員の変更がなくても、定款に定める任期が来れば、必ず変更登記をしなければならないのです。


休眠会社に対しては、まず、法務大臣が2ヶ月内に法務省令で定めるところにより本店の所在地を管轄する登記所にまだ事業を廃止していない旨の届出(会社法施行規則139条)をするように官報に公告します。

それでも、休眠会社が、その届出をしないときは、その2ヶ月の期間の満了時に解散したものとみなすことになっています(会社法472条1項本文)。その場合、登記官の職権によって解散の登記がなされます。


官報の公告を受けて登記所は会社に対して通知をするのですが、この通知は、登記簿上の本店所在地宛になされます。通知の発送や到着の有無はみなし解散の要件ではないため、たとえば本店所在地から引っ越しをした場合などで、通知が届かないとしても解散されてしまうことに注意が必要です。

なお、みなし解散のあとであっても、3年以内なら株主総会で特別決議をすれば、株式会社を継続して事業を再開することができることになっています。


回収・返済交渉の失敗(債権者側の失敗)
2017年12月24日(日)

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第44回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「回収・返済交渉の失敗(債権者側の失敗)」で、その要旨は次の通りです。

ーーー

要旨:

債権者の回収行動と債務者の返済行動は、交渉を通してお互いの利益が最大化するような形で決着すべきところ、債務者側の失敗で事業再生が頓挫したり、債権者側の失敗で回収の極大化が実現しないようなケースがあることは前号で指摘した通りです。前回の債務者側の失敗に続き、今回は債権者側の失敗の例を紹介します。

ーーー


記事を読むにはミロク情報サービスの会員になる必要があります。
会員は(1)会計事務所向けと(2)企業経営者向けに分かれています。


(1)会計事務所の先生の場合は「tvs会員」になる必要があります。
下のアドレスから著者名を指定して検索できます。
http://tvs.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html


(2)企業の経営者の場合は「GOODWILL PLUS会員」になる必要があります。
下のアドレスから著者名を指定して検索できます。
http://goodwill.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html


多くの有益な情報を入手できますので、入会することをお勧めします。
私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。


入会にあたってはお近くの(株)ミロク情報サービスの営業拠点にご連絡ください。営業拠点は下のアドレスから検索できます。
http://www.mjs.co.jp/office/tabid/479/index.php#no2


スマホに依存した現代社会
2017年12月19日(火)

数年に一度程度のことですが、スマホを自宅に置き忘れて仕事に出てしまいました。


電車の中では多くの乗客がスマホをいじっています。いつもと同じ光景ですが、いじるべきスマホがないと、他人がスマホをいじっている光景が気になりました。昔と比べ、本や新聞を読んでいる人が圧倒的に少なくなりました。


公衆電話を探しながら移動しましたが、駅の改札口に申し訳程度に1台設置してあるだけで、街中で公衆電話を見つけることはできませんでした。コンビニでも置いていないところが多いようです。


数十年前は、池袋、新宿、渋谷といったターミナル駅にはズラリと公衆電話が並んでいました。公衆電話ボックスも並んでいました。違法なチラシが張られていることで社会的な問題にもなったほどでした。今では跡形もありません。


いつものスマホを忘れたおかげで、時代の流れと変化を実感することができました。

スマホに依存した現代社会は、反面、不便な社会でもあるのだということができるかもしれません。


休眠会社
2017年12月17日(日)

会社を法律的に消滅させるには、煩雑な手続きが必要となる上に登記費用もかかります。そこで、会社を事実上消滅させる方法として、休眠会社にする方法がとられることがあります。


回収しなければならない債権も、弁済しなければならない債務も、そして株主に対する出資額を超える配当もなく、他に何のトラブルも抱えていない会社であれば、休眠させてしまっても文句を言ってくる抵抗勢力はいないともいえます。

但し、登記を懈怠すると会社の代表者個人が過料の行政罰を受けるので注意しなければなりません。


債務超過である等の理由により清算結了ができない場合は、法的に清算できず、休眠状態でとどめざるを得ないという側面もあります。

休業中の法人は、減免申請書を提出すると、均等割の免除や減額を受けることができる措置が設けられている場合があります。税務署や都道府県税事務所・市区町村に休業届を提出するだけです。この届出は、正式な手続きではなく、自治体によって対応が異なるので、それぞれの自治体に問い合わせるしかありません。


廃業したホテルの再生
2017年12月10日(日)

経営に行き詰まり廃業したホテルや旅館を安く買い取り、リニュアルオープンする事例が少なくありません。

私としては、古くは宮崎県のホテルシーガイアの事業譲渡を経験しました。当時は金融機関の回収責任者として、ホテル経営が譲渡されるいきさつを目の当たりにしたのでした。もう20年も前の話です。


先日、某ホテルを訪ねてみました。

以前、コンサルティングを行って暫定的に経営を立て直したホテルでしたが、その後の経営不振で廃業となり、これを第三者が安く買い取ってリニュアルオープンしたものです。

当時は、2億円で事業譲渡を行い、残余は債権放棄するという計画でしたが、金融機関の合意が得られず、リスケで暫定的に再生したのでした。


廃業後、第三者が取得した金額は1億円を大きく下回る額であったといわれています。

あの時、債権放棄に応じていれば2億円が回収できたのに、拒否するから、廃業となり、あげくの果てには1億円にも満たない額しか回収できなくなったのです。金融機関の論理は金額だけではありませんので、一概に失敗と断じることはできませんが、金額の多寡だけで判断するならば、金融機関としては失敗したというべきでしょう。


まさに漁夫の利を得た形の第三者は、全国でいくつもの旅館・ホテルを経営しています。その多くがリニュアルオープンした再生物件のようです。

事情を知らない宿泊者が、リニュアルしたての明るい建物に満足し、楽しんでいる様子をみているうちに、当時の経営者が今なにをしているのか心配になってきてしまいました。


電子書籍による新刊を発表しました
2017年12月05日(火)

この度、株式会社ミロク情報サービス「税経システム研究所」から新刊をリリースしました。

タイトルは「これだけは知っておきたい事業再生の重要ポイント: ~会計事務所と共に取り組む事業再生」です。今回の新刊は電子書籍(Kindle版)です。

内容としては、先にリリースした「事業再生読本」のダイジェスト版になっています。


会計事務所とともに事業再生に取り組む場合に最低限必要な知識を詰め込みました。経営者の皆さんにおかれましては、顧問の先生と情報を共有することで事業再生に取り組みやすくなるかと思います。

詳しくはアマゾンの書籍案内をご覧ください。


回収・返済交渉の失敗(債務者側の失敗)
2017年11月30日(木)

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第43回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「回収・返済交渉の失敗(債務者側の失敗)」で、その要旨は次の通りです。

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要旨:

筆者は以前、金融機関で不良債権の回収責任者の職を勤めていました。当時から、多くの回収事案に接してきました。債権者と債務者の回収・返済交渉を通して、お互いの利益が最大化するような形で決着すべきところ、債務者側の失敗で事業再生が頓挫したり、債権者側の失敗で回収の極大化が実現しないようなケースも少なくありません。今回は債務者側の失敗の例を、次回は債権者側の失敗の例を紹介します。

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記事を読むにはミロク情報サービスの会員になる必要があります。
会員は(1)会計事務所向けと(2)企業経営者向けに分かれています。


(1)会計事務所の先生の場合は「tvs会員」になる必要があります。
下のアドレスから著者名を指定して検索できます。
http://tvs.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html


(2)企業の経営者の場合は「GOODWILL PLUS会員」になる必要があります。
下のアドレスから著者名を指定して検索できます。
http://goodwill.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html


多くの有益な情報を入手できますので、入会することをお勧めします。
私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。


入会にあたってはお近くの(株)ミロク情報サービスの営業拠点にご連絡ください。営業拠点は下のアドレスから検索できます。
http://www.mjs.co.jp/office/tabid/479/index.php#no2


債務者が有する債権の債権譲渡
2017年11月25日(土)

債務者が債権を有する場合は、債権者代位権が問題になります。債権者が債務者にかわって債務者の権利を行使することが認められるという制度です。


債務者が債権を有している場合に、債務者の債権者が、債務者が有する債権を狙ってくる可能性があるわけです。これを防ぐために、債務者が有する債権を他に譲渡しておくことが有効な対策ということになります。債務者が債権を手放しておけば狙われる危険がなくなるからです。


債務者が有している債権を債権譲渡する場合には、次の2点に留意することが大切です。

まず最初は、債権債務の内容を確定するということです。具体的には債務の存在を合意し弁済方法を約定します。債務証人弁済約定証書を締結しておくことが望まれます。このとき、返済を先送りすることで劣後債権としてしまうのです。

そもそも債権の回収することは目的ではないのですから、たとえば元本は20年据え置きであっても良いわけです。20年据え置きで、利息は1%でも立派な債権です。いわゆる劣後債権です。このように超長期の債権とすることのメリットはふたつです。ひとつは契約書を通して契約の存在を明確にすること、もうひとつは、超長期の期限を付すことで債権の価値を引き下げることです。債権の価値が下がることで安い金額で債権譲渡できるからです。


金銭の授受を明確に記録しておくことも大切です。債権譲渡による代金が発生するのですから金銭の授受を行うことが必要になります。金銭の授受がなされたことを明確にするためには、銀行振り込みにより記録を残すことが一般的です。


新債権者(サービサー)から債務者指定先への債権譲渡
2017年11月19日(日)

債権が原債権者から新債権者に債権譲渡した後、新債権者から債務者が指定する債権者に債権譲渡をしてもらうことがあります。


新債権者は債権を取得した価格以上を回収することで利益を確保することになるのですが、新債権者は原債権者と異なり、取得価格以上を回収した後は、その債権を放棄しようが譲渡しようが自由です。すでに原債権の債権額と債権譲渡価格の差は原債権者が貸倒損失として負担していますので、新債権者に寄付金認定等の問題は生じないからです。


この「債権をどのように処分しようが自由である」という点は、新債権者との交渉にあたっては債務者にメリットとなります。残った債権を債権放棄や債権譲渡してもらうことが容易になるからです。

実際、新債権者に頼んで、債務者が指定するところに債権を譲渡してもらうという事例は少なくありません。債権者側も心得たもので、回収額さえ合意すれば債権譲渡に抵抗することはほとんどありません。

債務者が指定する者が債権者になるということは、債務免除益の発生を回避するだけではなく、他にも大きなメリットが期待できます。それは、味方となる債権者を確保することができるということです。何故それがメリットになるかといえば、たとえ無担保であっても債権に変わりは無いので、債権者としての権利を行使できるからです。


たとえば、民事再生法の手続きを進めざるを得なくなった場合に、味方となってくれる債権者がいると、再生計画を債務者主導で策定できることになるわけです。債務者に有利な計画であっても、味方となってくれる債権者が債権の過半を有していれば、再生計画が成立しやすくなるというわけです。新債権者にとっては、債権放棄であっても債権譲渡であっても同じですが、債務者にとっては、単に債権放棄を受けるよりも債権譲渡をしてもらうことで味方となってくれる債権者を作るのです。多くの場合、味方になってくれる債権者とは債務者の別働隊がその役を果たすことになります。


原債権者(銀行)から新債権者(サービサー)への債権譲渡
2017年11月13日(月)

債権者には二種類あります。融資を実行した銀行などの「原債権者」と、債権を購入することで出現した「新債権者」です。厳密にはサービサーは回収業者であり債権者とは同義ではありません。


原債権者から新債権者への債権譲渡は債務者が手を出せる性質のものではありません。債権譲渡は債権者の権利だからです。

債務者が銀行に「債権を譲渡してください」と頼んでも、銀行が「はいわかりました」とはなりません。これは債権放棄を頼んでも断られるのと同じ理屈です。


債権者としては不良債権を処理しなければならないという現実がある中で、不良債権の処理のためには直接償却を行うのですが、原債権者は債権放棄より債権譲渡を選ばざるを得ないということは、拙著の中や本欄で繰り返し指摘しました。


このような中、債権者と喧嘩をしては損だということを強調したいと思います。

百戦錬磨の債権者を出し抜こうとするよりも、債権者との交渉を通して債権者の立場に配慮しながら協力を求める方が、結局は債務者にとって有利なのです。原債権者が不良債権の処理をしやすい環境を作ってあげれば良いのであり、具体的にはより多くの貸倒引当金を計上させることで債権者は必然的に債権放棄を伴う最終処理に向かうことになるのです。


債権譲渡における小額債権の扱われ方
2017年11月07日(火)

債権譲渡が行われる場合、譲渡先が提示してくる債権買取価格にバラツキが生じることが少なくありません。

バルクセールの場合の小額債権は比較的バラツキが大きい債権であるといえます。


たとえば、50億の残高で30億の担保を設定した甲という債務者と、10億の残高で5億の担保を設定した乙という債務者の2件があるとします。この場合、甲に対する債権をいくらに見積もるかが譲り渡し先決定の要素になります。

仮にA社は甲を25億、乙を4億の合計29億で、B社は甲を28億、乙を3億の合計31億で入札したならば、債権譲渡先はB社となります。

この場合、B社は乙を3億と見ていますので乙は3億以上の返済をすることで残額免除を受ける可能性が出てきます。仮にA社が新債権者になったならば、A社は乙を4億と見ていますので、乙は4億以上の返済が必要になったはずです。


いわば、乙は高額債務者たる甲の影に隠れて得をしたことになります。バルクセールの場合の小額債権は、経済合理性がストレートに当てはまらない場合も生じるのです。


通常のバルクセールの場合は小額債権が単体で取引される例は少ないのが実情です。他の債権と併せて、何十億といった単位でバルクセールを行うことになります。いわば多くの債権の一部として債権譲渡されるのであり、いつ、いくらで譲渡されるかといった債務者にとって大きな問題も、他の債権との関係があるために一概に断言できないことになるのです。


債権譲渡価格の算出
2017年11月03日(金)

債権譲渡にあたって譲渡価格はどのように算出されるのでしょうか。


一つには担保の処分価値があります。担保を処分することを想定し、処分価格の現在価値を求めます。たとえば抵当権付不動産がある場合、債務者が任意売却に応じる場合は任意売却として、あるいは応じない場合には競売処分により換金することを想定します。仮に処分に1年を見込むならば、1年後に競売処分価格で換金する額の割引現在価値を求めることになります。


さらに、返済実績を勘案します。過去の返済実績以上の返済が今後も継続することを想定し、総和の現在価値を加算します。


すなわち担保処分価格と返済見込み額の現在価値の総和が譲渡価格ということになります。

競売価格をどのように算出するか、返済額をどのように見込むか等々は各債権者によって異なりますので一概には断定できませんが算出の考え方は同じです。


別会社を利用した事業再生(2)
2017年10月31日(火)

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第42回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「別会社を利用した事業再生(2)」で、その要旨は次の通りです。

ーーー

要旨:

前回紹介した事例で金子社長が疑問に思っていたこと、すなわち、わざわざ別会社にしないで今までの会社で経営を継続できないだろうかという疑問はもっともな疑問です。ここでは、別会社方式を採用する場合に留意する点について整理することにします。

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(1)会計事務所の先生の場合は「tvs会員」になる必要があります。
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(2)企業の経営者の場合は「GOODWILL PLUS会員」になる必要があります。
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http://goodwill.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html


多くの有益な情報を入手できますので、入会することをお勧めします。
私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。


入会にあたってはお近くの(株)ミロク情報サービスの営業拠点にご連絡ください。営業拠点は下のアドレスから検索できます。
http://www.mjs.co.jp/office/tabid/479/index.php#no2


債権譲渡価格の決定方法
2017年10月25日(水)

債権譲渡の取引形態は相対取引と入札取引に大別されます。


相対取引とは、債権を購入する側を一社に絞り、個々の債務者ごとに過去の記録を入念に調査して価格を算出する方法です。この場合、競争相手がいないので購入価額が低く設定されるのではないかという売主側(原債権者)の懸念が考えられますが、購入側(新債権者)は過去の記録をじっくりと調査できるため、比較的安定した高値を提示できるという側面もあります。

入念な調査ができない場合は回収の不確定要素が高いため、購入側としては低めの価額を提示せざるを得ないところですが、入念な調査ができる場合は不確定要素が少なくなりますので、その分、高値の価額提示ができるというわけです。


入札取引とは複数の購入候補者に一定の情報を提示し、定められた期間内に購入価額を入札するという方法です。この場合、売主側としては個々の債権に関する多数の資料を用意する余裕がないため、提示する情報が少なくなる傾向があります。購入側としては不確定要素が払拭できないために低い価額を提示することも無いとはいえません。

あくまで競争入札ですので、購入候補者としては高い価額を提示しないことには購入できず、一定の不確定要素を見込んだ上で可能な限り高い価額を提示することになるのです。


債権譲渡の売買が入札方式によって行われる場合には、債権価額に一定の客観性が認められることになります。現実には、債務者の信用リスクと担保処分価額の関係を大きく外れた売買価額になることはありません。多少のバラツキがあるものの、入札価額が大きく異なるものではないのです。


売主側としては複数の購入候補者から見積もりをとった結果、最高額の先に譲渡するということで価額の客観性を確保し、最終の手続きたる直接償却に移行するわけです。


債権譲渡はどのように行われるか
2017年10月17日(火)

債権譲渡を行うのは債権者の権利であり、自由です。

債権譲渡が行われると、既存の債権者から「どこどこに債権を譲渡した」との通知が届きます。いわゆる債権譲渡通知というもので、多くの場合には内容証明郵便で届きます。それ以降の返済は新債権者宛に行うことになります。従来の債権者は債権を譲渡した段階で法的権利を失いますので当事者ではなくなります。


債権譲渡が行われるようになったばかりの頃、すなわち1990年代当時は、債権譲渡を行う前に債務者に断りの通知をするというようなことも見られました。債権譲渡に債務者の承諾は不要なのですが、トラブルを避ける目的でわざわざ通知していたのです。

その後、債権譲渡が一般的になってくるに従い事情は一変しました。わざわざ債務者に通知するどころか、抜け駆け的に債権譲渡が行われるようなことも散見されました。

「一定の金額を受け取れるならば抵当権の抹消に応じる」との話を進めていながら、「実は、本部の指示により債権譲渡をすることになった」と突然の方針転換を通知してきたような金融機関もひとつやふたつではありません。

不良債権の処理が進むにつれて債権譲渡の実態も変わってきたのです。


元々の融資を行った「原債権者」からサービサーのような「新債権者」への典型的な債権譲渡ではなく、さらに一歩進んで、「新債権者」から「債務者指定先」への債権譲渡も行われています。このような新たな債権譲渡の形を利用することで事業の再生を図ることが有効な場合もあるのです。


ノーベル経済学賞
2017年10月10日(火)

2017年のノーベル経済学賞は、米シカゴ大のリチャード・セイラー教授に授与するとのこと。行動経済学は経済学に心理学に基づく現実的な仮定を加味した考え方です。


伝統的な経済学では経済主体は全ての情報を知っているという「情報の完全性」と、経済主体は常に合理的に意思決定するという「合理性仮説」を前提とします。

このような合理的な行動に対して、行動経済学は人間の感情に着目した考え方です。


行動経済学は私の経営学の博士論文の基調になっています。拙著「貸倒引当金の多寡が債権放棄に及ぼす影響ならびに事業譲渡を伴う事業再生における課税の公平」の48頁以降において詳述しています。さらに拙著「どうしたら銀行に債権放棄をしてもらえるか」の109頁から142頁では行動経済学について概要を解説しています。こちらの方が比較的読みやすいかもしれません。


先月、公開した「事業再生読本」の535頁から540頁でも行動経済学について紹介しており、538頁では「事業再生に関連する行動経済学」というテーマで、事業再生にあてはめる形で行動経済学の考え方について解説を加えてあります。 まさに理論と実務の融合を実践しているところです。


行動経済学について以前は、十分な書籍がありませんでしたが、2000年代に入ってから和文による解説書が増えてきました。セイラー教授の翻訳本も出ています。

伝統的なミクロ経済学の矛盾を指摘し、人間の心理に重きをおいた行動経済学。その新鮮な考え方を秋の夜長に味わってみてはいかがでしょうか。


債権譲渡を行う必要性と問題
2017年10月04日(水)

融資を実施した原債権者の場合、法的な債権額と債権の簿価が一致しています。このため、債権は全額を回収するのが基本であり、安易な債権放棄は債務者に対しての寄付金と認定される可能性があります。

寄付金か否かの判定は、国税検査が行われる時点で判定されることになり、実際に債権放棄を行う時点で判定を受ける道は用意されていません。実際にどのような額で放棄すれば寄付金とならないのかという具体的な基準はなく、放棄時点で寄付金でないとの確定的な認定を受けるのは難しいのが実情です。


一方、債権譲渡の場合、複数の購入候補先から見積もりを得ることで、市場価格を把握できることになります。市場価格という客観性ゆえに国税当局も直接償却を容認している状況にあり、原債権者は、将来、寄付金と認定される危険を回避するために債権譲渡の道を選択することになります。


債権譲渡により出現した新債権者の場合、法的債権額と債権の簿価は一致していません。原債権者から時価で債権を取得しているため、債権の簿価と債権の時価は一致していることになります。したがって、債権の簿価以上の回収を容易に行うことができ、回収額が債権の簿価を上回れば経済合理性が認められるのであり、法的債権額との差を債権者が放棄しても寄付金と認定される余地がなくなるわけです。


原債権者は寄付金認定を受けるという危険を回避するために、債権放棄よりも債権譲渡を選択することになります。したがって債権放棄は新債権者によって初めて可能となります。一度債権譲渡を迂回しないと債権放棄が行いにくい状況なのです。そのため、不良債権の最終的な整理が遅れるということになるのです。


別会社を利用した事業再生(1)
2017年09月27日(水)

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第41回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「別会社を利用した事業再生(1)」で、その要旨は次の通りです。

ーーー

要旨:

事業再生にあたって典型的な手法のひとつとして別会社を活用する方法があります。不動産などの資産、さらには営業権を現在の会社から切り離して別会社に移転するのです。健全な部分を切り離して新たな出発をするという、いわゆる第二会社方式による事業再生です。今回は一つの事例を紹介することとし、次回において別会社方式を採用する場合に留意する点について詳しく整理します。

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多くの有益な情報を入手できますので、入会することをお勧めします。
私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。


入会にあたってはお近くの(株)ミロク情報サービスの営業拠点にご連絡ください。営業拠点は下のアドレスから検索できます。
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保証協会の管理事務停止措置
2017年09月26日(火)

債務不履行が生じた結果、保証協会が銀行等の原債権者に代位返済を行うことになると、保証協会には不良債権が増加する一方ということになってしまいます。

大胆に債権放棄をする外資系サービサーと異なり、保証協会の債権放棄に対する姿勢は慎重です。


しかし、保証協会においても、債務者や保証人、担保不動産の現況などを総合的に勘案し、回収が見込めない案件は「管理事務停止措置」という形で債権回収を停止することがあります。いわば回収の可能性がある案件に回収にかかわる資源を集中する形で投入し、回収可能性の低い不良債権の管理業務は停止することで、回収事務の合理化、効率化を図るというわけです。


たとえば、経営者保証に関するガイドラインで示された保証債務の履行基準を勘案するなど、不良債権に関しては管理事務停止措置を推進しているようです。


銀行が代位弁済を受け、債権が保証協会に移った場合、「細々と返済を続ける」という方法は、一昔前の暫定措置なのであり、今の時代にマッチしたものではありません。「細々」とはいえ、無駄な支出に過ぎないからです。

戦略的な経営者、賢明な債務者としては、保証協会が管理事務停止措置をしやすくなるような状況を作り上げることが必要なのです。


自称専門家が増えてきていること
2017年09月21日(木)

名刺交換をする際に、「事業再生が専門なのですか。実は私も事業再生をしています」という自称専門家が増えてきました。

最近は特に増えてきたと感じています。


このような専門家の先生は二つに大別されます。

一つは、まだまだ「不慣れなのでご指導ください」という謙虚な姿勢の者。

もう一つは、あたかも「何でも知っている」かのように振る舞う者。

特に後者のような自称専門家はいかがなものでしょうか。


つい先日も、事業再生の専門家を名乗る30過ぎの中小企業診断士と面談する機会がありました。自信ありげに不正確な話をする姿を見て、私が「先生はいつ頃から事業再生に取り組んでいるのですか?」と聞くと、「もう5年になります」とのこと。

5年の経験で事業再生が分かるはずがないと思いつつも、話の内容があまりに間違っていることに嫌悪感を感じたので「そうですか。私はもう20年です。先生が中学生の頃から事業再生を専門に扱っています。当時は今とは違って・・・」と話をしたのでした。

すると、「何でも知っている」から「不慣れなのでご指導ください」に態度が変わったのでした。

謙虚になっただけ、良かったと言うべきでしょう。


もし私がその場にいなかったら、間違った方向に話が進んでいったことでしょう。

「何でも知っている」「何でもできるので任せてくれ」というような自称専門家には要注意です。


回収不能債権額の確定要件
2017年09月14日(木)

回収が不能な債権を帳簿から除去する無税償却の場合は損金として処理ができるため、金融機関としては無税償却することが最終の不良債権処理となります。

無税償却の要件であるところの債権が全額回収不能かどうかの判断は、最終的には税務当局の判断によることになるのですが、債務者の実態から最終不能額を判定するためには、個々の債務者の実態調査を行い、担保余力、債権回収見込額等を把握する必要があります。


具体的には、イ)債務者が事実上倒産しており会社実態がなく、所有資産や収入からの回収ができない、ロ)不動産・有価証券等の担保をすべて処分している、ハ)手形支払人からの回収ができない、ニ)保証人の支払能力がない、ホ)債務者の返済能力がない、ヘ)その他回収の手段がないこと等の調査を行っています。

さらに、不動産等の担保処分をすべて行った後でなければ、直接償却はできないとされています。なぜならば、直接償却は貸出金全額が回収不能と認定されなければ実施できないからで、貸付金等の一部償却は認められていないためです。

保証人がいる場合も同様で、保証人の資産・収入の両面を調査して、いずれからも回収ができないことを疎明する必要があります。


担保物件が任意処分、または競売により処分された時点で、債務者・保証人の資産・収入の現況から判断し、今後まったく回収ができないことを疎明してはじめて直接償却を実施することができるのです。このような作業は実務上の大きな障害になっています。


「事業再生読本」の予約販売が始まりました
2017年09月09日(土)

最新刊の「事業再生読本」が公開されました。

発売日は9月15日ですが、既にアマゾンでは予約販売が始まりました。

アマゾンでも書籍の内容紹介を行っていますが、本ホームページの出版物紹介の頁でも概要を紹介しており、「はじめに」「目次」「序章」「索引」を読めるようにしてあります。


これまでの知識と経験を集大成したものですので、事業再生に取り組む経営者はもちろん、経営のパートナーである会計事務所の先生方も、是非ご一読ください。

さらに、事業再生を成功させた後、さらなる飛躍を目指す経営者のためにも、参考になるように工夫しました。


債権放棄の問題
2017年09月05日(火)

法人税法上の要件を満たさない債権放棄は、無税処理した後の税務調査において寄付金認定される可能性があります。この場合、限度額を超える寄付金は損金算入できず、追加的な税負担を余儀なくされることがあるわけです。


取引当事者の一方が通常の取引条件と比べて明らかに高い利益を得るのは経済合理性が認められないという考えの下、寄付金と認定することによって損金算入の制限をしているわけです。

不良債権における債権放棄においても、金融機関としては無税の要件を満たしているとして損金経理しても、後日の税務調査において寄付金と認定されることもあり得るわけです。寄付金と認定されると、延滞税、加算税、重加算税等が追徴され、多額の税負担になることも考えられます。


債権を放棄したあげく税金まで負担しなければならないのでは、まさに踏んだり蹴ったりというわけです。それゆえに各金融機関は、寄付金と認定されることがないよう慎重にならざるを得ないのです。


私的整理では、その債権放棄が合理的な基準によるものである場合に限って損金の額に算入することが認められています。

合理的な基準が必要なのであり、正当な理由がなく一部の債権者に有利な返済がなされたり、あるいは、恣意的な債権放棄が行われる場合は、合理的な基準に該当しないことになってしまいます。


合理的な判断基準とは明確な定義があるわけではなく、個々に判断されることになり、そのため、不透明な側面も否定できません。私的整理の場合は債権者の利害関係が対立するので、債権の発生原因や債権者と債務者の関係等を総合的に協議して債権放棄額を決定した場合等、同一の条件で債権放棄額が定められていなくても、合理的な基準と認められることもあります。


債権者と債務者の利益が一致する二つのポイント(2)
2017年08月29日(火)

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第40回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「債権者と債務者の利益が一致する二つのポイント(2)」で、その要旨は次の通りです。

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要旨:

前号で紹介した事例を受け、債権者と債務者の利益が一致するポイントについて整理します。 あわせて紹介した事例の顛末についても明らかにします。今回の事例は、拙著「民事再生は必要ない!打つべき手は他にある」(ファーストプレス社刊)の第4話『債権者と債務者の利益が一致する二つのポイント』から引用、抜粋、加筆しています。

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会員は(1)会計事務所向けと(2)企業経営者向けに分かれています。


(1)会計事務所の先生の場合は「tvs会員」になる必要があります。
下のアドレスから著者名を指定して検索できます。
http://tvs.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html


(2)企業の経営者の場合は「GOODWILL PLUS会員」になる必要があります。
下のアドレスから著者名を指定して検索できます。
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多くの有益な情報を入手できますので、入会することをお勧めします。
私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。


入会にあたってはお近くの(株)ミロク情報サービスの営業拠点にご連絡ください。営業拠点は下のアドレスから検索できます。
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「事業再生読本」の紹介
2017年08月24日(木)

近く公開予定の新刊「事業再生読本」について、本ホームページの「出版物紹介」に概要をアップしましたのでお知らせします。


新刊の内容のうち、「はじめに」「目次」「序章」「索引」を参照することができるようにしてあります。

リンク先からPDFファイルをダウンロードできるようになっています。


店頭公開は9月の中旬を予定していますので、今しばらくお待ちください。


金融機関の最終処理(2/2)
2017年08月22日(火)

債権の償却は、回収不能額、または回収不能見込額を債権額から控除するか、または貸倒引当金の繰入れを行うということですので、企業会計上は損失とされるものの税務上の扱いとは別になります。

税務上も損金とされる債権の償却を無税償却、損金とされないものを有税償却といって区別します。もっとも、有税償却であっても、その決算期において税務上の取扱いが損金とはならないというだけで、翌期またはそれ以降の期では税務上も損金になることが普通です。したがって、当期の損金には不算入でも、翌期以降の損金には算入ということになります。


間接償却と直接償却、有税償却と無税償却の組合せにより、合計で4パターンの償却手続きとなるのですが、不良債権の初期段階に行われる有税間接償却から最終処理段階に行われる無税直接償却まで、段階ごとに異なった手続きが採用されています。金融機関の償却実務は債務者にも重大な影響を及ぼすことになります。


一般的に、初期段階の「有税間接償却」は各支店での管理下で行われていますが、末期段階の「無税直接償却」は、本部の管理部門の管理下で行われていることが多いようです。


金融機関の最終処理(1/2)
2017年08月19日(土)

金融機関が不良債権を処理する方法としては、将来予想される損失に備えて引当金を計上するという「間接償却」と、貸倒れ損失を計上して貸借対照表から消し去るという「直接償却」があります。

さらに、金融機関が税務上も損金とできる償却方法として「無税償却」、損金とできない償却方法として「有税償却」とにわかれます。したがって、間接償却と直接償却、有税償却と無税償却の組み合せにより、合計で4パターンの償却手続があるわけです。


償却とは、債権が回収不能となった場合にその回収不能額を債権金額から控除する、あるいは、回収不能見込額を貸倒引当金として計上することです。

回収不能額を直接貸借対照表の資産項目から除いてしまう方法を直接償却といい、資産項目には残したまま回収不能見込額を貸倒引当金に繰り入れる方法を間接償却といって区別します。


債権の回収不能が生じることがほぼ確定していても、担保の処分が完了していない等の理由で損失額が最終的に確定しない場合に間接償却を行います。その後、競売で落札される等で回収が完了し、最終的な回収不能額が確定した段階で直接償却を行います。このように、間接償却を行ってから最後に直接償却を行うという2段階で処理を進めるのが一般的です。


間接償却においては、「回収作業を行ったとしてもこの程度の回収不能額が見込まれる」ということを客観的に示すことになります。間接償却の場合は、債権総額から回収可能分として担保額を控除した残額について引当金を計上します。地価下落が続くと毎年担保価額が下がってしまいます。債権総額から控除すべき担保価額が下がるため、毎年引当金を追加計上しなければならないことになります。

一方、直接償却は回収不能額を確定することですので、最終的な不良債権の処理ということになります。


町会議員が国会議員の政策秘書を兼務すること
2017年08月14日(月)

地方都市の町会議員が、国会議員の政策秘書を兼務することで騒がれています。

国会議員が、秘書に対するパワハラで騒がれた豊田議員であるためにワイドショーの格好の餌食になっているようです。


さてさて、「町会議員が国会議員の政策秘書を兼務すること」のどこが悪いのでしょうか? 町会議員は有権者から信任を受けていますので最優先とし、業務を妨げない範囲で政策秘書を務めることに問題はないと思います。

むしろ、国政とのパイプを太くすることで地元に貢献するのであれば、地元民にとってはマイナスどころかプラスではないでしょうか。


所詮、町会議員です。

多忙で、多忙で、他業務の兼任はできないということはないハズです。現に、大半の議員が兼業です。ハッキリ言うならば、それなりにヒマなのです。

たまたま「この、ハゲー」で有名になった議員の政策秘書であるから騒ぎになっているのです。

「町会議員が国会議員の政策秘書を兼務すること」という客観的な事象だけを見て判断すべきではないでしょうか。


私は、直ちに否定すべきではないと思います。


新刊「事業再生読本」
2017年08月09日(水)

事業再生に関する新刊を執筆しておりましたが、このたび、出版社から最終原稿が手許に届きました。


書名は「事業再生読本」とし、これまでに公表してきた全ての論点を網羅しました。新たな論点も大幅に加えた、書下ろしの新作です。私としては、これまでの集大成の一冊と位置付けています。

全7章、計69のテーマとし、「第二会社方式により借入金を減らして経営者を守る事業再生の全知識」を網羅してあります。


総ページ数は562ページの大作になりました。これまでに公表してきた各本は200ページ後半であり、最もページ数が多かったものでも328ページでしたので、今回の新刊は従来にない大作になりました。


書店への配本は、9月の中旬になる予定です。

配本スケジュールが確定次第、本ホームページでお知らせします。


第三者の介入
2017年08月02日(水)

抵抗勢力との関係を整理するためには、多くの場合に第三者の介入が有効です。

この場合の介入とは、交渉ではなく仲介ですので、好戦的な態度の弁護士よりも双方の信頼が得やすい第三者の方が適任かもしれません。相手を呼びつけたりするのではなく、丁寧に相手を回って話を重ねることも求められます。


ただし、弁護士法により弁護士以外の者は代理行為を行うことはできませんので注意が必要です。債務者企業の代理人として取引金融機関との間の調整を行うことは、非弁行為(弁護士法第72条)として弁護士法違反となる可能性があります。あくまで交渉は本人が行い、第三者は補佐役に徹する等の配慮が求められます。


骨肉の争いにまで拗れた株主との関係にしても、うるさい債権者との関係にしても、解決に手間暇がかかることが少なくありません。

損得勘定を抜きにして感情論として抵抗するような相手の場合は別ですが、そうではなく、単なる損得勘定による抵抗勢力であれば、損得勘定を丁寧に説明し、あげた拳を納めるための落とし所を用意することで歯車が回るようにすることは少なくありません。


事業再生においては、日頃から債務者の業況を知る立場にある職業会計人が第三者として介入することは効果的です。この場合、債務者の立場に立って介入するのではなく、職業的専門家として中立の立場から介入することも効果的です。

職業的専門家だからこそ、客観的な事実に基づいて債権者と債務者の間の情報の非対称性を解消することなどが求められるのです。職業会計人の果たすべき役割は大きいと言えるでしょう。


債権者と債務者の利益が一致する二つのポイント(1)
2017年07月27日(木)

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第39回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「債権者と債務者の利益が一致する二つのポイント(1)」で、その要旨は次の通りです。

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要旨:

債権者と債務者の利益は常に対立しているわけではありません。相手の取り分を奪い合うのではなく、相手と協力することでパイを大きくすれば自らの取り分も大きくできるのです。さらに、協力することで早い時点での解決も可能になるといえます。2回に渡り、債権者と債務者の利益が一致するポイントについて検証します。今回は一つの事例を紹介することとし、次回において利益が一致する二つのポイントを詳しく整理します。

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記事を読むにはミロク情報サービスの会員になる必要があります。
会員は(1)会計事務所向けと(2)企業経営者向けに分かれています。


(1)会計事務所の先生の場合は「tvs会員」になる必要があります。
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http://tvs.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html


(2)企業の経営者の場合は「GOODWILL PLUS会員」になる必要があります。
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http://goodwill.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html


多くの有益な情報を入手できますので、入会することをお勧めします。
私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。


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債権者の中の抵抗勢力
2017年07月22日(土)

一部の債権者に強硬な者がいる場合も、事業再生を円滑に進めることが困難になる可能性が高まります。


特に、取引先の一部の取り立てが執拗である場合などは要注意です。そのような先に対して、優先的に返済をすることを約定してしまった場合などは困難が一層増してきます。そもそも、私的整理にしても法的整理にしても、債権者は平等に扱わなければなりません。「うるさい債権者だから優先返済する」などということが認められるわけがありません。

個別に約定していたとしても、その約定は破棄しなければならないのです。

そうなると、約定先は黙ってはいないでしょう。ただでもうるさい先だから個別に約定したわけです。約定を破棄するとなると、烈火のごとく怒るでしょう。


このような場合に私的整理を進めるには、慎重かつ丁寧な説明が必要になります。

法的整理であれば約定は破棄され、債権額に応じて、債権者集会で決議された再生計画で淡々と進められますので、うるさい債権者であっても諦めるしかないのです。この点を説明し、法的整理ではなく私的整理を進めることで、債権者にとっても有利な返済ができるということを説明し、納得してもらわなければなりません。


どうしても合意が得られない場合には私的整理が成立しない可能性出てきます。法的整理において、多数決原理の下、小額債権者を排除するというわけです。


株主の中の抵抗勢力
2017年07月16日(日)

抵抗勢力が存在するから問題が大きくなるのです。必要以上に問題が大きくなり、話がこじれる前に、抵抗勢力の芽は摘み取っておかなければなりません。株主、債権者の中に存在する抵抗勢力は特に要注意です。


そもそも抵抗勢力が存在するから争いが生まれるのです。当事者次第によっては、グレーが白にもなれば黒にもなります。たとえば事業譲渡による事業再生を例にとれば、些細な手続き上の瑕疵なども、ケチをつけようと思えばどのようにでも責めることができます。目を瞑れば問題にならないことを問題にするかどうかは当事者の関係次第です。法解釈論と現実は異なるものであるということができます。


中小零細企業の事業再生にあたって株主の抵抗勢力が問題になるのは、多くの場合、親族間の骨肉の争いです。

このような場合には、感情問題にまでこじれていることが多いので要注意です。

事業譲渡にしても、重要な財産処分にしても、取締役会や株主総会の決定が求められることになりますが、抵抗勢力が取締役に存在すれば取締役会決議ができない場合も生じますし、抵抗勢力が株主に存在すれば株主総会決議ができない場合も生じます。さらに、取締役の解任もできないということになれば事業再生そのものに及ぼす影響が大きくなってしまいます。

このような感情的、敵対的な抵抗勢力が存在する場合には、後々のさらなる混乱を防ぐために、慎重な手続きが求められます。


社外取締役
2017年07月11日(火)

平成26年の会社法改正前は、取締役の責任を限定するには社外取締役であることが必要でした。責任を限定するために、わざわざ社外取締役に留まることもありました。

しかし、会社法の改正により社外取締役でなくとも責任限定契約を締結することができるようになったため、責任限定のために社外取締役にする必要はなくなっています。


取締役は、多くが社内出身者であり、代表取締役等の意向によって株主総会で選任され、事実上代表取締役等の支配下に置かれてしまっており、法が期待した機能、特に代表取締役等に対する監督機能が十分に発揮されていない会社も多くみられます。このような問題に対処することが期待されるのが、代表取締役等と独立した立場にある社外取締役です。


会社法は社外取締役をすべての会社に強制することはなく、特別取締役を定める場合と委員会を設置する場合に限り強制しています(373条、400条)。これ以外の場合、社外取締役を設置する義務はなく、社外取締役を設置するか否かについては、各会社の判断に委ねられています。したがって、多くの中小企業の場合に、社外取締役を設置するかどうかは、会社の自由ということになります。


事業再生においては、第二会社の透明性を強調する目的で、あえて社外取締役制度を採用することもあります。社外取締役による外部コントロールを強調することで、金融機関や取引先の信任を得るというわけです。金融機関交渉にあたっての支援者としての役割も期待できます。


有資格者たる会計人が第二会社の取締役や社外取締役に就任することは、会社の信用補完の観点からも望ましい形だということができるでしょう。私自身も取締役を引き受けていますし、会計事務所向けのセミナーにおいて、税理士や会計士が顧問先の取締役や社外取締役に就任することの意義を明らかにしています。


日本交渉学会の査読論文に採用されました
2017年07月05日(水)

このたび、日本交渉学会の学会誌に査読論文が採用されました。


査読論文の制度とは、匿名の査読者が論文の審査を行い、合格した論文だけが学会誌への掲載が認められるというものです。

今回の査読論文の題は「交渉学の視点から見た事業再生の進め方」で、債権者と債務者の交渉の決裂リスクを回避し、私的整理による事業再生を成立させるための施策について交渉学の視点から検討したものです。当事者の一方が満足する形ではなく、交渉当事者の全てが満足する形での事業再生の進め方について検討を加えました。


具体的には、不良債権の回収にあたって利害が相反する債権者と債務者の交渉を取り上げ、経済学の情報の非対称性を念頭に置きつつ、合理的な形での事業再生の進め方を考察したものです。

とりわけ、交渉当事者の配分に着目し、ミクロ理論経済学に軸足を置きつつ、交渉学の視点から事業再生の進め方を明らかにしました。


興味のある方にはPDFファイルでお送りしますので、お申し出ください。


金融機関の論理と経済合理性の判断
2017年07月03日(月)

金融機関は常に合理的な意思決定をするわけではありません。

債権者と債務者の対立構造だけではなく債権者と債権者の間の対立構造も存在します。情報の非対称性が存在する中で、金融機関の論理に配慮した事業再生が求められます。


一括回収と分割回収の比較、清算価値と競売価値の比較等、これらは経済合理性の観点からの議論です。しかし、金融機関は常に経済合理性を満たす判断を行っているとは限りません 。


事業再生に対する金融機関の意思決定に及ぼす他の要因としては、たとえば融資期間が考えられます。

融資を実行したばかりで返済猶予を債務者が申し立てた場合と、融資をしてから何年もたってから債務者が返済猶予を申し立てた場合とでは金融機関の判断が異なってもしかたがありません。

「返済猶予を想定して融資を申し込んだのはけしからん」というような感情論は別として、融資を実行したばかりでは満足に貸倒引当金も計上していませんし、いわば不良債権処理の準備ができていないという事情もあります。


不良債権比率を下げるために、あえて経済合理性に反した債権譲渡で早期処理することも考えられます。 金融機関にしてみれば債権を売り急いだということになり、時間をかけて回収した方が回収額が高くなるということにもなります。一方の債務者にしてみれば、債権譲渡により出現した新債権者と返済交渉を始めることになります。


人は常に完全合理的に行動するというミクロ経済学の大前提に対しては反論が提起されています。行動経済学による修正はその一つの試みでもあります。

この観点から債権者の貸倒引当金の多寡に着目し、『貸倒引当金の多寡が債権放棄に及ぼす影響ならびに事業譲渡を伴う事業再生における課税の公平』と題して2013年に経営学の博士号を拝受しています。


破産を迫られた経営者と保証人の事例(2)
2017年06月28日(水)

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第38回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「破産を迫られた経営者と保証人の事例(2)」で、その要旨は次の通りです。

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要旨:

前号で紹介した事例を受け、保証債務の実情について整理します。あわせて前号の事例の顛末(=保証人も破産する必要があるのか)を明らかにするとともに、参考となる過去の研究レポートについても紹介します。この事例は、拙著「民事再生は必要ない!打つべき手は他にある」(ファーストプレス社刊)の第1話『破産は必要ない』から引用、抜粋、加筆しています。

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(1)会計事務所の先生の場合は「tvs会員」になる必要があります。
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http://tvs.mjs.co.jp/working/management/research-rep/not_cached.html


(2)企業の経営者の場合は「GOODWILL PLUS会員」になる必要があります。
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多くの有益な情報を入手できますので、入会することをお勧めします。
私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。


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中学生は中学校に行くべし
2017年06月22日(木)

中学生棋士が公式戦連勝記録を28に伸ばし、30年の最多記録に並ぶ偉業を達成したとのことです。すばらしい偉業だと思います。

連日のようにマスコミに報道され、最近は昼食の出前がどの店になるのかまで騒がれています。


はて、どんなものでしょう。

いささか疑問を感じます。


本人はまだ14歳の中学生です。

マスコミが寄ってたかって騒ぐことが望ましいとは思えません。

対局に参加するということは、学校の授業を欠席することになります。いくらプロ棋士とはいえ、「授業をサボってバイトに出かける生徒」が許されるものではありません。

学校に行き、授業を受け、友人と接することで真の教育が成り立つのではないでしょうか。

学校に行ことに意味があるのであって、試験をこなし、宿題をこなしているから良いではないかという話にはならないと思います。


憲法第二十六条第二項に「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。」との規定があります。義務教育は国民の三大義務であることは言うまでもありません。


マスコミも含め、われわれ大人達は、保護者ではないとしても中学校に行かせるように導くべきです。

連勝記録だなんだと騒ぐのは、義務教育を定めた憲法の精神に反すると思います。

マスコミの報道姿勢に疑問を感じるのは私だけでしょうか。


言い訳を繰り返す経営者
2017年06月18日(日)

『収益を高く、費用を少なく計画したところで偽りの利益でしかありません。このような偽りの利益、希望的計画では再生は無理なのです。現に私が回収責任者として見てきた計画の中には、このような計画が少なくありませんでした。

私はこのような計画を鳥の羽根と呼んでいます。

このような計画を策定した経営者は「来年は少し下がりますが、再来年は今年の水準に戻り、さらに再来年は今年を上回ります」と説明します。ところが翌年になるとまた同じ説明をします。何年か繰り返した後、計画をグラフにすると鳥の羽根のように見えます。だから私は鳥の羽根計画と呼んでいす。あくまで私の造語ですから、世間一般では通用しませんのでご注意ください。

このような計画は、時の経過とともに破綻してしまいます。毎年、言い訳を聞かされる金融機関としては、「ああ、またか…」ということになります。このような計画を提示され、「はいそうですか。では返済を猶予しましょう」などということにはならないのです。』

以上は、拙著「リスケに頼らない事業再生のすすめ」から引用しました。

――


こんな計画を作成する経営者は、遅かれ早かれ金融機関からそっぽを向かれてしまいます。信頼が得られないからです。

中には粉飾決算を繰り返した結果、破綻に追い込まれた企業が、無資格のコンサルタントを伴って言い訳にやってきた例もありました。何を言おうが全く説得力を感じられませんでした。

極めつけは、粉飾決算に手を貸していた会計事務所と同伴して言い訳にやってきた例です。

インチキ決算書を作成していた当事者が二人そろって、今度は実現できないインチキ計画の言い訳をしに来たのです。

まったく、図々しさにも程があります。このような無責任、厚顔無恥な経営者に債権者が理解を示し、協力するはずがありません。

「この経営者のために一肌脱いでやろう」という思いになるかどうか、ちょっと考えればわかるものです。


このような愚行を行う債務者については、債権者としては定性評価を大きく引き下げることになります。その結果、債権者区分を引き下げることになり、再生支援から債権回収に舵を切らざるを得ないことになるのです。


言い訳を繰り返すだけの、無責任、厚顔無恥な経営者。回収責任者時代に何人も見てきました。

こういうタイプの経営者は再生できない典型例というべきでしょう。自業自得とはいえ、残念な話です。


複数の債権者への返済
2017年06月15日(木)

銀行に言われるままに返済をしていると、いつの間にか金融機関によって返済額が異なってくる場合が出てきます。強く返済を迫る銀行に多く返しているという例です。しかし、これは不合理です。担保付債権と無担保債権では債権の価値が異なるのであり、強く言ってくる金融機関に多く返済するという姿勢は誤りといわざるを得ません。


各金融機関に均等に返済するも、同様の理由で正しい姿勢であるとはいえません。

返済総額を算出し、その返済総額をなんらかの基準にしたがって按分して金融機関に返済することも行われており、この場合の基準が担保価値である場合が少なくありません。

事業継続に必要な担保を処分されてしまうと、リースバックするための費用が発生してしまいますので、事業に必要な資産を担保に持つ債権者をないがしろにしてはならないのです。この点、遊休不動産ならば担保を処分されても大きな痛手にはなりませんので、同じ抵当権者でも担保物の重要性によって差が生じることになります。


担保価値で按分する場合には、無担保債権者への返済分もいくらかを用意しなければならないという問題が生じます。さらには、担保評価の客観性を確保しておかないと、担保を有する金融機関の合意が得られないということにもなります。事業再生は債権者と債務者の対立に留まらず、債権者と債権者の間の対立でもあるわけです。


一括合意が得られない場合
2017年06月07日(水)

金融機関に債権放棄の相談をした場合、全ての金融機関の合意が得られるのであれば良いのですが、全ての金融機関の合意が得られない場合も少なくありません。むしろ、大半の場合に同意を得られません。このような場合、法的整理に移行することで強制的に合意してもらうことも可能性としては考えられます。

たとえば、民事再生法の場合であれば無担保債権者の過半数が合意すれば計画としては成立するのですから、過半数に満たない一部の金融機関の合意が得られない場合に、法的整理に持ち込むことで強制的な合意を得ることもできるわけです。


あるいは、暫定リスケという方法も考えられます 。

全ての金融機関が合意できるような再生計画ができるように債務者の業績が回復するのを待つために、暫定的に返済猶予を求めるという方法です。合意が得られないのであれば致し方ない方法であるということもできます。

この方法をとる場合、すなわち、返済猶予を求める間は基本的には新規融資は期待できないことを覚悟する必要があります。資金的な制約ゆえに明らかに有利なビジネスチャンスも逃がしてしまう危険があるというわけです。


このような返済猶予の弊害を避けるためには、一括合意ではなく個別合意による段階的事業再生や第二会社方式による個別再生も必要な局面が生じることになります。

一括合意ができないならば、合意してもらえるところから個別合意を得て再生するというわけです。この方法の場合、個別合意を受けることで再生可能な事業部門を先に第二会社方式で分離させるということになりますので、一種の分社化になります。


返済猶予の種類
2017年06月03日(土)

最も単純な返済猶予の方法として金融機関と交渉し、約定の返済を猶予してもらう方法があります。

返済の猶予を受けた分については、そっくりそのまま将来において返済することになります。

返済猶予を受けた分については将来の返済額を増加することになります。バルーンとは風船のことで、将来の返済額が風船のように膨らむことからバルーン返済と呼ばれています。


この返済の猶予とは、大きくふたつに分けられます。ひとつは確実な方法であり、金融機関と合意した内容で金銭消費貸借計画の内容を変更する方法です。この場合は契約内容の変更であり、債務者としては期限の利益を喪失しないことになります。不良債権の初期の段階は、皆、この状態からスタートすることが一般的です。


もうひとつの方法は、いわば暗黙の了解のようなもので、金融機関の「返せ」、債務者の「返せない」、のやり取りが続いている間に返済の期限を迎えてしまう場合などが考えられます。弱いかたちではあるものの、暗黙の了解があれば直ちに抵当権の実行等のような争いとなるような事態は回避されることになります。但し、この方法によると、金融機関は債務者の期限の利益をはく奪することになりますので、債務者としては一括返済をしなければならない立場に追い込まれてしまいます。

たとえ全額が無理であっても、内入れ返済を行うことで返済の意思があることを示しておくことも必要です。


約定返済が困難になった場合に、利息のみ支払いをすることがあります。この場合、貸付金残高が減らないことになります。経営破綻の初期あるいは中期によく見られる形態でもあります。金融機関にしてみれば、金利を稼ぐことができますので損失は生じません。

一方、債務者は利息という金融機関の利益のためだけに経営を継続することになります。

元本は減らないので、その場しのぎにはなっても、事業再生のためには、あまり効果的ではないということもできるでしょう。


破産を迫られた経営者と保証人の事例(1)
2017年05月29日(月)

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
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第37回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「破産を迫られた経営者と保証人の事例(1)」で、その要旨は次の通りです。

ーーー

要旨:

会社の再生手続が進められる過程で経営者や保証人が破産を求められることも少なくありません。本当に破産をしなければならないのでしょうか?答えは「ノー」です。破産する必要などは無いのです。破産するくらいならば一生涯にわたって負債を抱えたままにしてしまえば良いとさえ言えるのです。2回に渡り「破産を迫られた経営者と保証人の事例」を紹介します。今回は一つの事例を紹介することとし、次回において保証債務の実情について整理するとともに、事例の顛末を紹介します。今回の事例は、拙著「民事再生は必要ない!打つべき手は他にある」(ファーストプレス社刊)の第1話『破産は必要ない』から引用、抜粋、加筆しています。

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第二会社の事業計画
2017年05月27日(土)

融資を引き出したいがために、背伸びした計画を作成する場合がみられますが、これは典型的な融資獲得計画です。少しでも経営状態を良くみせることで新しい融資を引き出そうとするものです。

程度にもよりますが、無理な事業計画に対して新しい融資が行われるわけでもなく、下手をすれば「偽の決算書により返済不能の融資を引き出した」という詐害行為により詐欺罪が成立する恐れすらあります。

計画実施後のモニタリングも重視されており、いい加減な計画を実施しても時の経過とともに明らかになります。事業再生にあたっては実現可能性の高い計画を作成しなければならないのです。


繰り返し指摘した通り、新規事業による将来への期待は、従来の会社の再生計画に織り込むべきではなく、第二会社の事業計画として実施することが得策といえます。そうすることで、従来の会社の再生計画は実現可能性が高まりますし、第二会社の事業計画が成功すれば利益を第二会社に留保できるからです。


中には許認可が必要な事業もあります。第二会社が許認可を得ることができるのか否かが問題になります。許認可が得られないならば、新事業を開始できないからです。この点、事業譲渡であれば許認可の再取得になりますが、会社分割であれば許認可の引継ぎが容易になる場合もあります。会社分割の場合の引継ぎの可否については、許認可権者に確認することになります。

第二会社で許認可が得られない場合は、従来の会社が事業を行うことになります。


二つの再生方法
2017年05月20日(土)

借入金を削減することで事業を再生させる場合、二つの方法があります。


一つは従来の会社を利用する方法です。従来の会社がそのまま事業を継続して債務免除を受けるため、この方法の場合には第二会社が必要になりません。もう一つは第二会社を利用する方法です。従来の会社から資産を譲渡したり、事業を譲渡したり、あるいは会社を分割するなどの方法で事業を第二会社に移転する方法です。

いずれも会社の借入金は削減され、適正な水準の借入金を有する会社として再生されることになります。

わざわざ第二会社を経由しなくても良さそうなものですが、そこには金融機関の論理というものがあり、従来の会社に対して債務を免除するのは困難な場合があるのです。


従来の会社が、そのまま債務免除を受ける場合、きわめて単純な図式となります。この場合は、そもそも第二会社が必要になりません。

この方法は、単純ですが、簡単ではありません。

債務者には返済義務がありますので、債務者は債務免除を求める立場にありません。従来の会社がそのままの状態で債務の免除を受けるには、相応の手続が求められることになります。実現可能な再生計画を作成し、返済可能な最大額を返済することを疎明する必要があるのです。その返済計画が認められて初めて債務免除を受けることになります。


従来の会社を再生させる場合は、再生計画が必要になります。この点、第二会社を利用する場合には第二会社の事業計画を作成することになり、再生計画ではありません。事業計画と再生計画は異なることに注意が必要です。


不確実性下の事業計画
2017年05月15日(月)

事業計画を作成するにあたっては、どのような形で事業を進めるのか、そしてその事業はどのような戦略を採用するのか等を勘案することが求められます。

その計画はできるだけ正確であり、実現可能性が高いことが求められますが、経営環境が不確実な状況において正確な計画の作成には限界が生じるのも事実です。たとえば、経営環境を保守的に見込めば評価が下回ってしまいますし、反対に楽観的に見込めば過度の評価になってしまいます。古典的な手法ですがSWOT分析が求められるのは、経営環境の分析をできるだけ客観的に進めようとするからにほかなりません。


不確実性の高い経営環境下での価値判断方法としてリアル・オプション(Real Option)という考え方があります。リアル・オプションは、金融工学のオプション理論を事業評価に応用した考え方で、将来になって経営環境が確定したときに、柔軟な意思決定が可能になるという特徴を有しています。現時点で将来の経営環境を仮定し価値判断を行うのではなく、段階的な経営戦略をとるというのが基本的な考え方です。当初は控えめな経営戦略をとることで、仮に経営環境が悪化した場合には撤退が容易となりますし、反対に、経営環境が良好であれば追加的な経営戦略をとることで事業の拡大を見込むことができます。


このようなリアル・オプションの考え方は、不確実性下において事業戦略を展開するための意思決定ツールとしては有効です。反面、段階的な経営戦略をとるという考え方は、将来時点における経営環境が良化した場合と、悪化した場合に分けてとらえるため、現在価値も複数となり、上限額と下限額というような範囲評価になってしまうという問題点を有しています。これでは実現可能性に疑問が生じてしまいます。


このように考えると、リアルオプションの考え方を事業再生にそのまま適用するのは困難なのです。ただし、別会社で進めることになる新しい事業に対する意思決定としては有効といえるでしょう。


事業計画と再生計画
2017年05月08日(月)

不良債権に関する事業価値の評価に関し、正常債権としての事業評価を行って良いのかという問題があります。

過去から現在までの不良債権としての事業を基礎として、将来の正常債権として再生すると考えるのであれば、この意味において過去の不良債権としての価値を引きずることになるからです。過去から現在までの事業とは別の全く新しい事業は、わざわざ不良債権と合体して進める必要はなく、独立して遂行すれば良いのです。


ビジネスプランの如何によって評価額に差異が生じるのは当然ですが、過去を引きずると言う意味で不良債権に基礎を置く以上、純粋な形での正常債権としての評価とは異なるものとなるのです。純粋なベンチャービジネスとしてのビジネスプランを、そのまま採用することはできない場面も考えられるのです。


正常債権に分類されている企業の「事業計画」と、不良債権に分類されている企業の「再生計画」は根本的に異なります。

この点は極めて重要な違いなのですが、違いを見失ったままに一般の経営コンサルタントに相談して「事業計画」を作成してしまい、その計画を基に金融機関に「事業再生」の相談をするという例が後を絶ちません。金融機関に「事業再生」の協力を求めるならば、「事業計画」ではなく「再生計画」を作らねばならないのです。

端的にいえば、事業計画の場合は多少のリスクをおかしてでも利益の上ブレを求めることが許されますが、再生計画の場合はリスクを取ることで計画の実現可能性が低くなるのは好ましくないという側面があります。


再生計画では、「実抜計画」「合実計画」という用語がありますが、いずれも実現可能性が高いことが求められることを見失ってはなりません。事業再生を予定している経営者の皆さんは、事業計画ではなく再生計画を作るのだという点を忘れないようにすることが大切です。ご注意ください 。


奇抜なアイデアは避けて新規事業は別会社で行うべき
2017年05月03日(火)

事業計画の作成に当たっては実現可能性が高いことが求められます。奇抜なアイデアを持ちだして売り上げを拡大させるような方法をとるべきではありません。

奇抜なアイデアをもとに、実現可能性が低いような計画は再生計画に反映すべきではないのです。

換言すれば、これまで実行してこなかったアイデアを、突然持ちだされても説得力に欠けるというわけです。


新たな事業がプラスの利益を生むならば行えば良し、マイナスならやらなければ良しという判断になるのは当然です。

問題は、従来の会社で行うのか、あるいは別会社で行うのかという点です。

この点について、新規事業は別会社で実施することで、失敗のリスクを既存会社から隔離すべきです。


なぜならば、失敗したとしても、それは別会社の話であって既存会社には無関係ということになります。よって、既存会社の事業計画の実現性を高めることができるのです。

成功した場合には、それは別会社の話であって既存会社には無関係ということになります。よって、その利得は別会社で享受し、これを既存会社の債権者に分配対象にしないというメリットを狙うことができます。


単に事業計画を作成するだけではなく、その事業をどこで行うかという点も考えるべきなのです。


M&Aと株主総会決議
2017年04月28日(金)

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
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第36回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「M&Aと株主総会決議」で、その要旨は次の通りです。

ーーー

要旨:

M&Aの態様には合併、株式併合、事業譲渡など、様々な形がありますが、最もシンプルな形は株式譲渡です。譲渡側と譲受側の株主が合意すれば良いだけです。単純に譲渡人と譲受人が友好的な取引ができるのであれば無難な方法だといえるでしょう。それはそれで結構なことです。しかし常にスムーズな取引ができるとは限りません。「株式譲渡の場合は株主が合意すれば良いのであり、株主総会決議は問題にならない」と甘く考えるのは大変な誤りですので注意が必要です。

ーーー


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(1)会計事務所の先生の場合は「tvs会員」になる必要があります。
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多くの有益な情報を入手できますので、入会することをお勧めします。
私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。


入会にあたってはお近くの(株)ミロク情報サービスの営業拠点にご連絡ください。営業拠点は下のアドレスから検索できます。
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返済計画と債権者間の調整
2017年04月22日(土)

キャッシュフローがプラスでなければ事業再生が成立しません。

この、キャッシュフローがプラスか否かは、P/Lの世界の話に他なりません。さらに清算価値より多くの返済が可能かどうかについては、資産評価という意味ではB/Sの世界の話ですが、経営成績が良いから価値が高まるという意味でP/Lの話となります。


そもそも資金繰りができなければ経営継続は困難なのであり、やはりP/Lが重要ということになります。そもそも取得原価主義に基づくB/Sは、実態と乖離しているのであり、時価と乖離した簿価に着目しても意味はありません。

会計事務所は月次業務を通して、債務者の経営成績を把握する立場にあります。したがって、P/Lを重視する事業計画の作成は会計事務所で行うことが十分に可能です。


事業再生にあたって困難なのは、金融機関の論理に配慮した返済計画の作成です 。債権者と債務者の間の情報の非対称性を埋めるだけではなく、均衡性・公平性に配慮した返済計画を作成しなければならず、事業計画と返済計画の両者が相まって事業再生計画が完成するのです。


返済計画については担保の有無の他、金額の多寡、融資期間の長短、債権者の立場等により異なります。

債権者にはそれぞれの立場や論理がありますので、返済計画の策定にあたっては債権者間の調整が最も難しいということができます。単に残高で按分すれば良いというわけではないことに注意が必要です。


事業計画と返済計画
2017年04月17日(月)

実現可能性が求められる「事業計画」と、均衡性・公平性が求められる「返済計画」とは異なります。

両者が相まって事業再生計画が完成することになります。


日頃から債務者の経営状況を把握する立場にある会計事務所としては、「事業計画」の作成は比較的容易であっても、金融機関の論理に配慮した「返済計画」の作成や金融機関との交渉は荷が重いかもしれません。返済計画の作成に無理に関与するよりも、会計事務所はモニタリング機能を発揮し、事業再生計画が計画通り進むことを見守ることが大切なのです。


事業計画は確実性が最も重要な要素です。実現可能性が低い計画を作成したところで、時間の経過とともに事実は明らかになり、信ぴょう性の欠ける計画としての烙印を押されるだけです。


返済計画は均衡性や公平性が求められます。債務者と債権者の間には返済能力に関する情報の非対称性が存在することについては本欄で繰り返し指摘しています。

債務者と債権者の対立のみならず債権者と債権者の対立が存在するのであり、返済計画の作成に当たっては、債権者間の均衡性、公平性に配慮することが求められるのです。


条件闘争の必要性
2017年04月11日(火)

債務者が新しく設備投資をしたものの採算割れで経営が行き詰まった場合など、過度の設備投資で返済が不能となれば金融機関としては一括回収を考えるのは至極当然です。このような場合、同業他社にしてみれば、債務者の窮状につけこんで新しい設備を安い金額で入手できるチャンスになります。

不動産の開発業者が近隣地域ごと買い取り大規模開発を行った例とか、同業者が新工場を手に入れて業績拡大を実現した例は少なくありません。経営破綻に陥った旅館やホテルを安く購入する宿泊業の全国展開が盛んに行われたこともあります。


同業他社に乗っ取られる危険を回避するために、近隣地域で元気な同業者が存在する場合は取引金融機関を調べるなどの対策が必要になります。同業他社の動向を探るのです。業種によっては全国に同業者が存在しますので、調査は厄介な話となります。


債務者自身の事業継続による返済可能額よりも、同業他社によって高値の提示が予想される場合には再生計画の抜本的な方向転換も必要かもしれません。

同業他社との競争に負けることが見えてきたら条件闘争に持ち込むのです。


撤退はやむを得ないと判断した場合、事業譲渡代金を増やして一部を返済に回さずに留保したり、経営に参画することで生きていく道を確保したりというような事業継続をあきらめたうえでの条件闘争を行うわけです。この場合、保証債務の免責も条件にすることを忘れてはなりません 。


競売を妨害しても、一時的に遅らせることはできても抜本的な解決にはなりません。

妨害したところで経済合理性は成り立たないのであり、債権者と話し合うことで、有利な撤退方法を探るのもやむを得ない場合もあるのです。負ける戦いはしないことが得策です。


自主避難者を保護する必要はない
2017年04月08日(土)

原発事故の自主避難者に対し、「自己責任」に触れた発言で今村雅弘復興相が批判に晒されています。

「自己責任である」という考え方に理解できますが、記者会見の場で発言するのはいかがなものでしょうか。まして「記者に向かって出ていけ」はないでしょう。

まったくもってお粗末な大臣様です。


自主避難者・・・。保護に値するのでしょうか。

テレビの報道で自主避難者の意見が紹介されていました。福島県郡山市から大阪に自主避難した人でした。

郡山市は福島原発から遠く、60キロも離れています。こんなに原発から離れた所から自主避難する者を保護する必要があるのでしょうか。私には自主避難者の我儘にしか思えません。


60キロと言えば、福島市も該当しますし、茨城県北部や、宮城県南部も該当します。

これだけ離れているにもかかわらず、なぜか大阪に自主避難するのは、自己責任以外のなにものでもありません。自主避難に名を借りた、自発的引越しではないでしょうか。身勝手な振る舞いに対し税金をもって保護する必要はないと思います。


「仕事の無い人は生活できなくなる」と、わけのわからないことを言う輩がいます。逆ではないでしょうか。仕事がないから大阪に引っ越す自由を享受できたのです。避難したくても仕事の都合で留まる者もいたことでしょう。


いつまでも被害者を気取るのではなく、「福島に戻るなら戻り、戻らないなら新天地で、自分の力で生きていけ」と言いたいのは私だけでしょうか。

自主避難者はもちろん、被災者に対しても、過度の保護はすべきではないと思います。後ろ向きな事柄に、過度の税金投入をするのは止めてもらいたいものです。


旅行業者の自己破産は詐害行為ではないのか
2017年04月04日(火)

格安旅行業者の「てるみくらぶ」が破産手続きを開始したとのこと。

150億円を超える負債と、3万人を超える被害者が生じたと報道されています。

破産開始決定の数日前には新聞の全面広告で「現金一括入金割引」を大々的に広告し集客していた由、まったくひどい話です。


破産手続きを開始したとの「お詫び会見」には弁護士も同席していました。

その中で、記者からは経営状況や、今後の進め方等について質問が出されていましたが、現金一括入金割引をエサとして、直前まで集客していたことについての追及は十分ではありませんでした。


法的手続にあたっては、できるだけ手元の現金を膨らませておき、資金が溜まった時を見計らって破産なり民事再生なりを開始することが少なくないのです。

「破産を考えたのはいつか」

「弁護士に破産手続きを依頼したのはいつか」

この点をまずは押さえ・・・、

「粛々と破産開始に向け準備する一方で、直前に現金一括をエサに集客したのは何故か」

「弁護士の入れ知恵があったのか」

「破産を計画する一方で、数日前に集客するのは詐害行為でないか」等々、計画倒産の責任追及をすべきではないでしょうか。


2008年11月25日の本欄で、自動車教習所の自己破産に関連して、自己破産の問題を指摘しました。すなわち、破産ではなく民事再生による再生を目指すべきなのです。「一般旅行客の犠牲のもと、大口債権者の損失を抑える」、そんな破産は疑問です。

民事再生前置主義でも制度化し、破産の前に、まず再生を模索させるべきです。

安易に破産を選択するのはいかがなものか、そもそも破産は必要なのか、破産制度に見直しが必要ではないでしょうか。


清算価値と競合価値
2017年04月02日(日)

担保となっている資産の評価が問題となる場合、正常価格を評価するだけではなく、清算価値や競合価値との比較が必要となります。


1、清算価値とは、全ての資産を換金することを想定した価値です。現存する動産は専門業者に引き取ってもらい、実在性のない資産はゼロ評価となります。不動産の場合には、売主の協力が得られない場合を想定して競売価格で評価します。


このように処分して得られる一括回収金額を、債権者が想定する利回りで運用して得られる金額と、事業継続をする場合に返済可能な金額を比較することになります。返済可能な金額が、清算価値を下回るようであれば、残念ながら清算が選択されることになります。


2、競合価値とは、たとえば同業者が事業を拡大する目的で買いあがる場合の金額です。一般の取引ではなく特別の取引であり、たとえば隣の土地を購入する場合のように、価値の増加分が認められます。したがって、競売価格よりは高くなるのが一般的です。不動産鑑定にあてはめれば限定価格の概念といえます。


たとえば新型設備を導入した町工場のような場合、不動産業者が宅地開発やマンション開発をするならば、せっかくの新型設備は邪魔になってしまいます。撤去して処分するにも費用がかかるのであり、評価額を求める際にはマイナス要素になってしまいます。しかし、同業他社にしてみれば新型機械をそのまま入手できるので、マイナスどころかプラス評価になるというわけです。


このように資産の評価にあたっては、さまざまな観点から評価することが必要になります。


さまざまな問題事例
2017年03月28日(火)

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
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第35回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「さまざまな問題事例」で、その要旨は次の通りです。

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要旨:

事業再生に関わる業務はまさにギリギリの攻防戦でもあります。中には債務者自身の未熟さゆえに欲をかきすぎて債権者の反感を買ってしまったり、仲間や味方の裏切りにあったりと、すべてが順調にいくわけではありません。経営が苦しいことを嗅ぎ付けた輩が、いろいろな餌をぶら下げて言い寄ってきたりもします。失敗談も少なくないのです。今回は、問題となる事例を紹介します。拙著「事業再生に伴い残った借入金と会社の処理の仕方」(ファーストプレス社刊)の『Ⅲ、事例』から引用、抜粋、加筆しています。

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安倍昭恵という迷惑な御仁
2017年03月25日(土)

森友学園の話。

誰が見てもホラ吹きの籠池氏ですが、今回の問題に関しては、一貫して訴えているところに偽りやホラは無いように見受けられます。

ゴミ処理の金額の是非、異例の待遇等に圧力があったのは明白です。安倍昭恵経由で秘書官が動いたというシナリオが自然な流れなのでしょう。


それにしても自民党の証人喚問は「情けない」の一言です。

籠池氏は宣誓の上、偽証罪リスクを背負って証言しているのに対し、自民党の質問者は単なる伝聞証拠を並べているだけです。警察官僚出身の葉梨議員に至っては、あたかも容疑者の取り調べのような態度で、「嘘をついていること」を前提とした取り調べのような態度でした。籠池氏が声を荒げるのも無理ないと感じました。


籠池氏の主張の真偽は釈然としません。

しかし、偽証罪リスクを背負っての証言であることに加え、昭恵夫人を巡る一連の証言をする動機が見出せないことから、「嘘」と断言するのは無理があると思います。

「政治力学が働いたと思うが、誰が何をしたかわからない」との主張が本当のところなのでしょう。

にもかかわらず、自民党議員連中を始め、中央官庁、大阪府等々、いわゆる「権力者」が寄ってたかって「一私人」を嘘つき呼ばわりして攻撃するのはいかがなものでしょう。大いに疑問です。籠池氏のさまざまな「ホラ」よりも、黒塗りの情報開示や、挙句の果てには「情報は破棄した」との言い訳の方が、よっぽど大きな「ホラ」ではないでしょうか。

北朝鮮の核ミサイル、尖閣周辺の中国船の暗躍、北方領土の塩漬け等々、やるべきことは山積しています。ホラ吹き合戦は一刻も早く止めてもらいたいところです。安倍総理は籠池氏を嘘つき呼ばわりするのではなく、「夫人の間接的な関与」を認めて謝罪することで事態の収拾を図ってもらいたいところです。


それにしても昭恵夫人。まったく人騒がせな御仁です。謙虚に謹慎すべきであり、いまでも講演に出かけているとは、開いた口が塞がりません。

天下の愚宰である鳩山由紀夫の間抜けた行動と、昭恵夫人のノー天気な態度に、一脈相通じるものを感じるのは私だけでしょうか。まったくもって迷惑な御仁だと思います。


債務免除と債権放棄
2017年03月23日(木)

債権放棄は債権者の立場の話であり、債務者の立場からは債務免除です。ひと言で表せば同じです。しかし、厳密にいえば微妙な違いもあります。


債権を放棄すると、会計上は貸倒損失を計上しなければなりません。債権者にしてみれば、この貸倒損失は当期の損失になり、損金として課税利益を減少させます。

このような計算上の損失は、実は事前に対策を講じておくことができます。それは貸倒引当金を計上することに他なりません。引当金とは、将来において予想される損失に備え、あらかじめ計上しておくもので、期間損益の平準化を行うことが目的です。


一方、債務者にしてみれば債務を免除してもらうので、債務者には債務免除益という利益となります。現金が入らなくても、利益にかわりはありません。しかし、現金が入らないのに課税されるので税金倒産になってしまいかねません。


債権者が貸倒損失を計上して税金を減らしている中、課税当局にしてみれば、債権者から税金を取れない分、債務者から徴収するというわけです。債務免除益に課税する目的は、債権者から債務者への、課税の転嫁に他ならないのです。債権者の「損」が債務者の「益」になるのであり、両者をあわせて考えれば、プラマイゼロということになります。


債務免除と債権放棄の違いは何でしょうか。

それは、債権者の損は事前に貸倒引当金という形で準備することができるのに対し、債務者の益は準備できないという点です。

そもそも債務は支払うのが基本であり、それを免除してもらうこと、すなわち債権を放棄してもらえるかどうかは債権者次第なのです。一方の債務者にしてみれば、債務免除はいつ行われるかの予想がつきません。


このように、債権放棄は貸倒引当金として準備できるが、債務免除は準備できないところに大きな違いがあるのです。

見方を変えれば、債権者にとっては「貸倒引当金を計上したかどうか」、という点が債権放棄をするかどうかの大きな判断ポイントになるのです。


一括回収と分割回収の違い
2017年03月20日(月)

事業を継続することで得られる利益から回収するとは、債権者の立場から見れば、多くの場合に分割回収を行うことになります。

第二会社への事業譲渡の場合は一括回収になりますが、従来の経営主体が事業を継続する場合はそうはいきません。清算することによる一括回収、さらには、同業他社に事業譲渡することによる一括回収を超える金額を分割返済しなければ勝負にならないのです。


仮に資産を処分することで100の一括回収が可能であると仮定します。さらに、債権者は年間の運用利回りを10%と考えていると仮定します。

この場合、債権者は担保処分をして100の現金に代えれば年間10の経済的利益を得られるということになるのです。

それにもかかわらず、債務者から10に満たない分割回収しか期待できないのであれば、債権者側の経済合理性が成り立たないということになります。このような債務者からは分割回収ではなく、一括回収するしかないということになります。


資産を処分した場合に期待できる金額はいくらなのか、さらに、適用する運用利回りはどの程度なのかはケースバイケースであり、個々の債権者によって異なります。


キャッシュフローが重要であること
2017年03月14日(火)

事業再生計画が作成でき、全ての債権者の合意が得られれば良いのですが、債権者の合意が得られなかった場合には個々の債権者の合意を個別に得ることで再生を進める場合があります。


たとえば、特定の資産を担保に持つ債権者と個別に合意することができるならば、他の債権者との合意を待たず、個別に債権者と合意して財産を移転することが考えられます。

このような個別合意型の事業再生は、前提として資金繰りが回ることが必要です。金融機関からの運転資金供給が止まるのですから、自己金融により事業を継続するしかないのです。たとえば、仕入れや原材料投入が制約されることになります。資金繰りが回らなければ黒字倒産となってしまうので、事業継続は困難と言わざるを得ません。


キャッシュフローがマイナスである場合、市場から退場する以外の策はないのでしょうか。たしかにキャッシュフローがマイナスであれば事業として存続価値はないといえますので、市場から退場するというのが経済合理性からの判断をした場合の結論となります。


経済合理性の判断から離れて考えるならば、唯一の例外は私財投入による延命措置です。

事業そのものから利益を生み出すことができないため、経営者が私財を投じて事業継続をするというものです。この場合、競売で得られる金額よりも低ければ競売になってしまいますし、同業者が提示する競業価値以上の投入がなければ競合業者に負けることになってしまいます。よって、競合業者が提示する金額以上を提示しなければならないことになります。


このような方法がとられるケースとして、経営者の思い入れが強いというような経済的合理性からは離れた判断に基づく場合や、何らかの事情により暫定リスケを行うために時間を稼ぐ場合などが考えられます。


震災の節目
2017年03月11日(土)

また「あの日」がやってきました。

震災6年目になります。


帰還困難区域に指定されたため故郷を離れることは、さぞかし辛いことなのでしょう。

祖父母もなく、転勤族の家庭に育ち、自らも転勤族であった私には実感が湧きません。私には故郷がないからです。

帰還困難区域の解除が相次ぐ中、6割以上の人々が「帰らない」とのことです。

報道では「鎮魂」だ、「復興」だと騒がれています。

東北の復興がそれほど大切なのでしょうか?

6割以上の人々が「帰らない」街を、巨費を投じて復興することが大切なのでしょうか?


巨費を投じるならば、都市部の老朽化したインフラ整備に力を傾注すべきです。

東北の復興、熊本の復興と、後追いの対策ではなく、予防の観点からインフラ整備や首都機能の分散に目を向けるべきです。


仮設住宅にしても「仮」であるべきです。

6年も経過した今、取り壊しを進めるべきです。もはや、「仮」の時期は過ぎたと思います。このままでは仮設ではなく、常設になってしまいます。


必要以上の過保護は見直すべきです。

節目だからこそ、綺麗事を並べるのではなく、過保護を見直すべきではないでしょうか。


債務者のヤル気と返済額
2017年03月07日(火)

債務者の返済能力とは何でしょう。

この返済能力は、二つの返済能力に分けてとらえることができると思います。ひとつは、たとえば1年間でいくら返済できるかという短期的な返済能力です。もうひとつは、○年間でいくら返済できるという長期的な返済能力です。


一般的に、会社の会計期間は1年ですので、ここでも短期的な返済能力は1年としてとらえることにします。そうなると、長期的な返済能力は年間返済額×返済年数としてとらえることになります。

もし、債務者が1年に獲得できる利得の全部を債権者に返済するとしたら、債務者はヤル気が起きないかもしれません。債務者にも何らかの配分があるからこそ、ヤル気が起きるのです。だからといって、多くの配分を債務者に与えたのでは、債権者が黙っていません。そこで、どこで折り合うかという問題が生じることになります。


ところで、年間返済額×返済年数で求められる長期の返済能力は、まさしく返済期間の長短により左右されることになります。この返済期間を決めるのは債権者の自由なのです。なぜならば、債務者には返済義務があるのですから、全額を返済するまで継続しなければなりません。たとえ何十年かかろうが、債権者が受け入れる限り返済する義務を負うのです。

しかし、たとえば全額返済に100年以上かかるような場合に、100年間も債務者が返済に追われるようでは、債務者のヤル気が起きないのも無理がないところです。債務者のヤル気が起きなければ、短期返済能力が下振れしてしまうため、結局は長期返済能力も下振れするというジレンマに陥ってしまいます。

債務者のヤル気を極大化し、結果として返済額を多くするためには債務者の利得を確保することが必要になるのです。


地下に埋設されているゴミの撤去は土地所有者の義務ではない
2017年03月02日(木)

大阪の森友学園なる学校法人が、国有地を安く購入したと騒がれています。破格の扱いに議員の力が働いたのではないかと国会で追及されています。


どこの誰がどんな圧力をかけたのかは分かりませんが、国会議員の圧力があったことは容易に想像できます。金正男の暗殺に北朝鮮が暗躍したのが容易に想像できるのと同じです。

ピントのズレた追及をするのではなく、理事長、許認可官僚等を証人喚問により追及すべきです。


経緯や、金額の是非は別として、ひとつ誤解があるようです。

土地の価格が100で、埋蔵されているゴミの撤去費用が80だとします。

この時、不動産鑑定士は80の撤去費用を評価する必要はありません。不動産鑑定士にゴミの撤去費用を算定する権限もなければ知識もありません。

不動産鑑定にあたっては、鑑定評価の条件で「地下にゴミの埋蔵物がある可能性があるが、評価にあたって撤去費用は勘案しないものとする」という条件を付加するのです。これにより100の評価を行うことになります。100から80を控除した20という評価にはならないということです。(仮に、このような条件を付加せず、ゴミの存在を隠して100の評価をしたならば、それは不当鑑定になりますが・・・)


その不動産を20で購入した者が、ゴミの撤去をしなければならないという義務はありません。

仮にゴミの撤去をしないならば、資産価値が低いまま使用していることになります。それは購入者の自由なのです。将来において転売する時点で、ゴミ撤去費用を控除した金額で取引されるだけのことです。


ゴミの撤去は土地所有者の自由である以上、ゴミの撤去をしたか否かは論点にすべきではないのです。

ピントのズレた追及をせずに、経緯や、金額の是非を追求すべきです。


不良債権に関する情報の非対称性
2017年03月01日(水)

当事者の一方だけが情報を持ち、他の当事者が情報を持たない場合には正常な取引を進めることが難しくなります。このことをミクロ経済学で「情報の非対称性」といいます。


金融論の世界では、融資取引にあたって情報の非対称性が存在するのは常識です。

情報の非対称性が存在することを前提として、メインバンクシステムとか、リレーションシップバンクシステムといって、金融機関が債務者の情報を少しでも多く把握することで、情報の非対称性を緩和するべしと説かれているのです。


不良債権になると、話は一層深刻です。

たとえば債務者が「当方の返済能力は年間で100が限度です」と主張したところで、債権者が「あ、そうですか」となるわけがありません。債権者に「いや、年間で120は返済できるはずだ」と言われたのでは話がまとまらなくなってしまいます。債権者が債務者の実際の返済能力を過剰に評価したために、まとまる話もまとまらなくなってしまうのです。まさに、「情報の非対称性」ゆえの悲劇です。


貸付金の返済にあたって、債権者が納得する返済額は債務者の返済能力内にあるとは限りません。債権者は債務者の返済能力の限度値を知らず、債務者は債権者が受忍できる下限値を知らないからです。

債権者は債務者の努力水準を把握できず、よって返済額を把握できないため、債権者の要求は、時として債務者の能力を超えたものとなり、交渉決裂リスクを有することになるのです。

債権者が債務者の返済能力の上限値を超える要求をすると、債務者は返済できないので破綻してしまうというわけです。


言い換えれば、破綻するかどうかは、債権者の要求如何にかかっているのです。

債務者としては債権者が過大な要求をしないように、真の返済能力を債権者に理解してもらうことが大切です。


不動産の鑑定評価と詐害的会社分割
2017年02月25日(土)

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第34回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「不動産の鑑定評価と詐害的会社分割」で、その要旨は次の通りです。

ーーー

要旨:

実際に行われている不動産鑑定評価の概要を説明したうえで、鑑定評価額の変動要因、すなわち、どのような場合に高い(低い)評価になるかを各鑑定手法ごとに整理します。評価額の変動を踏まえた上で、債権者を害する目的で詐害的会社分割が行われていること、さらには、法改正により詐害的会社分割が封じられる道が確立されたことを明らかにします。

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多くの有益な情報を入手できますので、入会することをお勧めします。
私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。


入会にあたってはお近くの(株)ミロク情報サービスの営業拠点にご連絡ください。営業拠点は下のアドレスから検索できます。
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貸倒引当金と債権放棄
2017年02月17日(金)

金融機関の自己査定において、債務者区分の後、債権分類を行うことは2017年2月4日と8日の本欄で紹介した通りです。


Ⅲ分類はⅡ分類とは大きく異なり多額の引当が求められます。

Ⅲ分類は「破綻懸念先」から生じますので、金融機関にとっては貸付先が「要管理先」なのか「破綻懸念先」なのかで大きく異なります。債務者区分を引き上げれば「要管理先」として少ない額の貸倒引当金で済みますが、債務者区分を引き下げ「破綻懸念先」とすれば多額の引当金が必要になります。


さらに、債務者区分を「実質破綻先」に区分し債権をⅣ分類にすると、さらに多くの貸倒引当金を計上することになりますので、債務者の区分を引き上げたり、担保評価を引き上げたりすることでⅢ分類やⅣ分類の債権をできるだけ減らそうとする動きも否定できません。これではまるで粉飾決算ならぬ粉飾査定のようなものです。


なお、貸倒引当金が多額になれば二次損失の発生可能性が少なくなります。よって債権放棄がしやすくなるということになります。

この点に関して筆者は「貸倒引当金の多寡が債権放棄に及ぼす影響」という題名の学位論文にまとめてあります。興味のある方は当ホームページ内の「高橋博士の研究室」のページをご覧ください。


中小企業の特性
2017年02月12日(日)

中小企業の場合には「会社の資産」と「経営者の資産」が明確に区分されていないことも少なくありません。そこで、中小企業の財政状態や経営成績を把握するためには、中小企業の特性に合わせて会社の財務諸表を修正することが求められます。


債務超過を判断するにあたっては、経営者からの借入金は会社にとっては負債であっても実質的には自己資本として考えることができ、経営者が会社に対して返済を求めていることが明らかでないのであれば純資産として考えることもできます。反対に会社に代表者への貸付金がある場合に、回収可能性が無いのであれば純資産から減じる必要があります。さらに、経営者の預金や有価証券等の流動資産及び不動産等の固定資産についても返済能力として考慮することができ、実質純資産の算定にあたっては加算することになります。


収益性を判断するにあたっては、役員に対する支払状況などを考慮します。たとえば、会社の決算は赤字であっても経営者への報酬や経営者への家賃等の支払が原因であるならば、会社の収益性を高く評価することも可能です。


中小企業が債務者である場合、このような中小企業の特性を勘案したうえで債権者は貸倒引当金を計上することになります。しかし、債権者の体力によっては巨額の貸倒引当金が計上できず、引当額が不足するという実態が生じることにもなります。

債務者の事業再生にあたり、債権者たる金融機関の貸倒引当金の多寡という事情で債権放棄の可能性が左右されることになってしまうのです。


債務者区分と債権分類(2/2)
2017年02月08日(水)

金融機関の自己査定では、債務者を区分した後、債務者に対する債権を次のⅠからⅣの四分類に分類する作業を行います。それぞれの分類は次のように定義づけられています。


・非分類(Ⅰ分類)=回収の危険性または価値を損なう危険性について問題のない資産

・Ⅱ分類=債権確保上の諸条件が満足に充たされないため、あるいは、信用上疑義が存するなどの理由により、その回収について通常の度合いを超える危険を含むと認められる債権などの資産

・Ⅲ分類=最終の回収または価値について重大な疑念が存し、したがって損失の発生の可能性が高いが、その損失額について合理的な推計が困難な資産

・Ⅳ分類=回収不能または無価値と判定される資産


このように債権を分類した後、貸倒引当金を計上する作業を行います。

Ⅲ分類やⅣ分類に分類されてしまった場合、新たな融資を受けることは困難になります。


換言すれば、どの分類になっているかを見極め、それに応じた金融機関対策が異なるのです。債権分類を把握しないままに事業再生計画を作成することは間違った対策になりかねませんので注意が必要です。


Ⅲ分類やⅣ分類に分類されてしまい、新規融資を受けることができないような場合の選択肢はふたつです。

ひとつは、経営改善によりⅡ分類以上になるように努力することです。分類変更がないままに新規融資を期待しても無理というものです。

もうひとつは、債権放棄を求めることです。もちろん、単純に債権放棄を求めても受け入られるものではありません。第二会社方式など、事業再生の定石に従って粛々と対策を講じることが必要になるのです。


債務者区分と債権分類(1/2)
2017年02月04日(土)

金融機関が債権の自己査定を行う場合、最初に債権分類の前提となる債務者区分を行います。具体的には、個々の債務者を下の基準にあてはめて「正常先」「要注意先」「要管理先」「破綻懸念先」「実質破綻先」「破綻先」に区分する作業です。


・正常先=業績良好かつ財務内容にも特段の問題が無い債務者

・要注意先=金利減免・棚上げなど貸出条件に問題、元本返済・利払いの延滞、業況が低調など財務内容に問題がある債務者

・要管理先=要注意先の中でも3カ月以上の延滞又は貸出条件緩和をした債務者

・破綻懸念先=経営難の状態にあり、経営改善計画などの進捗状況が芳しくなく、今後破綻に陥る可能性が大きい債務者

・実質破綻先=法形式的に破綻ではないが、深刻な経営難にあり再建の見通しがない状況

・破綻先=法的・形式的な経営破綻の事実


金融機関から「お宅は来月で3ヶ月延滞になってしまう。このままでは格下げになってしまうので、どうしても今月は入金してもらいたい」と言うことがあります。金融機関としては関与先(金融機関にとっては貸付先)を「要管理先」ではなく「要注意先」に留めておきたいというというわけです。


債務者区分は金融機関が行う自己査定におけるスタートともなる作業です。債務者区分に応じて、債権分類がなされるからです。


価格の概念と競売制度(3/3)
2017年01月28日(土)

平成26年4月より株式会社ミロク情報サービスの客員研究員を拝命しています。
毎月一回の研究会に参加するだけではなく、毎月一回の経営研究レポートを発表しており、ミロク情報サービスのホームページで紹介されています。

第33回の経営研究レポートが公開されました。

今回のテーマは「価格の概念と競売制度(3/3)」で、その要旨は次の通りです。

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要旨:

前回は、競売制度における様々な概念や制限、競売手続の各段階における情報について整理しました。今回は競売の経済合理性と競売制度の実情について明らかにします。さらに、債務者側からみた競売制度の活用方法に着目し、いくつかの実例を紹介します。

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多くの有益な情報を入手できますので、入会することをお勧めします。
私自身、他の研究員の研究レポートを拝読し、参考にさせていただいております。


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法人税は費用か利益処分か
2017年01月24日(火)

会計と税務は立場も違いますし、考え方も違います。

純理論的に考える会計の立場からみると、法人税は費用なのでしょうか、それとも利益処分なのでしょうか。


費用とすれば税引後の当期純利益が分配可能利益となりますが、利益処分とすれば税引前の当期純利益も分配可能利益と考えることができます。


費用であるという理由としては、「決算日に税は確定しているので費用である」「株主が処分に影響を及ぼすことができないので利益処分ではない」という点が指摘されます。利益処分であるという理由としては、「費用は利益の大小に関係なく計上するのに対し、法人税は利益に影響を受けるので費用とはいえない」という点が指摘されます。


このように、会計学のさまざまな論点は、会計学上の2つの立場から議論を交わすことが少なくありません。


実務上は繰欠があれば税負担は生じませんので、税引前も税引後も同額になります。税負担がどの程度になるかは新規融資にあたって重要なポイントになります。

たとえば減価償却費は外部への支出がないので分配可能利益を構成することになりますし、営業権償却も同様です。実際のところ、税引後当期純利益を分配可能利益とみるべきだといえるでしょう。


経営成績と分配可能利益のいずれを重視するか
2017年01月19日(木)

経常利益と当期純利益のどちらを重視するかという問題は、会計の目的に関連します。


「投資家等に有用な情報を提供するのが会計の目的だ」とする立場からは、企業の正常な収益力すなわち経営成績を重視し、経常利益が重要であると考えます。

一方、「株主に対する経営者の受託責任を明らかにするのが会計の目的だ」とする立場からは、企業の分配可能利益を重視し、当期純利益が重要であると考えます。


損益計算書に関して、経営成績を重視する立場からは「経営成績算定のために発生収益を客観性、確実性によって限定すること」が求められ、分配可能利益を重視する立場からは「分配可能利益算定のために、貨幣性資産の裏付けのある収益を認識すること」が求められることになります。


さらに貸借対照表の資産の評価を例にとれば、経営成績を重視する立場からは「物価変動がある場合は取得原価と時価は一致しなくなるので、取得原価主義は時価主義に比べて合理的ではない」と考えることになりますし、分配可能利益を重視する立場からは「株主から提供された貨幣をどの資産にいくら使用したかを明らかにすることが受託責任の解明に役立つのだから、資産を取得原価で評価し、販売などの実現時に利益を認識することで未実現利益を排除することができ、よって分配可能利益の算定に役立つ」と考えることになります。


会計に関するさまざまな考え方の違いは「経営成績を重視するのか」あるいは「分配可能利益を重視するのか」という根本的な考え方の違いに起因することが少なくありません。「それぞれの立場からどのような違いとなるのか」を考えると理解しやすいのではないでしょうか。


豊洲市場は中止して原発を新設すべし
2017年01月15日(日)

豊洲市場の汚染水問題が問題になっています。 基準の79倍のベンゼンやシアンまで検出された由。今までの検査は何だったのでしょう。犯罪の匂いすら窺えます。


2016年9月13日の本欄でも指摘していますが、豊洲移転は中止すべきです。

当時は「すでに3000億円近くの建設費を投入した」との話でしたが、今は6000億円に上るとの報道がなされています。

都の予算13兆円に対し6000円億円は4.6%です。年収500万円の家計に例えるなら4.6%、すなわち23万円の負担に過ぎません。 取り壊した跡地には「怠慢行政による箱モノ行政は二度と行わない」との石碑を立て、過ちを肝に銘じることで経済合理性を確保できると思います。


跡地には、最新型の原子力発電所を新設すべきです。

福島原発の罹災直後の2011年4月21日の本欄以来、繰り返し「最新鋭の原発への建て替えの必要性」を指摘しています。

何十年も前の古い原発を修理しながら使うのではなく、世界に誇るべき最新鋭の原発を建てるべきです。地震だろうが津波だろうが、どのような災害にも耐えうる原発を新設すべきです。

「そんなモノができるわけがない」ならば、世界中すべての原発を同時に廃止すべきです。世界中の原発廃止とすれば「そんなコトができるわけがない」となるでしょう。

「そんなコト」は他国の協力が必要なので非現実的でしょうが、「そんなモノ」は日本独自で実現可能ですので現実的だと思います。


首都圏の近くに建てることに対する反対意見は二つの理由から問題になりません。

ひとつは、最新鋭の原発ですので何処に作ろうが事故は無いハズだからです。

ふたつは、首都機能は分散することで一極集中の現状は改善されるからです。分散により「首都の近くにあってはならない」という理由そのものが軽減されることになります。


「豊洲市場は中止して石碑を立てる」「 跡地には最新原発を建てる」「 首都機能は分散する」・・・ かねてより本欄で指定している通りです。

「だから前から言ってるだろ」と、言いたくもなります。


パフォーマンスに明け暮れるのではなく、未来の日本を見据えた政治をしてもらいたいと思います。


不動産鑑定評価書と競売のための評価書(2/2)
2017年01月14日(土)

たとえば競売価格を想定して鑑定評価を行う場合に、市場価格を求め、この7割程度を競売価格と推測するという考え方は危険すぎます。なぜならば、競売のための評価書は積算価格のみを基に評価することになっており、いわば独特の評価手法によるものです。市場価格の7割にすれば良いというものではありません。

競売価格は独特の評価手法であるために、場合によっては市場価格より高く評価されてしまうという逆転現象が生じることもあるのです。


たとえば、対象不動産が特殊で市場性が大きく落ちるために「不動産鑑定評価書」では大きく減価されて低い金額として鑑定されるような場合、競売評価で減価率に制限があるので大きな減価ができないことがあります。このような場合、本来であれば低い評価になるはずの競売価格が高く評価されてしまうのです。

収益価格が低い場合にも、競売評価では収益価格を求めないので高い評価になってしまいます。


高く評価された競売価格で競売が実施されても、落札者は現れません。

落札されない場合は2割程度金額を引き下げて、再度の競売手続きが実行されます。それでも落札されない場合には、民事執行法68条の3により、3回を目途に競売手続きを繰り返すことになっています。

このように、不動産の態様によっては不動産鑑定評価書が求める価格より、競売価格が高くなってしまうこともあるのです。


特に競売を視野に入れて債権者と交渉を行うような場合は注意が必要です。このような場合、そもそも「不動産鑑定評価書」を作成したのでは誤った対応になってしまいます。

競売を想定し、競売評価の場合に行われる手法で「評価」しなければならないのであり、一般の「鑑定」を行ったのでは不十分なのです。


競売評価の特殊性を知らないまま、一般の不動産鑑定評価を行って7割の金額としたり、ましてや、経費節減のため「評価書」「簡易評価書」「査定書」「調査報告書」等を作成したのでは判断を大きく誤りますので注意が必要です。


競売を視野に入れた不動産評価は特殊な判断が必要になりますので注意してください。


不動産鑑定評価書と競売のための評価書(1/2)
2017年01月09日(月)

不動産の鑑定評価に関する法律により、不動産鑑定士には不動産鑑定評価書を作成することが認められています。

この不動産鑑定評価書は、街の不動産業者が作成する「評価書」とか「査定書」とは全く異なり、原価法に基づく積算価格、取引事例比較法に基づく比準価格、収益還元法に基づく収益価格という3つの価格を斟酌したうえで鑑定額を求めるものです。多くの場合、不動産業者の「評価書」とか「査定書」は、単純に取引事例比較法が主になっている点で大きく異なっています。


競売が行われると、裁判所選任の不動産鑑定士が「評価書」を作成し、裁判所に提出します。この評価書は主に原価法に基づく積算価格で評価するものであり、3手法を適用して求められる不動産鑑定評価書とは異なります。

同じ不動産鑑定士が作成する書面でも、「不動産鑑定評価書」と競売のための「評価書」では内容が異なるわけです。


ところで、不動産鑑定士が作成する書面には正式な「不動産鑑定評価書」以外にも「評価書」「簡易鑑定書」「査定書」「調査報告書」等々の名称のものがあります。これらは不動産の鑑定評価に関する法律の守備範囲外であり、いわば自由な形式で内容も様々です。


経費を節約するために不動産鑑定士に正式な「不動産鑑定評価書」ではなく、簡略な「評価書」「簡易鑑定書」「査定書」「調査報告書」等の作成を依頼する例が見られます。それはそれで参考になることも少なくありません。

しかし、「評価書」「簡易鑑定書」「査定書」「調査報告書」等は「不動産鑑定評価書」と異なり、限られた金額と納期で作成するため、3手法を適用して求められる不動産鑑定評価書とは異なる内容になっています。


交渉学という学問(2/2)
2017年01月05日(木)

交渉学では、負けた方の利得を勝った方の利得とするようなWin/Loseの考え方ではなく、交渉当事者全員にとってのメリットを目指します。Win/Win交渉の考え方です。


Win/Lose交渉は、短期的には利得を得られても、長期的には得られる利得が多くなるとはいえません。交渉学の立場からは理想的な解決策ではないのです。

どのような利得配分がWin/Winになるのかを明らかにすることが学問としての交渉学であるともいえます。

学問としては新しい試みであり、さまざまな学問からのアプローチも現実的な形として受け入れられます。まさに学際的な学問であるといえるでしょう。学際的な学問とは、複数の学問領域に渡る学問のことをいいます。経済学、法学、心理学などに軸足を置いたアプローチがその例です。


たとえばミクロ理論経済学の視点から考えれば、お互いの財を交換することでお互いの効用を高めるという考え方、すなわち交換によりパレート最適を実現するという考え方が重要です。経済活動の基本である交換は交渉の基本ともいえるのです。パレート最適とは、他の当事者の効用を悪化させることなしに他の当事者の効用をこれ以上向上させることのできない状態のことです。いわば最適の分配が実現している状態のことをいいます。


すべての当事者にとってWin/Winの結論を導くための交渉を実現することが交渉学であり、一方の当事者が勝ち、他方が負けるような交渉は学問としての交渉ではなく、術としての交渉に過ぎません。

学問としての交渉を追求するためには、個々の経済主体に着目していたのでは不十分なのです。たとえば伝統的なミクロ理論経済学では、すべての経済人は合理的な活動を行うという完全合理性仮説を前提としていました。しかし、その経済学自体にも完全合理性仮説を否定する動きもあります。交渉学においても、完全に合理的に行動しない場合を想定した研究が求められています。


完全に合理的に行動しない例としては、さまざまな指摘がなされていますが、たとえば一方の当事者は完全な情報を有しているのに他方の当事者は情報を有していない場合などが挙げられます。すなわち情報の非対称性です。このような場合は情報を有する当事者が有利であるだけではなく、情報が共有されていないために経済活動そのものが失敗に終わることもあります。


他にも、心理的な影響が加味されることで合理的ではない行動をとることも指摘されています。

この点について経済学の分野では、心理学の立場から行動分析を行うという行動経済学の研究がなされています。同様に、交渉学においても心理学を加味した研究が進められています。


交渉学という学問(1/2)
2017年01月01日(日)

さまざまな研究について、その現象や事実を体系的に説明しようとする知識体系は、学問というより理論という範疇になるといえます。何らかの考え方により仮説を組み合わせることで、いわば演繹的な証明を試みるわけです。

学問はより広く、さまざまな理論により体系づけられた知識体系です。たとえば学問としての経済学の中に、ミクロ経済論、金融論、財政論等々の理論が包含されているわけです。端的には理論を体系的に構築することで学問が構成されているともいえるでしょう。

さまざまな理論が常に発展を繰り返しながら、学問全体もさらに発展していくという関係にあるのです。


交渉学という学問領域があります。

交渉学とは、さまざまな交渉について論理的かつ体系的に明らかにする学問であり、交渉術とは異なります。学問であるためには、小手先の「術」に留まっていてはならないのです。


交渉「術」の例としてはさまざまなものがあります。

たとえば「不意打ち」。これは突然に強硬な態度に出ることで交渉相手の不意をつき、相手を動揺させることで交渉を自己に有利に導くというものです。一見、本質とは無関係な話から相手の弱点を突くことで相手を追い込むところは、刑事ドラマで刑事コロンボが演じたように「相手を油断させて隙を突く」やり方に相通じる手法ともいえます。

「グッドコップとバッドコップ」。これは交渉において2人以上が示し合わせて、一方が強気の攻め役、他方がなだめ役を演じ、相手を追い込む形で交渉を自己に有利に導くというものです。

「タイムプレッシャー」。これは何気ない会話を通して相手の時間的限界を探り出し、相手の時間的限界を把握することで、相手の最終案を見極める形で交渉を自己に有利に導くというものです。


このような「術」は個々の交渉において自己を有利に導くものであり、直面している交渉だけを見れば有意義であるといえます。Win/Loseの結論、すなわち、一方が勝ち、他方が負けても良いというのであれば、採用するべき戦略ともいえます。

しかし長期的な視点でみれば、「術」を繰り返すことで、警戒すべき交渉相手としての烙印を押されてしまいます。信用できない交渉相手として争いが生まれてしまいかねません。これでは協調によりパイを大きくすることでWin/Winの結論を得るという、全体からのアプローチにおいて効用を最大化することが困難になってしまうのです。


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