2008年
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事業再生に必要なこと
2008年12月31日(水)
早いもので一年も今日で終わりです。
まさに激動の一年でした。
アメリカ発の金融不安に端を発した世界的不況は今や大変な問題になってしまいました。
今の状況を、一年前に誰が予想していたでしょうか?
私自身は金融投資をしませんので、株価の変動を云々する立場にはありません。しかし、理論的に考えるならば、株で大儲けするのは必然性がないと思うのです。ミクロ経済学の伝統的な考え方では、利子率を上回る程度のリターンしか期待できないはずです。大きく儲けることができるとしたら、要因は二つしかないと思います。
ひとつは、インサイダー取引です。特別な情報を有している立場の者が儲けるというわけです。
もうひとつは運です。たまたま株価水準が低い時に購入して高い時に売却するという偶然の要素がなせる技というわけです。
世間の証券アナリストと呼ばれる人々の一年前の株価予想、コメントを振り返ればわかることですが、1万円を大きく割る現状を予想した人は存在しません。「株屋の予想は競馬の予想と大差ない」という話をよく耳にしますが、まさにその通りだと思います。
2009年はどうなるでしょう。
事業再生の現場では、小型の再生案件が増えています。数千万円の借入金に苦しむ零細企業からの相談が増えたのが2008年の特徴でした。
これらの小型案件では、弁護士はまともに相手にしてくれません。
手間暇かけて再生させるよりも、破産を勧められるのです。資産を換金して報酬を稼ぎ、事務的な作業をするだけです。これでは再生できる事業も再生できません。
まずは債権者と話をすることで、任意再生の道を探るべきなのです。
その後、どうしても暗礁に乗り上げた状況になって、初めて民事再生も視野に入れるのです。最初から破産を勧めるような弁護士を相手にしていては話になりません。
事業再生は、運に任せて株で儲けようとするのとは話が違います。
着実、確実に事業を再生するためには、地道な作業が必要になるのです。あわてず騒がず、着実に再生を目指すことが大切だと思います。
2009年も事業再生に大切なこととは何かを自問自答しながら、着実に再生事業に取り組んでいこうと思っています。
規制緩和
2008年12月24日(水)
東海道線の車内で中年男が殴り合いの喧嘩をして逮捕された事件が報道されました。原因は車内での携帯電話マナーを注意されたことに腹を立てて喧嘩になったとか。
注意の仕方、され方にも問題があったのかもしれません。確かに、たくさんの人が車内でのマナー違反をしているのも事実です。「俺だけに注意するな」「お前に言われたくない」というレベルの争いが大きくなったのかもしれません。
それにしても最近の日本人のマナー違反は多いと思います。日本人は一体どうなってしまったのでしょう。
一つには無駄な、あるいは、実効性のない規制が少なくないことが原因としてあげられるのではないでしょうか?
たとえば、「車内の優先席の周辺で電源を切る」との規制。
おそらく、全く守られていないでしょう。優先席の前に立つからと言って、電源を切る人がいるでしょうか?
守られない規制があることが、「みんな守っていない」という意識を生み、守るべき規制に対しても「おれも守らない」という誤解を生み、守るべき規制が守られなくなるのだと思うのです。
それを指摘すると、争いになる。
争いになるくらいなら、指摘しない。
指摘しないから、守られない。
マイナスの悪循環です。
規制は緩和すべきです。
緩和といっても、規制の範囲を緩和するのです。
最低限守るべき規制に絞るのです。
そして、最低限の規制を守らない者に対する規制、すなわちペナルティーは厳罰化すべきだと思います。
車内の喧嘩という事件報道を聞いて、規制緩和について考えてしまいました。
ゴミの不法投棄
2008年12月10日(水)
ゴミおじさん、ゴミおばさんの話題が取り上げられることがあります。
ゴミの不法投棄は全国の問題となっています。
環境問題の重要性とも相まって、考えさせることも少なくありません。
あたかも趣味でゴミを集めてるかのような報道がされているのは問題だと思います。
集めたゴミが、ゴミなのか資産なのかを議論するのは的外れではないでしょうか。
本人がなんと言おうと、ゴミはゴミなのです。
ゴミを集めることが迷惑であることを指摘したり、役所の無策を責めたりするのは不十分ではないかと思います。
というのは、ゴミおじさん、ゴミおばさんがゴミを引き取るにあたり金を受け取っているならば、それことが問題だと思うのです。まさにそれは不当利得です。
ゴミを引き取るかわりに金をもらい生活しているゴミおじさん、ゴミおばさんの「資産」を税金で片付けるのであれば、税金でゴミおじさん、ゴミおばさんを養うようなものです。
単にゴミおじさん、ゴミおばさんを責めるのではなく、彼らに金を渡してゴミをだす方も規制すべきではないでしょうか。
許可業者以外に渡す者も処罰し、あるいはゴミ回収を無料にするなどの対策が急がれます。完全に無料にすることが社会的に正しい制度であるかは疑問がありますが、少なくともゴミおじさん、ゴミおばさんにゴミを引き取ってもらう時に渡す金より安い金額でゴミを回収する制度を確立する必要があるのではないでしょうか。
自己破産
2008年11月25日(火)
最近、自動車教習所が自己破産したとの報道がありました。
ニュースで報道されていましたが、破産説明の会場を予約した後でも学生の新規募集をしていたようです。破産を予定しているにもかかわらず、学生を募集するとは詐欺同然の悪質さです。知らずに申し込んだ学生が可愛そうですが、後少しで卒業できるはずだった学生はもっと可愛そうです。
学費を取られただけではなく、結果として意味ない教習をさせられた時間の無駄でもあるからです。
このような被害者を一般債権者として扱うのは問題ですが、そもそも、このような自己破産は認めるべきか疑問です。
むしろ再生すべきではないでしょうか。
債権者との話し合いにより、受け取った教習料の中から返済すべき範囲での再生を行うべきです。
破産ではなく民事再生をすべきです。
広大な教習コースを開発して不動産業者に売り渡すことで一括返済するほうが債権者にとって有利だったのでしょうか。
弁護士も報酬が得られやすい物件売却を志向したのではなかと勘繰りたくなってしまいます。
一般学生の犠牲のもと大口債権者が得をする、そんな破産は疑問です。
民事再生前置主義でも制度化し、まず再生を模索させるべきです。
安易に破産を選択するのはいかがなものか、そもそも破産は必要なのか、破産制度に見直しが必要ではないでしょうか。
詐欺破産は犯罪です。
安易な破産に歯止めをかけるためにも違法な破産に対しては立件を進めるべきだと思います。
別会社を利用した事業再生(4)(全4回)
2008年11月15日(土)
【第三者が株主や役員になる場合】
諸般の事情から全くの第三者が株主や役員になる場合も考えられます。
この場合、将来に禍根を残さないためには当事者間でしっかりと約定しておくことが必要です。たとえば、株主の場合は一定の条件で株式を移転することになります。たとえば1000万の資本金であれば1000万を授受することで株式を移転することが考えられます。しかし、これは必ずしも正しい方法ではありません。というのも、別会社は経営が順調に推移することが当然であり、事件の経過とともに株式価値も増加するのです。
別会社を立ち上げたときには10億円の資産に対して10億円の負債があり、その結果、1千万の資本金も1千万であるという状態です。しかし、時間の経過とともに返済も進み、当然ながら負債は減り、資本の部の剰余金が増加するわけです。極端な話、時間の経過とともに10億円の返済が完了した時点を想定します。この場合、資本の部は10億の剰余金を計上しているのであり、もはや株式価値は1千万ではなくなっているのです。
このような状態で1千万で取引を行ったならば、受け取った側には贈与税の課税がなされる可能性もでてきます。したがって、長い間にわたり第三者名義にしておくことは得策ではないというべきなのです。
当事者間で株式の譲渡契約を締結しでおくことで株式取得の道を確保することは当然です。停止条件をつけておくことも考えられます。
なお、役員の場合は後任の役員を確保しておくことも必要です。
後任者がなければ前任者は退任できないことになってしまうからです。
このような問題を回避するために、あらかじめ就任承諾書、改印届に捺印を受けておくことが必要になります。この場合、添付書類として印鑑証明書が必要になりますので、3ヶ月ごとに新しい印鑑証明書と差し替えすることになります。
登記に必要な書類を預けるということは、相手が勝手に登記を行うのではないかという心配がつきまといます。しかし、こればかりは回避できない問題なのです。
したがって、第三者が株主や役員になる場合には、当事者が信頼できる関係にあることが絶対に必要なのです。もちろん、きちんとした約定も必要です。安易な姿勢では将来に禍根を残すことになるので注意が必要です。
別会社を利用した事業再生(3)(全4回)
2008年11月04日(火)
【別会社を第三者名義にすべきなのか】
会社法が新しく制定されたことで別会社を利用した事業再生はやりやすくなりました。
たとえば、最低資本金制度が撤廃されたために資本金の負担は少なくなりました。さらに、設立手続の容易化は実務を進める上では歓迎すべきものです。詳しくは別の機会に紹介します。
ところで、別会社を設立するにあたって株主や役員を決める必要があります。どちらも設立にあたって不可欠です。
ここで問題になるのは、株主や役員を全くの第三者にしておく必要があるのかという点です。
別会社への資産移転にあたって実子に経営権を譲るといった場合のように、事業再生を相続対策としてとらえる場合には実子にしたいのは当然です。しかしそれでは債務者一族間の移転であることが明らかになってしまいます。
役員の氏名は登記簿から判明しますが、株主は登記事項ではありません。
株主は定款に記載されますが一般的に定款の提出を求められることはありません。したがって、定款から株主が誰であるかが判明することは少ないといえるでしょう。
決算書には株主の記載欄があります。決算書は融資先から提出を求められますので決算書から株主が判明することはよくあることです。もっとも、この場合の債権者は別会社の債権者であって、旧会社の債権者に別会社の決算書を提出することはありませんので、旧債権者に別会社の株主が分かるというものではありません。
そもそも債務者一族間ではまずいのでしょうか。
たとえば銀行が全くの第三者に物件を売却することと引き換えに競売を取り下げるというような姿勢を示している場合には、債務者一族が別会社の役員になったのでは話が進まないということができます。このような場合には債務者一族ではなく全くの第三者を役員にしなければなりません。
これに対し、たとえば競売になってしまった物件を競売に応じる形で入札し、落札するのであれば、債務者一族が役員になっていても何の問題もありません。
このように考えると、別会社の役員を債務者一族にするのか、あるいは全くの第三者にするべきなのかは、個々の事案により異なるのであり、極端な話としては債権者の考え方次第であるということもできます。
別会社を利用した事業再生(2)(全4回)
2008年10月28日(火)
【新設法人のポイント】
ところで、別会社に資産を移転するにあたっては、両社の倒産隔離が絶対条件になります。せっかく資産を移転しても、旧会社の倒産に別会社が巻き込まれてしまっては何もならないからです。
このような観点からは、営業譲渡を行う場合と、未払いの税金がある場合に注意が必要です。
営業譲渡の場合で商号続用する場合や、債務引き受け広告を行った場合などに、営業譲渡会社の債務を営業譲受会社が引き継ぐとの法律の規定があるからです。
また、税金の場合には国税徴収法の第二次納税義務に注意することが必要になります。この制度は、別会社で資産を所有している場合のように、形式的には第三者が財産を所有している場合であっても、実質的には本来の納税者が財産を所有していると認められる場合に、形式的な権利者に納税義務を負わせるという制度です。
この第二次納税義務が成立する要件として、滞納者が財産を無償又は著しく低い額の対価による譲渡その他第三者に利益を与える処分をし、このため滞納者の国税の全額を徴収することができないこととなった場合に、その財産の譲受人又は受益者に対して第二次納税義務を賦課するとされています。
このような場合にはせっかく再生した事業の経営者が納税の義務を負うことになってしまい、経営計画に大きな狂いを生じることになりかねませんので十分な注意が必要です。
別会社を利用した事業再生(1)(全4回)
2008年10月20日(月)
【別会社を利用するとは…】
わざわざ別会社にしないで今までの会社で経営を継続できないだろうかという疑問はもっともな疑問です。
ある一つの事業から生み出される利益は、別会社にしたからと言って変わるものではありません。今までの会社であろうが、新しく受け皿になる別会社であろうが同じなのです。それなのにわざわざ別会社を受け皿にするというのは、いわば回り道をするようなものです。法人格を変えることで、あるいは変えるチャンスを利用して融資を付け替えるだけです。
従前会社への融資は不良債権でも、新しく別会社に対して行う融資は正常債権になるというわけです。
このように考えると、わざわざ別会社を設立して受け皿とするのは債権者の都合に合わせたものだと言うこともできるでしょう。銀行の事情も考えることが必要なのです。
ところで従来の会社はどうなるのでしょうか。
そのまま休眠させるという方法もありますし、あるいはきれいさっぱり清算してしまうこともあります。
たとえば資産を譲渡した場合に、その代金を分割とする場合が考えられます。もちろん担保に入れた資産の場合には、分割では担保抹消ができないので一括支払いを余儀なくされます。しかし、たとえば営業権のように担保設定になじまない資産の場合には分割もありえるのです。現に私は20年分割とした例も扱いました。
このように分割代金を受けるだけのために旧会社を残すこともあります。この場合は受け取った分割代金で旧会社の残債を返済するというわけです。もちろん、多くの場合に、痺れをきらした債権者が債権放棄や債権譲渡で不良債権の処理を図ってくることになるのですが、それは債権者側の事情であって債務者の立場からは無関係ということになります。
一方、全ての資産を移した場合のように収益がゼロになる場合も少なくありません。むしろ、収益がゼロになることの方が一般的でしょう。このような場合、会社は存続不要になるのです。
たとえば父親が旧会社の代表者として会社と運命をともにし、実子に別会社の経営を任せるという形が多いようです。このように事業再生とは、まさに相続対策でもあるのです。
さらに、旧会社に繰り越し欠損があれば連結納税制度を流用することで節税を期待できるのですが、これについては別の機会に詳説することにします。
車内アナウンス
2008年09月30日(火)
電車の車掌さんのアナウンスは独特の声だと思います。時として、車掌さんの自声とアナウンスの声が全然違うのがおかしなくらいです。
なかには小さな声でボソボソとアナウンスしたり、なにやら沢山のアナウンスをしているようだが声が小さくて聞こえないといった車掌さんにあたることもあります。
いくら多くの情報を提供しようとしてくれても、聞こえないアナウンスほど無駄なものはありません。そんな車掌は不要だと感じてしまいます。
先日、ラッシュ時に駅に到着した電車内で「降りる方は声をかけてお降りください。続いてお降りてください」と、車掌さんが大きな声で車内アナウンスをしていました。
降りようとする乗客が声をかけるにもスピーカーからのアナウンス声で掻き消されてしまうほどです。
小さな声でも、大きい声でも、度を越すと役に立たないものです。
車掌さんのアナウンスを聞きながら、役に立つ情報提供とは何かということを自問自答したのでした。
事故米の責任
2008年09月18日(木)
最近は個人情報の管理が強化されています。結構である反面、不自由なこともあります。先日は銀行預金の引き出しにあたって、厳重な管理に面食らうこともありました。
ところで、事故米の流通に関し、農水省が業者の社名を公表しました。
私は驚きを隠せませんでした。大変な問題だと思うのです。
社名を公表された業者の風評被害による経営への悪影響は甚大なものとなるでしょう。中国産の毒入り餃子事件の影響で、苦しんでいる流通業者からの事業再生の相談を受けていますので、風評被害の怖さを目の当たりにしているだけに心配してしまいます。
そもそも、私には公表の理由、公表の目的が理解できません。
一方では「食べても健康に影響ない」としつつ、一方では流通業者の名前を公表する。一体、国民にどうしろというのでしょうか?食べてはいけないのであれば、社名公表ではなく、出荷停止の公権力を発動すべきです。食べても大丈夫ならあえて公表する理由はないように思います。
中途半端に社名を公表された業者はたまったものではありません。
意味のない社名公表を行うくらいなら、全く無意味な検査を行った農水省の担当者の氏名を公表するべきではないでしょうか。事件が起こったら、その時の大臣に頭を下げさせるのではなく、官僚自身に責任を取らせるべきだと思うのです。
公表された業者の個人情報はどうなってしまったのでしょうか?
全くあきれた話です。
リーマン・ブラザーズ経営破たんの影響
2008年09月16日(火)
米国の証券会社であるリーマン・ブラザーズが経営破たんしたというニュースが流れています。世界経済に与える影響は極めて大きいと思います。
原因はサブプライムローンによる損失が主因であると報じられています。「またか…」という印象です。
しかし、サブプライムローンによる損失というものが、これほど大きな損失を与えるという仕組みがいま一つ理解できません。日本の金融機関はもちろんのこと、世界中の金融機関が大きな損失を被ったと言われてます。たかが米国の低所得者層への融資の焦げ付きというレベルではこれほどの損失になるとは思えません。
単にサブプライムローンの損失だけではなく、大きな損失のスパイラルを発生させるような何か別の要因あるいは仕組みがあるのでしょう。
ところで、リーマン・ブラザーズといえば、サンライズファイナンスなどの系列会社を抱えています。これらの会社は日本の金融機関から不良債権を安く購入して回収しています。
今回、リーマン・ブラザーズという、いわば親会社が経営破たんしたわけですから、これからの回収方針にも微妙な影響がでるでしょう。
一昔前、日本の金融機関の経営破たんが相次ぎました。一時国有化が相次いだことが思い出されます。
当時、債務者よりも、債権者が先に破たんしたという笑えない話がささやかれていました。リーマン・ブラザーズの経営破たん報道を聞いて、債務者防衛にあらたな対策が必要だと感じました。
贅沢品のガソリンは高値にすべきか
2008年09月09日(火)
タバコは害になるという見方があります。確かにそうだと思います。
害になると知って吸うのは勝手なのだから、この際、タバコ一箱千円にしてしまえという考え方もあるようです。
しかし、例え害になるとしても、吸う権利はあるのです。私自身、禁煙してから何年も経ちますが、以前は一日三箱を吸っていたヘビースモーカーでしたので喫煙者の気持ちは分かります。
一方、非喫煙者にとっては、喫煙は不愉快です。
不愉快なものを排除するためにもタバコを高値にするのは都合がいいかもしれません。
しかし、私は疑問を感じます。
私が昔、喫煙者だったからではありません。
喫煙者は小数です。
小数の者に多数の者が意見を押し付けるのはいかがなものか疑問なのです。多数の横暴といえないでしょうか?
今、ガソリンが高い状況にあります。
少し値が下がりましたが、それでも高い水準です。
ガソリン代がかかるからなのでしょうか、高速道路も安全運転で結構な話です。
二酸化炭素も出さないようにするなら、また、省エネを積極的に推進するならガソリン代は高くすべきではないでしょうか?
ガソリンだけ高くし、軽油は据え置くことで産業への影響は少なくすることも可能です。ガソリンは贅沢品なのです。
物価が高くなると反対意見もあるでしょう。しかし、いずれ枯渇するものです。
環境問題に本気で取り組むならガソリン税は減税ではなく増税すべきではないでしょうか?
次代に残すのは環境だけではないのです。
すこしでも多くの原油も残すべきではないでしょうか?
そのために、きれいごとを言うのではなく贅沢品であるガソリンの消費を抑えるべきなのです。
様々な燃料の中で、ガソリンは特別の贅沢品なのです。
値上げすべきはタバコではなく、ガソリンではないでしょうか?
読者からの相談を受け付けています
2008年09月03日(水)
読者の皆様からの相談を受け付けています。
コンサルティングの前に、半日程度をかけて再建計画を検討する「予備調査」をお勧めしています。お気軽にご連絡ください。
電話の他、メール、FAXでのご連絡も歓迎です。
新刊が発売になりました
2008年09月02日(火)
9月に新刊が発売になりました。
本の目次を掲載しておきます。
今回も実例を生々しく再現してあります。
ぜひ、参考にしてください。
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事件ファイル5
“土地神話崩壊”で苦しむ町工場
【会社を清算して再建した話】
1 夫婦の苦悩
・バブル期の15億円が、いまでは1億円
・営業権を重視する
2 再建計画をつくる
・家賃収入を取るか?購入価格をとるか?
・別会社の設立
・資金を別会社に移動する方法
・捨て身の戦法
・融資先を確保する
3 再建計画を実行する
・顧問税理士との相談
・営業譲渡を実行する
・買付証明を出す
・交渉が暗礁に乗り上げる
・不動産屋の“由美ちゃん”と会う
4 債権者と交渉する
・競売に備える
・最低競売価格で交渉する
5 債権の達成
・金額が合意に達する
・融資手続きを行う
・工場を確保する
・債権が譲渡される
事件ファイル6
二代目社長はなぜダマされたのか?
【ファンドを利用して再建を図った話】
1 経営の実態
・オフィスでの面談
・湯島の雑居ビルを調査する
・札幌の駐車場を調査する
・柏のスーパー銭湯を調査する
2 スーパー銭湯を確保する
・別会社を用意する
・休眠会社を購入する
・スーパー銭湯の経営計画
・スーパー銭湯の融資を確保する
・スーパー銭湯を別会社に移す
3 雑居ビルと駐車場を確保する
・雑居ビルと駐車場の経営計画を策定する
・サービサーと交渉する
4 仕組まれていた罠
・雑居ビルを売却する
・駐車場をめぐる攻防
・再生ファンドの出現
・会社とは誰のものか
5 無念の撤退
・雑居ビルと駐車場の行方
・会社を守るために必要なこと
高橋教授の事業再生講座
会社譲渡で借金を整理する方法
会社譲渡で借金を整理する
・新会社を設立し、抵当権つきのまま新会社の所有にする
・抵当権抹消金額の承諾を得る
不動産の価格の種類とは?
・価格同士の関係はこうなっている
・広義の時価は幅がある
・不動産鑑定評価書を取っておく
法人の代表者を第三者にする場合の留意点
・権利関係、責任関係を明確にしておく
・株主とは?
・代表者とは?
・事前の取り決めが大切
高橋教授のわかりやすい事業再生キーワード集
責任の取り方
2008年08月23日(土)
北京五輪もあっという間に終りが近づいてきました。
肉離れで出場を辞退した女子マラソン選手がいました。不慮の事故なのか、それとも自己管理の怠慢なのか私には分かりません。外反母趾でレースを棄権した選手もいました。
いろいろなドラマがありました。
五輪で表彰される姿はほほえましいものです。
日本選手が表彰されるのは日本の誇りでもあります。
代表選手の選出にはギリギリの決断が迫られるのでしょう。他にも選手はいるのです。一人の選手が代表に選ばれる影で、何人もの選手が選ばれることなく涙を飲んでいるはずです。
マラソンを途中棄権した選手の仲間が、「一ヶ月も走っていなかったのだから・・・」と同情する場面が放映されました。
私は首をかしげざるを得ませんでした。そんな危い状態が予想されるなら、代表選抜時点で辞退すべきだと思うのです。仲間としてかばうのではなく、日本のために辞退させるべきだと思うのです。
ふがいない自分を諌めるからと頭を丸めた選手もいましたが、頭を丸める程度ではすまない問題だと思います。
マラソン選手としての活動を辞退すべきだとさえ感じました。
勝てば何でも言えます。
負けるのはつらいものです。
メダルを取れなかった星野ジャパンは、これからいろいろと責められることでしょう。
しかし、負けたからといって責任を問うのはいかがなものでしょうか。
負けたから責任を追究するのではなく、他の選手が入賞したかもしれないチャンスをつぶした責任、すなわち、代表選抜を辞退しなかった責任が重大だと思うのです。
負けたことが問題なのではなく、負け方が問題なのです。
五輪を見ていて、責任の取り方を考えさせられたのでした。
債務者と債権者の利益一致点(3)(全3回)
2008年08月13日(水)
【利益が一致するもう一つの点】
事業が行き詰った場合に債務者としては何をすべきなのでしょうか。
行き詰った事業の再生計画を策定し再生を目指すことは当然のことです。再生計画を基にどのように行動するのかが問題なのです。
弁護士に相談して裁判所に駆け込むべきなのでしょうか。賢明な読者は、そうではないと気づいたはずです。
すぐに裁判所に駆け込むのは債権者を敵視していると言わざるを得ません。このような対応は間違っているのです。
債権者と債務者は「パイを大きくすることでお互いの取り分が大きくなる」という点で利益が一致するわけですが、実は利益が一致する点はこれだけではありません。
詳しくは別の機会に明らかにしますが、債務者は二つにわけることができます。
元々の融資を実行した銀行のような原債権者と、債権譲渡で出現したような新債権者です。これら債権者の種類によっては対応が異なりますが、共通する点があるのです。
それは「回収事件を早く完了させたい」という点です。
よく、ファイルをクローズすると言います。これは回収事件を解決し、ファイルそのものを棚の奥にしまうことです。まさにファイルを閉鎖するのでファイルクローズなのです。
債権者にとっての解決とは、債権者が納得する金額を回収することです。納得した金額を回収した後、債権は債権放棄で残債を放棄するか、債権譲渡で債権そのものを他人に譲ることになります。いずれにしても債権者は債権を失うことになりますので、回収事件としては解決することになるのです。
債権者にとって回収事件を早く解決することは重要です。なぜならば、回収にかかわる人員をいつまでも抱えているわけにはいかないからです。長期に渡って、いわゆる回収コストをかけることはできないのです。
このように、「早く解決したい」という点でも債権者と債務者の利益は一致しています。
お互いの信頼と協力により「パイを大きくし」「早期に解決する」ことができるならば双方のメリットになるのです。
債務者と債権者の利益一致点(2)(全3回)
2008年08月03日(日)
【債権者は疑っている】
債権者は「もっと多く回収できるのではないか」という不透明性に懐疑的になっています。この場合における「もっと多く」とは、パイ自体を大きくできるのではないかという意味と、同じパイでも食べる部分を大きくすることが出来るのではないかという意味の二つです。
さらに、自分だけ不利益な扱いを受けているのではないかという不公平性も気になるものです。
これらの警戒感が債権者を懐疑的にするのです。
このような債権者の疑いはきれいごとを並べても解消することはできません。とりわけ、パイの取り合いについては債務者と債権者で利益が相反しますので、調整は簡単ではありません。
しかし、基本となるのは双方の信頼関係です。
利益は相反する以上、信頼関係がなければ合意はできません。信頼関係があれば合意するとは言えませんが、信頼関係がなければ合意できないことだけは事実です。
信頼関係といっても、利益が相反する以上、友人同士のような信頼はあり得ません。そのような信頼ではなく、いわば、大人の関係、お互いの立場に配慮しつつ自分の立場を主張するような関係です。
いわば阿吽の関係ですので明確に表現できませんが、逆の状態、すなわち、最悪の状態は明確にすることができます。
それは、債務者と債権者が音信不通の状態に陥ることです。
原因、理由、経緯はどうであれ、債務者と債権者の連絡が途絶えることが最悪の状態なのです。このような場合、債権者の懐疑心を増長させるだけです。事態は改善することはなく、事業の再生に債権者が協力するようなことは皆無と言って良いでしょう。
債務者と債権者との利益一致点(1)(全3回)
2008年07月22日(火)
【債権者の立場も配慮する】
債務者は債権者とどのように付き合い、あるいは交渉すべきなのでしょうか。
債務者として債権者の理解を期待するのであるならば、債務者も債権者の立場を考える必要があると言えるでしょう。債権者に理解や協力を求める以上、債務者も債権者の立場に配慮し、理解と同意を得られやすいような道を選択すべきなのです。
債権者に対して良い感情を抱くことができるはずがありません。それは無理と言うものです。しかし、いつまでもいがみ合っていたのでは双方にとって不利益なのです。
たとえば再生の進め方一つにしてもそうです。
仮に、全く同じ再生計画を進めるのであれば、法的手続として公開して進めるよりも、私的手続として非公開で進めた方が返済総額は高まることは間違いありません。信用低下によるマイナスを防げるだけでも返済総額が高まるというわけです。
したがって、債務者と債権者とが協力して、水面下で再生を進めることは双方に有利なのです。
パイを大きくすることで返済総額を高めるという面に限って見れば債務者と債権者は利益が一致しています。
債務者と債権者が反目し合うことで全く無関係の第三者に儲けさせるよりは、債務者と債権者が協力しあって事業を遂行することで利益を確保する方が返済総額が増えるというわけです。
この点、すなわち、お互いが食べるパイを大きくすると言う目的のためには、債務者と債権者が協力することで双方に有利になるのだということを見失ってはいけません。
安易に裁判所に駆け込むというのは、まさに大事な部分を見失っているのです。裁判所ではなく債権者に協力を求めなければならないのです。債権者を敵視するのではなく、債権者の協力を得ることでパイを大きくする道を模索すべきなのです。
問題はパイをどのように分けるのかという点で債務者と債権者が対立するという点です。
債務者が多くを留保するならば債権者への返済が少なくなりますし、反対に、債権者への返済が増えれば債務者の留保分が少なくなってしまうというわけです。
この点、すなわち、どのように分け合うかという点では債務者と債権者は対立する宿命なのです。しかし、この一点に着目し、お互いの利益が相反していると思い込むのはいかがなものでしょうか。
平和な街角を見て感じたこと
2008年07月14日(月)
先日、ちょうどサミットが開催されている北海道に出張する機会がありました。
警備が厳重だろうと想像はしていましたが、案の定、現地では厳しい警備が行われていました。
新千歳空港は警察官だらけといった印象をうけました。
見せる警備とのことですが、あれだけ見せ付けると、かえってテロに狙われそうにさえ感じた程です。
そういえば、ヨーロッパの空港では自動小銃をかかえた武装警官が警戒していました。
しかし日本では警察官の数は目立つものの、栃木県警だ鹿児島県警だと、地方警察丸出しのジャケットを着て、いかにも即席の警備体制であることを曝しだしていました。
厳重警備は騒がしいだけで、むしろ頼りなさを感じたのは私だけでしょうか?
都内でもサミットに関連して数人の警察官が警備していました。
都内を歩いていた時のことです。
私のすぐ脇を初老の婦人が小型犬を連れて通り掛かりました。
すると警備をしていた一人の警官がしゃがみ込み、犬に手を差し出しました。他の警官も犬と遊び始めました。厳戒警備(?)の真っ最中に、平和な日本ならではの光景でした。
しかし、ふと不安になりました。
犬を連れた初老の婦人による自爆テロならどうなったでしょう。
すぐ近くにいた私自身も命の危険があったかもしれません。
厳重な警備であっても、全員が優秀ではないのです。
手薄な一点をつかれたらそれまでです。
一見すると厳重に見える警備のおかげで、いたずらや通り魔は減るかもしれません。
それはそれで良いことなのでしょう。
とりあえず平和な日本の心温まる街角の風景ということで良しとすべきなのでしょうか。
若干の疑問を感じたのでした。
新刊のご案内(No.2)
2008年07月04日(金)
第6話のあらすじです。最近はファンドに手を出して挫折する例も見られるようになってきましたが、その先駆けともいえる例です。
=第6話=
東京都内で雑居ビルを経営する小林凱太氏は先代の死去に伴い経営を引き継いだが、会社にはバブル期に建設した雑居ビルの借入金が多額の負債として残っていた。千葉県の柏市にスーパー銭湯を、北海道の札幌市内には駐車場を保有し膨大な借金に苦しめられていた。金融機関を引退した友人である表川義郎がアドバイザーとして経営に関与していたが、小林自身は経営能力に欠けており、本質を理解できないまま表川の勧めに従って経営を続けていた。スーパー銭湯は別会社に移転することに成功した小林だったが、その後の金融機関との交渉が難航した。雑居ビルに対して競売を申し立てられそうになったものの、第三者に売却することで競売は回避され、問題が解決したかに見えたが、続いて駐車場にも競売の危機が迫ってきた。全体を見ながら解決するという姿勢を見失っていた小林の思惑は見事に外れたのだった。表川に勧められるままに再生ファンドに手を出す小林であったが、最後には思いもよらぬ結末が待っていた…。
新刊のご案内
2008年06月30日(月)
8月末日を目途に「合法的借金整理テクニック」の続編をイースト・プレス社から出版することになりました。既に同社からは2冊を出版していますので、同シリーズとしては3冊目となります。
今回は第5話と第6話を収録しています。第5話のあらすじは次の通りです。
(第6話は次回に紹介します)
=第5話=
製造業を営む名古屋の木島一郎はバブル絶頂期に15億円を投じた工場の借入金に苦しんでいた。工場を更地にして売却するにしても、今では1億円にまで価格が下落してしまった。製造業の経営は順調であったので返済は継続していたが新たな設備投資などができずに経営を圧迫していた。そこで事業を新会社に営業譲渡し、工場は旧会社に残し、工場を新会社が旧会社から借りることで操業を継続する作戦に出た。知人の不動産業者の協力も得て、債権者との交渉によって工場を守ろうと画策する木島であったが債権者は競売を申し立てる。しかし、工場用地でもあり入札すら見込まれない状況であった。果たして、木島は目的を達成できるのか。
公務員自身が責任をとるべき
2008年06月23日(月)
少し前に道路特定財源からの支出による豪華な旅行が問題になりました。
一体どんな豪華な旅行かとマスコミは興味本位の報道に終始していました。それほど高額な旅費だとどんなに豪華な旅行になるかを検証する報道もありました。しかし、私は報道の視点がズレているのではないかと疑問を感じていました。旅行の豪華さは本質ではないと思うのです。
高額の旅行代金は豪華な旅行ではなく、旅行業者から旅行代金のキックバックを受けるためではなかったのでしょうか?
もし多額の旅行代金を支出し、それを戻させていたのならマネーロンダリングです。まさに違法行為です。
今は居酒屋タクシーが問題になっています。タクシー代を運転手からバックさせるようでは犯罪です。まったく呆れた話です。豪華な旅行も居酒屋タクシーも、ともに一脈相通じるものがあると思うのです。
役所の不祥事の度に大臣が頭を下げるのはどんなものでしょうか?
たしかに大臣は省庁のトップですから頭を下げるなとはいいません。下げるべき頭は下げるべきです。しかし、大臣が頭を下げたところで大臣が変わればおしまいです。話は忘れ去られてしまいます。
むしろ責任をとるべきは事務方のトップである事務次官です。当の役人自身に責任をとらせるべきです。それこそ入省以来コツコツと積み上げた地位を剥奪するからこそ反省や抑止につながると思うのです。
安い頭を下げる大臣の影で舌を出している役人を野放しにしているようでは、亡国につながると思うのです。公務員自らに釈明させ、謝罪させ、責任をとらせ、反省させることが不可欠ではないでしょうか。
表に立つべきは大臣ではなく、公務員自身であるべきなのです。
秋葉原事件で思うこと
2008年06月11日(水)
秋葉原での通り魔事件が騒がれています。まったくひどい事件です。
日本の治安は悪くなる一方です。殺人事件が当たり前のように報道されるようになってしまいました。一昔前は日本の治安は世界に誇れるものでした。殺人事件などは大変な大事件だったのです。
しかし、今の日本は凶悪事件が頻発しています。いったいどうしたのでしょう。
つい先日は中国の四川での大地震が騒がれました。数多くの学校建物が崩壊した事実を目の当たりにして、役人への賄賂が手抜き建築の原因だとも報道されました。
これもあきれた話です。しかし、見方によれば、隠れて贈賄するだけマシだと言えるかもしれません。もちろん贈賄という犯罪も大きな問題ですが、日本の場合は役人の利権を確保するための諸制度が合法的に確立されています。いわば隠れて行われることなく、制度として許されているのです。合法的だけにまだ性質が悪いと言えるでしょう。
賄賂の横行、治安の悪さ、教育水準の低さなど、一昔前の日本はアジア諸国などの後進国を卑下していた面もあります。しかし、今や日本の問題になっています。一昔前に卑下していたレベルの低さが、今の日本で実際に起こっているのです。
若者が期待を持てるような明るい将来を描けないものでしょうか。
今の日本はどこか狂っていると思うのです。
担保処分による短期一括回収か、長期分割回収か(3)(全3回)
2008年05月31日(土)
【一括回収額に運用利回りを乗じて導いた額】
仮に不動産を処分することで1000の回収が可能であると仮定します。さらに、債権者は年間の運用利回りを10%と考えていると仮定します。この場合、債権者は担保処分をして1000の現金に代えれば年間100の経済的利益を得られるということになるのです。それにもかかわらず、債務者が100に満たない返済しか行わないのであれば、債権者側の経済合理性が成り立たないということになるのです。
このような債務者に対しては返済を猶予するのではなく、一括回収するしかないということになります。
不動産の場合を例にとって話を進めます。 不動産を処分した場合に期待できる金額はいくらなのか、さらに、適用する運用利回りはどの程度なのかはケースバイケースであり、これといった基準はありません。
まず、金額についてですが、これは現地で実際に取引されている価格、いわゆる実勢価格、鑑定理論では取引事例比較法による比準価格あるいは収益還元法に基づく収益価格が参考になります。とりわけ、収益価格の場合には、まさに不動産が生み出す利益に着目した価格ですから、この価格と解離することは債権者だけではなく債務者としても経済合理性が成り立たなくなってしまうのです。かかる観点から、収益不動産については特に収益価格が重視されるべきであると言えます。
次に、還元利回りですが、これについては債権者が異なれば違った利回りになるのは勿論、同じ債権者であっても違う利回りが設定されることさえあるのです。債権者が同じなのに利回りが違うのは、とくに外資系企業が債権を購入した場合のように、その債権が組み入れられるファンドの運用実績が異なる利回り目標を持っている場合などが良い例でしょう。このような場合には同じ債権者でも利回りが異なるという訳です。
このように、金額と利回りは一概には確定できないものなのです。その都度、異なるという訳です。できれば個々のケースごとに債権者に教えてもらいたいところですが、それは無理な注文というものです。その都度、交渉を通して債権者の考えを探るしかないのです。まさに腹の探り合いというわけです。
担保処分による短期一括回収か、長期分割回収か(2)(全3回)
2008年05月21日(水)
【一括回収】
そうは言っても債務者にとっては担保を奪われるかどうかの瀬戸際ですから、債権者が一括回収をねらっているかどうかは大きな関心事であるのは当然です。
一体、どのような場合に一括回収の道が選ばれるのでしょうか? 担保を処分するといっても、いつ、いくらの現金が期待できるかという点が問題になります。例えば、預金が担保に取られているとします。この場合は、残念ながらあきらめざるを得ません。おそらくは全額が返済に回されてしまいます。現金に変えることが容易な資産、会計的に表せば、貨幣資産についてはほぼ100%あきらめるしかないでしょう。
これに対し、不動産の場合は事情が異なります。
不動産の場合には家賃、地代という果実が発生します。この果実は他人に貸している場合の家賃、地代のみならず、自己使用の場合にもあてはまります。なぜならば賃貸を想定することで金額に表すことができるという訳です。この想定家賃は重要な概念です。
債務者にしてみれば、「自分の不動産の場合を利用するだけなのに、なんで家賃が問題になるんだ」との思いもあるでしょう。しかし、債権者にしてみれば、他人に貸せば「想定賃料」を受け取ることができるのです。債務者からの返済額が想定賃料を下回るのであれば他人に貸した方が良いということになります。
債務者が所有している限り想定賃料が受け取れないわけですから、このような場合には任意売却あるいは競売によって担保を処分するしかないというわけです。
担保処分による短期一括回収か、長期分割回収か(1)(全3回)
2008年05月14日(水)
【担保処分による一括回収か分割返済か】
債権者が回収を進めるにあたって、一括返済を強要するのか、あるいは分割返済を受けるのか、債権者はどちらを選択するのでしょうか。債権者の立場から、どのように債権を回収するのかを見てみましょう。
債権者は回収を極大化するにはどうすれば良いかを考えるのは当然のことです。銀行の場合は、上席の決済を取るためにはこの金額では無理だとか、本部の了解を取るためには返済額を引き上げてくれとか要求して来ます。サービサーの場合には「投資家の了解を取るためには担保を処分してもらうしかない」などと言ってきます。
言い訳のしかたはさまざまですが、要するに債権者は少しでも多くの回収をしたいことに変わりはありません。
担保がある場合、一つの選択肢として、担保を処分して現金に変えさせることで一括回収が可能になります。債権者が一括回収を選択した場合には任意に売却するように債務者に迫って来ます。 債務者が任意に売却することに応じるならば良し、これを拒むようであれば競売を余儀無くされてしまいます。 債権者が一括回収の道を選択するということは、担保を処分しなければならないということを意味するのです。もちろん、債権者が一括回収の道を選んだからといって必ず競売になるわけではありません。債権者との交渉を通して債権者が意図している一括回収の金額を把握し、この金額を支払うことで担保を他人に奪われないようにする道があるのです。一括回収といっても、競売ではなく任意売却の道を選ぶというわけです。したがって、債権者が一括回収の道を選んだからといって、それが直ちに競売に直結するわけではないのです。
返済総額は?
2008年05月04日(日)
最近は債務者としても勉強が進んだからでしょうか、事業再生に関する理解も早く研究も進んでいるようです。一昔前は「サービサーに債権が譲渡されたが、債権の10%程度で話がつくというようなことを聞いたが本当でしょうか」などという相談が少なくありませんでした。
全くの誤解です。
結果的に、あるいは平均すると債権総額の10%程度になるというような新聞情報を読みちがえたのでしょう。
一般的に債権の価値は次の二つのアプローチで決まります。すなわち、返済実績からみた返済予測と担保価値からみた回収額です。
前者はPL(損益計算書)的な観点であり、後者はBS(貸借対照表)的な観点です。
この両者の合計で債権の価値は決まるのです。
たとえば年間1000万の返済が可能であれば、その何年分かがPL的価値です。また、担保があり、時価が1億ならばそれがBS的価値です。この合計が債権の現在価値であるというわけです。
その債権総額が10億であろうが、20億であろうが債権の現在価値には関係ありません。債権総額と債権の現在価値は別次元の話なのです。
債権の現在価値が、債権総額の何%になるかは無意味な議論というべきなのです。
ロス事件
2008年04月27日(日)
無罪が確定しているロス事件が再燃しています。
世間では一事不再理の問題として論じられていますが、テレビ報道などでは無罪になったにもかかわらず容疑者として報道している局もあるようです。
いかがなものでしょうか。いささか疑問です。
確かにグレーかもしれません。
しかし、日本人保護の観点から疑問だと思うのです。
ロスで米国人が日本人を殺害し、日本で無罪となったものを米国で再審理するならご自由にどうぞということも出来るでしょう。米国人を米国がどのように裁こうと米国の勝手です。
しかし、たとえ印象はグレーでも三浦は日本で無罪となったのです。無罪が確定した日本人を他国が拘束するとは何ごとでしょうか。
無罪確定した元被告も、真犯人に殺害された被害者も日本人です。
たまたま現場が米国だったにすぎません。
日本の主権をバカにするな、と言いたいのです。
日本人の弁護士も選任されているようです。日本人弁護士なら、マスコミに向かってキャンキャンせずに街頭でビラでも配って世論作りをすべきではないでしょうか?
日本政府を動かして釈放工作すべきです。
日本がその主権を主張するのと同様に、米国が主権を主張するのは自由です。
しかし、米国は無罪になった日本人を再度拘束し、もし再度無罪なら誰がどのように責任を取るのでしょうか?
米国だけではありません。
日本人を救おうとしない日本政府、興味本位のマスコミも同罪です。
確かにグレーかもしれません。
しかし、シロとしたのは日本政府です。シロと判断した責任があるはずです。
政府として釈放を要求すべきではないでしょうか。
せめてマスコミは、軽率に容疑者呼ばわりするのははやめるべきではないでしょうか?
債権者にとっても競売より任意売却の方が良い(3)(全3回)
2008年04月19日(土)
【なぜ競売価格は低いか】
不動産の競売市場については特別の事情があります。
一般の不動産市場と異なり、売主の協力のない売買であること、事前に物件に立入ることができず引渡の保証等の安全性が確保されていないこと、保証金を必要とし代金も即納しなければならないこと、同時履行の関係になく引渡までの期間が必ずしも保証されていないこと、さらに土地境界は原則として確定したものでなく地積も原則は公薄渡しであること等の特殊性です。
これらの事情を有しているため、評価に際しては、この特殊性が最低売却価格に反映されることになるのです。実際には正常価格の3割程度に減額した価格が最低競売価格として設定される例が多いようです。
銀行としては債務者の協力により任意売却できればそれで良いのです。競売より高く売れるならば経済合理性が肯定されるというわけです。
債務者が設立した別会社に不動産を売却するというような場合、価格の客観性が確保されないという問題が残ります。債権者と債務者が結託して安い価格で移転したのではないかという懸念です。このような懸念を払拭するために競売制度を利用すれば透明性が高まるという面も否定できませんが、単に価格の客観性を確保するだけであれば不動産鑑定を行えば済むことです。
わざわざ競売をする必要はないのです。
さらに、競売により債務者に対する深刻な信用不安というものが生じるのも事実です。
産業の育成、発展をひとつの課題とする金融機関としても、競売という引き金を引くことで債務者の命を絶つことは本意ではないのです。できれば引き金を引かずに済む方法で解決したいというのが本音なのです。
さらに、競売による時間的ロスも問題になります。
最低競売価格を決定し、入札期日が設定される等々、時間がかかるという現状があります。最近は改善されつつありますが、半年以上かかるのも珍しくありません。
一方、債務者が任意売却に応じるのであれば不動産市場で取引を行うことになり、無駄な費用と時間が節約できるのです。したがって、債権者としても競売ではなく任意売却で担保処分をすることが望ましいということができるのです。
債権者にとっても競売より任意売却の方が良い(2)(全3回)
2008年04月14日(月)
【裁判所によって違う】
最低競売価格の基礎となる鑑定評価書のコピーは誰でも取れるわけではありません。当事者でなければ取れません。債務者や競売申立人は入手できます。
ただし、裁判所によって扱いが違うようですので注意が必要です。東京地裁など、取れない所もあるようです。
銀行もとることは出来ますが、通常はそこまでしません。債権者にしてみれば、焦って見込み額を知る意味がないです。待っていれば最低競売価格として公示されるのですから、わざわざ裁判所にコピーを取りに行く必要はないのです。
ところが、債務者は急ぐのです。なぜなら、公示される前に、公示見込み額を基に銀行と交渉するからです。公示される前に競売を取り下げてもらうのです。だから急ぐわけです。
裏技は100%確実とはいえません。ただ、他の事例でも最低競売価格プラスアルファで決着した例はいくつもあります。
ただし、競売が取り下げられることなく入札が行われ、第三者が高い金額で入札してくれば、資産を失うことになります。これが最大のリスクなのです。
思惑通りに途中で競売を取り下げてくれる保証はないのです…。
競売が取り下げられること無く、競売手続が進んでしまった場合、情報戦が繰り広げられることになります。詳しくは後述しますが、他人が高い金額で入札する可能性があるような場合には競売を誘発するような作戦は控えるべきなのです。
入札者はお互いの金額が見えないために、様々な工作が行われるわけです。債権者としては少しでも高く入札されることを期待した行動が選択されることになります。
債権者としては、競売が行われるという情報をまき散らすことで入札者を増やすということも考えられます。中には入札者に融資を実行する債権者もいるほどです。不良債権を見限って、競売に持ち込み、あらたな優良取引先に融資を行い落札させるというわけです。
一方、入札者の行動としては少しでも安く落札したいという思惑で行動することになります。お互いの意向を探りあい、誤魔化しあう例も見られます。他社を出し抜くというわけです。
いずれも情報戦の様相を呈してきます。
特に地方では情報戦の色彩が強いのが実際のところです。
債権者にとっても競売より任意売却の方が良い(1)(全3回)
2008年04月07日(月)
【どんなときに競売を行うのか】
債権者だからといってむやみに競売に着手するわけではありません。競売が行われるには、それなりの理由があるのです。
一般には債務者の返済が止まることがきっかけとなります。約定通りに返済が行われているのであれば、期限の利益は債務者にあるのですから競売が行われることはありません。返済が滞り、債権者が催告したにもかかわらず返済に応じないような場合には競売が選択肢として急浮上してくるのです。
債権者としては、債務者の返済目途がたたない状況になれば担保処分しかないと考えるのも無理はありません。
この場合、債務者が任意売却に応じるならば良いのですが、そうでないなら競売しかないということになります。返済も止まり、任意売却にも応じないなら競売するしかないわけです。
返済が止まった場合、債権者は債務者に返済を催告します。これにより債務者の持つ権利でもある期限の利益をはく奪するわけです。債務者が無視すると、「競売する」とうるさく言ってくるはずです。
このような競売制度の流れを債務者が逆利用するという裏技もあるのです。
競売を申し立てられるのが即、破綻だと思い込んでいるような債務者も少なくありません。しかし、このような大きな誤解は見直さなければなりません。競売は一連の債権回収手続の一部であり、全てではなく、まして終わりではないのです。
競売の流れとしては、債権者が競売を申し立てると裁判所が選任した不動産鑑定士が不動産を鑑定します。それが最低競売価格の基礎になる価格なのです。その最低競売価格の基礎になる金額を元に交渉するというのが裏技というわけです。
最低競売価格の基礎となる金額が出た後に交渉すれば話し合いの土俵に乗ってくるのが通例です。この金額はいまだ裁判所が定めた額ではないのですが、裁判所が選任した不動産鑑定士が求めた価格です。
したがって、交渉の基準となる価格としては客観性を持っているということができます。
「最低競売価格を上回る金額なのだから任意売却に応じてくれ」と交渉するのです。この場合の任意売却の相手、すなわち買主は債務者自身の別会社とするわけです。
競売が公になると、風評被害などにより経営がしにくい環境になるのは容易に想像がつきます。
このことは銀行も同じです。
銀行にとっては競売を申し立てることはやりにくいのです。債務者に対して引き金を引いたという銀行に対する世間の風評を銀行も気にするものなのです。
先の裏技では競売を取り下げてもらうのですから、世間の風評も気にすることはありません。債務者のみならず債権者とっても都合の良い方法でもあるのです。
新銀行東京
2008年03月25日(火)
新銀行東京への税金追加投入が問題になっています。400億円もの税金投入だそうです。
なんとももったいない話です。
当社のクライアントの中にも新銀行東京への返済を停止しているところがありますが、一口にいえば融資審査が甘かったと言わざるを得ません。
ところで、経営者の不正と同様に、外部経営環境は不正の温床になります。
新銀行東京の破たん原因が旧経営者にあるかどうかは疑問ですが、仮にそうだとしても、経営者の不正を招来した大きな要因として外部の経営環境も指摘されるべきです。この場合、東京都の意向は新銀行東京に影響を与える大きな外部経営環境です。
癖のある知事が、あたかも救世主気取りで、企業救済を口実にした貸出を奨励したのであれば問題です。奨励とまでいわなくても、甘い審査であったことは否めません。
しからば、このような外部経営環境を創出した責任は経営責任以上に重いというべきです。
経営者の任命責任、監督責任という間接責任でなく、経営環境を創出したという直接責任がとわれるべきです。
知事のタカ派姿勢は外部経営環境として大きな影響を与えます。
知事の責任は経営責任以上に重いと言えるでしょう。
新銀行東京は整理すべきです。
何故、400億円が必要なのかを明確にした上で、追加する最低の追加を行った上で、銀行業務はどこかの金融機関に営業譲渡すべきでしょう。新銀行東京は不要なのです。
今の都知事、今の経営者の下で、銀行業務を遂行するのは、さらなる損害拡大すら招きかねません。よって、最低限の追加税負担を行うにしても銀行業務の譲渡を条件に行うべきです。
どうしても現状のままで新銀行東京を継続するならば、都知事と銀行経営者の個人保証を取り付けるべきです。
中小企業経営者は保証の責を強要されるのです。
知事も、銀行経営者も保証して当然だと思うのです。
イージス艦の衝突事故
2008年03月22日(土)
イージス艦と漁船の事故は悲しい事件です。
衝突直前まで自動操舵を解除しなかったイージス艦に非があるのは自明です。
私は海上交通に詳しくありませんが、聞くところでは右に避けるという原則がある由。
しかし、横須賀に向かうイージス艦が、房総半島から次々に出航してくる漁船と出合う度に停船や右方向回避をしていたら、いつまでたっても横須賀に入港できないのではないでしょうか。
いうなれば右回りでグルグル回るだけになってしまいます。
やはり小回りがきき、かつ数多い漁船が停船あるいは回避すべきではないのでしょうか。
小回りがきくという大きさの違い、次々出港してくるという数の違い等々、イージス艦と漁船を互角に扱うのはいかがなものでしょうか。
私はイージス艦を優先すべきだと思うのです。
事故にあった船員2名が発見されないのは気の毒ですが、せめて海の銀座と呼ばれる海域では救命具をつけるべきではないでしょうか。
漁船側の過失は少なくないと思うのです。
事業再生も同じです。
銀行という巨艦を相手に債務者という小型船は太刀打ちできません。
小回りをきかせながら、うまく立ち回り、衝突を避けながら回避しなければなりません。
まともにぶつかったのでは勝負にならないのです。
裁判所ではなく債権者に相談すべし(3)(全3回)
2008年03月13日(木)
【嫌味な債権者でも我慢する】
たしかに、中には嫌味な債権者もいます。
何を話すにも高飛車で偉そうな態度の債権者もいます。借りたのは銀行からであって「あんたに借りたんじゃない。偉そうなことを言うな」と言いたくなるような担当者もいます。そんなときには本当に腹立たしくなるものです。
私もクライアントと同行して債権者との話し合いに臨むことがよくあります。
嫌味な債権者に遭遇すると席を蹴って出てしまいたくなるようなことも少なくありません。
「そんな計画や依頼に応じるつもりはない」「同行者とは話さない、話す義務もない」「民事再生でも破産でもいいから法的手続を進めてくれ」「納得できる内容にして出直して来い」等々…。
まさに言いたい放題、失礼千万です。
最近でこそ少なくなりましたが、このような横柄な態度の債権者がいるのも事実です。特に最初に融資を実行した銀行から債権を買い取ることで出現した新債権者に比較的多く見られます。さらには不良債権整理という国策の下、誕生した整理回収機構RCCにも同類が多いのは残念なことです。
債権回収という仕事柄、やむを得ない面も否定できません。
私自身も回収業務にたずさわっていましたので理解できるつもりですが、中には度を超した担当者がいるのも事実です。
しかし、こればかりは仕方ありません。レベルの低い人格の担当者に当たってしまったのは運が悪かったのです。運命だと思ってひたすら耐えるしかないのです。
こういう横柄な担当者に限って、最終決着時には励ましの言葉をかけてきたり、親しげな態度をとるものです。内心、「ふざけるな、馬鹿やろう!」と言いたいのですが、ぐっとこらえて債務免除を勝ち取るべきなのです。
我慢することで、何千万、何億の債務免除と事業再生が実現するならしめたもんです。
全くの第三者に奪われないようにするには、自分で購入するのがベストです。しかし、負債を抱えたままで資産を形成するのは困難ですので、実際には親族や別会社への譲渡を行うことになります。このような譲渡先の指定も認めてもらう交渉が必要になります。
債権者にしてみれば最大の回収ができ、なおかつ形式上は他人への売却であるのならば良いというわけです。
要するに、金額も買い手も債務者が誘導してしまうのです。
このような交渉は法的手続にはなじみません。私的手続の中で、債権者との交渉を行うからこそ、債務者が主導する形での資産保全を実現することができるわけです。
誤解してはいけません!
債権者が合意しないような再生はありえないのです。
債務者が頭を下げるべき相手は裁判所ではなく債権者だということを肝に銘じておかなければいけません。
裁判所ではなく債権者に相談すべし(2)(全3回)
2008年03月08日(土)
【金額の決定権は債権者が握っている】
事業の再生を行うにあたって、見失ってはいけない点があります。それは「債権者が納得する金額を支払うことが必要である」という点です。
債権者が担保権を持っている以上、債務者は債権者が納得している金額を返済せざるを得ないのです。このことは、民事再生法であっても、民事再生法でなくても変わりはありません。
一般に債権者は自分から納得している金額は言わないものです。なぜならば、少しでも多く回収するためには債務者から金額を言わせ、少しずつ吊り上げていくほうが債権者には有利だからです。仮に債権者が金額を先に言ってしまっては、その金額が上限になってしまいます。
上限値をつかんだ債務者がわざと低い金額を提示し、さんざん粘った挙句に、「ではその中間値ではいかがでしょう」などと言い出しかねません。この場合、債務者はあらかじめ中間値での決着を狙っているのです。
自分から金額を言ってしまって上限値を作るより、債務者に金額を言わせて、じりじりと値を吊り上げる方が債権者には有利です。散々、値を吊り上げておき、ここらが潮時かと判断した時点で、「実は、債権者として○円を要求したいところなのですが、債務者であるお宅様が○円が限度ということですので、その中間値の○円としましょう」などと言い出すわけです。債権者は競売をちらつかせることで中間値の支払いを強要するわけです。
このように、金額の決定権は債権者側にあるのです。
まさに後出しジャンケンです。
ですから、債権者との交渉の中で金額を探るのが本来の方法なのです。単に金額を聞くのではなく、できるだけ安価で処分することを懇願することも有効です。
「そんなにうまく行くのか」と思う方もいるでしょうが、実際に安値に誘導することは可能なのです。
例えば、不動産の場合であれば鑑定評価書を用意することも有用な手段です。動産の場合には評価証明や買取証明を用意することが考えられます。中には、そのような資料は全く不要という債権者もいますが、逆に、是非用意してくれと求めてくる債権者も少なくありません。
一般に、債権譲渡で新たに出現した債権者は前者です。「そんな資料は要りません。用意する費用があるなら、返済に回してください」などと求めてくることすらあります。
逆に、元々の貸し出しを行った銀行の場合、特に政府系の金融機関などの場合は後者です。「そういう資料があるならご提出ください。本部と検討します」と喜んで受け取ります。
裁判所ではなく債権者に相談すべし(1)(全3回)
2008年03月03日(木)
【安い費用での民事再生は不十分】
最近は山手線や地下鉄などで「民事再生手続は○○円」という広告を見かけることがあります。随分と安い金額を掲げています。
弁護士業界も大変な競争が始まっているようです。しかし、私は大いに疑問を感じています。「そんなに安い金額で事件を引き受けて債権者への根回しを十分に行うことができるのだろうか・・・」と心配してしまいます。格安な料金で引き受けた場合には、おそらく事務的な手続しか行わないのでしょう。債権者が申し立ててきた競売を停止するためとか、債権者が申し立ててきた破産手続きの開始申し立てに対抗するためとか、緊急事態を回避するため緊急避難的に申立を行うならまだしも、緊急でないなら個別の根回しを十分に行うべきなのです。
このような事前の根回しは法的手続でなくても可能です。裁判所の力を借りることなく、すなわち、民事再生法に頼ることなく、私的手続として債権者との交渉を行うことは十分に可能なのです。
十分に可能というよりも、むしろ、民事再生法に頼るのではなく債権者と交渉するほうが有効であるとさえ言えるでしょう。